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 誠にすいません。またしても少し更新が遅れました。覗いてくださった皆様、非常にすみませんでした。
 尚、そろそろ最強の魔術師!は終わりに近づいております。今まで読んでくださった皆様。初めてだったとはいえ、稚雑な文章だったこの小説を読んでくださってありがとうございました。
第三十五話 真相
 早紀は海斗の家の前にいた。志乃が側にしゃがんで何かを言っているようだが早紀は頭を振ってそれを否定していた。

「だから、海斗君がそんなことするはずないじゃない」

「だって、だってあの時・・・」

 そう、確かに見た限りでは海斗が無理矢理抱きしめていた、ように見えたのだが早紀にどう真実を伝えるか、ということが問題になってくる。

 志乃がいろいろ言っているが早紀は頑としてその言葉に耳を貸さなかった。

 龍夜はそうした早紀の様子を見るうちに去り際の海斗の絶望に染まった顔を思い出した。人を助けようとした結果がこれじゃああまりにも海斗が救われない。

 早紀の眼を覚ましてやろうと龍夜は早紀の元へと近づいた。

「おい、早紀。あのときのは見間違いで・・・」

「もういい!もういいから・・・」

 そう言ってかたくなに海斗のことを拒否する早紀にだんだんと怒りを感じてきた。

「もういいから放っておいて!」

 その言葉に龍夜の怒りは頂点に達した。がっと早紀の胸ぐらを掴み上げてぱあん、と頬を張った。

「ちょ、龍夜!?」

「ふざけんな!お前海斗がそんなことするやつだと思ってんのか!?」

「・・・だって」

 この際『心の眼』を使うまで本気で疑っていたことは水に流して早紀を叱りつけた。

「じゃあなんでここに戻ってきた!?海斗が好きだからだろ!?」

 正直に言って、顔から火が出る程恥ずかしいしこんなのはガラじゃない。っていうのは分かってる。だけどこの二人がこうして別れて悲しんでいるのを見るのはどうしても嫌だった。

「それは・・・でも、あの時」

 龍夜には分かる。どんなに拒否しても心の奥底では海斗を求めていることが。だからこそ早紀の誤解を解いてやらなければ、と思う。

「海斗が信じられないのか?今まで一番長く海斗と一緒に居たお前なら分かるだろう?」

「それは・・・でも」

「でもじゃない!海斗のことが好きなのかどうなのか、海斗のことを信じられるのかどうなのかを聞いてるんだ。どうなんだ?」

「それは・・・信じたいけど、でも」

 早紀の眼に明らかに動揺が現れてきた。だいぶ落ち着いてきたし後一押しだ。 

「それにな、俺の能力の『心の眼』で海斗の記憶を辿ると分かったことだが、あの時海斗はあの人を助けようとしてあの状態になった。相手の女性が海斗を突き飛ばしたのは単に男性恐怖症だったからだ。・・・早紀なら分かるだろう?」

 同じく男性恐怖症の早紀も突然抱きしめられると相手も突き飛ばすだろう。それを理解した早紀は俯いて悩んでいるようだった。

「それに、これは言ったらだめなんだろうが・・・」

 と龍夜が早紀へのプレゼントのことを言おうとした所で頭上から白い魔力の固まりが近づいてきた。

 それは水色で優しい色をしていた。

「・・・この魔力は・・・」

「たしか・・・」

「・・・海斗・・・っ!」






 しゅん、とサリエスに飛ばされた海斗はある廃村に到着した。

 近くから凄い魔力を感じる。確かにこれは神クラスだ。

「・・・早紀・・・」

 そんな状況でも海斗は先ほどの早紀の言葉が頭からこびりついて離れない。

 ゆっくりと魔力の塊が海斗のほうへと近づいてくる。

 海斗はとっさに臨戦体型を取ったが体が全体的に重く、集中できない。

 命を掛けた戦いの時にこの精神状態を引きずると命に関わることは十分に承知しているが体が動かない。

 この魔力の大きさは以前戦った鬼に匹敵する。万全の状態でなんとか、という相手にこれでは確実にやられる。

 一瞬逃げようか、という甘い考えも浮かんできたがすぐさまにそれを打ち消す。そんなことをしてもなんの解決にもならないし、こいつがもし後で早紀に何らかの危害を加えたら、と考えると寒気がしたからだ。

 早紀を守る、と考えただけで海斗の体に少し力が戻る。

 琢磨と花梨の気配もするが、遠くで同規模の力を持つやつと交戦中で応援は望めない。

 どうやら一人でこのばかばかしい程の魔力を持つ奴とやり合わなければいけないらしい。

 そこまで考えた後海斗は足に力を溜めて一気に跳躍した。

 すると次の瞬間、廃屋となった家を次々に薙ぎ倒し真っ白い光の塊が海斗の足下を通り過ぎていった。

 いつもなら余裕で避けれているものが今のはぎりぎりでかすめていった。

 海斗は改めて自分の状態を再確認して顔を歪めると忌々しげに先ほどの攻撃が飛んできたほうを向いた。

 すると何もなかった所にすぅっと巨大な影が現れた。それは八本の首を持つ八岐大蛇やまたのおろちだった。

「ちっ」

 海斗の顔に珍しく焦りの色が浮かぶ。想像以上に厄介な相手だったからだ。

 八岐大蛇は鬼のような再生能力はないがその皮膚は鋼以上に硬く、簡単には破れない。さらに八岐大蛇は八本の首をすべて切り落とさないと死なない。なぜなら心臓は潰しても他の器官で代用できるからだ。攻撃方法は先ほどのように魔力を飛ばすのと伸縮性に長ける首をのばしての攻撃が普通とされている。更に魔力での攻撃は魔法で癒すことはできず、自然治癒に任せるしかない。

「Wind water it my power,Destroy a deadly・・・」

 攻撃しようと集中し呪文を唱えていると頭の中に早紀の声が響く。

『海斗なんてだいっ嫌い!』

「・・・っ!」

 激しく集中力を乱されて呪文が途中で途切れる。

 その隙をつかれて八岐大蛇の首が一斉に海斗に襲いかかる。

「くっ・・・Wind elude it」

 海斗は風の防御壁を張って八岐大蛇の攻撃を風で受け流しながら回避する。

 七本の首を受け流し、最後の一本になった所でまたしても早紀の言葉が頭に蘇る。

『もう近寄らないで!』

 またしても激しく動揺した海斗は風の制御を手放した。

 風は中途半端に海斗の身を守り、八岐大蛇の頭が海斗の脇腹に食い込む。

 盛大に吹き飛ばされた海斗は大きな放物線をかいて10m先の地面に叩き付けられた。

「がっ・・・」

 背中から打ったために肺の空気が全部持っていかれた。

 急いで空気を吸って体に酸素を送ると仰向けの体勢からごろごろと横転しながら素早く立ち上がった後、素早くその場を離れた。

 ごっ、と空気を押し割る音を残してまたあの魔力の塊を放出してきた。

 海斗は腹部に手を当て体の損傷具合を調べた。

「(あばらが三本、背中が打撲、内蔵が少しやられたか・・・)」

 少し手痛い傷を負ったが魔術でさっと治す。

 治すのに集中した一瞬に早紀の別れ際の泣きそうな顔が脳裏に映った。

「(・・・なるほど、集中したらこうなる訳か・・・)」

 体を動かしている間は割と平気だが、一旦集中すると早紀の声が蘇る。

 それだけ早紀が海斗の奥深くまで潜り込んでいるのに嬉しくもあり、今後のことを考えると悲しくもあった。

 しかし、それはこの場では限りなく致命的なものでどうにかしなければならないものであった。

「I become a sharp blade wind,and cut an enemy」

『最低!』

 集中したとたんに早紀の涙とともに早紀の言葉が蘇るが海斗はそれを全力で頭から追いやってなんとか術を完成させた。

 鋭利な刃と化した風は音速を超えるスピードで飛び、八岐大蛇の首に刺さった。

 さすがに一つでは食い込むだけだが、それが数十も連続して刺されば切断できる。

 それを二回繰り返してなんとか六本に減らした(本来ならば十で済む所だがやはり全体的に威力が落ちているようだ)。 

 八岐大蛇は苦しげな叫び声をあげ、怒りが籠った十二の眼でこちらを睨んできた。

 海斗はそれを無視してお気に入りの光剣を創成する。

 ぱああああと手に出来た剣は心無しかいつもよりも光が弱いような気がする。

 頭を振ってその考えを払うと八岐大蛇に向かって駆け出した。

 向かってくる首を屈んで避け、すれ違い様に浅いとはいえない傷を残していく。

「篠原流剣術奥義《風林火陰山雷》」(ふうりんかいんざんらい)

 風林火陰山雷とは、其の疾きこと風の如く、其の静かなること林の如く、侵略すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如し、動くこと雷帝の如しと、動くときは風のように疾く、止まるときは林のように静かに、攻撃するときは火のように、隠れるときは陰のように、防御は山のように、現れるときは雷のように突然に、という意味である。

 これはニッポンに行った時に読んだ『太平記』や『松竹論』などを参考にし、こちらに帰ってきた時に完成させた技である。

 技を発動させた海斗はふっとその場から掻き消えるように消えた。

 八岐大蛇は訝しげな鳴き声を上げて六本の首をそれぞれの方角に向けて警戒した。

 しかし海斗は八岐大蛇の足下にしゃがんで身を潜めていたのである。これが知りがたきこと陰の如く、気配を限界にまで薄くして視界に入ったとしても気付かないまでにする技である。

 海斗は八岐大蛇の警戒が一瞬緩んだ隙をついて一気に攻撃をし始めた。

 其の疾きこと風の如く、一気に眼前の首に十数回の剣戟を入れて首をまず一本切断した海斗は風のように襲いかかる八岐大蛇の首をくぐり抜け、その度に深手を負わせていく。

 動くこと雷帝の如し、さっきまで八岐大蛇の右側にいて首を斬りつけていた海斗は一瞬のうちに反対側に移動して無警戒な首を滅多切りにしていた。

 海斗の素早い動きと激しい攻撃に翻弄され、八岐大蛇はどんどんと弱っていく。残りは僅か二本となった。

 二本残した他には下手な木こりがめった打ちにした切り株のようなものが六本あるだけであった。

 いつもの海斗がこの技を使っていたらいくら八岐大蛇の皮膚であろうと一撃のもとで斬り捨てただろう、しかし今日の海斗はやはり技にキレがなく、どうしても手間がかかってしまう。

 理由は明白だが海斗はあえて考えないようにした。

 そろそろ決着がつく頃だな、と心の中でため息を吐くと剣を再び構えた。

 技の効力も切れたので、また先ほどのように風の刃を作り最後の二本に向かって飛ばした。

 しかし、海斗は早紀の声に耐えるのに必死で八岐大蛇が魔力を溜めているのに気付かなかった。

 ようやく気付いた頃には最早回避不可能な攻撃が目の前に迫っていた。

 受けたら死ぬ。

 体が自然に動いた。剣に込められるだけの『気』を込めて目の前の魔力の塊に投げつけた。

 攻撃は最大の防御。生半可な防御術を使うよりもよっぽど効果的だった。しかし、致命傷にはなる。

 全力で横に飛んで直撃は避けようとしたが間に合わなかった。

 海斗の体は砲弾の如く吹き飛ばされ、廃屋や塀などを吹き飛ばしながら100M程は吹き飛ばされた。

 なんとか衝撃に耐える魔術は使うことが出来たが、あの八岐大蛇の攻撃を食らったのが痛い。体は純粋な魔力によってぼろぼろだった。

 これを魔術で回復させることが出来ないのを知っていた海斗は眼を閉じて身を切り裂くような痛みと戦った。

 どくどくと血が流れ、だんだん意識が薄らいでいく。どうやら後にのこる程の傷はなさそうだが、血が足りない。

 これは死ぬな、と頭の冷静な部分で考えると海斗は次の行動に移った。

 自分の思いを魔力に込めて愛しい人の元へと送った。

 これが早紀との最後の会話になると覚悟して、一方的ではあるが伝えたい気持ちがあったので最後の力を振り絞って早紀の元へと送った。

 それで気が抜けて、海斗の意識はブラックアウトした。誰かが自分を必死に呼ぶ声を聞きながら・・・





 匿名様、お気になさらずに。報告しなかったこちらに非はあります。ご指摘ありがとうございました。 
 やまぶ様、心温まるお言葉ありがとうございます。よりいっそう執筆意欲がわきました。
 今まで蔑ろにしていた所為で恐ろしい程溜まった宿題と戦いつつも時間を見つけて執筆して行きたいと思います。


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