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次回は何時になるんでしょうか……
いや、PASTは書けてるんですよ。
32話ぐらいまでですね。


Daysの方がスランプ状態です。
話の都合上、幾つかいれておきたいので。
また暫くまったりペースでお付き合い頂けると幸いです。

現在執筆中Days

六道紡(90%完成)
七海奏(30%完成)
三枝万里(30%完成)
棗由加(60%完成)
二階堂雨龍(10%完成)
ファーストコンタクト2(80%完成)


という感じになっております。
第23話:好敵手
 先日、蒼威と共に演習に参加できた事は令にとって、大きな一歩だった。
 自分達十名家の長、十文字戒と同じように最強の式神使いと呼ばれる千島蒼威。
 初めて彼の式神・大我を見たのだが凄まじい式神だった。
 自分の式神と良く似ているからわかる。変形の精密さ。硬度、動きの正確さ。反応の速さ。
 当然の事ながら全てにおいて上を行かれた。しかも、相手はかなり鍛えられた式神使い達。
 自分では紫と合体し、尚且つ太郎のサポートが無ければあの人数は捌けない。
 
(やっぱり、凄いんだなぁ……)

 そんな事を思いながら、令はユニオン本部の近くにある団地の一室でため息をつく。
 団地と行っても中々広い。太郎、碧、紫、令の四人で間借りしているのだが、全く不自由が無かった。
 そして、備え付けのベッドから起き上がると突然部屋のドアが開き、

「……令君。律お姉さんが呼んでる」

 この前までのボロボロだった私服とは違い、新しく令が買ってあげた服を着た碧が部屋へと入ってきた。
 碧とはなし崩し的に同棲してしまっているが、本人は紫と一緒に居たいらしく
 それなら令の新しいパートナーとして九我山で雇う事にした。
 碧の要求は三食おやつ付と一ヶ月に二万のお小遣い。これなら、全く苦ではなかった。

「わかった。じゃあ行こうか」

 令が立ち上がると、碧が令の手を掴む。何故だか、令はこの風神の鬼神に懐かれていた。
 紫曰く「アンタの無駄に長い前髪とヘラヘラした顔つきがヤツの初恋の人と似てるんよ」とのこと。
 担当の美容師さんに感謝するばかりだ。令よりもかなり年上なのだが、その外見と性格から妹が出来たように感じた。
 律は勿論として紫も姉御肌だし、太郎は小さい頃から自分の兄代わりだった。だからこそ、新鮮で嬉しい。
 部屋から出てリビングを見渡すと、紫と太郎の姿は無い。先に行ったのだろうと判断すると
 令は部屋に鍵をかけて、三階上にある姉と義兄の仕事用の仮住まいへと足を運んだ。すると──

「失礼」

 部屋から何人かの改造されたユニオンの制服を着た何人かの人間が出てきた。
 全員、髪の色も変わった色である。やっぱり変な人が多いんだなぁ、と思いながら部屋の中へ入ると、

「よぉ」

 そこにはガラの悪い男が居た。だが、何処かで見た事がある顔。
 部屋にはいつも通り、律、紫、時雨。そして──とまで思い令は気づいた。
 ダークスーツをラフに着こなしていたのは、太郎だった。だがおかしい。
 角は出ていないし、悪鬼特有の紋様も見えない。そこには、普通の人間のような太郎の姿。
 
「……太郎くん?」

 令がそう問うと、代わりに部屋の隅に座っていた律が答えた。

「そうだ。由加に反意思の構成を説明させ、外見を人間に近くした後に、少しばかりの特殊メイクを施した。
 どうだ? どう見ても堅気の人間には見えないだろう」

「……ある意味酷くね?」

「カッコいいよ太郎くん。これで、何時でも好きな時に外に出れるようになったね」

「まぁな。棗のねーちゃんは凄ぇな。俺みたいな悪鬼に反意思の構成の仕方を教えるとはよ。
 やっぱり人間の言語を勉強してよかったぜ。これはこれで楽しい。
 残りの四鬼のバカタレ共も覚えれば良いのによぉ。何であいつら覚えないんかね?」

「それは、お前が四鬼の中でも高い知能を持っていたからだね。最初は、お前だって
 あいつらと何にも変わらなかった。でも、頑張って私が言語を教えていくうちに
 お前は段々姿を変え、今此処にこうやって居る。素晴らしいな。お前は最高の悪鬼だ」

 確かにそうだった。太郎は昔とかなり姿が違っている。古代人だってそうだ。
 「言葉」というものを覚えてからこうやって爆発的な進化を遂げている。
 太郎のは悪鬼が言語を知る事によって、進化したのではないかと思う。それは、とても素晴らしい事だと令は感じた。
 だが、何故今日はこんな事をしているのだろう? 令が疑問を持つと奥の椅子に座っていた紫が声をあげた。
 
「んで、律ねーさん。何でこないな事しとるんですか?」

「ああ、それだがね──」

 律は机の上に置いてあった三枚の封筒を手に取った。
 それを見た瞬間、令の疑問が全て解決した。紫は意味がわからなさそうに首を捻っている。

「明後日、我々の母校で今年もパーティが行われる。それに参加するぞ」

「あー、アレか。そういえば去年出とらんかったね」

「紫ちゃんが単位落としかけた所為でね……僕に三つもレポートを代筆させたし」

 その封筒の中身は、律と令と紫が通っていた高校のパーティーの招待状だった。
 毎年、卒業生全てに送られるこの招待状はもう言うならば、社交界そのもの。
 有名高校だった為に各界の著名人が訪れる事で有名である。
 律が高校生の頃には女子高だったものの、令が入学できる年になった頃には共学になって
 いたため、紫と一緒に三年間その高校に寮生として通っていたのだった。
 そして、招待客一名につきもう一人外部の客をを招待しても良いという事になっていた。

「律……まさか、また僕にも行けとか言わないよね?」

「何を言っている。私の旦那様だ。死んでも出席してくれ。私に恥をかかせたいのかい?」

「うう……また胃が痛くなりそうだ」

 新婚当初に参加したのだが、大変重いパーティーだった。いや、他の誰かとなら楽しかっただろう。
 だが律の旦那として行った為に、当時の律のファンだった生徒から凄まじいプレッシャーをかけられた。
 久しぶりに女性が怖いと思うぐらい陰湿で執拗な嫌がらせをくらい憔悴したのを覚えている。
 それ以来この時期にはわざと仕事を入れて回避してきたのではあるが、また行くとなると気が重くて仕方が無い。
 そんな時雨の状態をしってか知らずか、律は綺麗な笑顔を作ると、

「では、各人準備をしておくように」

 そう言い放った。





 


 それから明日後。親が買ってくれたスーツに身を包み、髪を後ろに撫で付けて令は待ち合わせ場所に向かう。
 何時の間にか皆居ないと思っていたらもう全員車の前で自分を待っている。
 時雨は律が用意した何時もとは少し違うスーツに身を包み、太郎はこの前の衣装をそのまま着ている。
 律は珍しいことに黒のドレスを着ていた。そして、碧は律が用意していたのだろう。真新しい緑色のドレスに身を包んでいる。
 
「わぁ。碧ちゃん良く似合ってるよ」

 本日、令は碧をパートナーとして連れて行く手筈になっている。
 すなわちエスコートだ。あんまり慣れては居ないが、律に散々口やかましく教えられた為に
 少しではあるが作法ぐらいは心得ている。碧は恥ずかしそうに俯いて顔を赤くしていた。
 緊張しているんだろうか。そんな思いから令が碧の手をとろうとすると、

「アンタ、あたしに喧嘩売ってるん?」

 後ろから頬を抓られ、涙目で令が後ろを向くとそこには同じくドレスを着た紫の姿。
 何時もは女性用スーツを着てネクタイを締めて参加するのに、今日は何故かドレス姿だ。
 その所為で気がつかなかったのである。顔を見ると、珍しく時間をかけて化粧をしたようだった。

「ご、ごめんごめん。誰だかわからなかったよ」

「……まぁ、ええわ。アンタに期待したあたしがアホやった。ほれ、太郎。エスコートしぃ」

「へいへい」

 めんどくさそうに太郎が紫の手をとり、車の中へと促した。
 令もそれに習って同じように碧を車の中に促すと、最後に自分が座ってドアを閉めた。
 助手席には珍しく律が座っている。流石にドレスを着て運転する気にはならないのだろう。
 そして、時雨が運転する車は令達の母校である聖心学園へと向かった。






 それから三時間後。令達は無事に辿り着き、高級車が立ち並ぶ聖心学園に辿り着いた。
 卒業して何年か経つが相変わらず豪華な建物だった。正直、自分の今通っている大学よりも大きいし綺麗だ。
 そして、碧の手をとって受け付けを済ませると学年が違う為に一旦律と時雨と別行動を取るようになった。
 巨大なホールには様々な年齢層の人間が居る。この場に居る人間の半分が卒業生だと思うとやはり歴史のある学校なんだと思う。
 何人か昔のクラスメイトとすれ違ったが、何故か全員妙にぎこちない挨拶で去っていく。
 何かしたかな? と思うも、大して仲良くなかった事を思い出し令と碧は共通の友人を探した。
 そして、ホールの奥の方を見ていると、

「令!」

 と呼ばれ振り向く。そこには高校から同じ大学にまで通っている染谷の姿があった。
 
「おー、この前は悪かったね」

 と挨拶し、手を打ちつけた。そして染谷は令の傍らに居る碧の姿を見ると、

「……お前、ロリコンだったのか」

「違うよ。彼女は僕よりも年上だよ。ね、碧ちゃん」

 令がそう言うと、碧は頭を下げて、

「……はじめまして、風早碧です」

 と挨拶した。流石に染谷もこれは失礼だと思ったのか、慌てて頭を下げて謝罪を始めた。
 令にはそれが面白くて仕方が無い。染谷が碧の本当の年齢を知った時の顔が見たくなる。
 それから三人で話していると、

「おー! 染谷やん」

 染谷の肩をぶっ叩きワイングラスを抱えた紫と太郎が上機嫌で現れた。
 最初は誰だかわからなさそうにしていた染谷だが、やがて食い入るように見つめた後、

「……ま、まさか鳴神か!?」

「そうやでー。お前、毎日大学で会ってるやんか」

「うわ。マジでわからねぇわ。……そ、その後ろに居るのはお前の彼氏か?」

 太郎を見た瞬間、一瞬染谷が脅えたような顔をした。令や紫は慣れているものの、太郎は人相が良くない。
 しかも格好がラフな感じの為に、何処かの組の人間にも見える。
 だが、太郎はそんな事には全く気づかずに何時ものようにニッと笑うと、

「紫の彼氏の太郎だ。……痛っ! 痛ぇよ姐さん。嘘嘘冗談です! 弟の太郎です」

 紫に思い切り抓られて太郎は涙ながらに訂正した。紫は「冗談いうな」と少し顔を赤らめ
 ながら令をチラリと見た後、太郎にヘッドロックをかけた。
 それを見て相変わらずだなと笑う染谷。令自身も何時もの光景なのに何故か笑えてしまった。











 


 律は入ってすぐに時雨と別れると、化粧室に向かったフリをして校舎内へと進入。
 かなり前に卒業したのだが、校舎は相変わらずだった。違うのは、男子トイレが増えた事ぐらいだろう。
 懐かしい母校の匂いを感じながら律は階段を上がっていく。高校の頃もそうだった。
 暇さえあれば何時もここの階段を上っていた気がする。この上にある場所は、律のお気に入りの場所だった。
 四階に設置されたテラスは学校全体を見渡す事が出来、遠くの山々も美しく見える。
 授業がめんどくさかったり、嫌な事があったりすると良くテラスへと上った。
 律の学園生活はその場所に始まり、その場所に終わったと言ってもいい。
 階段を上り終え、相変わらず立ち入り禁止の立て札がかかっているロープを超えると、予想していた通り、鍵が開いている。
 
(やはり……か)

 ゆっくりとドアを開けると、満点の夜空が広がっていた。全くあの頃と変わっていない。
 まるで高校時代に戻ったかのように、ここに来るのはいつも通り今日も二番手だった。
 何故か何時も彼女の方が先に居た。それが悔しくて、彼女と様々な事で張り合った。
 そんな思い出を胸に律は口を開くと、

「やっぱり此処か。相変わらずだね──凛」

 テラスの一番奥には、あの頃と同じように一之瀬凛がムスっとした顔で景色を眺めていた。
 律が此処に来るのは大方予想できていたのだろう。動じる事無くゆっくりと振り向き、

「久しぶりですわね──律さん」

 数年ぶりに再会したライバル同士はただ獰猛に笑うと、そう挨拶をした。
 言いたい事は沢山ある。とりあえず、律はまずは世間話から始めようと決めると、

「本当に久しぶりだ。今回の私の学年の幹事はお前だったからね。こうやって旧交を温めにきたのだよ」

「そうですか。貴女、一人称が変わりましたわね。やっぱり、結婚した影響でしょうか?」

「お陰様で二人の子供に恵まれたよ。結婚式にはお前も呼んだんだぞ。来てくれても良かったじゃないか」

「どうしても外せない、大切な用事がありましたので。祝電は送ったじゃないですか」

「ほぉ、家の用事かね?」

「世界で一番大切な子の、運動会だったんですよ」

「なら仕方ないか。いやぁ、私の世界で一番カッコいい旦那様をお前にも見せてやりたかったよ。
 本当にカッコいいんだぞ。お前は高校の頃幾ら私が説明してもどうでも良さそうに聞いていたが」

「なら、後で挨拶に伺いますよ。今日は来ているんでしょう?」

「ああ。急がなくて構わない。どうせ、この後毎日会える筈だぞ────ユニオンの本部でだけどな」

 律は重槍を顕現させて、凛へと向けた。対する凛の表情に変化は無い。ただ、淡々と律だけを見ている。
 律も悲しみを堪えているような表情で凛の言葉を待っている。

「……私の親友の話、覚えてますか?」

「……あ、ああ。確か、希だっけか? 戒が当時付き合っていた女の子だったな。
 彼女は今、何をしているのだろうかね。素晴らしい笑顔の持ち主だったと記憶してるよ」

「……消えちゃいました。反逆の十文字事件の時にね」

「──っ!? あの事件か。アレは、お前たち十文字派が総力を上げてもみ消しに走ってたよな。
 何だ。あの時に何かあったのか? 凛、全て話せ。今ならまだ力になれるかもしれない」

 律がそう言うと、凛はくすりと笑いを漏らす。嘲笑ではない、何かを愛でる様な笑い方だった。

「あらあら。随分とお優しくなりましたのね」

「ふざけてる場合じゃない。いいか、凛。私はな──」

「結構です。律さんには絶対理解できませんよ。私がこの十年間どんな思いで生きてきたかなんて誰もわかるわけがないです。
 全部、私が悪い。私は贖罪の為だけに生きているから。その贖罪だって、単なる自己満足。
 自分を救いたいのよ。そんな厭らしくて、浅ましい存在なんです。私はね……」

「凛……」

「今日だって本当は来るつもりは無かったの。此処に保存されれいる結晶は、仲間に取りに行ってもらった。
 律さんを此処で待っていたのだってただの時間稼ぎ。貴女は私に友情を少しは感じて
 いたみたいだけど。私はそれすらも利用した。本当に、酷い女よね」

「……知っていたのか」

「だって、貴女が用事も無いのに何度も訪れているんですもの。少しは疑うでしょうに」

 神々の黄昏事件の際にユグドラシルから回収した結晶の幾つかを律は此処の学長に保存してもらっていた。
 この学校には式神使いの名家出身の子が入学してくるのも多い。それの修練の為に悪鬼を発生する必要があったのだった。
 律がこの学校に通っていた時期は、まだコアとか結晶については研究が進んでいなかった為に、森の中を歩き回って探していたのだが、
 今ではこの学校の地下に特別室を作って、何人かの式神使いの立会いの下に訓練が行われているのだった。

「凛……」

 律が携帯を取り出し、時雨と令に連絡しようとすると、凛は傀儡の力を発動。
 律の目に「携帯を投げ捨てろ」と命令を下す。ほんの一瞬の隙をついた出来事だった。
 慌てて抗った時にはもう遅い。律の携帯は自らの手によってテラスの奥まで投げ捨てられてしまう。
 
「貴女の事は嫌いじゃなかったわ──この学校で、私と対等に話してくれた始めての人だったから」

 凛が悲しそうにそう呟くと、テラスの入り口のドアが開いて黒装束を着た人間が入ってきた。
 いや──人間じゃない。そこに居たのは完全に統制された人型悪鬼。ナイフや刀まで装備している。
 凛の傀儡の力で操っているのか? と予想するも、確証は無い。どれだけやれるのかすらわからない。
 だが、律はそんな不安を取り払うように獰猛に笑うと、

「私に武器を向けるとは、いい度胸だな」

 重槍を振り回し、地面に一度叩きつけると臨戦態勢へと入った。
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