突然の投稿すいません。
事情はブログの方を見て頂けるとわかると思います。
後、
小説トップページからアンケートページへ飛べるようにしました。
五分以内に終わるようなアンケートなので、
皆さんよろしかったらご協力お願い致します。
第45話:全てを終わらせるために──
鬼塚二郎は、かれこれ二時間ほど車の運転に集中していた。鬼塚家から十文字特区は未希から住所を聞くに
そこまで遠くはない。日帰りできるぐらいの距離だった。未希はひたすら青い顔で恐縮し、黙っている。
無理もない。と二郎は若干の不安を覚えた。──お母さんに会いたかった。もう、そんな優しい願いじゃすまない
限界まで状況は悪くなってしまっている。光希に電話を借りたが、蒼二と遥緋どちらにも連絡がつかなかった。
兎に角急ぐしかない、と少し苛立ちながら運転していると、
「二郎さん……」
「ん? どうしたんだい?」
努めて明るく優しい声で話しているとは思うが、未希にそれを感じられる余裕があるかどうかが問題。
「ユニオンっていう人たちと……お父さん達がぶつかるって結果的にどういう事になっちゃうんですか?」
未希の目は真剣だった。下手に隠してもいずれはわかってしまう。だが、真実は重い。
暫く返答に迷う二郎だったが、
「君にとっては重い答えだけど、それでもいいかな?」
と前置きを一つおいた。対する未希の返事は強く頷く。それだけ。目を見てみると、ある種の覚悟が感じられた。
仕方がない、と二郎はため息をつき、未希の望む答えを自分なりに示していく。
「ユニオンというのは正直、俺も二郎の記憶でしか知らないんだけど。十名家の八神派が中心になって
作られた組織なんだ。四条、五月、七海、八神、九我山だったかな。それに、千島、浅葱が加わり、戦力的には
俺の主観だが、数の点から見て若干ユニオンの方が優勢だとは思うね。ただ、向こうには最強の十文字戒がいるんだよ。
その二つがぶつかるって事は、もう日本が真っ二つと同じ。五行はその辺りの抗争に全く興味がないしね」
「やっぱり……」
「だから、止めなくちゃね」
「はい……やっぱり、神様って全部見てますね。ずるい事をして、お母さんに伝えようとしたから
私に罰を与えてるんだ……。魔具は、何だってしていい力じゃないって。皆があんなに教えてくれたのに……
お父さんだって、悪い人じゃないのに。ちょっと馬鹿だけど、私にとっては凄く良いお父さんなのに……」
二郎の知っている十文字は酷いものだった。戦闘マシーンとでも言うのだろうか、鬼神から見ても
異質だと思うほどの家だと思っていたが、どうやら今の十文字は違うらしい。未希を見ているだけで良くわかる。
異質な家ではこんな真っ直ぐな、人の為に泣ける子等まず育たない。それに少し笑みが浮かぶ。
本当の悪人ではないのだ。これなら、どうにか対話が上手く行くかもしれないと少しだが、気持ちが軽くなった。
その時、
「あれ……?」
「何ですか、この音?」
座席後方で、何かが震えるような音が聞こえる。未希が訝しげに思い、後ろを振り向くと
「もしかして、光希……?」
と声を上げた。そして、後部座席の後ろの部分から「あはー」と千島光希が、後頭部に手を当てて現れた。
しかも、その手には現在も振動している携帯電話が握られていた。まず、二郎はこれに驚いた。
光希の気配はこれまで全く感じなかった。乗ってる事さえ気づかなかった。鬼神である自分が。
「ご、ごめんなさい二郎兄ちゃん。僕、どうしてもついていきたくて。そ、それに今、お兄ちゃんから電話あったよ」
「む……」
蒼二と連絡を取るのは、重要な事項の一つだ。もうそろそろ、十文字特区だ。先に電話しておくのもいいだろう。
二郎はジェスチャーで光希に電話を取るのを促すと、光希は嬉しそうに頷き、電話を取った。
「あ、お兄ちゃん? 久しぶり。 ……んー? 何言ってるのか聞こえないよー? 後ろで何かうるさいよー?」
暫く電話していたが、背後が煩く全く聞こえなかったらしい。渋々と一度会話を切って、光希は二郎に
会話の内容を報告。
「何か全然聞こえなかった。お兄ちゃん、ガサゴソ音をしてハァハァ息遣い荒いし、何してるんだろう……?」
「み、光希のお兄さんって大丈夫なの……?」
未希が何故か顔を赤くして、苦悩したように頭を振っている。大体、どんな事を想像しているのかはわかる。
流石にこのまま誤解させておくのは可哀想なので、二郎は未希の方を向き、
「未希ちゃん、安心して。光希の兄はそのようなキャラじゃない。九年前から変わってなければね──」
「そうだよ、未希ちゃん。僕のお兄ちゃんは目つきが凄い悪いけど、優しくて良いお兄ちゃんなんだからね!」
そのようなやり取りに、ようやく未希の緊張が解けたようで、笑いが漏れてきた。ただただ光希の感謝するばかりだ。
電話が繋がらないのは仕方がないので、そのまま二郎は光希を乗せたまま十文字特区に向かう事にした。
もし、戦闘になってもこの二人ぐらいなら守って撤退もできる。とまで考えて、二郎は一つ光希に言い忘れていた事に気がつく。
「ああ、光希。一つだけ言い忘れていた事があったんだ」
「んー、何?」
「君の式神を次に召喚する時は、本当に危険だと思った時、もしくは君が本気で怒った時だけだ。
それ以外の時に安易に呼び出さないほうがいい、幸か不幸か、君の式神の力はとても危険なんだ」
「僕の式神って……何の能力もないって、お父さんに笑われるようなのなんだけどなぁ……」
「それは、前までの話だよ。兎に角、約束してくれ。わかったね?」
「はーい!」
二郎がそう言うと、光希は笑って手を上げた。今は笑っているが、次に召喚した時、きっと光希は笑えないだろう。
そんな未来が簡単に予想できる。母親が、本当に光希と同じような力を持っていて良かったと思う。
知らなかったら、下手したら自分まで巻き込まれていた。だが、光希なら大丈夫だろうという確信も何処かにあった。
そんな事を考えていると、未希が「あっ……検問」という声を上げた。それと同時に、二郎の顔が曇る。
「っ! これは……っ」
どうみても相手は堅気ではない。すなわち、これは結界に近づかせない為のユニオンか十名家のどちらかが
張った検問だ。このままでは、間違いなく追い返される。──力ずくで、通り抜けるしかない。と、二郎が
ゆっくりと車を停車させ、降りようとすると、
「と、止まれ! 止まりなさぁぁぁい!」
後方から凄まじいスピードで二人乗りの赤いバイクが速度を落とす事なく突っ込んできた。
前に乗っているのが、男。後ろに乗っているのが不自然な事に、上品な格好をした女の子だった。
ヘルメットをかぶっているので顔はわからない。だが、次の瞬間女の方から式神の気配が膨れ上がった。
「お退きなさい」
容赦のない、凛とした声の後に衝撃。次の瞬間には検問が粉々に砕け散り、男達が白目を剥いて
空中に吹き飛んでいる光景が見え、最後には強く地面に叩きつけられた。
「滅茶苦茶だな……」
車の中では未希と光希が興奮したように騒いでいる。それを視線で嗜め、二郎は再び車を発進させた。
先程の二人組は相当暴れまわっているらしく、道の端には倒れた人間や建物の残骸が多く散らばっていた。
それらを器用に避けながら暫く進んでいくと、開けた場所に出た。眼下には、それなりに大きな街も見えた。
「あ……ここです。ここが、十文字特区です」
住宅街が非常に多い、だがビル何かも幾つか見える。現在は平穏そのものな風景が見えるが、
よくよく目を凝らすと、偶に歪みのようなものが見える。結界の耐え切れない部分だ。
「多分。戦闘はもう始まっている。──危険だから、このまま十文字の本家まで突っ込むよ」
「えっ? は、はい」
「……うん」
二郎はアクセルを踏み、更にスピードを上げ一気に結界の中へと進入した。全員が式神使いで良かった。
特に結界の影響も無く、二郎は一度車を止め、外に出た。未希と光希もそれにつられて、同じく外に出る。
「そんな……」
十文字特区では激しい戦闘が行われていた。轟音や悲鳴が鳴り響き、爆発もそこらで起きている。
二郎にはそれがとても懐かしかった。かつて、常に戦場に身を置いて頃の感覚が段々蘇ってきた。
ゆっくりと息を吐き、レヴァティーンを顕現させ、光希と未希を背後にやると、
「気をつけてください。油断すれば、簡単に死にますから」
死ぬ──と言われ、未希は顔を青くし。光希はその辺りの事は既に教わっていたのか、真面目な顔で
周囲を伺っている。どうやら、戦場に来るのは初めてではないようだ。まだ、こんな子供なのに──。
と思うも、今は頼もしい。先程の気配を消す技巧といい中々の才能も持っているようだった。
そして二郎は再び口を開き、
「では、行きましょうか。全てを、終わらせる為に──」
と言うと二人を連れて走り出した。
海山天音は、燃え尽きる寸前の命を何の感情を浮かべることなく、冷静に観察していた。
眼下には出血が止まっていない、意識もない上司の姿がある。そして、表には出さないが、天音の心の中は揺れていた。
助けるべきか、否か。千島蒼威は自分の上司だ。偶にウザったいが、嫌っては居ない。だが──
「剣菱お兄ちゃんの、復讐の相手だよね……」
自分の命の恩人であり、初恋の相手が、何時か殺すと決めていた人間。あの優しい剣菱が、一番憎んでいた相手の一人。
二階堂特区のテロ事件の後、天音は何とか生還を遂げ、退院した頃には全てが終わっていた。
村雨達は二階堂特区から去っており、重大犯罪者集団、死罪六神となってしまっていたのだ。それがとても、寂しかった。
天音の父はテロによって死亡。母は居ない。唯一の肉親は兄のみ。その兄も、天音を食べさせる為に
働きすぎて何時しか体を壊してしまった。そして、天音は生きてまた再会する為に、治安が安定した二階堂特区の
治安維持部隊へと入った。体制が変わった二階堂特区は中々にやりやすく、前よりは良い街になりつつあり、
偶にだが、仲の良かった剣菱、暁、ナナシ、村雨の誰かが訪ねてくれるようにもなった。
だが、最初に村雨が現れなくなった。それについて聞くと、剣菱達は話題を無理矢理逸らそうとする。そして次に、
暁とナナシが現れなくなった。もはや、訪ねてきてくれるのは剣菱だけ。天音もその頃には成長していたので、
三人が死んでしまったという事だけが漠然とわかり、同時に病気がちだった兄もついに亡くなってしまった。
そして、神代戦争の後に剣菱も姿を現さなくなり──ついに、天音は独りになった。
(そう……)
誰も心を許せる人が居ない。それは、天音の式神の原因の一つだった。天音の式神の力は、天音に心を許した
人間の式神をカード化し、天音の力としてしまう力。二階堂特区に長く居た所為か、周囲にそれは知れ渡り、
村雨、暁、剣菱、ナナシの式神を使える天音は腫れ物のように扱われ、だが、他に行く所もなく、天音は
ずっと二階堂特区の片隅で鍛錬だけを積んで生きていた。それが変わったのは数年前だろうか、
「こんちわー! ユニオンからきました、牧島竜胆でっす!」
ユニオンという名前は天音も知っていた。神々の黄昏事件を解決した千島蒼二と十名家の八神派を
筆頭にした組織だ。牧島竜胆は、それの人材スカウトの為にわざわざ天音を訪ねてきたという。
久しぶりに人と話せるのは嬉しかった。だが、それでも適当に扱った。もう、人の式神をコピーしたくない。
嫌われるのは嫌だ。仲良くなった人が居なくなるのはもう嫌だった。だからまず、自身の式神について話すと、
「ん〜……平気じゃない? アタシさ。式神使えないもん。ってゆーか! アタシ、牧島郁人の式神なんだよねぇ」
「……は?」
「だーかーらぁ。アタシは、式神なの。するってーとぉ、天音ちゃんはアタシと仲良くなっても平気なのさぁ」
本当に式神らしかった。証拠もいきなり紋様の中から郁人を引っ張り出して説明も始めた。
そして、竜胆と本当に仲良くなっても式神はコピーされない。逆に郁人とは距離を置いたが、久しぶりに楽しい。
千島、八神という名が引っかかったが、生活が危うかったのでそこは我慢する事にし、
天音はそのままユニオンへと入り、こうして今、千島蒼威の下についているというわけであった。
人間関係は上手くいっていない。竜胆を除けば、仲が良いのは数人程度。この世界に生きる身として、式神
をコピーされるというのは自分の弱点を晒すようなものだ。だから、天音も竜胆以外とは距離を保っている
だが、千島蒼威だけは違う。ウザったいぐらい絡んでくるのだ。地味にムカつく事に、下心とか全く無しで。
「……っ」
だから、天音は迷っている。剣菱の敵である蒼威を代わりに殺すか。それとも、馬鹿だが面倒見の
良い上司を救うべきか、と。迷ってていいのは、後数十秒程度。蒼威の出血は酷く、危険な状態だ。
やがて、天音は目を瞑りしばしの黙考。十秒ほど考えた所で、ついに決意を秘めた目を開き、
「八神村雨、紅椿」
と口にし、蒼威の胸の傷口に刃を突き立てた。あの日、この式神の持ち主がそうしてくれたように──
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