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第36話:あなたの悲しみに寄りそう


 

 十文字派とユニオンの抗争は激化の一途を辿っていた。ユニオン本部に突然現れた巨大な門からは大量の空船が
 ユニオン目掛けて迫って来た。しかも、その空船は最悪な事に、特攻専用の空船であった。
 次々と本部にある重要施設や拠点にそのまま押し潰すようにして墜落し、その混乱に乗じて指揮系統は分断。
 十文字派の直系達が何処に居るかの所在も掴めないまま、戦いの流れは確実に十文字派に流れつつあった。
 一番辛いのが、無線の電波障害が激しい事。その類の魔具が何処かに設置されているのか、通信が取れない。
 すなわち、行き当たりばったりでの戦闘になってしまっている。そんな状態では少数精鋭の十文字派の方が遥に有利。

「…………」

 牧島竜胆は、ユニオン本部の別棟にある入院施設の窓から、状況を見ながら現在の状態をそう分析していた。
 部屋の隅には、廃人の如く壁に持たれかかったままの郁人。今度は、竜胆の声ですら殆ど届かなくなってしまっている。
 話しかければ抱きしめてガタガタと郁人は震えたまま長時間放してくれない。あの戦いで自分が郁人の為と思った行動は、
 郁人の心に重大なトラウマを与えてしまったようだ。しかも、フラガラッハまで壊されては、もう立ち上がれないようである。
 そんな郁人を誰も責めなかった。このユニオンが設立された頃から、常に前線に立って剣を振ってきたのは郁人だという事は
 ユニオンの誰もが知っている。そんな郁人を責められる者等誰も居ない。竜胆自身も責めれない。

「郁人ぉ……」

 話しかけても肩をびくっと震えさせ、郁人は布団を被ってその中へと潜ってしまった。
 現在、状況は相当危うい。自分達も手伝いに行かなくては、酷い結果になってしまうだろう。だが郁人を置いてはいくのも苦しい。
 これは甘さだろうか。それとも、過保護すぎるのか。竜胆にはわからない。心が理解するのを拒否している。
 だから、竜胆にはなるべき刺激しないように郁人が元に戻ってくれるのを待つしかない。だが──と焦りが浮かぶ。決断が迫られていた。

「ね、ねぇ、郁人ぉ!」

 竜胆は意を決して郁人へと近づいて行く。布団を引き剥がし、郁人を真正面から見据えた。

「竜胆……」

 此処で焦ってはいけない。竜胆は心を落ち着けて、話を続けた。

「私は生きてるよ。郁人が守ってくれるお陰で、今日も生きてるよ。だからさ、もうそんなに脅えないで。
 郁人が守ってくれた分、私が守り返すから、そんなに自分を責めないで。弱気にならないでよぉ……」

「でも……フラガラッハも……」

「神璽さんと由加さんが直してくれたよ。私がずっと預かってた。郁人が戦う気になったら渡してくれって」

 竜胆はポケットから、新しくなったフラガラッハを取り出し、郁人の手を優しく掴むと、フラガラッハを握らせる。
 その瞬間、郁人の目から涙が零れた。約束を守れなくて、ごめんなさい。竜胆を守れなくてごめんなさい。
 と心の中で再び感情が溢れかえってきた。牧島に捨てられたあの日から、竜胆を絶対守るって決めたのに、
 フラガラッハを手にしたあの日からもう絶対に逃げないって決めたのに。弱い自分はまたこうやって塞ぎこんでいた。
 竜胆とフラガラッハを破壊された時の絶望。もう、生きているのが嫌になるくらいの絶望が郁人を埋め尽くしていた。

「俺は……もう、守れない……守れる気がしない」

 遠音の強さに勝てる気がしない。どうしようもないまでの力の差。また、フラガラッハと竜胆を破壊されてしまう。
 暗い未来の想像が再び郁人の心を埋め尽くしていく。郁人と繋がっている竜胆には、それがすぐにわかった。
 ゆっくりと近づき、郁人を思い切り抱きしめ、震える声で竜胆は呟く。

「──竜胆の、花言葉って知ってる?」

「……知らない」

「正解は、「あなたの悲しみに寄りそう」だよ。パパさんがアタシに名前をつける時に、これを思い出したみたいなの。
 郁人がどんなに辛くても、アタシが守ってあげられるように。一緒に居てあげられるようにって。
 皮肉だよねぇ。そんな名前をつけておいて、数年後には自分が郁人を辛い状況に追い込んでいたんだからさ」

「…………」

「郁人は一人じゃないんだよ。アタシはどんな事があっても郁人の味方で、恋人で、式神なの。
絶対に傍に居るの。蒼二さん達だって、皆郁人の事を思ってくれてる。もう、一人じゃないんだよ」

 竜胆の言葉にも郁人は俯いたままだった。流石にもう、限界である。このままでは本部ごと郁人までやられてしまう。
 特に七海遠音の存在は危険だ。郁人を守るためにも、あの女は自分が倒さなくてはならない。
 竜胆は気合を入れて、頬を一回叩くと鴉を顕現させて、部屋から出て行った。後に残された郁人は、フラガラッハを
 見つめていた。前よりも、攻撃的になったデザイン。直した二人の性格がよく出ていると思う。

「どうしろってんだよ……」

 どうしようもない怒りが沸きあがった。

「好きな女も、約束も守れなくてよ……」
 
 再び涙が零れていく。

「もう、疲れたのに。もう、無理だと思ったのに──俺にはそんな器用な事は出来ない筈なのに!」

 何かが郁人の中で渦巻いき始め、

「俺は──っ! どうしようもない雑魚だった筈なのに! 誰からも期待されなかったのに!」

 郁人は激情のままに立ち上がり、窓を開けて外を見た。あちこちで炎が上がり、悲鳴や怒号が聞こえる。
 本当に、状況が切迫しているのを肌で感じた。このままでは、不味いという事も。
 そして、ふと視線を下にやると、

「あ……」

 南野喜一を初めとした、郁人の隊の全員が棟の入り口前に整列していた。その後ろの方には竜胆の姿もある。
 ずっと、待っていたのだろうか。こんな駄目な人間を信じて。仲間がやられているのがわかっていても。
 それでもただひたすらに自分を信じて。

 ──このまま、尻尾巻いて逃げてどうすんだよ。
 
 そんな思いが生まれる。部下の顔を見ていたら、不思議と心が軽くなっていった。その思いは更に強くなっていく。
 七海遠音がどうした。ダーインスレイヴがどうした。超動がどうした。あの脅威的な身体能力がどうした。
 ──自分には最高の部下が居る。最高の恋人が居る。最高の式神が居る。そして、最高の剣がある。

「俺はもう……あの時の牧島郁人じゃないんだよな」

 全ての力に嫉妬していたあの頃と違う。今は──ユニオンの最高幹部の一人、牧島郁人なのだ。
 来ていた服を脱ぎ捨て、部屋の隅に竜胆が用意していた何時もの戦闘用の服を着込み、階段を下りていく。
 そして、部下達の前まで歩くと、その動きを止めて喜一を見て、軽く何時もの笑顔を作った。喜一もそれに応え、

「お待ちしてました、隊長。それでは、ご命令を」

 そう口にした。







 浅葱陸人と神埼森羅の相変わらずのコンビは、最悪な状態にあった。まず、現在居るのは二人だけ。
 陸人の部隊は空船の特攻により、負傷者多数。その結果、前線から退いてしまっている。
 森羅の隊は現在分散して他の隊の救助活動が主な活動となっている。その過程で一人でコアを守護していた
 陸人と出会い、こうして先ほどまで妙な機械をつけた人型悪鬼と戦闘していた筈なのだが、

「お前と居ると、ホント退屈しねぇわ。無論、悪い意味で」

「森羅。人生にはな。スリリングというスパイスが必要不可欠なんだよ!」

「テメェのは少し効きすぎだァ!」

 現在、森羅と陸人は数十のもの機械で出来た龍と水を主成分とした龍の猛攻から何とか身を守っていた。
 原因は、数メートルはなれた場所に潜んでいる二階堂雨龍のコンセプト。建物の陰に隠れつつ、
 じっくりと此方を追い詰めるようにして龍達を操っている。話に聞いていたのとは違い、相当な策士のようだ。
 
「埒があかねぇな……。通信拾ってみっと、さっさと他のトコ行かなきゃ不味いみてぇだしよ」

「ああ。七海遠音と六道紡のコンビが止められないらしい。もう、時雨と律のコンテナと、奏と狂の
 コンテナからコアが奪われちまったらしい。後はコアが入ってるコンテナは三つか。遥緋ちゃんの隊のと
 蒼威が守っているコンテナと、この俺達が守ってるコンテナだけだ」

「チッ……状況は最悪か。郁人と竜胆がいねーから、こっちの機動力が完全にやられちまってるし」

「愚痴るな。今は今の戦力で戦うことだけを考えろ。あいつなら、きっとその内来るさ!」

「わかってるっての!」

 そう言うと、陸人は隠れていた物陰から飛び出し、間近に迫っていた龍を爆轟で握りつぶした。
 それだけでは終わらない。爆発に巻き込まれた龍をそのまま他の龍へと投げつけ、その間に移動。
 龍達の爪や羽の攻撃を避けながら、一瞬にして十数匹の龍を元の氷や機械へと破壊し、戻していく。

「相変わらずだな……」

 森羅は背後から陸人の死角に回りこむ龍を次々と圧縮した水で撃ち落していく。段々と龍の数は減ってきたが、
 それでも今度は龍の残骸を踏みつけるようにして、機械を装備した人型悪鬼達が迫ってくる。
 だが、陸人は止まらない。殴り、蹴り、掴み、投げ、次々と悪鬼達をも破壊していく。──やはり、凄い。
 昔からそうだった。何時も真っ先に切り込むのが陸人、その後に蒼威が続き、最後に森羅がつく。
 現在蒼威は一緒に居ないが、何時もと変わらない。相手が人間じゃないだけ。そう思うと、気がかなり楽になった。

「っしゃぁ! 森羅、どんどん行くぜぇ!」

「ああ。ケツ持ちは任せろ」

 そして、森羅は意識を集中し、地面の下を通っている排水溝へと意識を集中。水の全てを支配する感覚。
 勢い、水量、それらを操作し、勢い良く地面を突き破らせ圧倒的な水の本流が陸人を避けて、悪鬼を飲み込んでいく。
 だが、その水と水の間から黒い手が出てきて、陸人の顔面を掴むとそのまま飛翔し、コンテナへと叩きつけた。
 雨龍が黒龍と合体したのである。だが、近接戦闘なら陸人の得意分野。すぐに爆轟を振って反撃し、雨龍と距離を取る。
 森羅も加勢に行こうとしたのだが、建物の奥から更に悪鬼が向かってくるのが見えたので、そちらの相手をする事に。
 そして、コンテナの上で獰猛に笑う陸人。そして、黒龍の中に入っている為表情が伺えない雨龍は、

「よぉ。はじめましてかな? 俺は、浅葱陸人だ」

「知ってるぜ。柳村の葬式で乱闘起こしたり、五行の管轄で昔爆弾事件起こした浅葱陸人だろ?」

「あー……古傷を抉るんじゃねぇ。これでも、反省はしたんだからよぉ」

「そして──タイマン張らしたら、十名家の直系以上とも言われてんだよな」

「……お! おお、マジか! うっは。これで詩歌と梨香も俺の事を少しは見直すかも」

「だーが、それも今日で終わりだ。テメェは此処で俺に負けンだからなァ!」

 雨龍はそう言うと、陸人目掛けて襲い掛かった。陸人も、一度拳を打ちつけると、雨龍目掛けて走り出す。
 そして、雨龍の右の拳と陸人の右の拳がぶつかり合い、爆発が起きる。──負けたのは、雨龍だった。
 硬い筈の黒龍の拳部分にヒビが入っている。それに舌打ちすると、今度は左手を叩き潰すように振り下ろすも、

「遅ェんだよ!」

 陸人の拳の方が速かった。左アッパーが顎部分に炸裂し、後ろへと仰け反る。その間に陸人は距離を詰めて、
 更に左右のストレートを雨龍の顔面部分にブチかまし、コンテナへと叩きつけた。流石に、強い。
 だが、まだ雨龍には余裕があった。そう、まだ予知の力を発動させていない。たかが、純血だと思っていたのが
 仇になったようである。雨龍は黒龍の召還を止め、口の中の血を吐き出と、

「第二ラウンドだァ!」

 雨龍の体から真っ赤な紋様が飛び出し、それによって雨龍自身も変化していく。翼が生え、指や耳が鋭くなり、
 最後に雨龍の緑色に輝く目の瞳孔が縦に割れた。体が恐ろしく軽い。やはり、コンセプトを習得してよかった。
 雨龍はニヤリと笑い、先程までとは段違いの速度で陸人に接近し、思い切り殴りつけた。それだけでは終わらない。
 倒れる前に更に一撃を加え、倒れないようにし、更にもう一撃。そして、陸人が反撃を試みてくるも、

「読めてんだよォ!」

 予知の力により、陸人が攻撃してくるのは読めている。それにカウンターを合わせ、拳を陸人の顔面に叩き込み、
 そのまま勢い良く殴り飛ばす。コンテナの上から吹っ飛び、瓦礫の中へと叩き込まれた陸人。
 雨龍はそれに満足気に笑うと、更に紋様を顕現させて、森羅の水を水の龍へと変え、

「残りはテメェだけだぜ、神崎森羅」

 そう話しかけるも、森羅は雨龍の方を向かなかった。相変わらずの表情で、悪鬼を駆逐し続けている。
 やがて、数匹程人型悪鬼を水で押し潰した頃に、森羅はようやく口を開き、

「戦いの最中に余所見とは、随分余裕あんだな」

 と言った。その言葉に、雨龍が後ろを振り返ると、そこには陸人が額から血を流して笑っていた。
 アレだけ殴ったにも関わらず、全く外傷がないように見える。化け物並みの耐久力だと雨龍は半ば
 呆れたが、再び気を引き締めなおし、陸人へと意識を向けた。

「まだやるか?」

「当たり前だ。動けなくなるまで闘りあう。これが、喧嘩の醍醐味ってヤツだろ?」

「上等だ! 龍化した俺に純血のテメェが勝てると思ってやがるのかァ!」

 再び陸人を殴りつけようと、雨龍が飛び出そうとすると、陸人はすぐ近くに漂っていた雨龍のコンセプトを見つめ、
 それに潜り抜けるようにして飛び込んだ。そして、コンセプトに触れたので途端に陸人の姿も龍化していく。
 馬鹿だ──と雨龍は笑った。いかに龍化しようとも、これは自分のコンセプト。触れれば、自分の配下なるのだ。
 そして、浅葱陸人は強い。肉弾戦なら遠音までとは言わないが、強い部類に入る。それを操れば──とほくそ笑み、

「よっしゃ。おい、浅葱陸人。まず手始めに、テメェの親友を半殺しにしてきな」

 そう命令すると、陸人は翼をはためかせ空中へと飛翔。そして、そのまま雨龍の方に向かってきて、
 そのまま雨龍の顔面に回し蹴りを放った。突然の事に、受身も取れずに吹き飛ばされていく雨龍。
 頭の中には──何故? という疑問。動揺したまま立ち上がると、陸人は野生の獣のように笑い、

「おい、クソガキ。一つ良い事教えといてやるぜ」

「な……」

「俺の心を支配出来るのは、この世界でたった一人。──浅葱詩歌だけなんだぜッ!」

「テ……テメェには常識ってモンがねぇのかぁぁぁッ!」

 そのまま猛然と雨龍へと襲い掛かり、手当たり次第に殴りつけていく。強化された陸人の拳は
 先程までよりもずっと凶悪だった。心眼で一発目は避ける事が出来ても、二発目に体と思考がついてこない。
 しかも陸人は肉弾戦なら自分よりずっと強い。更に手にはそのまま爆轟までついているのだ。殴られて痛みで
 思考が麻痺しながらもそんな事を考えていた。そして、完全にグロッキー状態になった雨龍を陸人は見据えると、

「行くぜぇ! 必殺──ラブラブ右ストレートォッ!」

 凄まじい勢いで繰り出される拳。だが、その間に誰かが割り込んできた。黒い腕に陸人の爆轟が掴まれている。
 ──見上げるとそこには、七海遠音が立っていた。凄まじい速さだ。あの一瞬で、割り込んできたのだ。
 そんな事を思い、警戒しながら陸人は遠音から距離を取った。更に下の方では、三枝千里が森羅に迫っている。
 状況は最悪そのもの。流石の陸人にもこれには焦った。

「すいませんね。浅葱の旦那様。お宅のお弟子さんを半殺しにしてしまいましたよ」

 誰の事なのかはすぐにわかった。──自分の弟子と言われれば莉王か時雨のどちらか。しかし、莉王は強い。
 そして時雨はあまり強くない。莉王が敗北する光景は想像できないが、時雨がボコボコにされている様子は
 簡単に想像できた。我ながら酷いとは思いつつ、陸人は笑い、

「ま、アイツじゃアンタにゃ勝てねぇわな──あぁ、だけど。何か、スゲームカつくなァ!」

 そのまま左拳を振り回すも、遠音には簡単に避けられてしまった。そのままお互い距離を取り、
 何時でも動ける体勢へとお互いが構える。そして、勝負は一瞬の内に行われた視認が難しいほどの速度で
 お互いの拳が顔を掠めていく。だが、それも長くは続かない。陸人の突き出した左腕が超動によって、固定。
 一瞬動きが止まり、その左腕遠音の回し蹴りが直撃。鈍い音がして、陸人の左腕があらぬ方向へと曲がった。

「ぐぁぁァァッ!」

「凄い! 純血で此処まで私の速さについてこれるのは貴方ぐらいでしょうね」

 遠音はそう褒めると、コンテナに拳を一発叩き込み大穴を開けた。そこには黒く光り輝くコアがある。
 超動によってそれを浮き上がらせ遠音は懐から機械を取り出し、その中へとコアを吸い込んだ。
 陸人は痛みで何もする事が出来ない。森羅は──と思い、そちらを向くも、三枝千里と切り結んでいて
 此方どころではないようだった。そして、視界の上の方にとあるモノを見つけ、陸人は笑顔を作ると、

「へっ……まだ、そう言いきるのは早いんじゃねーの?」

「え?」

「ようやくきやがったか。おい、郁人! 引きこもりは治ったのかよ!」

 直後、遠音と陸人の間に一本の剣が突き刺さった。それは、攻撃的なデザインの銀色の大剣──フラガラッハ。
 凄まじい衝撃に、コンテナは跡形も無く吹き飛ばされ、その上に乗っていた陸人と遠音も問答無用で飛ばされるも、
 何とか体勢を立て直し、上空を見上げた。すると、次々と紋様が出現し、ユニオンの郁人の隊が次々と剣の式神を構えて、降下してくる。
 その光景を見て、遠音は獰猛に笑った。空中の一人。黒衣を着込んで凄まじい速度で落下してくる郁人だけを
 見ている。そして、郁人は華麗に陸人と遠音の中間辺りに降り立つと、フラガラッハを引き抜き、

「遅れて申し訳ないです。後は、俺に任せてください──もう、負けませんから」

 切っ先を遠音に突きつけ、そう言い放った。 



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