第一話 夢
小さい頃から何度も見る…同じ夢…。私はいつもそこにいる。そこ…といっても広大な平原に私がひとり。ぽつんといるだけ。
寂しくて、誰かにいてほしくて、
「誰かいないの!!!」て叫ぶ夢。もちろんそれに応える人はいなくて…ひとりうずくまって泣き始める。すると景色が一瞬にしてガラっと変わって、日本のちょうど平安時代の宮廷を思わせるような建物が立ち並ぶ景色にかわる。その瞬間私は泣くのをやめてその景色に目を奪われる。美しい赤を基調とした柱は一本一本細やかな装飾をほどこされ、龍や麒麟といった幻獣を金で描いてある。その美しい様子に私は動けないでいると中から人が出てくる。ゆっくりと私のそばに歩みより、私に声をかけてくる。だけど顔は見えない。顔の部分だけ暗くて、相手の肩から下しか見えないのだ。
『……………った…』
「……ぇ?」
『……逢いたかった』
ドキリ…
男の人の穏やかでよく耳にとおる低い声がそう告げる。私もそれにこたえようとすると、彼もそこにあった立派な宮廷もたちまち消えてしまい…
(えっ、ちょっと待って……!!私あなたのこと何も知らないのに!!!)
私は彼に向かって叫ぶがその思いはいつも届かず…儚く終わる…
ジリリリリリリ…!!!
「はっ…!」
うるさい目覚ましの音でガバッと勢い良く起きる。隣で鳴り響く目覚ましを乱暴に叩いて止めるとふぅ…と溜め息。
(またあの夢か…変な夢…。ていうかいつもあそこで終わりなんですけど。せめてあの人の顔くらい見たいっての)
そんなこと考えながら着なれた制服に袖を通す。今日は高校最後の日。そう、今日は卒業式なのだ。
(この制服着るのも最後かぁ。もう私がこの制服を着たらただのコスプレをしてる人になるのかなぁ。ははは)
別に制服に対して特に思い入れなどないのだから名残惜しむ必要など無いのだが…ただ3年も着てればそれなりに愛着はわくものである。
「じゃあ行ってきます!お母さん、後でね」
「わかったわ。卒業式の会場でね。お母さん久々に鈴の晴れ姿をビデオに撮ろうかしら♪」
「えぇ〜!!恥ずかしいからやめてよ////写真撮るだけにしてよ。幼稚園の運動会じゃあるまいし」
「だってそんなこと言ってたらいつビデオカメラを使うのよ」
「竜也の時に使えばいいじゃない」
「はいはい。わかりました。照れ屋さんなんだから。ほら、早く行きなさい。卒業生は準備あるんでしょ?」
「あ!うん。じゃあ先に行ってるね」
そう言って元気良く家を出る。空は快晴。自然と心も晴れ晴れしてくる。卒業という今まで仲良くしてきた友人と離れてしまう寂しさはあったが、良い卒業式になりそう。という気持ちのほうが強かったし、無事卒業式を迎えられると思っていた。
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