次回はファーストだと思います。
投稿時期はまたも未定!
第40話:千島蒼二が此処に宣言する
竜胆が幾つも張ったGateのコンセプトの中から次々とユニオンの人間達が、十文字特区の入り口付近に降り立つ。
最初に出たのは観測、諜報に長けた式神使い達。それを様々な機材とあわせ、十文字特区の状況を
事細かに記載し、データを転送して幹部達の下へとそれは届けられた。物を作り出すのに長けた式神使いが
作った簡易型の本部では人が慌ただしく動き回り、口論や報告の音が周囲に溢れている。
そして、ユニオンの上役達は見晴らしの良い場所に何人かで陣取り、次々と運ばれてくるデータを見ながら、戦術を
決めていた。その中心にいるのが、蒼二。先ほどから、携帯電話を三つ。報告用の魔具を二つぶら下げて、次々と
指示を飛ばしていた。
「ああ、そうだ。四番隊は、東側。七番隊は西側。悪鬼の駆逐はそれぞれの戦闘班で、やってくれ。
あ、おい、由加。その機械に触るなよ。お前すぐ機械類壊すから。……ああ、すまん。九番隊の
ボスはあいつか……あー……とりあえず、後で人を送るから。副長、君が指揮を頼む」
「蒼二さん。榛名さんが、奏さんにセクハラして血みどろです!」
「あのバカ……由加、頼むわ。後、柏原。とりあえず、全般的な形は決まったから、隊長格を全員呼んでくれ。
あー……陸人のおっさんは負傷か。森羅さんもわき腹やられってし。あの二人はいいや。
詩歌さんと未来さんに状況だけ後でメールで送っといてくれ。つか、おい莉王! 遥緋! イチャついてねーで、さっさと来い!」
次々と声を飛ばして指示をしていく。勿論、蒼二だけではない。郁人と竜胆も各地で人を集めているし、
運命は分身を飛ばして、十文字特区の悪鬼達の分布図を索敵班と一緒に作っている。由加と神璽は何時も通り。
そして、各所に居た隊長格、といってもほぼ顔見知りばかりの面々がぞろぞろと集まってくるのが見えた。
奥の方には案の定ケロッとしている神璽と怒っている由加の姿も見えた。ざっと見渡す限り、全員居そうだ。と判断し、
蒼二は、落ち着いて頭の中では更に考えを巡らせながら、喋りだす。
「とりあえず、神璽が最初だけ働いた結果から察するに、十文字本家に攻め入るには、あの三つの塔を破壊
しなきゃならん。しかもその前には、強化され、統率も取れる人型悪鬼の大群だ。笑っちまうほど敵は強大だな。
ま、くよくよ言ってても始まらん。索敵班の報告によると、右の塔には七海遠音。左には六道紡。んで、あれ
ちょっと前の方にある塔には一之瀬凛だ。この三つには、とりあえず対抗できる人間が居る隊をぶつけて行こう」
そこで一旦区切り、蒼二は由加と神璽を見た。
「六道紡はお前達二人で何とかできるか?」
蒼二に言われ、由加は強く頷き、神璽は何時ものようにへらへら笑うと、
「ああ、つーちゃんとタメ張れるのって俺らぐらいだしな」
「うん。私達に任せて!」
そう応えた。それに満足したように蒼二は唇を歪める。そして、次に郁人と竜胆を見ると、
「七海遠音は郁人、竜胆。お前達二人に頼んでいいか?」
そう、若干心配そうな声で問うが、郁人は冷静に頷き、竜胆も気合が入った笑みを浮かべ、
「ええ。俺と、竜胆で今度こそ勝ちます」
「そうゆーことっすぅ!」
どうやら懸念していた程、傷ついてはいないらしい。そう判断し、更に蒼二は言葉を続ける。
「一之瀬凛の空船は数が多い。後、あそこは前進するのに必要なポジションだ。でかい戦力をぶつける。
律、時雨、梨香、狂、奏。で行こうと思う。後、あの空中プラントには、竜胆のGateをもう設置したから、
遥緋と莉王で一気に壊滅してくれ。状況から察するに、あそこで悪鬼を生産してるっぽいしな。
俺と運命は、三つの塔が壊されるまで本部の守りと状況判断に専念したい。それでいいかな?」
誰からも否定の声は出ない。とりあえず、間違った戦略とは誰も思っていなさそうだ。と、蒼二は安堵した。
だが、その余韻を楽しんでいる暇は無い。状況は段々と悪くなっている。タイムリミットは、時を越える魔具
が作られてしまうまでの時間だ。ぐずぐずしている暇は無いので、蒼二は最初の指示を出す。
「よし、まずは前進だ。先頭は、遥緋、由加、神璽。この前言っていた、アレをブチかましてやれ。
あの辺りの悪鬼を排除したら、今説明したように格隊に別れて、それぞれの仕事をこなしてほしい。
死ぬな。とは言わない。だが、無駄死にだけはするな。何かあったら、すぐに本部に連絡を寄越してくれ。
こちらも出来る限りの事はする。だから──」
とまで言いかけた時、隊員の一人が蒼二達の方へと息を切らせて走ってきた。
「う、ウチの隊の海山から今報告が入ったのですが、蒼威さんが十文字戒と交戦し、瀕死の重傷だそうです!
し、しかも魔具の力によって、今あの二人は十文字本家のすぐ傍に居ると……」
誰もが言葉を失った。あの千島蒼威が瀕死の重傷。信じられないといったような顔で誰もが言葉を出せない。
遥緋は顔面蒼白になり、蒼二を見る。──心の動揺は、ほんの数秒。ユニオンの長として、蒼二は言葉を紡ぎだした。
「報告、ありがとう。こっちで後々策を練るから、一度下がってくれ。また、指示を出す」
そう、言い放つ。隊員はそれ以上何も言えず、一礼すると自分の居るべき場所へと走っていった。
重苦しい沈黙が一瞬生まれ、それを破ったのは神璽だった。
「おい、蒼二! 後々ってどういう事だよ。蒼威さん瀕死なんだろっ!? だったら今すぐ──」
とまで言いかけて、神璽は気がついた。これは、個人の感情であると。蒼威とは付き合いが長い。
それ故に、大事だと思っている。だが、今の自分の立場は──とまで思考が回ったのだ。
蒼二もそれに気づいたようで、声低く、淡々と喋り始めた。
「そう──だが、俺はユニオンの長だ。部下に対する責任がある。ここで、俺の感情を優先させてみろ。
何人死ぬと思う! 俺は、たった一人の為に、自分の感情で! あんな悪鬼まみれの場所に突っ込めと
命令する事になるんだ。そんな事は、出来ない」
それが、ユニオンの長としての蒼二の責任。蒼二は、蒼威の事が嫌いではない。父親としても人間としても
尊敬している部分は秘密だが、多々ある。それでも、蒼二は蒼威を優先することは出来ないのだ。
蒼威を助けに行こうとすれば、沢山の犠牲者が出てしまう。命は平等だ。そんな命令出せるわけが無い。
その場にいた全員がそれを理解した。だが、諦めたわけではない。そして、遥緋が口を開き、
「じゃあ、私が最初に前進したらそのまま救出に向かうのはどうかな?」
「あの空中のプラントはどうする。遥緋と莉王の隊は、数は少ないがユニオンでも一番制圧、破壊に向いている隊だ。
お前達二人の能力を考えてみてもな。しかも、報告によるとあそこには十文字の四つ子が居る。
並大抵の式神使いじゃ返り討ちだ。だからこそ、お前達二人に行ってもらうしかないんだ」
「じゃ、じゃあ……」
と問答は続く。全員で、どうにか人員を避けないかの議論が始まった。だが、浮かばない。
何処も強大な敵が相手だ。下手したら、そこから崩れてしまう。だから、中々いい案が出てこない。
暫く問答が続いていると、やがて、一つの手が上がった。その手を上げていたのは、九我山令だ。
「あの……僕、紫ちゃん、碧ちゃん、太郎くんの四人であのプラントに行くのって、駄目ですか?」
「……悪くは無いが、その四人じゃ不安が残るのも事実だしな」
「僕、あの四つ子とは昔から良く遊んだんです。だから、あいつらの式神の特徴も良く知ってます。
でも、莉王さんや遥緋さんは、どんな能力か、どんな式神かもわからないでしょう?
だったら、僕らに行かせてください。そうすれば、遥緋さんも蒼威さんの救出にいけると思うんですけど」
そう言う令だが、蒼二はまだ不安そうだ。令の実力は手合わせしたことがあるので、わかっている。
その時は本気ではなかったという事も──だが、まだ若いという点や、個人の式神の強さ等の
不安要素があるのも事実。しかし、メリットも大きい。四つ子の式神については何もわかっていない。
でも、令は知っている。しかも、空も飛べるのだ。廃案にするには惜しい──とも考えていると、
「蒼二、私からも推薦したい」
そう、律が声を上げた。近くに居た莉王もうんと頷いた。それでも、
「だがなぁ……」
とまだ迷ってしまう。すると、律は眉を吊り上げて蒼二を睨み、
「蒼二、あまりウチの弟をナめるなよ。こんなチャラチャラしたナリだが、物心ついた時から、
何処へ出しても恥ずかしくないように、それなりに厳しく育てたつもりだ。実力だってあるし、
神璽に預けたのがいけなかったのか、ゴキブリのように中々殺そうとしても死なないしな──」
「ちょ! さりげなく俺の指導否定!?」
神璽の言葉を黙殺し、その後綺麗な笑顔を律は作ると、
「何より──この私の弟だぞ? 莉王と遥緋のような変人夫妻より、ずっと信頼できるはずだ」
「いやぁ……莉王さんと結婚した所為で、私まで変人カテゴリに入れられてるぅ……」
「は、遥緋っ!?」
そんな問答が続くと、笑いが起きた。蒼二も失笑を堪えられないようだった。
顔を上げて、令を正面から見据えると、
「じゃあ、令。頼んでいいか。そこに居る、紫、碧、太郎も、よろしく頼む」
紫たちも蒼二の言葉に力強く頷き、そして、会議が終わった。それぞれがそれぞれの場所に散らばり、
装備や準備を整え始めていく。幹部達は忙しそうに、連絡を入れ、隊長格達もその指示に応えていた。
──本当に、十文字派とユニオンの抗争が始まろうとしている。そんな光景を見ていて、令の足が若干震えるも、
すぐに自分で自分の足を殴って震えを止めようとするが、上手くいかない。すると、肩が叩かれ、後ろを向くと
真面目な顔の律が立っていた。先ほどまでとは違い、真剣な表情だ。それに釣られ、令も表情を引き締める。
「──進めるようには、なったのかな?」
「……少しだけど。多分、これからずっと進むために、僕は行こうとしてるんだと思う」
それが、令の結論。この戦いの果てに、何かがある気がするのだ。どちらが悪いともいえない、この抗争。
考えさせられる戦いがあった。考えさせられる出会いがあった。そこから、進むためにこの戦いを往く。
相手は小さい頃に良く遊んだ友達。四つ子という世界の中に、一時期だが令は居たのだ。
気持ちはわかるが、令だって彼等の起こそうとしていることは気に入らない。変えたい過去──それは、
令にだってある。だけど、変えられない。それでも見つけた事が一つ。それで、終わりではなく、その先もあるという事。
「お姉ちゃんに、ずっと聞きたかった事があるんだけど、聞いていいかな?」
「何かな?」
「お姉ちゃん。僕が子供の頃、僕の事嫌っていたでしょ?」
律はその言葉に少し驚いたようだった。後ろに居る太郎や紫も驚いたような顔をしている。
当たり前だ。律と令の関係を二人はずっと見ていたのだ。律が高校に行っていた少しの時代に
離れては居たものの、帰省してくれば普通に接していたようにも見える。だが、令は知っている。
律が、自分に嫉妬していた事を。律は厳しく育てられ、好き勝手できなかったのに、令は甘やかされ放題。
単純に考えて嫌うだろう。無邪気に笑って、楽しそうに紫と太郎と遊んでいる令を疎ましいと思っていただろう。
そして、暫く見詰め合う二人。やがて、観念したように、律は首を振り、
「知ってたか。うん……それは、真実だよ。お姉ちゃんは、お前の事を確かに嫌っていた。
それでも、幾つか幸せな事もあった。それも事実。結果的に、お姉ちゃんはお前の事が、今は嫌いじゃないしね」
「だから、僕の事を苛めたり殴ったりしなかったんだね」
「ああ。──軽蔑したかい?」
そう、律は問う。その表情は無表情で、感情は読み取れない。令も、同じように無表情だったが、
やがて顔を崩し、何時もの笑顔を作ると、
「ううん。僕は、お姉ちゃんの事を尊敬してる。僕が、お姉ちゃんの立場だったら、こうも上手くは
いかないだろうしね。それに、僕はこれでまた一歩進める気がするんだ」
令が一番変えたい過去。それは、自分自身の生まれ。何故、男の子として生まれてきたのだろう。
何故、神憑の力があるのだろう。それが──律から全て奪ってしまったというのに。
そう思っていた。だが、律は言ってくれた。幸せな事もあったと、嫌いでないと、だから、自分は男で、神憑でいいのだ。
自分が全てを奪った姉がそう言ってくれたのだ。もう、迷うことは無い。
「ありがとう──じゃあ、行って来る」
「ああ、幸運を祈る」
そう言うと、令は歩いていってしまった。紫と太郎と碧も追いかけて行きたいが、何となく近寄りがたい。
律にも令にも。姉弟の問題を目の当たりにしてしまっては、かける言葉が無い。
だが、悪い終わりかたではない。むしろ、いい終わり方だ。これで、二人のあいだの最後の蟠りが消えた。
すると、律は紫と太郎と碧の前まで歩き、顔を見せないようにして三人を一気に抱きしめると、
「今から話す事は、アイツに内緒だ。いいな?」
と低い声で口にした。紫と太郎は恐怖から慌てて頷き、碧は普通に頷く。
「羨ましかったんだ──私になくて、あの子にはある神憑の力がね。何度願ったか、あの力が自分にあれば──と。
だが、今はこう思うよ。あの子が、神憑の持ち主で良かったと。私が持っていたら、確実に歪んでいた。
でも、令は歪んでないよな。姉と家族思いのとても良い子に育ってくれた。この辺りは、太郎と紫に、特に感謝している」
「律姉ぇ……」
「や、ウチらはただテキトーに遊んでただけで……」
と、律の言葉に何処か恥ずかしそうに言葉を紡ぐ太郎と紫だが、
「……太郎ちゃん。紫。謙遜しない。律お姉さんは感謝してるんだから」
碧のその言葉に、黙ってしまう。そして、律は抱きしめた三人の背中を強く叩き、体を離す。
そのまま、呆然としている三人を、何処か濡れたような瞳で見つめると、
「──あの子を、守ってやってくれ。少し頼りない部分もあるが、あの子が、神憑を持っているのも、
お前達と一緒に居るのにも、絶対何か意味があると思うんだ。だから、頼むぞ。──我が弟と、妹達よ!」
律はそう言うと、背を向けて太郎達の下から立ち去った。そして、後に残された太郎達に様々な感情が渦巻く。
悪鬼と鬼神。人間の敵。ずっと、それが自然だと思っていた。九我山家と出会うまでは──。
変わった家だと思う。敵である悪鬼と鬼神に、弟を守ってくれと頼むのだから。だが、それでも嬉しかった。心が震えるほどに。
「ふ、ふん。律ねーさんに、ああまで言われてもうたら、絶対死守やで! お前等、わかっとるやろな?」
「たりめーだよ。それが、俺の此処に居る意味だ」
「……うん。私も、令君と律お姉さん大好きだから、絶対死なせない」
鬼神と悪鬼に迷いは無い。後はもう、約束を果たすだけだ。そう決めると、太郎達は令の所へと走り出した。
ついに、準備が整った。蒼二は、新しく設置された仮説本部の一番高い場所へと立つ。敵は、遠くて近い。
数百メートル進めば、最初の戦闘が始まる場所が見える。そして、その更に奥。妙な障壁で守られている
十文字本家が見えた。そして、眼下。自分の部下達が隊列を整えて、最終調整に入っていた。
それを暫く眺めた後に、蒼二はついに戦いを始めることを決意した。目を見開き、声を大にして叫ぶ。
「皆、見えるか──これが、十文字の出した答えだ! あちらは、徹底的に闘りあう構えだ。最も愚かな事にな!
だから我々も、あちらの流儀に従うとしよう! ──もう、話し合いで解決できる時間は過ぎ去った!
何時もでも過去にすがっている馬鹿共に教えてやれ──っ! この世界の、クソッタレだが遵守すべきルールを!」
とそこまで言うと、更に息を吸い、
「これより、ユニオンは数の十名家、十文字派に攻撃を仕掛ける──っ!
己が明日を守る為に、悪行を行えと、ユニオン代表、千島蒼二が此処に宣言する! ──ただし、罪は全員が背負えっ!」
力の限りそう叫んだ。すると、大きな返事が聞こえた。まちまちで、それぞれの思い思いの言葉だが、それでいい。
それをきっかけとして、ついにユニオンの全部隊が動き出す。先頭を進むのは、緋眼を発動させた遥緋と、
その左右を移動する由加と神璽。その後に、幾つかの部隊が式神を構えて、移動している。それを迎え撃つは、悪鬼達。
遠距離から装備された魔具を使い、攻撃を仕掛けてくる。遥緋は、足を一旦止めて、意識を集中させた。
動きの止まった遥緋を守るようにして、由加と神璽が魔具の障壁を張り、そして、背後の部隊の隙間から、九尾の狐が
姿を現した。そして、神璽と由加の丁度間ぐらいで足を止め、
「千島の嬢ちゃん。行けっか?」
「──うん。じゃあ、行くよ。神璽君、由加ちゃん、キュウちゃん!」
次の瞬間、遥緋の輪廻転生の分解の力が発動した。何時もの、完全に死滅してしまう力ではない。
悪鬼達の体も、装備されていた魔具も、全て同時に反意思へと分解したのだ。そして、大量に生まれる
反意思を九尾と、由加と神璽が取り込む。すると、九尾の体が大きく膨れ上がり、神璽と由加がその中に
取り込まれ、銀色の機械のような九尾の狐へとなった。
「っしゃぁ! 久々に派手な喧嘩だぜぇ! ──用意は良いか? ガキ共」
「平気だよ」
「久々なのに態度でけぇなぁ……行けるぜ!」
機械音がして、九尾の尻尾に大量の砲門が現れた。その数、一尾に百十一個。
それに反意思が次々と装填されていき、
「九百」「九十九連」「狐砲」
九百九十九もの狐砲が轟音を立てて一斉に発射された。目標は、眼前に居た大量の悪鬼達。そして、着弾。
目で見ているだけでも、恐ろしいほどの威力だった。その間に、神璽と由加は合体を解除して、九尾は二つに
分かれると、由加と神璽の胸の中へと消えて行った。そして、風の式神使いが、舞い起こった粉塵を晴らすと、
そこにもう障害物は無い。在った建物も全て破壊し、吹き飛ばされかなり戦況が見やすくなった。
「つーわけだ! 各員、ちゃんと仕事しろよっ!」
神璽がそう言うと「お前が言うな」コールが怒号のように突き刺さった。それに悲しそうな表情を作った神璽は
肩を落としながら由加と自分の部隊を率いて紡の待つ塔へと向かって行く。郁人の隊何かは、既に接近して
軽く戦闘行為を始めていた。一番大所帯の凛の場所へは、総大将として莉王が指揮を執って進んでいった。
「──じゃあ、医療系の人は私についてきて!」
最後に残された遥緋は、最低限の医療系式神を使える人間を連れて、蒼威と天音の捜索へと向かった。
流石の遥緋も今回ばかりは、焦りが浮かぶ。あのデタラメに強い父親が負けるなんて、いまいち想像がつかない。
(お父さん……)
心配だが、それに囚われてはいけない。そう判断し、遥緋は頬を一度叩き、少し走る速度を上げた。
緋色の眼シリーズキャラ投票
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