挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
片道15分の恋人 作者:桜庭かなめ

恋人編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

24/75

4月30日(水)-前編-

 カラオケ店を出た後、僕が鳴瀬駅で降りるまでの僅かな間、栞と色々なことを話した。でも、昨日彼女が言ったように、楽しい時間はあっという間に去っていった。
 今日も鳴瀬駅のホームでいつもの電車を待っている。栞と一緒にいられる十五分という時間、何を話そうか家を出てからずっと考えている。そういえば、栞と付き合うことになった翌日も同じことを考えていたな。
 あの時は緊張していたけれど、今は違う。本当に栞と話したい気持ちでいっぱいで。それもこの数日間でぐっ、と栞との距離が縮められたからなのかな。
「今日も晴れてるなぁ……」
 日光が直接当たって暑い。ブレザーを脱ぎたい。
『間もなく、一番線に各駅停車八神行きが参ります』
 そのアナウンスの直後、八神行きの電車がやってきた。
 当然、僕の目の前にある扉が開けば、栞が待っていると思っていた。
 だけど、今日は――。
「いない……」
 栞の姿がそこにはなかった。僕の顔を見ると嬉しそうに笑う彼女がいなかった。
 ――別のところにいるんじゃないか。
 僕を驚かせるという可愛らしい悪戯心で。
 そんな淡い希望を持ちながら、僕は電車に乗った。さあ、僕を驚かすなら早く驚かしてほしい。後ろから君の声を聴かせてほしい。
 だけど、そんなことはなかった。
 普段より空いているので、僕は周りを確認してみるけれど、栞の姿はどこにも見当たらなかった。
「何かあったのかなぁ」
 誰にも聞こえないように呟いた。
 何事も無ければ栞はここにいるはずなんだ。でも、実際にはいない。栞の身に何かあったに違いない。
 例えば……家を出てから忘れ物に気付いて家に戻ったとか、ゴールデンウィークだから平日だけど今日も休みだったとか。それか、体調を崩して休んでいるとか。昨日、たくさん歌って喉がやられた、ということも考えられる。
 だけど、栞の性格なら……いつもの電車に乗れないことをメールで伝えてくると思う。風邪とかでそれどころじゃない可能性もあるけれど。
 でも、何故か不安になってしまう。これは、一昨日……栞が抱いた不安に似ているのだろうか。
「栞に会いたい」
 きっと、この気持ちは同じだろう。栞に会いたい。
 そんなことを考えていても、栞のいない電車は僕を八神へと連れて行く。鏡原駅を過ぎるまでの十五分間は、今までの中で一番長く感じるのであった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ