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土日ぐらいしか執筆時間がありませんorz
細々とやっていきます。
第5話:Commence - Hostilities
 修羅紅雪が消えた。だが、再び式神を顕現させると、何時も通りのように出てくる。
 二、三回振って感触を確かめてみるも、いつもと変わらない。
 蒼二も驚いているが、それ以上に光希の方が驚いているようで、言葉も無く座っている。
 そして蒼二は、しばらくの黙考の後、

「光希、今何か感じたか?」

「また漢字が見えたよ! 凄い、何か頭にビリビリが走ったみたい!」

「どんな漢字かわかるか?」

「んとねー。殆ど読めなかったけど、雪と修行の修があったよー」

(俺の式神の名前……? いや、だが名前なんて正式なものじゃない。ただ、思いつきで─)

 しばらく考えてみるが、全くわからない。光希自身がよくわかっていないのだ。
 キーワードは漢字。年と共に漢字を知っていくので、今無理をして探す必要は無いだろう。
 それに、光希はまだ小学生だ。まず戦いに巻き込まれるなんて事は無いはず。

「仕方ねぇか。とりあえず、今日はこのぐらいにしておこうぜ」

「僕、お腹すいちゃったよー」

 そう良いながら、蒼二と光希は遥緋のところまで歩き、帰路へとついた。




 家について、家族全員で朝食をとる事になった。蒼威は朝ビールをついに禁止とされ、
 チビチビと牛乳を飲んでいる。光希にとっては、当たり前の光景だが、
 蒼二と遥緋がこの家に居た時には、当たり前のように朝からビールを飲んでいた為、
 二人は少し驚きを隠せなかった。

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは、今日お仕事?」

「俺は、どっかのアホが提出した報告書を読んで提出しなきゃいけねぇからなぁ……。
 何人かと連絡取らなきゃいけねぇし。一日、家に缶詰だわ」

「私は高校の時の友達と遊びに行くよー」

「……ぶっ殺してぇ」

「ふぅーん」

「悪いな、光希。もっと遊んでやりてぇんだが、馬鹿な妹の所為でよ」

「ごめんね、光っちゃん。お土産いっぱい買ってくるから!」

 二人はすまなそうに光希へと謝るが、当の光希はキョトンとした顔をして、

「僕、梨香姉ちゃんとお買い物行くからいいよ。お兄ちゃんとお姉ちゃんも来るかなーと
 思って誘ってみたけど、用事があるならいいよねー」

「ほぉ、梨香とねぇ……」

「テストで100点取ったらね! ご褒美にゲーム買ってくれるって約束してたの」

「成る程な。……梨香が年下に走ったのかと思ったぜ……」

「梨香ちゃん。あれ以来、彼氏できてないもんね」

 光希は二人がどんな話をしてるのかが、微妙にわからなくなってきた為、一旦席を立って自室へ。
 適当に着替えて、部屋で漫画を読んで時間を潰していると、豪快な車の音が聞こえた。
 聞き間違えるわけが無い。アレは梨香の車のエンジン音だと判断すると、光希は下へと降りる。
 降りた頃には、梨香はもう家の中に入っていたようで慌ててリビングへと向かうと、
 ラフなジーンズにジャケットを羽織った梨香の姿。それを見て、光希は顔を輝かせ、

「梨香姉ちゃん!」

「あ、光希ちゃんだ。100点おめでとぉ〜」

「へへっ。僕、頑張ったんだよ」

「偉い偉い。約束どおり、例のゲーム買ってあげるからね」

「わーい」 

 そう言うと梨香は光希から離れ、蒼二達へと向き直り幾つか耳打ちをした。
 仕事の話なのだろう。自分は邪魔をしてはいけない。わかってはいるが、少し寂しい。
 
「計画は順調ですね。後は資金繰りをちゃんとすれば、おおよそ二年で施設は完成します。
 その間、何をするかはまた会議で議題になるでしょうから、今は保留にしておきますけど、
 やはり、幾つかの組織からは良く思われていないようで、その辺りの鎮圧が
 当面の課題だと浅葱の内部では言われてますね。その辺りも考えておいてください」

「わかった。色々とすまねぇな」

「いえいえ。私は、蒼二さんの理念が良いと思ったからついてきてるだけです。
 浅葱で意見を聞いてみると、やっぱり純血だからですかねぇ……
 共存ってのは少し考え辛いらしいんですけども、賛成派と反対派は半々ぐらいです」

「確かに純血では考えにくいかもな。逆に言えば、俺の理念は混血の傲慢と取られて
 しまうかもしれない。でも、分かり合えると思うんだ。九我山を見てみろ。
 悪鬼と一緒に飯を食い。悪鬼と共に戦う。あれも、俺達の理想の姿の一つなんじゃないかと思う」

「その問題の一番のポイントは個人の意思を持っているのが、上級だけって事だよね」

「そうなんです。上級は希少価値が高く、基本的に表に出てくることが少ないんですよね。
 下級、中級の悪鬼についての理念をどうにかしないと、論破されてしまいますかからね」

「その辺りは色々話し合って、一応答えのような物は出てる。まぁ、これは今度の定例会議でな」

「わかりました。……じゃあ、光希ちゃんちょっと借りてきますね。晩御飯も何処か
 美味しい所連れてってあげたいんですけど、遥さん良いですか?」

「うん、何か悪いわねぇ。ゲーム買ってもらったり、ご飯奢って貰ったり」

「いえいえ。遥さんや蒼二さんには私も色々食べさせてもらいましたから」

「梨香ちゃん……何で私が入ってないの?」

「う……ハ、ハル姉ちゃんのも美味しかったぁ……ような気が」

 無言の重圧をかけてくる遥緋に梨香は後ずさりながら後退してしまう。そう、遥緋の料理
 は激甘料理。変人と言われた夫の四条莉王も流石にギブアップしたという伝説も残っている程。
 だが、家庭を持ってからは大分マシになったようで、激甘料理は自分専用となっていた。

「じゃ、じゃあ行ってきまーす」

 半ば梨香に強奪されるようにして、光希は抱えられるとそのまま車に逃げ込んだ。
 玄関ではいつも優しい姉の笑顔。だが、何故か今は弟の光希でさえ、恐怖を感じる。
 だが、遥緋は光希の視線に気づくと急に表情を緩め、手を振ってきた。
 光希も笑顔で手を振り返すと、その隙を狙ったとばかりに梨香が車を発進させる。

「ふぅ……怖かったぁ」

「何で? お姉ちゃんは優しいよ?」

「光希ちゃんは物凄く可愛がられてるからねぇ。私も結構可愛がられてたんだよ。
 でも、ハル姉ちゃんは怒ると怖い。普段怒らない人だから、本当に怖いんだよ」

「ふぅん。スカートめくったりしたら怒るのかな?」

「うーん。一番効果覿面なのは貧乳だね。おっぱいちっちゃーいって言うの」

「そういえば、一回言ったらゲンコツくらった」

「あはは、でしょ? だから、言っちゃ駄目だよ」

 そんな話をしながら、梨香の運転によって一軒のゲーム屋へと辿り着く。だが、発売日だというのに全て売り切れ。
 仕方が無いので、更に一軒。売り切れ。更に一軒。売り切れが五件ほど続き、昼の休憩を挟んでついに梨香の町まで来てしまった。
 そして、梨香お勧めの穴場の店に行くとついにそのゲームは売っていた。会計を済ますと
 冬なのでそろそろ日が落ちてきた。車に再び戻ろうとすると梨香の携帯に着信が入る。
 しばらく会話しているのを光希はゲームのパッケージを見ながら待っていたが、やがて電話が終わったようで、

「ねぇ、光希ちゃん。今日の晩御飯、私の家で良い? お父さんとお母さんが
 光希ちゃんと会いたいってうるさくてさー」

「いいよ〜。僕、詩歌おばちゃんの料理大好きだし」

「じゃ、決まりね」
 
 梨香は車を走らせて、進路を自分の家へと取る。何気に都会ではあるが、自分の家は
 山の方にあるため、どんどんと森のほうへと向かい、山を切り開いて作られた 
 高級住宅街へ。その住宅街の中でも一番離れた場所にある巨大な家が浅葱家。
 といっても浅葱の本家はここに無く、二年前に浅葱の長老が亡くなった為、
 前の遠い屋敷を取り壊して、現在は蒼二達の家の傍にあるビルが浅葱の本家となっていた。
 車を止めて、梨香に促されるようにして家の中に入ると、

「光希ぃぃィィッ!」

 広い廊下の隅から一目散に駆け出してくる男──浅葱陸人。光希も久しぶりの再会に
 笑顔で「陸人おじちゃーん」と言って駆け出すも、自分の隣を何かが物凄い勢いで駆け抜けた。
 それは、風の塊。塊は陸人のボディに命中するとその体を勢い良く壁に叩きつけた。

「全くもう。光希ちゃんが怪我したらどうするの」

「うう……流石、俺の娘」

「陸人おじちゃん。大丈夫?」

「ああ、おじちゃんは最強だからな! どんな攻撃も効かねぇんだわ!」

「じゃあ、今度うちのお母さんと勝負だね」

「遥ちゃんには勝てねぇよ。少しでも傷つけて見ろ。化け物が約三匹、俺を殺しにきやがる」

「お父さんとー。誠おじちゃんとー。徹おじちゃんだね」

「蒼威程度なら一撃なんだがなぁ。残りの二匹はヤバいんだわ」

「うん! 僕も一回トイレにおじさん達閉じ込めたらねー。二時間ぐらいおっかけられちゃったよ」

「そ、それは、ある意味尊敬するぜ……」

 そんな話をしながら、浅葱家のリビングへと向かう。テーブルには詩歌が作ったであろう
 様々な料理。大半が光希の好きなもので占められており、光希は舌なめずりをして、台所へと向かった。
 
「詩歌おばちゃん。こんばんは」

「こんばんは、光希君。今日はいっぱい食べてってね」

「うん。詩歌おばちゃんのご飯。お母さんのと同じくらい美味しいもん」

「……遥の昔を知ってる私としては微妙な気分だけど、ありがとう。さ、食べましょう」

 そう言い、光希を促して席に着こうとした時だった。不意に光希は式神の気配と、
 よくわからない寒気のようなモノを感じる。その瞬間、突然詩歌が慌てた様に動き出し、
 手先から幾つもの黒い線を出して、テーブルの奥。窓の付近で五角形を形作る。
 ──直後。物凄い振動と轟音。綺麗だったリビングの調度品類が吹き飛ばされるが、
 不思議と詩歌達の居るキッチン付近は隔離されたように何の変化もない。

「お母さん。光希ちゃん守ってね。すぐに応援が来ると思うから」

「うん。断絶解除するから、一瞬で出てね」

「おうよ。しかし、どこの馬鹿だよ……こりゃぁ、ミンチにしてやらなきゃ気がすまねぇな」

「ミンチどころじゃ済まさないわ」

 陸人と梨香は先程までとは別人のような顔で冷たく笑い、詩歌が断った空間から足を踏み出す。
 陸人の腕には赤い手甲。梨香の手には青い弓。それらを構え、一目散に飛び出していった。
 呆然とする光希。何が起きたのかわからない。だが、まだ子供でも時雨や色々な人から
 教育を受けてきた為、泣かない。そんな光希を詩歌は抱きしめると、

「大丈夫だから。すぐに静かになるからね」

「うん。僕、待ってる」

 



 外に出た陸人と梨香。梨香は屋根の上に上がると、携帯を操作しながら敵を探す。
 ──居た。黒服を纏った二十人程の人間。身のこなしが普通と違う。
 隠密専用に訓練されたプロだと理解した梨香は、周囲に風の弓を六つ顕現させ、

「お父さん、見えたね? 行くよ」

「任せな──行っっっっくぜぇぇェェッ!」

 拳を振りかぶる──すると、黒服の集団の傍に、猛烈な爆発。だが、遠いので直撃はしていない。
 梨香にはそれで十分だった。手に風を集めて弦を絞り、六つの風の弓にも同じく意識を集中させて、
 一気に爆発止まぬ場所へと撃ち込んだ。何百にも匹敵する風の矢が敵を射抜かんと迫る。
 そして直撃。短い悲鳴が幾つか響き渡るが、数が少なすぎる。
 その頃には陸人は走って、黒服達に接近しており、余裕の表情で赤い手甲──爆轟を構え、

「テメェら……何処のモンだ?」

 と問うも。当たり前の如く黒服達は何も答えない。黙って陸人まで音も無く走るとナイフを振るう。
 陸人はそんなナイフを軽く避けると、カウンター気味に顔面に一発。
 小爆発が起き、グチャグチャになった顔を抑えながら呻く黒服。更に陸人は、隣に居た黒服に
 上から叩きつける様な一撃。轟音を立ててコンクリートへと黒服の一人が叩きつけられる。
 そこで初めて、黒服達は化け物と対峙している事を理解した。
 所詮純血。だが、目の前に居る化け物は混血の自分達を簡単に静めている。──恐怖が、生まれた。
 
「おいおい。だんまりかよ。んじゃ、終わらすぜ」

 地面に両方の爆轟を叩きつけ、アスファルトを爆砕。それは、細かい弾丸となり一気に黒服達に降り注いだ。
 圧倒的な威力。成す術もなく黒服達は弾丸に体を蹂躙されて、意識を失った。
 だが、陸人の顔は浮かない。少し、苦々しげな顔でしゃがみ込むと、

「あー……ヤベェ。また、地区長さんから怒られちまうよ。後で、遥緋にでも直して貰うか」

 そう呟き、今度は黒服達へ。胸倉を掴みあげて何か身分のわかるものは無いかと探していると、
 服に変わった家紋がついている事に気づく。そして──

「あらら。やっぱりバレちゃったですよ」

 振り向くと、ニット帽をかぶった女が曖昧な笑顔で立っている。その手には、鞘に収められた日本刀。
 陸人はゆっくりと立ち上がって笑顔を返し、

「こんな事してどうなるかわかってンのかよ? 狂乱の一族、三枝さんよォ」

「全て、覚悟の上です。私、三枝家次女──三枝万里は貴方達の敵です」

「俺らと戦うってこたぁ……八神や他の十名家を敵に回すって事でいいんだよな?」

「ええ。構いませんよ」

 その瞬間、陸人は拳を振って足元を爆破させると、その勢いを使って後退した。
 そのすぐ後に、銀色の閃光がさっきまで陸人の顔があった場所を通過。
 流石に冷や汗が伝う。この女は只者ではない、思考を完全にそう切り替えると、

「え……?」

 一目散に陸人は後ろを向いて逃走をはじめた。流石の万里もこれには唖然としたようで、
 慌てて走り出し、陸人を追いかけるも──早い。三枝家の狂乱の力は、身体能力の強化。
 これはまだ、軽くだが。更なる強化もでき、その代償として理性がなくなってしまう。
 それが狂乱と呼ばれる所以。だが、眼前の男はその狂乱を持ってしても、差が一向に縮まらない。
 
「ま、待つですっ! お前、本当にあの有名な浅葱陸人ですか!?」

「うるせー! お前の相手はすぐに用意してやっから、待ってやがれ!」

「……?」

 何を言っているかがわからない。すると、万里と陸人の間の空間に突如何処かで見た事があるコンセプトが出現。
 効果までは思い出せないので、一旦立ち止まると慎重に動きを伺う。
 その中から、出てきたのは自分と同年代であろう黒髪短髪の男。そして男は、一息つき、

「牧島郁人、ただいま参上って感じかな?」

 万里を正面から見据えて、獰猛に笑った。 

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