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片道15分の恋人 作者:桜庭かなめ

恋人編

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5月2日(金)-⑤-

 天羽女子から出ても、天羽女子の生徒がいる限り何かと騒がしい。坂井先輩曰く、八神高校の男子生徒が告白しに来たという話が学校中に伝わっているから。僕と栞を見て黄色い声援を上げている。
「突然、別の高校の男の子が来たから、みんな興奮しているんじゃないかな」
「そういう栞が一番落ち着いて見えるけど」
「興奮よりも安心さや嬉しさの方が強いから。それに、悠介君のことで色々と訊かれすぎて疲れちゃって」
「そっか。ごめんね、いきなり来ちゃって。驚いたでしょ」
「驚いたけれど、気にしないで。また、こうして悠介君と手を繋いで歩けていることが本当に嬉しいから」
 栞はやんわりとした笑顔をしてそう言った。そして、多くの人に色々と訊かれた影響か、腕を絡ませてから僕と手を繋ぎなおした。そのことで、栞の柔らかな温もりが腕全体から感じられる。
 それから、僕等は何故か無言になってしまうけど、今は栞と一緒にいられるだけで嬉しく思う。きっと、栞も同じことを思っているはず。
 そして、鏡原駅に到着し、潮浜方面の電車に乗る。栞と一緒に電車に乗るのは火曜日以来なのか。もっと前だと思っていたけれど。
 電車に乗ってから、栞は頭を僕に寄りかかるような体勢に。頭は僕の胸に付けている。きっと寂しい想いをたくさんしてきたからだろう。それが僕と一緒にいたいという感情に繋がっているんだ。
 周りから見たら、きっとイチャイチャしているカップルみたいに思われているだろうけど、昼のことがあった所為か恥ずかしいとは全く思わなかった。
「一人で電車に乗るのは辛かった」
「辛かった?」
「うん。悠介君と一緒に乗りたい。恋人同士じゃなくていいから、悠介君と一緒に乗りたいって思ってた」
「そっか。僕も栞がいないと寂しいし、つまらなかったな」
「……同じ気持ちで良かった」
 実際の写真を見たことはないけれど、きっと栞にとっては相当ショックだったんだろう。僕も栞が誰か他の男と口づけしているように見える写真を見せられたらショックだし。
「でも、あの子と顔を近づけたんだよね。その……ドキドキしなかったの?」
「全然しなかったなぁ。眼に入ってたゴミを取ることに夢中だったから。亜実の方は相当ドキドキしていたみたいだけど」
 わざとでも、僕の顔が近づいてくることへの緊張は隠しきれなかったんだな。
「そっか……」
 栞はほっと胸を撫で下ろしている。
『間もなく、鳴瀬、鳴瀬』
 もうすぐ鳴瀬駅か。やっぱり、栞と一緒に乗る十五分間は楽しくてあっという間だ。もう少しこの時間が続けば良いんだけど。
「……一緒にいて」
「えっ?」
「今日はもっと一緒にいて。ここで悠介君と別れるのは嫌だよ……」
 栞は僕のブレザーをぎゅっと掴み、上目遣いで僕を見ながらそう言う。
 こういう言い方で栞から我が儘を言われたのは初めてじゃないだろうか。栞の言うとおり僕も今日はもっと一緒にいたいけれど、
「どうする? とりあえず、鏡原駅で一緒に降りる? もし、栞の行きたいところがあるなら今から一緒に行こう」
「……うん。じゃあ、次の高津田駅で降りよう。お金は大丈夫?」
「ああ、チャージしてあるし大丈夫だよ」
「良かった。……これから、私の家に来て」
「うん、分かった。……って、えええっ!」
 まさかの行き先だったので驚いてしまった。親戚以外の女の子の家に行くのは初めてだ。急に緊張してきた。
「僕が行っていいものなの?」
「……私の恋人だもん。来て良いに決まってるよ」
 栞本人が笑顔でそう言うからきっと大丈夫だろう。
 そんなことを考えていたら、気付けば高津田駅に停車しようと電車が減速し始めていたのであった。
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