ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
寒いですね。
執筆していると指の感覚が無くなります。
暖房つけっぱなのにさ……

そんなわけで、次回の投稿も全くの未定です。
七話ぐらい先までは書けているのですが
Daysとファーストコンタクトの作業が全くすすまないのと
二月から忙しくて本当に何時投稿できるかわからないので。

申し訳ありませんが、スローペースで行かせて頂きます。


個人的な目標としては、

PAST最終話よりも前に、
Daysの書きたい話を全部投稿しておきたいのです。


これからもこの緋色の眼シリーズをよろしくお願いします。
第18話:このクソったれな世界で一番大事なアイツの為なら
 万里は千里と途中で別れると、一度自室へと戻った。そして、部屋に置いてあった一振りの太刀を見据える。
 全体で三メートル程の人間には扱えないような太刀だ。だが、重さは殆ど感じない。
 そういう風に作られているのだ。この太刀の名は、布都御魂。魔具の一族の長・十文字戒が作った最高の魔具の一つ。
 万里の剣の才能に惚れ込んだ戒が、万里の十五歳の誕生日に送ったものである。
 その力は絶大。まだ自分がこの太刀の全ての力を引き出せたとは思えないが、自分でも恐ろしいぐらいの力は出せる。

「……大丈夫」

 自分に言い聞かせるようにそう呟くと、万里は一度、布都御魂を振った。──早い。
 神速の速さで放たれた斬撃は一瞬にして屋敷の壁を切断し、大きな穴を開けた。
 そこから見えるのは、ユニオンと二階堂が争いを繰り広げている場面。
 二階堂は戦闘面では十名家の中でも、強い方とは言えない。その為か、結構押されている雰囲気があった。
 何より、今回来ているユニオンの人間達はかなり鍛えられていた。剣を主流として使う隊のようだが、
 同じ剣を使う万里から見ても、技巧がかなり優れていると感じる。

「ん……」

 時計を見つめ、その後遠くの空を見つめる。そこから何かを判断したのか、万里は呼吸を落ち着け、式神を発動。
 ボッという音と共に、万里の周囲に炎が生まれた。それはすぐに形を成すようにして集まり、万里の背中に翼を作り上げた。
 これが、万里の式神【炎翼】。力としてはそんなに珍しいものではないが、万里にとっては最高の相棒の一つ。
 そして更に狂乱の力を発動させ、万里は落下するようにして地上へと落ちていった。

「行きますっ!」

 地面スレスレで体勢を立て直し、低空飛行でユニオン側へと突っ込んでいく。
 物凄い速さで万里が通過した後には、遅れて炎のラインが出来上がり、ユニオンをかく乱していく。
 そして、体勢を崩した所に高速移動しながら狙いを定め、炎の羽を撃ち飛ばした。
 過去に千島蒼威の戦いを映像で見て、万里自身が真似た技である。実を言うと、数年前までは結構なファンだった。

(……皮肉だよね。今、あの人の息子と敵対してるんだから)

 やはり高度な模倣のお陰か、炎の羽はユニオンにかなりの打撃を与えたようだった。
 その隙を利用してか、二階堂がどんどん攻め込んでいく。勿論、万里に礼は無い。
 そうするのが当然。といったような感じで、二階堂は我先にと力を行使していく。

「ばーか」
 
 もう脅える必要は無い。万里は、チラリと屋敷の方へと視線を送った。
 すると自分の家の部下。三枝の人間と目が合い、お互いとも頷きあう。すると──

「何をもたついている! 貴様ら早く加勢せぬか!」

 二階堂の直系だろうか。いやに偉そうな一人の男が三枝家の人間をそう怒鳴りつけた。
 いい気なもんだ、と万里は思う。仲間ではない。一方的な支配の癖にこんな時だけは助力を請う。
 三枝家の人間もその言い方に不服を覚えたのか、適当な、だが反抗的な態度で二階堂を睨むと、

「うるせぇよ」

 と一言だけ言い放ち、ゆっくりと自身の式神であろう。拳銃型の式神を構えて一発発砲。
 完全に味方だと思っていた二階堂は、そのまま自分が死んだ事すら気がつかないまま絶命した。
 それを機に、次々と三枝家の遠距離型の式神使い達が二階堂に向かって攻撃を始めて、次々と二階堂の人間を殺していく。
 流石のユニオンもこれには慌てたようだった。自分達の理念の一つである無益な殺し合いの調停を思い出したのか、
 次々とその争いに加わってこようとする。だが、そうはさせない。万里がその前に立ちふさがる。

「邪魔しないでください。これは、長い間二階堂に虐げられてきた三枝の反乱なんですから」

「そ、そんなわけにはいかない。明らかにこれは──」

「貴方達他人に何がわかるって言うんですか」

 せめてもの情けとして、鞘に収まったままの布都御魂で殴りつけるとその場に昏倒させた。
 それを皮切りとして、ユニオンが再び戦闘態勢に入り、万里を囲むようにして包囲する。
 五人ほどのそれなりに強力な式神使いに囲まれる万里。だが、全く動じていない。

「……仕方ないですね」
 
 布都御魂の鞘に手をかける。三メートル故の長さか、抜刀術には向かないこの太刀。
 殆ど投げ捨てるようにして鞘から刀身を引き抜くと、そこには美しい刃が輝いている。
 一瞬の躊躇の後、ユニオンの隊員達がそれぞれの式神の力を発動させた。それと同時に万里は布都御魂を大地へと突き刺す。
 ぶわっと一瞬風が起きて、布都御魂の刀身が光ったかと思うと、ユニオン隊員の式神がなくなっていた。
 慌てて再召喚しようとするも、何故か出てこない。何度やってもいつもの感覚通りにいかない。
 そして、万里はニヤリと笑うと目にも止まらぬ速さで布都御魂を振るい、全員を峰打ちにすると、布都御魂に念じて再び鞘へと刀身を収める。

「貴方達の正義もわかるけど……私達にも譲れないものがあるんです」

 と呟いた後、爆音が鳴り響いた。万里や周囲の三枝や二階堂でもない。
 少し離れた場所──先程まで自分達が居た二階堂の応接室の屋根が物凄い勢いで吹き飛んで行き、
 その中からは、巨大な氷の蛇が見える。そして、それから逃げるように空中を舞う黒龍。

「うーちゃん!」

 と慌てた万里が雨龍の下へと向かおうとすると、紅色の閃光が万里の頬を掠めた。
 振り向くと、そこには不機嫌そうな顔の天美運命。しかも、一人ではない。
 他に三人の天美運命が、自分が気絶させたユニオン隊員達を抱えて、出口のほうへと跳んでいく。
 どうせ式神の力だろう。なら敵ではない。そう思い──

「お前達、これはやりすぎ。何人死んだ。何人が泣いたと思う」

「逆に聞きますけど、二階堂の所為で何人の人間が殺されたと思います?
 何人もの女性が泣いてきたと思います? これは、当然の報いです。やっていいのは、やられる覚悟のある人間だけですから」

「それは否定しない。一番気に入らないのは、私達ユニオンを巻き込んだ事。
 内輪の殺し合いなら内輪で済ませるのが筋。何故、今日なの?」

「当たり前じゃないですか。馬鹿な二階堂を後ろから効率よく討つには、戦う相手が必要です。
 元々、ユニオンとは何時か敵対する予定でしたしね。丁度いいかと思ったからです」

「……もういい。じゃあ、こっちも本気で行くから」

 運命は阿修羅姫を抜き放ち、凄まじい速さで万里へと斬りかかった。

















 上空で、二階堂雨龍は流石に焦っていた。過去の千島蒼二と戦った事はある。式神の能力も「黒い氷の小型チェーンソー」と
 わかっていた。だが、久しぶりに手合わせした千島蒼二はそんな常識を、全て覆すような力を手に入れていた。
 先程まで居た部屋──いや、二階堂の屋敷に根付くようにして、巨大な八頭を持つ氷でできた蛇が雨龍を睨みつけている。
 その首の一つに、蒼二は安定した様子で立っていた。幾ら蛇が大きく動こうとも、全く落ちる気配は無い。
 よくよく見てみると、蒼二の履いているブーツには氷が纏わりついており、それのお陰で首に接着しているのであった。

「ナめてかかったな、雨龍。今なら、殺さないぞ」

 蒼二は雨龍を見ながら淡々と言った。そこからは昔のように感情は読み取れない。
 完全に十年ほど前とは別物になっている。何と言ったらいいかわからないが、風格のようなモノがある。
 そしてその瞳は昔のように鮮やかな緋色で、断固たる決意を持った輝きは相変わらず色褪せてない。
 だが──それは自分も同じ。もう、後には引けないし、負けられない。雨龍は再び気合を入れなおすと、

「ハッ! まだだァ! もう勝った気で居るんじゃねーぞ!」

 そのまま蒼二へと向かって特攻。すると、八本のうちの四本の蛇の首が雨龍に狙いを定めて大きな口を開き、
 その中から凄まじい量の氷柱をぶちまける様にして吐き出した。もはや、それは氷柱の嵐。
 四方向から放たれた夥しい量の氷柱は、全て雨龍の居る近くの空間もろとも侵食していく。
 だが、雨龍は心を落ち着けて、予知の力を発動。周囲の状況から、最低限の被害のルートを探し出し、
 道が無ければ火球や自らの拳で切り開いて行く。

「おらぁぁァァッ!」

 全ての氷柱を避けきると、雨龍は首に着地し蒼二へと巨大な爪を閃かせて襲い掛かる。
 蒼二は蛇の首の上を滑るように移動し、中々雨龍を近づけさせない。逆に雨龍は滑る地面に足を取られ、
 自慢の機動力を本来の力通りに発揮できない。最悪な式神に成長しやがった──雨龍はそう舌打ちすると、
 一旦首から飛び跳ねて、再び空を翔けながら蒼二を口から吐く火球で狙い撃つ。

「罪歌ならまだしも、その程度の炎が俺に勝てると思ったか?」

 炎は蒼二の修羅紅雪の一振りによって、あっという間にかき消されてしまった。
 そして、七本の蛇の巨大な口が近づいてきて、雨龍の周囲を囲うようにして止まった。
 流石にこれで一気に氷柱を放出されれば、避けれる可能性は限りなくゼロに近い。
 蒼二は、ゆっくりと修羅紅雪を八頭目の蛇の頭へと突き刺し、

「詰み、だな。降参しろ」

「…………」

「もういいだろ。何があったのかはしらねーけど、これ以上殺して、調和を乱して一体何になる。
 一度、俺達に投降して全て話せ。もし、力になれるんだったら俺達は協力を惜しまないつもりだ。
 流石に、襲撃の責任は取ってもらうけどな」

「…………ハッ。随分、まともな事言うようになったじゃねーか」

「こう見えても、組織の長だ。ハンパなガキのまんまじゃもう居られねーんだよ」

 蒼二がそう言うと、雨龍は声を上げて笑った。それは、何時ものような嫌味な笑いじゃない。
 純粋に、楽しそうに雨龍は笑う。ゲラゲラとではなく、丁寧に、何かを反芻するかのように──

「千島蒼二ィ。テメーは変わったな。死罪六神の頃のテメーたぁ、全く違う。面白れェよお前。
 でも、俺はよォ。馬鹿だからな。────このやり方しか思いつかねーんだわ。
 このクソったれな世界で一番大事なアイツの為なら、こんな命惜しくねェ。だから──こんなトコで終われねェんだよ!」

「……雨龍」

 蒼二は深くため息をつき、力を放出させた。蒼二自身実はかなり動揺している。
 二階堂雨龍のこんな姿を見るのは初めてだった。その目は、今の自分とそっくりだと思う。
 誰かの為に──大切な人の為に、全てを投げ打ってでも叶えなければいけない事がある。
 そんな目。だからこそ──手を抜けない。一人の人間として、一人の愛すべき馬鹿として、
 蒼二は全力で雨龍を潰そうと、全ての力を送り込んだ。

「待ってたぜェ!」

 八頭の蛇が口を開いた瞬間、雨龍は黒龍の顕現を解いた。そして、黒龍の姿が消え
 次に雨龍の体から真っ赤な紋様──コンセプトが飛び出した。まず、それは雨龍の体へと
 刻み込まれ大きく体を変質させていく。体が膨れ上がり、翼が生え、人間としての外見をギリギリ 
 残したまま赤い鱗が雨龍の全身を覆いつくした。そして、変化が終わり雨龍の外見は竜人と呼ぶに相応しい外見へとなっている。

「なっ……!?」

 流石にこれには蒼二も驚いた。だが、もう攻撃は止まらない。八頭の蛇全てから凄まじい量の氷柱が発射されていく。
 雨龍は瞳孔が縦に割れた爬虫類の瞳でそれらを見据えると、再びコンセプトを発動。
 紋様が幾つも出現し、それに氷柱が触れると途端に氷柱が変質し、一匹の氷の龍を形作る。
 最低限自分の身を守るように紋様を集中させ、氷柱を龍へと変えながら飛翔する雨龍。
 何百という氷の龍が生まれ、途端に形勢はほぼ五分にまで戻ってしまった。

「ハッ。奥の手は最後まで隠しとくもンだぜ?」

「……今回はお前が一枚上手だったな──だが、」

 八頭の龍が氷の龍を食いちぎろうと、物凄い勢いで動き始めた。蒼二も緋眼を発動させて、氷の上を滑っていく。
 
「こっちも、このままじゃ終われねーんだよ! 決着つけるぞ!」
 
 蒼二は修羅紅雪の刀身から長い氷を生み出し、それを刃のように鋭く尖らせ、雨龍の氷の龍を一気に斬り裂いた。
 斬られた龍達は再び蒼二の支配下に戻り、氷柱へと戻るがすぐに雨龍のコンセプトによって再び龍へと変えられてしまう。
 キリがない──そう、同時に判断した二人は、一気に距離を詰めて接近戦へと持ち込んだ。
 蒼二の修羅紅雪と雨龍の変質した体。身体能力は雨龍の方が上のようで、緋眼でも追うのが難しい速さで攻撃をしかける。
 蹴り、爪、あらゆる格闘技の技を使いながら、雨龍は踊るようにして蒼二を追い詰めていく。
 
「……ッ!」

 雨龍は強かった。神威を使う自分の方が圧倒的に有利なはずなのに、追い詰められている。
 自分もまだまだ強さが足りない──そう、自嘲気味に笑うと蒼二は終式を発動。
 一気に氷の地面を蹴り、雨龍の背後へ。雨龍はそれに何とか反応したが、避けきれなかった。
 腕を交差させて修羅紅雪の刃を受け止める。が、そこからどんどん雨龍の体が凍り始めて行った。 

「クソがァッ!」

 口から火炎を吐き、蒼二を一旦遠ざけた。ダメージは無い。蒼二に触れる前に炎は消されてしまった。
 実力は拮抗しているように見えるが、慣れないコンセプトを使用した為に雨龍の体力は急激に消耗していた。
 そろそろ時間の筈──とまで思った所で、二階堂特区内に張られていた結界に異変が起きた。
 空間が歪み、周りの景色を塗りつぶして現れたのは──一之瀬凛の空船。
 それを見ると、蒼二は何かを考えながら雨龍を見据え、

「十名家が噛んでいたのはやはり本当らしいな。雨龍。お前達の目的は何なんだ?」

「約束ってヤツかね? どいつもこいつも譲れねーもんがあンだよ」

「……ふん。なら、あいつらからも事情聴取しなきゃな!」

 蒼二はそう言うと、八頭の蛇を空船へと向けようとした。だが、突然氷の蛇が消えた。
 何の前触れも無く存在が消え、一気に下降していく蒼二。すぐに修羅紅雪の力を再び発動させ、氷の足場を作ると
 二階堂の屋敷の屋根にどうにか着地した。下を見ると、運命が片膝をついて血を流している。
 その前をフラフラと、頼りない足取りで三枝万里が歩いていた。万里は、一度蒼二を睨みつけ、

「邪魔するなら、容赦はしません」

 そう言い残し、空船から下りてきた黒い紐に掴まって一気に引き上げられて行ってしまった。
 少し離れた場所からはジェットスキーが何故か浮かび上がり、それには三枝千里が乗っている。
 完全にこちらの敗北だった。無駄に兵力を使わされ、二階堂の大量虐殺も止められなかった。
 周りには死体が溢れている。唯一の救いは、ユニオン側の隊員の死体が見当たらない事。
 だが、蒼二は一度歯を食いしばると、腹立たしそうに地面を一回蹴った。









 雨龍は空船に乗り込むと、内蔵されているシャワーを使い、
 壁に手を突きながら中を歩いていた。兎に角、これで何とかひと段落着いた。
 後は戒や他の十名家に任せて、今は何も考えずに寝転びたい。そんな衝動に駆られる。
 フラフラとした足取りで空船に割り当てられた自分の部屋まで歩き、ドアを開けると、

「万里……」

 ベッドに真剣な表情をした万里が座っていた。しかも、手には何かを持っている。
 何時もとは違う万里の様子に不安を覚える雨龍。そして、万里はゆっくりと雨龍を見据え、

「うーちゃん……私、妊娠しちゃったみたい」

 そう震える声で呟いた。
緋色の眼シリーズキャラ投票
筆者のブログ


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。