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片道15分の恋人 作者:桜庭かなめ

逆・恋心編

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4月8日(火)

 彼に会いたいという一心で、昨日と同じく午前七時二十七分の電車に乗るために頑張って早起きをした。
 そして、高津田駅のホームでも同じ所に乗ってくるかもしれないと思って、先頭車両の一番後ろのところで待つことに。もちろん、わざと最後に乗るように列の最後尾に。
『間もなく、各駅停車、八神行きが参ります――』
 午前七時二十七分。
 今日も定刻通りに八神行きの電車がやってきた。
 扉が開くと昨日と同じくらいに混んでいたけれど、この後に素敵な出会いが待っているかもしれないと思えば、このくらいの混み具合はもう苦じゃなかった。
 そして、電車が高津田駅を出発してから三分後。
『間もなく、鳴瀬、鳴瀬――』
 昨日、彼が乗ってきた鳴瀬駅に間もなく到着する。
 いるかな。いないかな。
 彼と会えるかどうか。ドキドキしてくる。
 そして、鳴瀬駅に到着して扉が開く。すると、目の前には彼が立っていた。彼の姿を見ると、不安な方のドキドキが消えて、代わりに心地よいドキドキがしてくる。こうなるってことは私、彼のことが好きなんだと思う。
 彼は電車に乗ると、私の右隣に立った。か、彼と隣同士になっちゃった。彼って結構背が高いんだなぁ。私の顔がちょうど彼の胸の辺りの高さくらいだ。
 今のこの状況を見たら、私と彼ってどんな風に見えるのかな。隣同士に立っているから恋人同士に見えたりするのかな。
 い、いけない。こんなことを考えたら、絶対ににやけちゃう。こんなところをもし彼に見られたら、変な人だと思われて引かれそう。そうしたら、明日から会えなくなっちゃうかもしれない。変な顔をしない。変な顔をしない。
 すると、彼はフリーだった左手でつり革を掴んだ。何となくだけれど、今のことで彼との距離が開いちゃったような気がする。でも、実際は右手にスクールバッグを持っているから左手で持っただけだと思うけど。
 彼の顔を見たいけれど、彼は背が高いから見上げないといけない。だから、彼に気付かれないように見るのは難しい。それに彼の顔を見て、万が一、目が合ったらきっとあたふたしちゃって、それこそ彼に引かれる流れになっちゃうかも。今日は彼の顔を見るのは止めておこう。
 それでも、彼の隣に立っているだけで幸せだった。今、彼がどうしているのか分からないけれど、彼の視界に私が入っていて、あわよくば、私の方を一度でも見てくれていたらとても嬉しいな。
『間もなく、鏡原、鏡原――』
 今日もあっという間だった。彼と一緒にいられる十五分間。これでまた明日まで会えないと思うと寂しいな。明日、彼がここに乗ってくるか分からないから不安もある。これも彼とお話しができれば全て解決できることなのにな。彼と話せるくらい勇気がほしい。
 そして、鏡原駅に到着し、私は下車した。
 昨日は間違えて乗り過ごしてしまった可能性も考えて、彼が降りるかどうか確認してみたけれど、彼が電車を降りてくることはなかった。
「やっぱり、ここが最寄り駅じゃないんだ……」
 ほんの僅かな可能性しかないとは分かっていたけれど、それさえも潰えたと分かるとため息が出てしまう。
 彼と一緒にいられるのが一日十五分間としても、もうちょっとその……有意義な時間にしたいな。
 そして、学校に行って、クラスメイトの友達にこのことを話してみると、彼に話さないと距離は縮まらないと言われた。話すことができればこんなに悩まないよ……。
 でも、話さないと何も始まらないとは思う。明日、もし彼とまた会えたら、勇気を出して彼に話しかけてみよう。できるかどうか分からないけれど、頑張ってみよう。
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