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あるどろぼうのものがたり

作者:真乃晴花
まえがき

今回は童話風なお話をお届けいたします。中身はそんなに童話っぽくないので、風ということで。
 私にとっての理想郷を書いてみました。お話としてもありえない内容です。しかも、説教くさいです。聖書の引用文が終わりにもあります。そういうのにアレルギーがある方はさようなら……また別の物語で……正直、需要あんまなさそうだなー…とか思いながらこんな変形の本つくってみましたよ。
ではでは。ベタなちょっといい話好きさんは、どうぞ最後までおつきあい下さい。

2010 11 14 Natural maker 真乃 晴花
 ほかにも、二人の犯罪人が、イエスと一緒に死刑にされるために、引かれて行った。
「されこうべ」と呼ばれている所に来ると、そこで人々はイエスを十字架につけた。
 犯罪人も、一人は右に一人は左に、十字架につけた。
 そのとき、イエスは言われた。
「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」
 人々はくじを引いて、イエスの服を分け合った。
 民衆は立って見つめていた。議員たちも、あざ笑って言った。
「他人を救ったのだ。もし神からのメシアで、選ばれた者なら、自分を救うがよい」
 兵士たちもイエスに近寄り、酸いぶどう酒を突きつけながら侮辱して、言った。
「お前がユダヤ人の王なら、自分を救ってみろ」
 イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札も掲げてあった。
 十字架にかけられていた犯罪人の一人が、イエスをののしった。
「お前はメシアではないか。自分自身と我々を救ってみろ」
 すると、もう一人の方がたしなめた。
「お前は神をも恐れないのか、同じ刑罰を受けているのに。 我々は、自分のやったことの報いを受けているのだから、当然だ。しかし、この方は何も悪いことをしていない」
 そして、「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」と言った。
 するとイエスは、「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。

ルカによる福音書 / 23章 32節 日本聖書教会 新共同訳


 あるところに、なんども泥棒をしては、逃げ回り、ある時は捕まり、脱獄と泥棒を繰り返していた男がおりました。
 そんな男の耳に、信じがたい噂が聞こえてきます。
 大陸の一番東の国、ルジーザ王国では罪を犯しても、裁かれることがないというのです。
 どろぼうの男は、その噂が本当かどうか、確かめに行きました。
 ルジーザ王国へと続く街道で、乗合い馬車に乗ると、乗合わせた老夫婦に聞きました。
「ルジーザ王国が、刑罰法を撤廃したっていうのは、本当かい?」
「ああ、そうらしいね」
 おじいさんが答えました。
「ほほほ、こんな田舎だもの。ルジーザの牢獄は今まで使われたことがないもんだから、お大臣さんが認めたってねぇ」
「ははは、いやあ、天才の王子さんはやることが違うって、言っておったんだよ」
 老夫婦は至って明るく言いました。
 どろぼうは驚きました。どうやら、噂は本当のようです。
 馬車に乗ること、丸一日、太陽が沈んだ頃にようやくルジーザ王国の国境を越えました。
 ですが、そこはお城からはまだまだ遠く、あたりは畑と牧場がひろがるばかりでした。
 どろぼうは唖然とします。食事ができるようなレストランもなければ、宿屋もありません。
 ですが、どろぼうは困りませんでした。
「へへっ、こういう時はどっか適当な家に乗り込んじゃえばいいってね」
 どろぼうはそうもらすと、手近な一軒の家へ近づきます。
 ポケットからナイフを取り出して、勢い良くその家のドアを蹴りました。
「金と食いもんよこせ!!」
 どろぼうは大声で言いました。
 家の中には、穏やかそうな老夫婦がいて、食事をしていました。
 老夫婦は驚いていました。
 ですが、老夫婦は動じませんでした。
「おやおや、お腹が減っているのかい?」
「こっちへ来て、食べなさい」
 老夫婦は、さあさあと、どろぼうの手を引いて、テーブルに座らせました。
 驚いたのは、どろぼうの方でした。
 どろぼうの前に、湯気のたちのぼるスープが置かれました。美味しそうな、良い香りがします。
「たくさんあるから、遠慮せんでお食べ」
 おばあさんが優しく言いました。
 でも、どろぼうは気をとりなおして、声を荒げます。
「金を出せって言ってんだよ!!」
 こんどこそ、老夫婦は驚きました。
 ですが、それは少しのことでした。
「うちにお金はどれだけあったかねぇ」
 おばあさんは立ち上がって、タンスの方へ行きました。
 そして、手にわずかなお金を持って、戻ってきました。
「これしかないけんども、持っていきね」
 そう言って、どろぼうの手に、お金をしっかりとにぎりこませました。
「さあ、はよ食べなさい。冷めてしまうよ」
 どろぼうは、手の中を見ました。
 銀貨が少しと、あとは銅貨ばかり。安い宿屋に泊まれば使い果たしてしまう程度のもの。
 ですが、どろぼうはそのお金をそっとしまいました。
 ナイフもしまい、代わりにスプーンを手にして、スープを飲みました。
 スープは、とっても美味しいものでした。
「ちゃあんとベッドあるから、好きなだけ泊まっていきなさい」
「ばあさん、こんな若いひとが、こんな田舎に用事があるわけなかろう?」
「ああ、首都にいきなさるか?」
「いつでもいいけんど、ミルクさ運ぶ馬車が市まで行くけ、乗せてもらえ。そこでまた、首都の方さ行く馬車でも見つけて、乗せてもらえばええ」
 老夫婦は親切に教えてくれます。
 どろぼうは、たらふく食事をしたあと、その家に泊まりました。
 ベッドのふとんは、太陽の匂いがして、とても心地の良いものでしたから、どろぼうはぐっすり眠ることができました。


 翌朝、どろぼうが起きると、老夫婦はすでに朝食の用意をして待っていました。
「ようく寝れたようで、良かったさ。さ、朝ごはんを食べなさい」
 どろぼうは、朝食を食べました。パンとミルクと、薄く切られた肉に、目玉焼きが二つでしたが、とっても美味しく、どろぼうは満足しました。
「市にいくなら、頼んでやっけえ。どうする? もうしばらく、ここにおるか?」
 おじいさんがききました。
 どろぼうは、市へ行くと言いました。
「そいなら、これ、もって行け」
 おばあさんはどろぼうに、厚手のコートを渡しました。
「これ、息子のだけども、良かったら、もって行きなさい。夏だけども、寒いからねえ」
 どろぼうはありがたくそのコートを貰うと、馬車に乗って、市へ行きました。
 老夫婦が、いつまでも手を振って、どろぼうを見送っていました。
 どろぼうは、不思議な気持ちでした。
 馬車を操るおじいさんも親切な人でした。どろぼうにチーズをくれました。
 市場につくと、おじいさんは、首都へいく馬車を探してくれました。
 どろぼうは、首都へ向かいました。
 だんだんと、家々が増えてゆき、どろぼうは首都に到着しました。
 首都まで送ってくれた馬車のおじさんは言いました。
「首都の宿屋は高い。うちに泊まっていきな!」
 どろぼうは、言われるがまま、そのおじさんの家に招待されました。
 お腹の大きい、奥方が笑顔で迎えてくれました。
「よう来たね~。どうぞ、ゆっくりして」
 どろぼうは、一晩、この家の世話になることにしました。
「あんた、どこからきたね?」
 奥方が、興味深そうにききました。
「……ユーリティアだ」
「ユーリティアっていうと、あれだ、帝国の西の国さね。えらい西から来たさね~。どんなところなんだい?」
 どろぼうは、ぽつぽつと、自分の生まれた国のことを話しました。
 どろぼうが多いことや、自分の育った環境のことを語ると、奥方は言いました。
「苦労してはって、えらかったわあ。この国は、こないだまで戦争してたけど、もう平和だし、もう、ここに住んでまえ!」
 どろぼうは、もちろん、そのつもりでこの国に来たので、うなずきました。
 どろぼうには、考えがありました。
 お城に行けば、金目のものがたくさんあるに違いないと。
 どろぼうは、お城までの道を聞くと、翌朝、その家から出てゆきました。
「気をつけてなー!」
 奥方とおじさんが、大手を振って、見送ってくれました。


 どろぼうは、とうとうルジーザ王国のお城までたどりつきました。
 それは、真っ白な建物でした。
 門の前には、二人の門番がいます。
 ですが、恐れることはありませんでした。
 なにせ、罪を犯しても、裁かれないのですから。
 どろぼうは堂々と、門に近づきました。
 すぐに門番の二人がどろぼうに近寄って言いました。
「何用か?」
 どろぼうはナイフを取り出して、言いました。
「ここのお宝に用があるんだよっ!」
 どろぼうの言葉に、門番は呆気にとらわれました。
 そして、大笑いを始めたのです。
「ははは、おかしなことを」
「貴様、強盗か?」
 どろぼうの顔は赤く染まりました。
「そうだ! ここは何をしても許されるんだろう!?」
 門番の二人は、首を傾げます。
「お前さん、何か勘違いをしてはいないか?」
 門番がそう言った時には、どろぼうは門をよじ登って、お城の中に入ってしまいました。
 ですが、どろぼうの前には、屈強そうな別の兵士が大槍を持って、待ち構えていました。
「盗めるものなら、盗んでみろ。この俺を倒してな!」
 屈強な兵士はぶん、と大槍を回し、構えました。とても強そうです。
「逃げるのなら、今のうちだぞ」と、門番が門を開いて言いました。
「逃げるのは、盗んでからだ!」
 二人の門番は、どろぼうの意気に感心しました。
 どろぼうと、大槍の兵士で見合っている間に、大勢の兵士たちが、見物に集まってきました。
「おお~、犯罪者第一号かぁ」などと、興味津々です。
 戦争の終ったルジーザ王国の兵士たちは、とっても退屈していましたので、良い退屈しのぎになったのでした。
 万事休す。どろぼうは、どうすることもできませんでした。
 どろぼうは、ナイフを取り上げられてしまいました。
「いやー、刑罰法がなくなって、どうなることやらと思ったが、これはいいな!」
 兵士たちは満足そうです。
「騙したのか!」
 どろぼうは言いました。
「騙した? なにも騙してはおらん。ほうら、お前さんは釈放じゃ。どこにでも好きなところに行けばいい」
 兵士の一人が言うと、大勢集まっていた兵士たちも、散ってゆきました。
「確かに、刑罰法は無くなったけどな、どろぼうして下さいって言うわけないだろう」
 おかしそうに笑って言ったのは、白い服に身をつつんだ、長身の男でした。兵士ではなさそうです。
「金がなくて困ってるなら、こっちへ来い。腹が減ってるなら、メシを食わしてやる」
 そう言って、白い服の男はきびすを返しました。
 どろぼうが、立ち尽くしていると、男は今一度、振り返って言いました。
「どうした? 来ないのか?」
 どろぼうは、門の方を見ました。
 二人の門番が、こちらを見ていました。
「お前、よく来たな~。幸福もんだよ」
 にこにこして、彼らは言いました。
 どろぼうには、どういう意味なのか、まったくわかりません。
「ほうら、行った行った!」
 犬を追い払うような仕草をして、どろぼうをうながしました。
 どろうぼうは、それこそ、しっぽを巻いた犬のように、白い服の男の後をついて行くしかありませんでした。


 白い服の男は()(かん)と名乗りました。彼のあとをついていくと、そこは、聖堂と呼ばれる建物でした。コスモスの花のような模様の大きな窓には、色とりどりのガラスがはまっていて、万華鏡のようです。中に入ると、その万華鏡の影があちこちに散らばって、まるで光の花が咲いているようでした。
 どろぼうは、未だかつて、こんなに心を落ち着かせて、聖堂に入ったことなどありませんでした。
「もう、昼だな。メシ持ってきてやるから、座って懺悔でもしてろ」
 麗神は、そういい残して、奥の扉から出ていきました。
 どろぼうは、聖堂をしげしげと見つめました。天井には、大円の中にいくつもの円が描かれていて、光のような模様を広げていました。正面には、金色のパイプが天井までいくつも伸びていています。パイプオルガンでした。どろぼうは、そのオルガンに触れてみたくなりました。一番前まできて、鍵盤のひとつにさわってみました。すると、天にまで届くような、荘厳とも言える音が、聖堂中に響き渡りました。
 どろぼうは、びっくりしました。
 そうしていると麗神が、食事を持って現れました。
「オルガンに興味あるのか?」
 どろぼうは首を横に振りました。楽器など、自分にはとうてい扱えるものではないと、そう思っていたからです。
 どろぼうは、食事をとりました。
 パンに野菜スープにポテトのハンバーグ、ニンジングラッセに林檎ひとかけ。今まで、一日に何回も食事をとることなどありませんでした。何も食べない日もありました。それが、どうでしょう。どろぼうは、ルジーザ王国に来てからというもの、毎日食事をし、しかも、お金を払っていないのです。
 どろぼうは、ルジーザ王国がとても田舎だと思っていましたが、とても豊だということを知りました。
 食事が終ると、白い服の男は、どろぼうにひとつの部屋を与えました。立派な部屋でした。ちゃんと窓がはまっていて、すきま風ひとつ吹きません。床には、じゅうたんもしいてあります。ベッドもありました。
「自由に使っていい」と麗神は言いました。
 ですが、どろぼうはどうしたら良いのかわかりませんでした。
 今まで、自分の部屋をもらったことがなかったからです。
「ああ、そうだ。あったかいうちに身体でも拭いとけ。湯を持ってこよう」
 麗神はそう言って出ていきました。
 しばらくすると、ドアを蹴る音がしました。戸惑っていると「開けてくださーい」と声がしました。
 どろぼうは、慌てて扉を開けると、そこには、麗神ではなく、白い服を着た少年が湯の張ったたらいを持って立っていました。
「どうも、はじめまして。(まな)っていいます。これ、ここに置きますね~」
 たらいを部屋にあった小さなテーブルに置くと、少年はどろぼうにタオルを渡しました。
「すぐに着替えも持ってきますから~」
 そう言って、斈は部屋から出ていきました。
 どろぼうは、お湯で身体を拭きました。とても、気持ちのいいことでした。
 しばらくすると、(まな)が着替えを持って、再びやってきました。
「サイズが合うといいんですけど」
 斈はどろぼうに白い服を渡しました。斈や、麗神の着ている服と同じものでした。
「痩せてますねえ」
 斈はどろぼうの裸を見て言いました。
「辛かったですね。でも、もう大丈夫ですよ。これから毎日、一緒に生活していきましょうね」
 斈は微笑んで言いました。
 どろぼうは、斈がたらいを持とうとした時、それを制しました。
「じ、自分で……」
 どろぼうは、やっとのことで、それだけ言うことができました。
 すると、どろぼうの目から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。
 あたたかい手が、どろぼうの背中をさすりました。
 どろぼうは、こんなに優しくされたことはありませんでした。
 涙が止まった時、どろぼうは、白い服を着せてもらいました。
 たらいを持って、外の流し場へ行き、ついでに着ていた服も洗いました。
 服のポケットには、老夫婦から貰ったお金が入っていました。
 どろぼうは、言いました。このお金は老夫婦から奪ったものだと。
 そうしたら、斈は言いました。「今度、一緒に返しに行きましょうね」と。それはそれは、優しく言ったのでした。
 どろぼうは、また涙を流しました。
 どろぼうは、斈と一緒に聖堂に行きました。そして、神様の前で、自分の行った悪事の数々をすべて告白しました。
「すべての人にお金を返しにいきましょうね。謝りにいきましょうね」と斈は言いました。
 ですが、どろぼうが盗んだお金は、とても自分では返しきれないほどありました。
 無理だと、どろぼうは言いました。ですが、斈は首を振りました。
「大丈夫です。ここは、あなた一人ではないんですよ」
 どろぼうは、子供のように声をあげて泣きました。
 そして、生まれて初めて言いました。
「ありがとう」と。


 どろぼうは、しばらくして後、謝罪の旅に出ました。斈と麗神も一緒です。斈と麗神は、ルジーザ王国の教会で、神様に仕える神官でした。
 歩いて、街まで行き、馬車に乗せてもらった主人の家に行きました。
 奥方が出てきて、言いました。
「まあ、立派になって! 神官さまになったの? 偉いわなー」
 どろぼうが、一宿一飯の礼を言うと、奥方は一度奥へ行き、ロールパンに野菜とハムを挟んだロールサンドをもって戻ってきました。
「その格好だと、遠くへ行くんだろう? これ持って行きな」
 奥方は三人の旅姿を見て、用意してくれたのでした。
「ありがとう」
 どろぼうは言いました。
「気をつけて帰ってくるんだよ」
 奥方は、笑顔で三人を見送りました。この間と同じように。
 どろぼうが来たときのように、三人は馬車を見つけて、首都から離れて行きました。
 途中で、もらったロールサンドを食べました。ハムの塩気が丁度良く、とても美味しいものでした。どろぼうが、盗んだお金で食べた、どんな豪華な食事よりも、それは美味しかったのでした。
 どろぼうと二人の神官は、国境に程近くに住む、老夫婦も訪ねました。
 おばあさんは「よく来たね、よく来たね」と、しわだらけの顔をもっとしわくちゃにして三人を歓迎しました。
 どろぼうは、おばあさんにお金を返しました。
「そんな小銭、返さんでもよかったんに」
 おばあさんは、にこにこして言いました。
 おばあさんは、ゆっくりしていきね、と言いましたが、三人がお世話になるわけにはいきませんでしたので、三人は、そのまま乗合い馬車に乗って、ルジーザ王国を出国しました。
 ルジーザ王国の隣の国、ランウィーム王国につくと、街に入る前に検閲がありました。
 どろぼうの心臓は早鐘を打って、身体中から汗が吹き出ました。
 どろぼうは、指名手配されていたからです。
 案の定、ランウィームの検閲官はどろぼうを見逃しませんでした。
 ですが、麗神が、どろぼうをかばいました。
「彼の身元はルジーザ王国にあり。雪王の名の下に保護するものである」
 そう言って、麗神は巻いてあった紙を開いて、検閲官に見せたのでした。
 検閲官は戸惑いながらも、食い下がりました。
「犯罪者をかばわれるとは、どういうことか!」
「彼は、ルジーザでは犯罪者ではない。何人たりとも、彼を捕縛することあたわず。捕縛したければ、王の印をしたためた書状を雪王に宛てられよ」
 麗神は検閲官をしりぞけ、三人はランウィーム王国の街へと入って行きました。
 どろぼうは、一軒一軒、どろぼうした家をまわり、お金を返して謝りました。
 みんな驚いていました。
 そして、どろぼうは、自分の生まれ故郷にたどり着きました。
 生まれ故郷のユーリティア王国は、とっても寂れた国でした。たくさんの子供たちが、昔のどろぼうのように、道ばたで暮らしていました。
 どろぼうは、小さなどろぼうに会いました。小さなどろぼうは、果物屋さんから、ひとつのオレンジを盗んだのでした。
 どろぼうの胸が痛くなりました。
 そうしなくては、生きて行けなかったのです。
 小さなどろぼうが哀れでなりませんでした。
 どろぼうは思いました。
 この子供たちを救いたいと。自分が、ルジーザ王国の人達に救われたように、自分も誰かを救いたいと強く思いました。
 どろぼうは言いました。
「あの子供たちを救いたい」と。
 斈は言いました。
「そうですね。みんなで頑張れば、きっと救うことができますよ」
 麗神は約束しました。必ず救おうと。
 そうして、どろぼうはすべての家々をまわり、ふたたびルジーザ王国へと戻ってきました。
 その時にはもう、どろぼうは、どろぼうではありませんでした。
 すべての人達が、彼を許したからです。
 どろぼうだった男は、斈や麗神と同じ、神官になるために一生懸命勉強しました。
 そして、神官になった時、救うべき、哀れな男がやってきました。
「おらーっ! 金めのもんよこしなー!!」
 幸運などろぼうがルジーザのお城にやってきたのでした。



 おわり




「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。
 あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。
 あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の梁に気づかないのか。
 兄弟に向かって、『あなたの目からおが屑を取らせてください』と、どうして言えようか。
 自分の目に梁があるではないか。
偽善者よ、まず自分の目から梁を取り除け。
そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からおが屑を取り除くことができる。
 神聖なものを犬に与えてはならず、また、真珠を豚に投げてはならない。
 それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたにかみついてくるだろう。」
「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。
 だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。
 あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。
 魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。
 このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない。
 だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。」


 マタイによる福音書 / 7章 1節 日本聖書教会 新共同訳

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