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ブログの方ではdaysやるとかほざいてましたが。
体調の問題で急遽PASTに。寒いよー
第37話:すれ違う思い

 
 純血生まれ、しかも滅ぼされた御崎の下の家。式神は、能力不明の刀剣。身長は低い。それが、自分のステータス。
 それでも、何とかそれなりの式神関連では有名な高校に入学し、それなりの日々を送っていたあの頃。
 思春期の青少年なら誰でも体験する恋、友情。好きな子は同じ部活に所属する十名家のお嬢様。しかも、結構自分に厳しい。
 そんな自分だが、彼女には憧れていたので、少しでも釣り合う男になろうと努力をした。誰よりも、素振りをし。誰よりも訓練を長くした。
 その結果かどうかはわからないが、何だかんだのうちに彼女と恋仲になり──そして、その全て奪いつくされた。

 二階堂龍一。あそこまで腐った色情魔は人間の歴史の中でもそうは居ないだろう。学内でも二階堂の権力を使って
 やりたい放題。気に入った女は全て奪い、また男が居た場合は学校を強制退去。もしくは、半殺し。
 自分もその例にぶち当たり、結果。彼女は自分の前で龍一に弄ばれ、更に半殺しにされて自分は無実の罪を着せられて退学。
 
(そこからかな……)

 力が無いのが悔しかった。あんな人間のクズさえ、自分は殺す事が出来ない。だから、自分はもっとクズなのだろう。
 何時かヤツを殺してやる。その一心で家を飛び出して、当時は賞金稼ぎ業が盛んではなかったので、フリーとして暗躍。
 汚い事は何でもやった。血で血を洗うような生活。何時の間にか、心は荒んでいく一方であった。
 その結果、式神の真の力を知り、敵を倒し、或いは殺し、また在る時には売りさばくという当初の目的を忘れたまま過ごす毎日。

(僕の人生の転機が始まったのは)

 そして、ユニオンという新しく出来た組織と対立し、牧島郁人と出会った。今の郁人は覚えていないだろうが、
 一瞬で戦闘不能に成る程の斬撃をくらい呆気なく気絶してしまった自分。それだけなら、まだいい。強い人間なんて多く居る。
 だが、牧島郁人は純血上がり。しかも、無能が原因とされ、牧島を追放されているほど。──最初はただの興味本位だった。
 暇つぶしにどんな人間か見てやろう。たった、それだけでユニオンの採用試験を受けに行くと、

「ユニオンに入って、貴方が何をしたいのか、お答えください」

 面接官は面白い事に、牧島郁人だった。その事実に自嘲気味に笑い、自分は答えた。

「人を知りたい。強さの意味についても、僕はもっと知りたい」

 まさか受かるとは思ってもいなかった。最初は数ヶ月で辞める気満々だったが、配属された場所が浅葱陸人の下
 として働く場所だったのだ。彼が良く溜める仕事の処理をさせられ、彼の世にも馬鹿馬鹿しいトラブルにも付き合わされた。
 ──すると、何時の間にか自分が笑っていた事に気づく。部下や上司と馬鹿なトラブルに巻き込まれ馬鹿騒ぎを繰り返す日々。
 気がつけば一年が経過し、何時の間にか郁人の隊の中心役として、勝手に部署を変えられてそこでも大騒ぎを繰り返す。

(幸せに浸かっていたんだよね)

 あれから数年、何時の間にか郁人の腹心の部下となり、彼の背負った物や、彼の強さの意味を知ってしまった。
 それは、自分よりも重いかも知れない。それでも、郁人は諦めない。全てを背負って、自分達の前立っている。
 それを知った頃からか、再び自分の中に意思が芽生えてきた。二階堂龍一から、彼女を救い出そうという意思が。

(結局成功したわけだけど……やっぱり、神様は僕が嫌いみたいだね)

 龍一を殺し、後は彼女に任せよう。あの時、逃げた自分に彼女を幸せにする等、とんだ笑い話だ。
 彼女の事は事後処理だけ何とかしたら、もう忘れよう。悪いのは自分。そう決め付けて、ユニオンで仕事をしていた
 矢先にこれである──と、南野喜一は悲しそうな顔で、大地にゆっくりと降り立った。そう──眼前に居るのは、

「き、喜一君……」

 あの時と変わらず、泣きそうな顔をした三枝千里。自分が守れなかった、過去の恋人。

「……上手く言えないけど、謝っておく。守れなくて、ごめん。でも、龍一はちゃんと始末しておいたから」

「喜一君。まさか──っ!」

「僕はもうあの時とは違うんだ。汚らしくなったユニオン牧島部隊副隊長──南野喜一。君の、敵だ」
 
 喜一は虚空から剣を抜くと、千里の横を通り過ぎて氷と龍と人型悪鬼の討伐を始めてしまう。
 それは、千里を守れなかった喜一のケジメ。もう、二度と千里の心を求めない。そして、傷つけない。
 暫く俯いていた千里はそれを違う意味で解釈したようで、歯を食いしばり悲しみを心の奥底に封じ込めると、
 冷たい表情を作った。もういい。自分は自分の家族と友達だけを救う為だけに剣を振るおう。そう決意し、

「かかってきなさい」

 千里を囲んでいた郁人の部隊の人間にそう告げると、三人ほどが同じ剣の式神を構えて、突っ込んできた。
 流石に剣を主体とした部隊なだけあってか、身のこなしは隙がない。だが、それはあくまでも一般レベルの話。
 千里のような、十名家の直系にとっては大した事のない脅威。狂乱の力を発動させ、身体能力を若干高めると、
 音も無く三人の式神使いの斬撃を全て捌き、同時に乖離を振って一人の式神を断ち切り、もう一人の顔面を殴りつける。
 骨の折れる嫌な音。そして、最後の一人が剣に闇色の光を纏わせて斬りかかって来た瞬間。もう千里は男の背後にいた。
 直後に血が噴出する音。全身を切り裂かれ、男は呻き声を上げて倒れた。

(ふん……バカみたい)

 喜一は自分に背を向けたまま相変わらず戦っている。──もう、眼中にないってワケ。と千里の心も固まった。
 残りは郁人の部隊十数人と、神崎森羅と浅葱陸人と牧島郁人。陸人は負傷しているので、千里の狙いは森羅。
 もう、迷わない。もう、決めた。希を取り戻し、万里の人生を元通りにする。それだけが、もう千里の全てだった。



 



 目の前に居るのは、命の恩人にして、竜胆を破壊した女。そして、郁人が出会った中でも最強の敵。
 遠音と無言で睨みあう郁人。陸人は腕の怪我が酷そうだったので、増援を呼びに行ってもらっている。
 チラリと視線を動かし、周囲の状況を確認。喜一指揮の下に、ダメージの残っている雨龍と龍と悪鬼を攻撃している。
 厄介だった三枝千里は森羅が抑えてくれている。後は、遠音をどうにかすれば、ここでの戦いはこちらの勝ちだ。
 フラガラッハを何時でも動かせる体勢にもって行き、腰を落とす。遠音は相変わらず、腕組をして笑っている。

「……良い目だよ郁人。私への憎悪で溢れている。やはり、式神を壊して正解だったね」

「言いたい事は、それだけですか?」

 その瞬間、一瞬でフラガラッハを構えて疾走。遠音の反応が一瞬遅れた隙に、

「フラガラッハ・灼」

 フラガラッハの形態が変わり、巨大な突撃用の槍のような剣へと変化し、柄や装飾の部分から反意思の光が
 あふれ出す。だが、何時とは違い反意思は噴出の他に、刀身からも噴出されていた。その反意思の光は、
 刀身に纏わり付き、回転するようにして覆っていく。そして、突撃体勢に入った瞬間。

「っ!」

 今までの倍近い速さで、遠音へと剣先が届いた。完全に油断していた遠音は、そのまま勢い良く吹き飛び、
 近くにあった建物の壁を突き破り、それでも勢いが止まる事がなく、暫くした後に、ようやく止まった音がした。
 唖然としてしまう周囲。郁人自身も、予想以上の威力に戸惑いが隠せなかった。これが──新しいフラガラッハの力。
 今までのように反意志をただ噴出させているだけではなく、回転や自在な出力変換の機能がついていた。
 それと引き換えに、重量が増し、精密な動作が難しくなっていたが、これは鍛錬次第で何とかなると郁人は実感を掴む。

(それにしても……あの二人らしい強化の仕方だな)

 そのまま遠音が吹き飛んでいった方向に歩いていく郁人。すると、瓦礫が嵐のように吹き荒れ、その中から
 若干出血しているが、それでも楽しそうな表情をした遠音の姿が現れた。その手には、黒の剣。ダーインスレイヴが
 既に握られている。そして、遠音の目がカッと開き、完全な戦闘体勢に入った瞬間、

「む……」

「時間か」

「……行くわよ」

 空に闇色の花火が上がる。それと共に、雨龍はコンセプトを解いて黒龍を再召喚。森羅と戦っていた千里は、
 乖離を振り回して、全ての水を問答無用に切り裂くと、黒龍の肩へと飛び乗った。
 最後のおまけとばかり、大量の火球を吐き出す黒龍。その炎をに遮られるようにして、遠音と郁人は見つめあい、

「追いかけて来い。そこで、最期の決着をつけよう」

 遠音がそう挑発した笑みを浮かべながら言うが、郁人は特に表情を変化させずに言い返した。

「……望むところです」

「……良い目だね。容赦なく、頼むよ」

 遠音は何故か悲しそうな目で郁人に笑いかけると、超動を使い瓦礫の竜巻を起こし、その中心を上昇していく
 黒龍と遠音。様々な攻撃がそれに向かって集中するも、殆どが瓦礫に当たって遠音達へと届かない。
 だが──ユニオン側もそう簡単には諦めなかった。式神の攻撃の隙間を縫うようにして、令、梨香、竜胆の三人が
 遠音達を追う。遠音は超動の嵐を解除すると、瓦礫を蹴飛ばし、三人目掛けて吹き飛ばした。

「甘いよぉ!」

 三人の前にGateのコンセプトが現れ、瓦礫はその紋様に触れた途端吸い込まれるようにして消え、
 遠音達の頭上に出現した紋様からそのままの勢いで飛び出した。竜胆が会心の笑みをうかべ、
 その隙に乗じて梨香と令が一気に距離を詰めようとした瞬間、

「令君!」

 梨香に蹴飛ばされ、若干方向が変わってしまう令。だが、その横を、赤い熱線が凄まじい勢いで通り過ぎていった。
 
「この式神……千夏か!」

 現在碧と太郎には下の応援に駆けつけてもらっている為、令は紫と神憑状態にあった。紫との神憑は、力が
 強くなるものの、碧のような広範囲の索敵や凄まじいスピードは出せない。だから、気づけなかった。
 数百メートル離れた場所から、あんな熱線が放たれた事に。そこに視線をやると、確かにそこに十文字千夏が居た。
 赤を基調とした鳥型ロボットのような式神に乗っている。ただ、追撃するつもりはないのか、次々と熱線を放ち、
 門に誰一人近づけさせないようにと、空中を自由自在に飛び回っている。

「ああ、令は四つ子と仲良かったのか。あの子達、信頼した相手にしか式神見せないからさ」

 上空から遠音の鞭のような闇色の斬撃。それを避けて、電撃でけん制。梨香も飛び回りながら、けん制してくれている。
 だが、七海遠音は強すぎた。超動の力を自分自身にかけている為、ぎこちない浮遊だが、
 梨香の数百発の矢や令の電撃は一発たりとも当たっていない。そして、超動の力を利用して梨香の動きを一瞬止めると、
 梨香に地面に叩きつけるような蹴りを見舞う。流石に不味いので、令が助けに行こうとするも、梨香は地面より少し前で
 何とか体勢を立て直したようだった。それに安堵していると、

「戦いの最中に余所見はよくないな」

「しまっ……!」

 何時の間にか背後に六道紡が立っていた。慌てて回し蹴りを放つも、紡の瞳が一瞬で緋色に染まり、
 簡単にその蹴りは避けられてしまった。そして、胸に手を置かれ、

「蛇砲」

 破壊の衝撃。黒の蛇を模した反意思が叩きつけられ、そのまま勢いを殺せずに令は地面まで叩きつけられてしまった。
 
「さて、そろそろ完全撤退だ。戒君は一番厄介なのと戦っていてね。自分で十文字本家にGateの魔具を建てるそうだからさ。
 だから、今は死守だね。戒君が最後のコアもって十文字本家に入るまで、私達の作った門に誰も通しちゃ駄目だよ」

 紡の言葉に、遠音達は頷くと下から尚も攻撃してくるユニオンに向かってあらん限りの攻撃をぶつけた。
 悪鬼や無人の空船もどんどん十文字側の立てた門から、ユニオン目掛けて降下していく。流石にこの攻撃の苛烈さでは
 空中に上がってこれているものは少ない。令や梨香や竜胆といった空中戦に慣れている者達も、ある程度の距離からは
 上がって来れないでいる。そうやって暫く弾幕を張っていると、黒龍の中から雨龍が紡に尋ねた。

「んで。戒のヤツは誰とやりあってンだよ? まさか、蒼二か?」

「惜しいね。──彼の父君、千島蒼威だよ。あの最強の式神使いと名高い人物だ」

 そう言うと、黒龍の肩に乗ってオーラの斬撃を放っていた千里が青い顔をしながら口を開いた。

「千島蒼威か……」

「そういや、千里と万里はあのおっさんのファンだったな。万里なんか、技を模倣しているぐらいぞっこんだったぜ」

「何だ、雨龍。嫉妬か? 全く度量の小さい男だね」

「テメェの胸程じゃねーよ」

 いがみ合う遠音と雨龍。それを無視して、紡も蒼威の事が気になったのか、

「果たして、どちらが最強なのかね? これは私にもわからないな」

 そう心配と楽しさが混じったような表情でさらりと口にした。





 

 ユニオンの隊員の一人、海山天音は唖然としていた。純血生まれだが、普通の何処にでもあるような家庭の出身ではない。
 親が何処で道を踏み外したのか、裏社会にどっぷりと浸かり、生まれてから二階堂特区にて、それなりの人生を送っていた際に
 ユニオンにスカウトされて千島蒼威の部隊に所属する事となった。配属されてみれば同期の人間達は全員蒼威を尊敬というか
 もはや崇拝の域に達している程敬っていた。どうやら、話によると最強の式神使いと呼ばれているらしいが、天音の
 目に映る千島蒼威は相当な駄目人間だ。二日酔いで仕事にくるし、備品のパソコンでネトゲをしていた事
 も多々ある。更に、余り人と仲良くしたくない自分にヘラヘラ笑いながら愛想よく話しかけてくるし、
 この前なんかは奥さんに電話で二時間以上説教されていた。だが──と天音は現在目の前で行われている光景をただジッと見て、

「……凄い」

 とただ一言。戦っているのは、上司である千島蒼威と敵勢力で、天音ですら名前を知っている程の男、十文字戒。
 数分ほど前に戒は音もなくここでコアを守っていた天音達の前に現れた。一瞬で、全員が反応し、
 天音も式神の力を発動させようとした瞬間、もう決着はついていた。戒の周囲から様々な属性の力が吹き荒れ、
 殆どの隊員が一瞬で式神を破壊されてしまう。天音は新米だが、運良く攻撃の範囲から逃れたのだろう。
 全くの無傷で瓦礫に埋もれているという始末。しかも、その間に部隊の先輩達は蒼威の指示によって、怪我人を
 運びに行ってしまったので、天音はただ一人。この戦場に残されてしまっているのだ。そして、そんな天音を他所に戦いはどんどん苛烈さを増していく──



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