ギアスktkt
次回投稿日は未定です。すいません。
第24話:友達
パーティー会場で談笑していると、碧は式神の気配の流れを感じた。
誰かが何処かで式神を使っている。だが、その反応が余りにも小さすぎる。きっと、自分以外の誰も気づいていないだろう。
風神の鬼神である碧は空気を媒介にして、感覚を伸ばして探知する事が出来る。
式神の気配。人の気配。反意思の流れ。人の匂い。それらを"世界"から掬い出し、感じ取れるのであった。
しかも上の方から感じるのは律がつけていた香水の香りまでするのだ。
(……どうしよう)
令にこの事を伝えるべきかどうか迷う。正直、この空気は悪くない。令と紫と太郎とその友達は楽しそうに談笑している。
この事を言えば、確実に空気が壊れてしまうだろう。この、楽しそうな空間を奪うのだ。
だったら、大して輪に加わってない自分が確認しに行けばいいだけの話。そう思い、行動しようとすると、
「ヤバッ! 令、太郎。そろそろ律ねーさんに頼まれた事する時間やで」
紫が何の前触れも無く時計を指差して騒ぎ出した。
「……何の話?」
「律姉ェ。ンな事言ってたか?」
「悪い。染谷。ウチらちょっと九我山関係のお仕事があるんよ。少し、席を外させてもらうで」
紫は申し訳なさそうに、手を合わせて染谷へと謝罪する。すると染谷は何か含んだ笑いを浮かべ、
「ああ、わかった。俺もお前らと話してばっか居ないで、他の奴らにも挨拶してくるわ」
「皆川とか川瀬にあったらよろしゅう伝えといてや。ほな、行くで」
紫は令と碧の手を引くと、人を押しのけながら会場の外へ出て、人気の少ない場所へと向かう。
令と太郎は意味がわからなさそうにしているが、紫には全て分かっていた。
碧が何かを感じた事。空気を読んで自分ひとりで確認しに行こうとしていた事も──。
「碧。お前、何か感じたんやな」
「……うん。式神の気配が幾つか。……一つは上の方。もう一つは下の方。
……それだけならよかったんだけど、上の方からは律お姉さんの香水の香りがしたの」
「碧ちゃん。それ本当なの?」
「……うん」
「コイツの感覚はめっちゃ鋭いんや。あたしが保障するで」
紫がそう言うと、令は少し考えた後に、
「わかった。じゃあ、確認に行こうか。もしお姉ちゃんが戦ってたら少しマズイよ。
今日は四鬼を連れてないから、鬼憑を使えないんだ。だから、太郎くんは時雨さんに
連絡しながら上の方、屋上の方へと向かって。僕らはその下の方に行って見るから」
「おう、任せとけ!」
太郎はネクタイを投げ捨てて廊下を物凄い速さで走っていった。令は体から戦闘の
邪魔になるものを外し、全てポケットに詰め込み始める。紫は髪留めとイヤリングを外し、
流石にドレスはどうにもならないのか、裾を縛って動きやすい格好に変えた。
「……何で……信じてくれたの? ……鬼神の言う事なんだよ?」
そう口にしてしまう碧。幾ら紫の知り合いとはいえ、簡単に信じすぎた。
ましてや自分は鬼神。人間の敵だ。海外にずっと居た碧は何度も人間に殺されかけた。
教会の連中なんて、自分を殺す為だけに平気で特攻をしかけてきたのに。
頭の中がぐるぐると気持ち悪いぐらいの思考の深みにハマっていく。そんな碧を、令は正面から見据えると、
「鬼神とか悪鬼だとか、僕にはどうだっていい。太郎くんや紫ちゃんと一緒に居るのも、
僕が二人の事を好きだから。たったそれだけの事なんだ。シンプルでわかりやすいでしょ。
碧ちゃんの事だって僕は好きだよ。それは風神の鬼神を気に入ってるんじゃなくて、
風早碧っていう一人の人物の事が好きだからなんだ。だから、信用しようかなって。」
「……令君」
「ま、令の家ががどうしよーもない変人一家やっていうのもあるけんな」
「うわ……折角僕が良い事言ったのに。全部台無しじゃん!」
「でも、本当の事やろ? 鬼神や悪鬼と一緒に飯食うなんてあんたらぐらいやで?
──でも逆に言えば、人間と飯食う鬼神や悪鬼もあたしらだけや。変人同士、仲良うしいやって神さんの啓示なんかね?」
令と紫はそう言いあって笑うと、碧に手を差し出した。──さぁ、どうする?
と言わんばかりの二人の意地悪な表情。碧はため息をつき、
「……確かに、変わってるよね」
そう言い、久しぶりに信頼できる人へ向けた笑顔を作ると、その手をとった。
そして、碧を先頭に校舎内を駆けていく。令と紫はこの学校の卒業生なので、大体何処に何があるかはわかる。
碧の下の方から式神の気配という発言から、一階にあった"あの部屋"だと判断し、階段を下りると
自分達が学生の頃に偶に使っていた物置部屋──という名の訓練施設へと向かった。
「やっぱり……」
部屋にあった無数の本棚の一つが動かされ、地下への階段がぽっかりと見えていた。
躊躇する事無く三人は走って行くと、一番下にあった巨大な訓練施設へと辿り着いた。
体育館程の広さの空間に、頑丈に作られた幾つもの柱。そして、何かを閉じ込めておくような檻。
卒業前に来た時には、そこには一匹の悪鬼の姿は無かった。だが、今は七体程の武器を持った悪鬼が佇んでいる。
肝心の式神使いは何処だ──と令が目を凝らして探していると、
「あれれ? 凛ちゃん設定ミスったのかなー?」
「だーから止めようって言ったじゃん。九我山の連中が来ている時に強奪しようなんてさ」
セミロングの黒髪を一房だけ赤く染めた女と、襟足の一部を真っ白に染めた黒髪の男が闇の中から現れた。
令はその顔を知っていた。というよりも、この国で式神に関わっていてこの二人の事を知らない人間はモグリだ。
女の方が十文字千夏。男の方が十文字千秋。十名家最強の十文字家の直系である次女と次男がそこに居た。
しかも、手には結晶を持っている。自分達の時と同じだ。という事は、颯太や雨龍達の元締めは彼らか。
と予想しているが、そんな二人は令を見ながら、ケラケラと何時ものように笑うと、
「よぉ、令じゃん。何か新しい女の子連れちゃってさー。俺にも少し分けてくれよ」
「これまたロリっ子だねー。アンタ、年上が好きだと思ってたけどさー」
今度は碧を興味深そうに眺めているが、これを令は完全に黙殺し、
「千夏。千秋。……結晶を持ってるって言う事は、お前達も九我山襲撃事件に関わってたの?」
「まぁね。流石に悪いとは思ったよ。──でもさ、頂戴って言ってもくれないじゃん」
「しかも私ら十文字じゃなくてユニオンに渡すとか言ってるしさー。アンタら十名家なんじゃないのー?」
確かに十文字ではなく、ユニオンに結晶を預けようというのは十名家に所属する家としてはおかしい。
ただ、九我山は十名家の中でも四条派だ。反逆の十文字事件や、過去にも幾つかの災厄を十文字は起こしている。
その中で何も言わない十文字を違う視点から支える、もしもの場合は潰す。という事から四条派が生まれた。
やはり、令自身。普通に話したり仕事する分には支障はないものの、十文字とユニオンだったらユニオンを信じる。
そう言いたいのは千夏も千秋もわかっているようで、
「ちょっと意地悪な言い方だったかな?」
「意地悪だね。でも、お前達の事は嫌いじゃないさ。信頼という点でユニオンの方が勝っていたのかな」
「だろうね。だからさ、こうやって無理矢理貰っていくしかないわけ。令にだって譲れないモノはあるだろ。
僕らはこればかりは絶対に譲れないんだ。十名家システムがぶっ壊れたっていい。日本中から非難され
てもいい。それでも、叶えたい願いがあるんだよ。僕だけじゃない、協力してくれる雨龍や凛ちゃん達にもね」
「僕の譲れないモノか──」
それが見つからない。漠然とはわかっているのだが、それを上手く言葉にする事が出来なかった。
それが律の言っていた自分を貫く事。なのかもしれない。だけど、まだわからない。
仕方ない──と令は微笑を作ると、今分かる譲れないモノ、結晶を奪還しようと無装を顕現させた。
「おほっ。やる気になったみたいじゃん」
「お前達、行っけぇぇー!」
千夏の合図によって、悪鬼達が一斉に襲い掛かってきた。令は紫と目配せをすると神憑の力を発動させる準備をした。
紫も一瞬で狂化する──が、その前に碧が既に狂化状態へと入っていた。何故と疑問が沸くが、碧は楽しそうに笑い、
「……それ、面白そうだね」
そのまま令へと抱きつくようにして粒子化して行った。途端に令の体の中へと吸い込まれる碧。
流石に碧を入れるのは初めてだったので上手く波長が合わない。体の節々が痛み、だがすぐに碧が令の体の中で落ち着いた。
途端に涼しく快適な気分へとなる。何故か、自分の周囲だけが清清しいほどの気温に保たれていた。
それと同時に、感覚の幅が異様に広くなった。今までの自分の周囲だけではない。離れた場所の気配や匂いも何故だかわかる。
「あー! 碧ずるいで! ……って、お前らマジ邪魔やっちゅーの!」
飛び掛ってきた悪鬼に凄まじい電流を浴びせる紫。だが、何体かの悪鬼はそれを上手く避けた。
普通の悪鬼とは何かが違う。紫のテンションが微妙に上がり、腕をブンブンと振りまわす。
その頃にはもう令と碧から興味の大半は失せており、更に狂化状態を上げる紫はそのまま悪鬼達の輪の中へと突っ込んでいった。
「碧、令! 今回はアンタらに十文字譲ったるわぁ!」
人型悪鬼の頭を掴み、投げ飛ばし、電流をブチかましながら紫は大声を上げた。
ああなってはもう駄目だ。付き合いの長い碧と令は同時にため息をつくと、千夏と千秋の方を向いたが、
「無益な戦いに興味はありませーん!」
「てゆーかあの子も鬼神とかマジ驚きー」
靴をローラーブレードのように変えて物凄い勢いでもう訓練場の奥の方へと走っていく。
それを呆然と見送っていた令だが、やがてハッとすると慌てて追いかけ始めた。
この奥には抜け道がある。しかも、それは森の中へと通じている筈。記憶を整理しながら走っていると、
「……何で、飛ばないの?」
「……飛べるの?」
「……うん」
「早く言ってよぉ!」
碧に力の制御を任せると、紫と合体した時と同じように飛べるようになった。
だが、紫よりも更に早い。尋常じゃない速度でどんどんと千秋と千夏との差を縮めていく。
前方から二人が振り返りながら、魔具製のマシンガンを雨のように撃って来るが、その全てが見える。しかも、それに体もついてくる。
碧との神憑は紫よりもパワーが少ないと感じる分、それを補うほどのスピードがあった。
すると新たに千秋がバズーカを作り出し、前方の壁を破壊するとそこにはもう夜の闇が見えた。
「──マズイ。碧ちゃん。もっと早くできる?」
「……余裕」
「本当に凄いなぁ」
「……えへ」
次の瞬間、碧が力を全力で放出し凄まじい追い風が舞い起こって更に令の速度が上がった。──いや、上がりすぎた。
「ええええええええええええええええええ!?」
その速さは千秋と千夏をあっという間に追い越し、森の木々をなぎ倒して令の体は弾丸のように吹き飛んでいく。
風の障壁でも張ってあるのか、木々が体に当たろうとしてもその前に木が倒壊してしまっていた。
「……力、出しすぎた。今、解除するね」
「ちょ! ちょっと待ってぇぇ!」
碧が強制的に力の操作を止めたが、令の勢いは殆ど変わっていない。
そして、森の中近くにあった湖に突っ込むような形で、令は巨大な水しぶきを立てた。
威勢よく出てみたモノの、律は明らかに劣勢だった。凛の配下の人型悪鬼が郡を抜いて強いのだ。
人型悪鬼は確かに上級と呼ばれる部類に入るが、上級悪鬼の中ではランクがかなり低い。
過去の太郎や四鬼の方が遥に格上で手を焼かされる筈なのであるが、目の前に居る人型悪鬼はそれよりも強い。
武器を効率よく使い、更に連携まで仕掛けてくる悪鬼なんて見た事が無い。
紫や碧の父親のような百年以上生きた大悪鬼なら別ではあるが、これはタチが悪すぎる。
「やるね……。何処からこんな悪鬼を仕入れてきた」
「今日来ているお友達の部下ですわ。それ以上でもそれ以下でもありません」
律とてやられっぱなしでは無かった。人型悪鬼の胸についている機械が実に怪しい。
そして、凛の友達と言えば大体わかる。しかも、このような意味不明な機械を作れるなんてもはや答えが出たようなものだ。
──魔具の一族、十文字。この学校に千春、千夏、千秋、千冬、戒の誰かが居る。
想像しただけで嫌になった。十名家最強の一族の人間まで出てきてはもう、パーティどころではない。
「時間稼ぎをしても無駄ですよ。助けは来ません。一人で此処に来たのが不運でしたね」
凛は懐から赤い機械のようなモノを取り出した。アレもきっと魔具であろう。
口ぶりから察するに、特殊な結界を張る魔具だと予想。
「わかったみたいですね。これは、結界の力を増幅された魔具です。任意の範囲に特殊結界
を張り巡らし、人の立ち入りはおろか。悪鬼・式神の気配までほぼ消し去るという優れモノなんですの」
「ふっ……随分と用意周到じゃないか」
「貴女のような馬鹿みたいに強い相手に、私みたいな凡夫は正攻法じゃ勝てませんから。
今のうちに謝っておきます。全てが終わった時に、またこうやって喋るといいですね」
凛はそう締めくくると、視線で悪鬼に目配せをした。数体の悪鬼がそれぞれの武器を構え、律を囲むように包囲していく。
重槍を振り回して、二体吹き飛ばすが背後から顔を殴られた。鬼憑状態ならダメージは少ないのだが、今は違う。
頭がクラクラとする。口の中に血の味が広がった。だが、この程度で気絶するわけにはいかない。
そのままの体勢でがむしゃらに一体の悪鬼を槍で貫くと、あらゆる方向から重力をさせて体を引き千切り、そのまま凛へと走り出す。
だが、凛は慌てない。手を掲げ小型の空船を召還すると、それを律目掛けて放った。
高速で動く空船は律の槍を避け、弾丸のようにその体にぶち当たると、テラスの壁へとそのまま律を叩き付ける。
「……これ以上傷つけるのは心苦しいですから。お前たち、やりなさい」
悪鬼が疾走し、律の体を押さえつけると、顔を無理やり上げさせて凛の姿を見させた。
マズイ──このままでは傀儡の力に支配されてしまう。長い間死線を潜り抜けてない所為か体が鈍っているのも感じた。
その間にも凛がコツコツと靴を鳴らして歩いてくる。
「なんて顔してるんだ。馬鹿め……」
凛の顔は泣きそうに歪んでいた。高校の頃から知っていた。何回か酷い目に遭わせたり遭わされたりもしたが、心の綺麗な人間だと。
律の笑いながらの言葉に、凛は慌てて表情を引き締めると、
「それでは、命令します」
「……っ。時雨……」
だが、凛の視線は自分の方を中々向かない。すると、突然体を支えていた空船が動き出し。
凛はそれに掴まると、高速で移動し、律から離れる。遅れて、悪鬼が何かに感づいたようで
上を向くと、無数の火の玉が降り注いできた。律も見上げると、その中には二つの人影。
「遅いぞ。旦那様と弟よ」
一つの人影が持っていた短刀を下に向かって思い切り投げつけた。それは、物理法則を無視し、異常な速さで落下して
律の左側に居た悪鬼を真っ二つにぶった切り、アスファルトへとめり込む。右側の悪鬼はけん制の火球は避けたものの、
上空から降り注いだ更に巨大な火球に焼き尽くされてしまう。そして、轟音を響き渡らせ、時雨と太郎が律の少し前へと着陸。
「遅くなって悪いな、律姉ぇ。時雨兄ぃが何か女と絡んでてよ」
「ひ、人聞きが悪いな太郎。ぼ、僕だって逃げたかったんだから。でも彼女達が……」
律のムッとした顔に睨まれて、時雨は冷や汗をかきながら弁解する。
何があったかは後でちゃんと問い詰めるとして、律はゆっくりと立ち上がると、離れた場所に居る凛を見据えた。
太郎と時雨も同時に凛を見る。太郎なんかはもう、睨み殺すかのような目で見ていた。
「形勢逆転だな、凛。流石は私の旦那様だ。私と何処か愛の糸で繋がってるみたいだね」
「お、俺は!? つか、碧が気づいたんだぜ。時雨兄ぃは俺が連絡しなきゃ──」
「その通りだよ! 何だか胸騒ぎがしたんだ! ああ、間に合ってよかった!」
太郎の声を打ち消すように時雨は大声をあげて、律を抱きしめた。律は律で顔を赤らめながら同じく時雨を抱きしめ返す。
まだ戦闘中だというのに、緊張感の全く無い二を太郎はもう無視する事にした。
地面に突き刺さった時雨の短刀を引き抜き、自らの炎を纏わせると、
「んで、テメーはどうする? この三人相手からまさか逃げれるとは思ってねェよな?」
「……どうですかね」
凛は再び小型の空船を顕現させ飛びさろうとしたが、突然動くのを止めた。
テラスの外の空中の空間が何かおかしい。それに気づいた。すると、木の葉が一枚風に乗って外へと舞う。
それはテラスの外に出た瞬間、押し潰されるようにして地面へと落下していった。
そういえば、八神時雨の式神も重力を操る式神だったと思い出し、流石の凛にも冷や汗が伝った。
「凛……もう、諦めろ」
「……嫌よ。こんな所で終わってなんか……! そう簡単に、諦められるものですかっ!」
校舎から少し離れた空間が一瞬ブれると、夜の闇を塗りつぶすようにして一隻の軍艦が姿を現した。
その空船は、全ての砲身を躊躇い無くテラスへと向けると、即座に発射体勢に入る。
──マズイ。式神と太郎の炎の力を最大限まで引き出し、防御体勢に入る三人。
凛は、飛んで来る砲弾に向かって空へと飛翔すると、
「私を避けなさい!」
傀儡の力を使って全ての砲弾へと命令した。すると、物理法則を無視し、砲弾は凛を避けるようにしてテラスへと着弾した。
断続的に続く爆発を太郎は律と時雨が空間を歪曲させて受け流し、太郎の炎が残りの砲弾を空中で撃墜する。
そして全ての砲撃が終わった頃には、もう空船と凛の姿は何処にも見えなかった。
太郎は苛立たしげに地面を蹴り、時雨はやれやれとため息をついた。そんな二人とは違い、律は何もない空間を見据え、
「……馬鹿め。友達が困ってるんだ。そう易々と引き渡すわけないだろうが」
悲しそうにそう呟いた。
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