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遊ぶのが忙しかったり、ガッコが忙しかったりと
書く時間が日に日に減ってますorz
第6話:Local - Conflict
「牧島郁人、ただいま参上って感じかな?」

 牧島郁人。万里にはその名前に聞き覚えがあった。純血の牧島の長男だが、式神が弱かった為追放。
 そして、神々の黄昏事件の際に七海遠音から魔具フラガラッハを受け取り、ラグナロクの大幹部ガルムに勝利。
 それからは千島蒼二の右腕として、あらゆる戦いで名を上げてきた危険人物。
 手に持っている剣は自分が見た時とは形は違うが、フラガッラハなのだろう。これは、絶対に油断できない。
 
(アレを置いてきたのはミスでしたね……)

 自分が今持っている刀は一級品の業物だが、フラガラッハには遠く及ばないだろう。
 剣術のほうは自分の方が上にしても、危うい。勝率はやや自分が不利と万里は見た。
 そんな万里の焦りを知ってか知らずか、郁人は、

「どうです陸人さん。今のスゲーカッコいいタイミングじゃなかったッスか?」

「テメェ……こっそり見てやがったな?」

「いや。陸人さんなら大丈夫かなーって思ってたんですよ。だけど、いきなり逃げ出すからねぇ」

「うるせぇ。さっさとソイツをやっちまってくれ。俺は、光希が気になってしょうがねぇ」

「あ、光希君来てるんですか。わかりました、ここは俺に任せて行ってください」

「おう。適当にあしらっとけや」

 ナめられたものだ。本気を出せれば、こんな二人簡単ではないだろうが、殺せるのに。
 だが、今は本気を出せない。どうこの場を切り抜けようかと考えていると、
 郁人はフラガラッハを鞘から抜き、一気に万里へと距離をつめた。咄嗟に万里も刀を抜いて応戦。
 郁人の上段からの一撃──。刀で受け止めるも、それだけで丈夫なはずの刀にヒビが入った。
 長期戦は良くない。そう判断すると、狂乱の力を少し強めに発動させて、万里は高速で移動を始めた。
 郁人の唯一の弱点は、純血である事。すなわち、肉体は普通の人間と変わらない。
 フラガラッハには身体強化の力は無い筈。遠音の事を知っている戒がそんな無駄な機能をつけるとは思わない。
 絶えず動き回り、郁人の目が追いついていない事を悟ったその時、万里は斬撃を郁人に向かって放った。だが──

「甘いよ」

 万里の斬撃がフラガラッハによって受け止められた。そして、万里は気づく。
 郁人の体にうっすらとコンセプトの紋様が光り輝いている。予想するに、身体強化のコンセプト。
 そう気づいた時には、もう遅かった。簡単に刀を弾き返され、大きく体のバランスが崩れる。そして、郁人は、

「フラガラッハ・緋澄」

 そう口にした。途端にフラガラッハの形態が変わっていき、刃が三つに別れ、その全てが鞭のようにダラリと垂れ下がる。
 その三つの刃はまるで生きているかのように動くと、その全てが万里めがけて襲い掛かる。
 咄嗟に横に大きく跳んで回避するも、刃は自由自在に軌道を変えて追尾してきた。
 二人の距離が大きく開く。そして、郁人は一度刃を戻し、今度は振り下ろすようにして刃を放った。

「くっ……!」

 一方的に打ち付けられる万里。しかも一撃一撃が重い。段々と万里の顔にも焦りが浮かぶ。
 するとその時、上空から幾つもの火球が降り注いだ。流石に郁人も攻撃を止め、回避に専念。
 その隙に万里は郁人から大きく距離をとると、先程までとは違い、嬉しそうな笑顔で

「うーちゃん!」

 と声を上げた。そして、地上に一匹の黒き装甲を纏った龍が降り立った。それは、数の十名家二階堂家の三男、
 二階堂雨龍とその式神、黒龍。黒龍は本来、独立して行動できるのだが、雨龍と合体する事もできる特異な式神。

「よぉ。約十年ぶりか? 牧島郁人」

「ああ、そうですね。確か、大火傷してベソかいてた二階堂雨龍さんでしたよね?」

「……言うようになったじゃねーか。クソガキ」

「そりゃもう、九年経ちましたから。いい加減、おっさんは引退したらどうです? また火傷したくないでしょう」

 お互い笑顔で嫌味を言い合うと、郁人と雨龍は同時に動いた。黒龍とほぼ同化しているため、
 雨龍の動きは早い。更に、雨龍には予知という嫌な力がある。案の定、郁人の放った三つの刃は簡単に避けられた。
 急いで刃を戻すも、雨龍の方が早い。だが──

「はいはーい。また大火傷コースご希望でぇ?」

 女の声が響き渡ると共に、雨龍の眼前にコンセプトの紋様が出現した。突然の事に、流石の雨龍も体を止められない。
 そして、体が紋様に触れた途端に爆発。荒れ狂う爆炎が周囲を一気に飲み込む。
 
「ナイス、竜胆」

「えへへ。バッチグーなタイミングだったでしょぉ?」

 背後から現れたのは、郁人と同年代程度の女──牧島竜胆。姿形は人間だが、郁人の式神。
 他の式神を奪い、自分のモノとする能力を持っている。郁人が今まで使った力の大半も、
 竜胆の恩恵によるものであった。

「うーちゃん!」

「うるせぇ、吼えんな万里」
 
 炎を振り払って、全く無傷の雨龍が現れた。郁人も竜胆もあの程度で倒せたとは思っていなかったらしく、
 平然と再び戦闘に集中する。そして、雨龍は万里を見据えると、

「援護しろ。俺とテメェでこの場食い止めて、後は奴らに任しておけばいいからな」

「うん……! 私達なら、最強のコンビですね!」

 万里は嬉しそうに再び刀を引き抜くと、雨龍を追いかけるようにして郁人と竜胆へと走った。







 殆どの敵を風の矢で射抜き、梨香は一息ついた。郁人と竜胆が救援に来てくれたので、これで随分と楽になる筈。
 九年前にガルムから貰ったGATEのコンセプトがある為、竜胆は世界中の何処に居ても、一瞬でここまでこれる。
 ユニオンの中で最速の機動力を持つ、この二人は海外の任務に就くことが多かった。
 しばらく会っていなかったが、前とは見違えるほどに強くなっている二人。

(私も、負けてられないな)

 自分も浅葱を継いだ身。何処までも強さを追い求める必要がある。そんな事を考えていると、
 不意に敵側が張った結界の最奥の空間がブれた。そして、現れたのは一隻の船。
 それは──一之瀬家の長女、一之瀬凛の式神【空船】。能力はよくわからないが、船を作り出し、飛ばす能力を持っているらしい。
 一瞬で判断したのは、今回の襲撃が十名家の十文字派の物によるものだということ。
 
「お母さん。そっちはどう?」

 梨香が屋根の下に居る詩歌に声をかけると、

「今、連絡が終わったわよ。とりあえず、救援がくるまで耐えてくれって蒼二君が言ってたわ」

「ん。じゃあこの家を放棄するわよ。機密書類とかは置いてないよね?」

「うん。全部データ化して浅葱で保管してあるから。地下のコアはどうする?」

「問題ないと思うから、放置でいいよ。とりあえず、お母さんは光希ちゃんと一緒に脱出して」

「わかった。梨香、死なないでね」

 返事を聞くと、梨香は「うん」と頷き、穹蒼に力を込めると空を切り裂いて飛んだ。
 目標は、一之瀬凛の式神空船へと向かう。詩歌と光希は竜胆が家の中に開いてくれたGATEで脱出したはず。
 詩歌が戦力として抜けるのは少しキツいが、光希を危険な目にあわせるわけには行かない。
 すると、空船の砲身部分が動き、その照準が自分へと向けられられた。

「くッ……!」

 慌てて軌道を修正すると、砲身から光が照射され、梨香のすぐ横を掠めて浅葱家へと着弾。
 だが、威力は思ったほどではない。家の庭部分がピンポイントで焼かれているだけだった。
 だが──

「あそこは……!」

 そこは、裏山側に掘られている浅葱家の地下室への階段。そして、そこにはコアが保管されている。
 敵の狙いはコア──そう判断した梨香が、まずはコアを守ろうと身を翻すと、
 空船の甲板から黒い誰かが飛び降りた。それは、一瞬空中で静止すると、凄まじい勢いで梨香へと迫る。
 
「な、何?」

 黒のスーツに黒のフルフェイスヘルメットといった変わった格好。そして、雰囲気は禍々しい。
 只者ではないと判断すると、空中で回転しながら風の玉を続けざまに三連射。風の玉はすぐに数十もの矢へと形を変えて、
 黒スーツへと迫る。すると、黒スーツは足元に黒い闇を作り出したかと思うと、ジグザグと直角に移動し、全ての矢を避けた。
 そのまま梨香を通過し、浅葱家へと向かう黒スーツ。だが、その前を赤い光が駆け抜けていき、一瞬動きが止まる。
 梨香と黒スーツが同時に、狙撃位置を割り出し、そちらを向くと一台の車。その屋根の部分には狙撃銃を構えた九我山令の姿。

「あ、令君」

 赤い鬼を模した軽装と仮面を被った令は、更に狙撃銃の引き金を二、三発引くと車から勢いをつけて飛び立つ。
 足元に黒い雲を纏い、一直線にこちらへと迫ってくる令。黒スーツは、どこからとも無く拳銃を取り出し

「…………」

 無慈悲に数発、光の弾丸を放った。だが、令には全て見えているようでライフルで弾をガード。
 そのまま勢い良く黒スーツへと突っ込み、思い切り吹き飛ばすと、

「やぁ、梨香ちゃん。久しぶり、彼氏できた?」

「それが全然……って、今はそんな事話してる場合じゃないでしょ!」

 令と梨香は年が近い為、割かし仲が良い。姉の結婚式で始めて会った時に仲良くなり、
 今でもその交流は続いていた。そして、令はハッとしたように表情を改めると、

「しまった! じゃあ、追いかけようか」

「相変わらずだね」

 二人は再び中を舞い、黒スーツ──神璽に追いつこうとするが、眼前には何時の間にか接近していた空船。
 その甲板に見えるのは、一之瀬の長女、一之瀬凛。そして、三枝家の長女、三枝千里。
 いずれも令と梨香が知った顔ばかり、だが知っているだけで交流はほとんど無い。
 彼女らは十名家の十文字派。そして、どちらかといえば梨香と令は四条派の人間である。

「姉ちゃんのライバルの一之瀬と三枝の長女か……やっぱ、ロクでもないや」

「でも、十名家が何で浅葱を……」

「何にせよ。敵には変わりないからね。行くよ、梨香ちゃん!」

「うん!」

 令と梨香は中を舞って、空船の背後へと向かおうとするが、旋回能力、機動力は空船の方が巨大にも関わらず勝っていた。
 仕方が無いので、空船から発射される砲弾や光線を避けながら、令は弾丸に炎を纏わせ、発砲。
 鼓膜が破けるような激しい発射音と共に、弾丸が空船へと向かうが、一瞬銀色の閃光が走ったかと思うと、炎は消え去った。
 視線の先には、眠たげな顔をした三枝千里。──今、間違いなく弾丸を斬った。
 そう判断すると、令は自分の得意な銃の形を無装に止めさせ、

(太郎くん、暴れていいよ)

(おーっしゃぁァァッ!)

 体の制御を太郎へと渡すと、無装の形が変化し、刃が二メートルを超える大剣へと変化。
 もちろん、これも普通の武器ではない。太郎が提案し、令が特注で作らせた
 オリジナルの剣を無装に吸収させたもの。常人では扱えない代物だが、鬼憑状態の令なら難なく使える。
 そして、令の強化された体の使用許可を得た太郎は、令とは違い、一直線に空船へと向かっていく。
 太郎の空間把握能力と勘の良さは令も認めるほど。あっという間に全ての攻撃を避け、空船まで近づいてしまった。

「おらぁァァッ!」

 大剣に炎が纏わり付き、太郎は空船の外装を殴るようにして切り裂いた。更に、一撃をいれようと剣を振るうも、
 空船の機動力は高い。あっという間に、大剣の射程から離れてしまう。だが、それでいい。
 空船が逃げた先には、梨香が待機させておいた風の矢の大群。それらは全方位から空船を囲むようにして降り注いだ。

「やってくれますわね。流石、あの性悪の弟ですわね」

 その光景を甲板でジッと見ていた凛は、賞賛の意味を込めてそう呟くと、一之瀬家に伝わる【傀儡】の力を発動。
 凛の目が見開かれ、視界に入っている全ての風の矢を認識。そして、それに向かい命令した。

「曲がりなさい」

 凛の目が一瞬、闇色の輝きを放った。それと同時に、梨香の放った風の矢は全て、軌道を変えられ、あらぬ方向へと飛んでいく。
 傀儡の力は、視線に入ったモノ全てに反意思を使い、命令を下せる事ができる。
 ただ、従わせる事が出来るのは中々条件が厳しい。生物でなければ、命令はほぼ確実に出来るのだが。
 生物に命令するとなると、相手も反意思を持っているので、凛の意思以上に命令に抗おうとすれば、傀儡は解けてしまう
 といった強力だが、欠点もやや多い力。だが、凛の意思は強靭。普通の人間ならば簡単に支配下に置かれてしまうほど強力だった。

「さて、反撃と行きますか」

 と、凛が攻勢に転じようとすると、轟音が響き渡り、何か黒い物が空船へと叩き付けられた。
 甲板や装飾を破壊しながらそれは転がると、凛と千里の丁度中間辺りの距離で止まった。
 新調したらしい黒いヘルメットはほぼ半壊、神璽は壊れたヘルメットから素顔を覗かせないように、
 抑えると、すぐにヘルメットを修繕し、自分が飛んできた方向を睨む。
 そこには、空中に悠然と佇み、右手から雷とはまた違う閃光を発する、紫の姿。

「あの女は何ですか……」

「……」

「無視ですか。貴方、本当にそんな方でしたっけ? 私が聞いた榛名神璽は……」

 神璽は、顔を凛の方へと向け、その足元に「黙ってろ」と言わんばかりの一撃を叩き込む。
 当てるつもりが無いことはわかっていた凛は、そのまま冷たい目で神璽を見た後、

「ちゃんと、回収はなさってくださったんでしょうね?」

 神璽は無言で頷くと、紫目掛けて歩こうとする。だが、その足取りはおぼつかない。
 相当なダメージを受けている事は明白だった。凛は「はぁ……」とため息をつくと、

「撤退します。雨龍と万里を回収してください」

 空船に命じて、弾幕を張りながら令と梨香を近づけないように仕向けると、神璽はノロノロと立ち上がり、
 前面に黒い領域を作り、そこから異形の腕を作り出すと、それを地面へと向けて伸ばした。
 数秒の沈黙の後、凄まじい炎が舞い起こり、その腕を足場にしながら、黒龍が昇ってきた。
 背中には少し負傷した感じの万里。やがて、雨龍が悪態をつきながら甲板へと上がると、

「では、さようならの挨拶を」

 神璽と雨龍は空船の背後へと向かうと、追いかけてくる令と紫と梨香目掛けて、雨龍は特大の火球を、
 神璽は、領域から何十発もの反意思を込めた鬼砲を大量に浴びせかけた。
 一瞬の後に爆発。その勢いを利用して、空船は更に加速し、結界内を突き抜けるとそのまま夜の闇へと消えていった。

「令、追いかけるで。下で倒れてた三枝の残党もトラックで逃げてもうたし」

「うん……。じゃあ、梨香ちゃん。僕らは行くから、後始末頼んだよ」

「わかった。ありがとうね、令君。紫さん」

 梨香はそう言うと降下して行き、地面に座り込んでいる陸人の下へと向かっていった。
 紫と令も車へと戻ろうと、中を飛び始めるのだが、紫は令の様子がおかしい事に気づく。

「どうしたん?」

「……いや、少し気になる事が幾つかあってね」

 立て続けに起こる事態に、令の頭はパンク寸前だった。いくら考えてみても、疑問だけが残る。
 何故、何故、何故と。令を苛む様に次々と広がっていく疑問。紫は敢えて声はかけずに、
 黙って令を手を握ると、誘導するようにして車の方まで引っ張って行った。
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