第55話:総力戦(後編)
鬼塚二郎は、十文字特区を全力で走り回っていた。
先ほどの魔具の力によって、未希と光希の生存は確認した。それにほっとする間もなく、二郎は先へと進む。
とりあえず、情報を共有する為に顔を知っているユニオンの人間を探しているのだが、未だに見つからない。
それどころか、ユニオン側にまで賞金稼ぎと間違えられて攻撃されそうになった事もあった。
「くっそ……!」
珍しく二郎にしては、焦りながら走っていると、境界の艦隊に向けて九本の光が突き刺さるのが見えた。
運命の狐砲だ。過去に戦った時に、あれには散々苦戦した思い出が蘇ってきた。
二郎は狂化し、身体能力を限界まで上げると、ビルの上を飛び越えながら狐砲が発射された地点まで走り出した。
──そして、見つけた。長刀を持った天美運命が最前線で部下を率いて戦っていた。
「変わったな、あいつ」
運命の戦闘スタイルは過去と全く違っていた。昔は凶悪な特攻馬鹿だったが、今は周りの力を借りたスタイルだ。
力の流れが合理的になり、昔のように体力切れをしなくなっている。二郎はそれを見て、微笑を作り、着地した。
ユニオンの何人かが二郎の方を見た。だが、気にせず二郎は運命の傍まで走り、
「おい、運命」
声をかけた。運命は声に反応し、振り返るとまじまじと二郎の顔を見た。
「……す、スルト!?」
「そうだ。詳しくは省くが俺は今──」
「いやああああああああああああ!!! お化け! スルトのお化け! なんまいだー! なんまいだー!」
二郎が続きを話そうとすると、運命は絶叫を上げて手を両手に合わせながら走り出してしまった。
陣形が一気に崩れ、ユニオンの隊員達にも動揺が走る。そして、その隙をついて教会・鏑木が進行を始めた。
「化け物はお互い様だろうが……!」
二郎も追おうとするが、教会側の攻撃が邪魔だ。レーヴァティンの炎を最大まで練り上げ、大地に叩きつける。
荒れ狂う劫火が周囲を蹂躙し、悲鳴と怒号が響き渡る。ユニオン側はぽかんとした顔で、それを見ていた。
すると、運命の足が止まっていた。どうやら、二郎の攻撃によりようやく冷静さを取り戻したようだ。
「スルト、何でここに居るの?」
「話せば長いが、俺は千島光希と十文字未希の護衛だ。あの二人は今、何処に居る?」
「報告によると、二人とも時をかける魔具の中に入ったみたい。運命達は、十文字派の護衛だよ」
「大丈夫なのか?」
「多分。蒼二が先に中に侵入してるはずだし」
「わかった……。では、俺はお前らの援護に回る。幸か不幸か、教会には借りもあるんでな」
「うん!」
運命はそう言うと、阿修羅姫を掲げ、
「皆、助っ人が来てくれたよ。勝利まであと少し。気張ろうよ!」
狐砲をぶちかまして自ら斬り込んで行った。二郎もそれに続く。本当の意味で鬼神の如き強さの二人に
ユニオン側も活気を取り戻して、攻撃を仕掛け始めた。
雨龍やユニオン達と共闘していた三枝千里だが、敵の数が多すぎた。何時の間にか、周囲は全て敵。
敵は数の多さを利用して、力の強いものから少しずつ潰していく魂胆のようだ。
まずは、あの中で一番防御力の低そうな自分が狙われたと、千里は冷静に判断していた。
それでも、余裕は崩さない。気持ちで負けたら、本当に殺されてしまう。迫り来る教会と鏑木を片っ端から
斬っていく。唯一の希望は、距離が近い為に銃撃が無いという事。
「っは!」
気合と共に、乖離のオーラを飛ばす。密集戦には非常に効果があり、数人が一気に倒れるが
そこにすぐさま教会が駆け寄り、回復させてしまう。厄介だ。斬られた側は怒りと共に、再び迫ってくる。
それでも千里は止まらなかった。否、止まれなかった。止まったら、死ぬ。攻撃はそれ程までに苛烈。
「──っ!」
正面から四人の斬撃。狂乱の力を最大限にまで発動し、弾き返すと共に、千里の心がはじけた。
不味い。と思った時には、時既に遅し。心が一瞬で飲み込まれ、殺戮衝動が全身を満たす。
体全体が殺す機能に特化し、千里は更に速度を上げて次々に殺していく。
「がああああああああああっ!」
雄叫びを上げ、斬って、斬って、更に斬る。何時の間にか、千里の周囲には死体と怪我人の山が築かれていた。
それに、千里は笑った。特に楽しくはないが、笑った。狂乱に飲み込まれた為、まともな思考が出来ない。
鏑木が撤退をはじめ、教会が取り残された。一人も逃がす気はない。教会の何人かが鎧を纏うが、気にしない。
「死ね!」
だが、突如として敵の攻撃が苛烈さを増した。拳の一撃を腹にもらい、狂乱で強化された体ですら崩れ落ちるほどの
痛みと衝撃が千里を襲う。猛烈な吐き気と口の中に血の味がした。立てない。苦しい。呼吸ができない。
動かなければ。しかし、体は動いてくれない。
「っか……っは!」
どうにか声を絞り出す。敵の攻撃が自分に向けられたのを、何処か他人事のように千里は見ていた。
死ぬ。きっと、死ぬ。客観的に死が見え、ようやく追いついた心が同時に絶望に染まっていく。だが、
「突っ込め!」
戦況が変わっていた。教会の群れが何かによって斬り開かれている。その答えはすぐにわかった。──剣だ。
無数の剣を構えたユニオンの隊員達が、凄まじい速度で戦況を変えていくのが見えた。その先頭に居るのは、
かつての恋人、南野喜一。小柄だが、周囲を仲間に囲まれながら前線へこようと、休む間もなく剣を振っていた。
脅威に思った教会側が喜一達へと人員を向け始めた、千里はその隙に空中へ大きく跳ぶと、回転しながら幾つもの首を刎ねた。
背後からの攻撃。前方からの物量。指揮系統が段々と崩れ始め、乱戦状態に陥った。そして、ふと背中が触れ合った。
千里が後ろを向くと、相手も後ろを向いていた。同時に、気まずそうな顔になる。
「何よ」
「別に……」
そんな会話をしている内に、敵が再び迫る。二人は自然に互いの死角をカバーしあいながら、敵と切り結んだ。
踊るようにして千里と喜一はステップを踏み、教会と鏑木を斬っていく。それだけで、かつてとは比べ物にならない程
お互いの成長がわかった。それと共に、段々口数も増えていく。
「かなり上達したね。龍一を殺したのも、納得だわ」
「頑張ったからね。血で血を洗うような人生も送ったよ」
「そう……。私としては、平和に暮らしていればいいなと思っていたけど」
「俺も男だからね。プライドってもんがあるんだよ。数年経ってようやく、借りを返せた」
忌まわしき過去がお互いの頭の中に蘇る。あの日までは、楽しそうに何時も二人で笑いあっていた。
元に戻りたい。そんな淡い希望はお互い持っていたが、それを口にする事はできなかった。
──だが、それは今までの話。千里は、未来へ進むことにしたのだ。希が居なくたって、と自分を奮い立たせる。
「喜一君。あの時は、ごめんね」
「いや。俺の方こそ悪かった。絶対、殺してやるって思ってたから、そんな姿を君に見せたくはなかったんだ」
「…………」
「…………」
再び沈黙。千里と喜一の気持ちは一緒だった。だが、その最後の言葉は何となく言いづらかった。
黙ったまま戦闘をこなす事数分。段々お互いがお互いにイラついてきた。先に痺れをきらせたのは千里だった。
「ああもう! 何か言ってよ! 待ってるんだから!」
「いや、君が言いたそうにずっともごもごしてるから俺は待っててあげただけだって!」
「じゃあいいです! 言いたい事は喜一君が言ってください!」
「うわ! ずるい! ……じゃあ言ってやるよ。千里ちゃん。今、付き合ってる男居る?」
「居るわけないでしょ! 喜一君の事あれからずっと忘れられなかったんだから! そのお陰でもう三十路よ!」
「俺だって忘れられなかったよ! でも女の子が次々寄ってきてさ。断ってばかりいたらホモ疑惑ついたんだよ!」
怒鳴りながら、恥ずかしさをどうにか隠して会話していく。顔が沸騰しているように熱い。
そして、お互いの背中に寄りかかりあい、千里と喜一は何処か子供のような顔でお互いの最後の言葉を発した。
「三十路になった責任とって、彼氏に戻るよ」
「うん。ホモ疑惑になった責任とって、彼女に戻るわ」
十文字特区の中心部では最大規模の戦闘が起こっていた。教会・鏑木側は数で圧倒しているにも関わらず、押されていた。
名だたる有名な式神使いがこの場所に集合し、猛烈な勢いで暴れているために、数よりも質が勝っているのだ。
「郁人。ついてこいよ!」
「はい、神璽さん!」
上空の大型艦目掛けて神璽と郁人が飛び上がった。郁人はフラガラッハと共に雷化し、神璽は反意思であらゆる攻撃を
相殺しながら大型艦へと接近。ユニオンの幹部が二人だ。教会と鏑木の攻撃が二人に集中した。神璽は、体中の反意思を
右腕に集中させ、拳形の衝撃波を大型艦へ炸裂させた。その隙に郁人は間近まで接近。
「フラガラッハ・灼」
突撃用の大型剣へと変化したフラガラッハで一気に大型艦を貫いた。それでも郁人の勢いは衰えない。
空中を縦横無尽に駆け回り、何度も大型艦へと突撃し始めたのだ。圧倒的な威力とスピードになす術もなく大型艦は
爆砕して消えてなくなった。地面に落ちていく教会と鏑木は何とか着地し、自分達がユニオンに前方を阻まれている。
後退すれば、本陣のある一番大きな大型艦隊の場所。あの場所を落とされたら、完全に積みだ。
もはや、逃げ道なし。鏑木と教会は一点突破を目指して数の差で脱出をしようとした。目指すは、手薄な場所。
生き残りたい本能から全力で攻撃してくる教会・鏑木側に流石のユニオンも次々と倒れて行く。そして──
「流石、森羅だぜ。お前の予想通りにここにきたな」
「さてはお前占い師だったのか!」
「アホな事言ってねぇで、さっさと終わらせんぞ」
千島蒼威。浅葱陸人。神崎森羅の三人が現れ、次々と敵を蹴散らしていく。陸人が豪腕を振るい、森羅が残りに水で攻撃。
蒼威は大我の形を犬に変えて、次々と襲い掛からせていく。ありえない。その場に居た全員の心が一つになる。
たった三人で何故──と。段々と鏑木の足が止まってきた。教会も一度蒼威達から距離をとる。背後に、大型艦隊が見えたからだ。
教会・鏑木側は陣形を取り直し、攻撃する構えを見せた。すると、陸人が一歩前に出た。
「っしゃああああああああ! 真・必殺技を見せてやるぜ!」
陸人の体から赤い紋様が出現し、その全てが拳へと集中。式神の気配がぐんと上がり、そして──
「あ、やばっ」
陸人の爆轟の形が変わると共に、火花が散り始め、
「──っ!」
いち早く状況を察した蒼威が、大我を巨大な手の形に変え、陸人の体を掴むと思い切り投げ飛ばした。
次の瞬間。陸人は大爆発を起こした。神威を制御できなかったのである。教会側はそれを予想できていなかった。
突然の爆発に動揺が走り、陸人の自爆には慣れていたユニオン側はその虚をついて一気に攻撃を始めた。
そして蒼威は視界の端に、ボロボロになり服についた火を地面を転げまわって鎮火している陸人を発見。
「森羅ぁ。消化頼むわ」
「わかった。本当に、人間爆弾だな、アイツは……」
森羅が外れていくと共に、蒼威は戦闘へと戻った。すると乱戦を潜り抜けて、遥緋が棒を振り回してやってきた。
蒼威が包帯だらけなのに戦闘をしているのを見ると、びっくりしたような声をあげた。
「お父さん! こんな所で何やってるのよ!?」
「うるせー! 引退記念だ。最期に一花咲かせにきたんだよ! お前も娘なら協力しろや!」
「……もぅ、仕方ないなぁ。じゃ、一気に突破するよ」
蒼威と遥緋の両目が同時に濃い緋色に染まった。終式を発動させた二人は一撃で敵を倒しながら戦場の道を切り開く。
やがて、一隻の大型艦が眼前に迫ってきた。攻撃は苛烈さを増すが、遥緋と蒼威は輪廻転生の死滅と、大我の盾を
駆使して、お互いの死角をカバーしている為、大きなダメージはない。蒼威は大我の羽を作って空中へと飛翔。
「引退記念! スーパー俺様ブレード!」
全ての大我が集まり、巨大な剣を作ると蒼威はそれを思い切り振って大型艦を真っ二つにした。
そして遥緋の輪廻転生が残りの破片全てを分解。それを満足そうに見て、蒼威は地面に斜めに刺さった剣の柄に着地。
懐から煙草を取り出し、しばし迷ってから箱ごと握りつぶしてポケットにしまうと、座り込んで眼下を見ながら言った。
「気張れよな。次世代共」
蒼威から少し離れた場所では、回復した空船が鏑木を蹴散らしながら高速で走っていた。目的は、陽動と残党の始末。
凛が操り、律と時雨が防御と攻撃を担当している。律は重槍を振り回し、次々と敵を屠っていく。その余りを時雨が潰していた。
「なんていうか……どちらが男性だかわかりませんね」
「ふむ! 時雨は草食系だからな、仕方ない。よ、夜は肉食系だけどね!」
「はいはい、変なデマ流さない」
すると律。眉を吊り上げ時雨を見た。
「君、SMとか好きじゃないか。寂しいことに要求された事ないけど」
「チキンで変態、と」
凛の言葉に、律はむっとした顔を作った。凛は涼しい顔でそれを受け流して相変わらず空船の操縦をしている。
「時雨はチキンじゃないぞ。勇気に溢れててかっこいい男なんだ。取り消せ」
「はいはい。チキンじゃないですねー」
「ちょっと! 変態は取り消さないの!? ねぇ、むしろそっちの方が重要なんだけど!」
時雨のつっこみをよそに、取っ組み合いを始めた律と凛。空船の操縦と攻撃と防御のバランスが崩れ、空船は大きく回転して
地面に突っ込んだ。どうにか体だけは守った時雨は手すりに掴まってようやく起き上がる。喧嘩していた筈の律と凛は
何時の間にか脱出して、何事もなかったかのように再び攻撃を始めていた。
「時雨、何をやってるんだ! 手をかしてくれ!」
「二人じゃ厳しいんですよ!」
「……はい」
空間を歪めて攻撃をあらぬ方向に曲げながら、時雨は嫁とその友人の後にすごすごと続いた。
その様子を由加とと紡と颯太と莉王は少し離れた場所から見ていた。
「人間、ああはなりたくないものだ」
「あの十名家の女傑二人組は相変わらずタフだね。同じ女として、少し羨ましく感じるよ」
「大丈夫。紡。俺守る。タフじゃなくても平気」
「うわ。颯太が惚気るとか奇跡を見てるみたい」
由加は斧を振りながら驚いた声を上げる。それに紡は微笑を作り、颯太は顔を赤らめてそっぽを向いた。
莉王は相変わらず豪快に笑い、
「はっはは。颯太も大人になったな。幼馴染として純粋に嬉しいぞ」
そう言いながら剣王で周囲一帯をなぎ払った。余裕そうではあるが、体力はそろそろ限界を迎えそうである。
紡や颯太も由加と神璽との激戦で殆ど力を使い果たしてしまっている。軽口を叩いてはいるが、半ば強がりのようなもの。
すると、莉王が遠くに何かを見つけた。しばし黙考した後、ニヤリと笑う。
「俺様達頑張ったからな。そろそろ、若いのに気張ってもらうとしよう」
「ああ。何で彼はこんな時でも何時もの態度で居られるのだろうね。どんな体力だよ」
「確かに、あの余力ありまくりな態度は異常。全く戦闘に集中していない」
「しかもかなり良い位置。あそこからなら、いける!」
令は紫と神憑状態で走っていた。この距離ではレールガンは危険なので、金属バットを持っている。
戦闘自体はキツくない。だが、それよりもずっと紫の態度が厳しい。あの後から、まともに令の顔を見ようとしない。
しかも、目を合わせなければ合わせないでじっと見ているのだ。今は合体しているからいいものの、何も喋らないのが余計に怖い。
後ろを走っている太郎と碧は碧がさっきからずっと太郎に構いっぱなしな為、助け舟にすらなってくれない。
「令。令。聞こえる?」
すると、由加から通信が入った。すぐに返事を返す。
「何ですか?」
「そこ、今一番手薄で人員も少ない。だから、令。単独先行であの一番大きな大型艦を破壊して。私達が陽動して、人減らすから」
「え、ええ!? 僕がですか?」
「この事件は九我山特区から始まったよね。だったら、幕を引くのに相応しいのも令だよ。君なら、出来る。皆信じてる。やってくれるかな?」
由加の言葉を考える。確かに、この事件は九我山特区襲撃事件から始まった。この戦いを経て、令の中は色々変わった。
自分の家に対する思い。姉に対する思い。伝わる力への思い。戦いへの思い。友人への思い。そして、紫への思い。
姉は言った。どんな場所だろうが、どんな立場だろうが。お前はお前の意思を貫きなさい、と。令の意思はただ一つ、決着をつける。全ての過去への。
「わかりました。九我山令。その命令を承りました」
「了解。サポートは任せて」
由加との通信が切れた。それと同時に、令は自分の中に居る紫へと声をかけた。
(紫ちゃん)
(何?)
(そのさ……九我山特区。家に帰ったらさ。話をしようよ。その、色々と)
(ええけど。その前に一言欲しいな。あたし、こう見えてめっちゃ今不安やねん)
(…………あー。その、ぼ、僕のものにな、なれよ!)
一瞬の沈黙。その後、紫の爆笑が起きた。令は顔を真っ赤にしながら動きを止めた。ひとしきり笑うと、紫の笑いも落ち着いた。
背後では突然止まった令を、碧と太郎が怪訝そうな顔で見つめているが気にしない。
(びびりながら言うとは、まだまだ子供やねぇ。……ま、一応合格点や)
(そりゃ、どうも。だから、力を貸して。このままここで死ぬのは嫌だよ。僕今、漫画的には死亡フラグビンビン状態なんだから)
(りょーかい。……じゃあ、行くで!)
紫との同調率がぐんと上がった。神憑の出力があがり、令の周辺で激しい稲妻が踊る。そして、碧と太郎へ向き直った。
「通信は聞いてた?」
「……うん。力、貸すよ」
「当たり前だ」
「じゃあ、碧ちゃんはもう一度僕と神憑。太郎君は、サポートお願い。折角人間になったから、死んじゃ駄目だよ」
「……うん!」
「お、おう!」
碧と手をつなぎ、神憑を発動。再び令の髪は白。体は反意思でコーティングされ、黒く変化した。
同時に太郎も式神を顕現。令も雷と風を迸らせ、一度しゃがむと全力で大地を蹴って、空中へと飛んだ。
猛然と、指定された教会側の集団へ。敵が気がつき、攻撃をしてくるが碧の風に全て阻まれ、残りは太郎の炎が撃ち落した。
無装をロッドの形に変化させ、威光、雷、風を付加させ、振り回す。嵐のように周囲一帯を蹂躙するが、何人かが範囲から逃げた。
空中へと飛び、全員が砲撃型の式神を顕現させ、令を狙う。だが──
「そこっ!」
「はぁぁぁっ!」
光の糸と風の矢によって、全員が撃ち落された。見ると、梨香と見た事の無い男が攻撃したようだった。
「令君。援護は任せて!」
「ああ! ありがとう!」(戦場で新彼氏? 梨香ちゃんやっぱスゲー! 流石肉食系!)
そう言い放ち、令は更に加速。由加達の陽動が功を奏したのか、敵の本拠地である大型艦へと至る道を一気に飛ぶ。
背後からの攻撃には全て太郎が対応してくれているが、子供の体になった太郎はどこか辛そうであった。
「太郎君。離脱して。後は僕で何とかする!」
「だ、だけどよ!」
「今は、太郎君の方が年下なんだよ。今度は、僕が守る番だ。太郎君が、ずっとそうしてくれたように!」
「令……。すまねぇ。体が厳しい。落ちる!」
「うん!」
太郎が無事離脱したのを確認すると、令は速度を上げた。本拠地まではもう目と鼻の先だ。すると、令の接近に気がついたのか。
大型艦が空中に浮かび始めた。他の大型艦も大きかったが、これは更に大きい。だが、それ故に狙いやすかった。
打出ノ拳を顕現させて、全力で殴る。だが、硬い。船体が少し傾いた程度に終わってしまう。それと共に、大型艦の苛烈な攻撃が
始まった。もはや、防御はない。令一人に全ての攻撃を集中させていた。流石に厳しい。
高速で移動するも、圧倒的な物量が相手では長くはもたない。短期決戦と行きたいが、敵は硬い。その時だった──
「令!」
令の周囲を黒い無数の装甲が囲った。千冬の玄武甲だ。出来た防御空間に千春。千夏。千秋もそれぞれの式神に乗って現れた。
「苦戦してるようじゃない。手伝うわ」
「借りは返すよー!」
「僕等天才だからね。さっきの滅茶苦茶な合体から、ヒントを得て、三人で狙撃兵器となり合体形態を思いついたんだ」
「お前達……!」
千春の青竜が剣の形に変化し、その刀身を真っ二つに割った。その隙間に朱雀砲が入り込み、合体。
白虎爪は格部分に分かれ、砲身の固定器具となる。令はその上に着地し、紫の威光を発動。更に無装を顕現させ、
レールガンの形に変えた。朱雀砲からケーブルが延びてきてレールガンへと合体すると、レールガンを無効化し、
トリガーと発射を連動させた。全てのエネルギーを朱雀砲へと集中。そして、守っていた千冬が悲鳴のような声をあげた。
「後十秒が限界!」
「了解! 令、引き金を引くのはお前だぜ」
「ああ。わかってる!」
きっかり十秒後。玄武甲が弾け飛んで、再び夕日が流れ込んできた。令は照準を大型艦に定め、
「良い夕日だ」
トリガーを引く。何倍にも増幅されたエネルギーが渦を巻いて大型艦へと直撃した。流石の硬い装甲でも、防げなかったようで
エネルギーは大型艦を一瞬で消滅させた。これで、今回の令の戦いは終わった。下から喝采が上がっているが、令は闇色の
光に覆われている十文字本家を見つめ、
「後は期待してますよ。千島蒼二さん」
そう言うと体力の限界を迎え、前に倒れた。
緋色の眼シリーズキャラ投票
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