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次回は……二月かな?
何かしばらくは、二週間に一回ぐらいのペースになりそうです。

後、緋色の眼のプロローグと一話書き直しました。
蒼二の心理描写が結構増えてる感じです。
前よりは格段にわかりやすいんじゃないかと。
ちびちびと直して行きたいと思ってます。

また読んで頂けたら幸いです。

第17話:楽に死ねると思うなよ
 二階堂の屋敷は変わった屋敷だった。巨大な庭を囲むようにして、無骨な建物が三棟程立ち並び、
 それよりも更に小さな規模の建物が監視塔のように幾つか存在している。
 無駄に豪奢な作りの庭を進みながら、蒼二はそんな感想を抱いた。暖かい感じはしない。
 一見綺麗ではあるが、何か得たいのしれない嫌悪感のようなものを感じる家だった。
 しばらく歩いて行ると、玄関が見えた。そして、その前には一人の女が立っている。

「こんにちは、ユニオンの千島蒼二です」

 先に挨拶をしたのは蒼二。女はその名前を聞くと、一瞬顔を顰め、だが次の瞬間には無邪気な笑顔が戻り、

「こんにちは。三枝家次女、三枝万里です。龍一様達がお待ちするお部屋まで案内させて頂きます」

 そう言うとくるりと踵を返し、ドアを開けた。万里に促されて中へ入ると、やはり中も豪華。
 「こちらになります」と告げられたので蒼二は調度品類から目を離すと、運命達と共に万里の後へと続いた。
 階段を登り、長い廊下をしばらく歩いて行くと、万里が立ち止まり、

「こちらのお部屋になります。どうぞ」

 半分まで開けられたノブを掴み、中へと入る。少し緊張したが、いきなり攻撃とかは無かった。
 眼前には大きなソファーがあった。そこに座っているのは初老の男と、三十代半ばの男。
 顔には見覚えがある。二階堂家の前頭首二階堂竜男と現頭首、二階堂龍一。
 そのソファーの傍らには何故か傷だらけの雨龍と、三枝の長女、三枝千里が立っていた。
 視線で促されるままに、対面のソファーに蒼二が座った。運命と遥緋は何時でも動けるように、
 ソファーの両端に立ってそのまま周囲に警戒を払う。そして──

「はじめまして。ユニオン代表で来ました、千島蒼二です」

「はじめましてだな。二階堂の前頭首、二階堂竜男だ。隣に居るのは、現頭首の龍一。
 そこに控えているのが三男の雨龍だ。今回は三男がそちらに迷惑をおかけしたようだ。
 まずは、それをお詫びしたい」

「ええ。流石に、九我山と浅葱がやられてしまってはこちらも面子が立ちません。
 こちらとしてはそれ相応の謝罪と、雨龍と千里と万里。三人から事情を聞きたいのですが」

「構わない。謝礼もそれなりの額を用意した。後日、浅葱と九我山ともその辺りを
 話し合うつもりだ。…………雨龍。千島殿に全てをお話しろ。この二階堂の恥さらしが!」

 竜男は突然激昂し、雨龍を睨んだ。だが、雨龍は全く動じていない。侮辱されても、
 大した表情の変化すら見せずに、そのまま飄々と立っている。
 その態度を不遜だと思ったのか、蒼二が何かを言う前に、黙っていた龍一が声をあげた。

「雨龍。お前なんだその態度は……」

「失礼。元々こういう人間でして」

 軽く龍一をあしらうと、雨龍は蒼二と目を合わせた。何回か会った事がある二人。
 殺し合いをした事もある。だが、蒼二は雨龍の事が噂ほど酷い奴では無い事を知っていた。
 暴力的で人を破滅へと追い込む二階堂雨龍は、表面上のものでしかない。
 会うたびに同族というか、何か似たような空気を蒼二は雨龍に感じてしまう。

「久しぶりだな。千島蒼二。テメーがユニオンの頭だって知った時には、流石に驚いたぜ」

「そうか。雨龍、お前がそこに居る三枝姉妹と共に、ユニオンの傘下でもある九我山と浅葱を襲ったというのは本当か?」

「そうだぜ。後は一之瀬の凛。お前ンとこの榛名も居たぜ。ま、ありゃ偽者だろうけどよ」

「……偽者?」

「その辺はよく知らねェ。だが、ありゃ榛名神璽じゃねーわ。万里と千里と凛が近くに居て、
 口説かねぇなんて、あのこっちの世界随一の女ったらしのする事じゃねェだろ?」

(アイツ……こっちの世界の奴にも有名になったのか)

 榛名神璽は出会ってから十数年経つが、未だに良く分からない部分が多い。
 由加の事が一番好きなくせに、女と付き合うのを決して止めなかった。そして由加がいつも
 それに怒って神璽を海底或いは火口に叩き落そうとするのが何時ものパターン。
 もはや楽しんでいるとしか思えないのだが、神璽のその広い女性関係のお陰で、
 ユニオンが意外と助けられているのも事実なので、蒼二も由加も強く注意する事が出来ない。

「そう……か」

「ウチの兄様もよ。折角モノにした女を榛名に取られたらしいぜ。ま、どうせ金と暴力で
 脅して奪ったような女だ。兄様のトコに居るよか、榛名の方が随分マシかもなぁ」

 雨龍は馬鹿にしたように龍一を見た。途端に龍一の顔が赤く染まり、雨龍を睨むが、
 蒼二達の手前どうやら自分を抑えたようだ。竜男も顔を赤くしているところから見て、
 女を神璽に取られたのかもしれない。なんとなく、蒼二はそんな事を思ってしまう。

「そんな事は後だ。雨龍、何故浅葱と九我山を襲った。何で、お前達にコアが必要なんだ?」

「コア……だと? おい、雨龍。俺はそんな事聞いてないぞ!」

 今度こそ我慢できなくなったようで、龍一は立ち上がると雨龍へと掴みかかった。
 それを冷たい目でジッと睨む雨龍。力を込めて、龍一の手を引き剥がすと、ソファーへと突き飛ばす。
 おかしい──龍一にそんな感情がよぎった。雨龍は今まで自分に逆らった事が一度も無い。
 何故。何故今日に限ってこんなに反抗するのだろうか。考えても答えは出ない。

「兄様。少し落ち着いてください」

 襟元を直しながら雨龍は侮蔑の感情を込めて、龍一を見下ろした。
 そして──懐から大型のリボルバー拳銃を取り出すと、蒼二へと自然な動作で構える。

「──っ!」

 運命が阿修羅姫を引き抜き、それと同時に千里も式神を顕現させて戦闘態勢へと入る。
 全く動じてないのが、張本人の雨龍と蒼二だった。

「これが、答えだといったらどうするよ?」

「馬鹿の称号を進呈するぜ。緋眼使いの俺に、そんなモンが当たると思ってるのか?」

「だろうな」

 雨龍はケラケラと笑って拳銃を弄ぶ、そして一旦は部屋の緊張が解けた。だが──

「ンじゃあ、こっちはどうかなァ?」

 そのまま自然な動作で、雨龍は拳銃を横に向けると、無造作に引き金を引いた。
 ドンッ!という発砲音が響き渡り、弾丸が竜男の顔に命中し、肉片を撒き散らした。
 その瞬間。全員が言葉を失った。何が起きたのか。生温い鮮血だけがとめどなく流れている。

「雨龍……お、お、お前ぇぇぇ!」

 信じられないというような顔で龍一が立ち上がり、だがそのまま硬直してしまう。
 雨龍は何か感慨深そうに拳銃をジッと眺めている。龍一には何の興味すらない。

「せ、千里! 斬れ。この裏切り者をブチ殺せ!」

「……死ぬのは、アンタよ!」

 千里が虚空から刀を引き抜き、目にも止まらぬ速さで龍一の全身に切り傷を負わせた。
 そして、千里の刀が一瞬光ったかと思うと、再び斬撃を放ち、龍一の両腕を吹き飛ばした。

「あああああああああああああああああ!」

「あの人はもっと痛かった筈だッ!」

 そして、千里が龍一の首を跳ね飛ばそうと刀を再び振るおうとすると、飛び込んできた運命が阿修羅姫でそれを阻止した。
 蒼二は式神を発動させ、何時でも動ける体勢で状況を伺っている。
 龍一は放って置いたら失血死してしまうだろう。ゆっくりと、遥緋が傷を治そうと近づいていく。

「動くな。千島遥緋」

 遥緋の眼前に巨大な黒い鉄板を合わせて作られたような竜が現れた。それこそ、二階堂雨龍の式神・黒龍。
 黒龍は遥緋が一瞬驚いて隙を作った瞬間に、龍一の体を持ち上げ、龍一の顔に自身の顔を近づけると。

「十数年だ……貴様を殺すこの時をずっと雨龍の中で待っていた!
 我が主を傷つけ、主の友を傷つけてきた貴様……楽に死ねると思うなよ」
 
 黒龍は手に力を込めて龍一の体の骨をへし折っていく。その度に絶叫が部屋に響き渡り、出血で綺麗だった絨毯に赤い染みが広がっていく。
 そして──

「黒龍。そろそろ仕上げに入りな」

「おう」

 黒龍は大きく振りかぶって、ぐちゃぐちゃの龍一の体を窓に向かって投げ捨てた。
 大きな音が響き渡り、下へと落下していく龍一。その体に向かって、火球を大量に浴びせかけた。
 物凄い勢いで龍一の体は燃え、そのまま下にあった大きな池へと落下していった。
 
「ハハハハハハハハ。いいぜぇ。万里、千里。もう戻れねェが──それでいいな?」

「はい!」

「勿論よ」

 楽しそうに雨龍は笑うと、懐からリモコンを取り出し、全てのボタンを同時に押した。
 すると、事前に二階堂の屋敷に仕掛けておいたあらゆる爆弾が一気に作動し、そこら中で爆音や悲鳴が響き渡った。
 完全にパニックに陥った他の二階堂は敵襲だと完全に勘違いし、戦闘態勢に入っていく。
 それこそが、雨龍の狙い。頭首が殺されれば確実にユニオンの仕業だと思うだろう。
 現に、外に居たユニオンの部隊には既に攻撃が及んでいた。

「遥緋! 運命! 外の鎮圧は任せた。俺は此処で雨龍を捉える」

「うん。任せて」

「了解」

 運命は九本の尾をズボンのスリットから出して、そこから狐砲を放ち天井を吹き飛ばした。
 そして遥緋の体を抱えて、庭の方へと落ちていった。
 蒼二はゆっくりと立ち上がり、修羅雪を虚空から抜き放つと雨龍を睨みつけた。

「千里、万里。お前達も行け。あいつらに鎮圧されたら計画が大幅に狂う」

「うん!」

「……万里。貴女に片方任せるわ。仕留めろとは言わないけど、しばらく動けなくしてやりなさい」

「は、はい!」

 久しぶりに姉に何かを頼まれて、とても嬉しそうに万里は返事をした。
 千里はまだ何かを言いたそうにしていたが、敢えて何も言わずに狂乱の力を発動させると、1階へと降りていった。万里もそれに続く。
 そして、部屋に残ったのは黒龍と雨龍と、蒼二の二人と一匹。

「雨龍……お前こんな事して。流石にもう、俺らにもフォローは出来ないぞ」

「お前が人の事が言えるのか。元、死罪六神の千島蒼二君よォ」

「……確かに、そうだな。だが、俺は今はユニオンの長だ。残念だが、お前を殺す。
 またはユニオンに身柄を拘束させてもらうぞ。これ以上、犠牲を増やさないためにもな」

「ハッ。やってみやがれ。俺は負けねェ。テメェも色々背負ってンだろうが、こっちも世界で一番大事な奴の人生がかかってンでなァ!」」

 そして、黒龍に吸い込まれるようにして雨龍と黒龍が一体化した瞬間、蒼二と雨龍は同時に動き、それぞれの式神がぶつかり合った。







 

 庭に下りると、運命と遥緋はこれからの事を短く話し合った。

「遥緋。私は部隊の方に向かう。お前なら、二階堂を殆ど傷つけずに無効化できるしね」

「ん。わかった」

 運命はそう言うと、再び大きく跳躍し、建物を飛び越えて行ってしまう。
 すると「こっちだ」という声と共に、何人かの二階堂が遥緋を囲むようにして、包囲した。
 皆気が動転して目先の敵しか見えていない。もはや、言葉が通じるとは思えない。
 遥緋は、ベルトに吊り下げていた小物入れから銀色の破片を取り出すと、輪廻転生の力を発動させた。
 途端に銀色の破片が物凄い勢いで元の形に再生されていき、三メートル以上の鉄の棒へとなった。

「行きますよ!」

 緋眼を発動させ、棒を振り回しながら二階堂へと接近した。突き、なぎ払い、次々と昏倒させていく。
 すると、上空から鉄の破片が降り注いできた。敵の式神の力だと判断すると、自分の周囲に死滅のコンセプトを発動。
 次々と存在そのものが殺されていき、遥緋の傍には塵一つ残らない。そして、一旦棒から手を離し、片手を二階堂の術者達にかざすと、

「ごめんなさい」

 三十秒程で全ての構成まで全て読み切り、空間自体に働きかかける分解を発動。
 というよりも、空間全てを認識してそこの異物である式神に狙いを定めるとでもいうのか。
 遥緋の絶対防御によって手をこまねいていた術者達は一気に式神を分解され、バタバタと倒れていった。

「さて、次は……」

 振り返ると、三枝千里が立っていた。持っている刀からは血が滴っている。
 先程発光した妙な刀だ。多分、式神だろうと予想すると、遥緋は身を低くして走った。
 千里同じく走った。遥緋は棒を一度分解し、粒子状にまで戻すと再びそれを再生。
 今度は一メートル半程度で再生を終わらせ、長さを調節。千里の間合いに入らないようにしながら、慎重に棒を振るう。

「ユニオン最凶の、千島遥緋か」

「今は、四条ですけどね」

 狂乱を発動させ、身体能力を上げても遥緋の棒の動きを見切るのは剣士である千里にも難しい。
 万里なら一瞬で見切れるだろうな。と心の隅で思い、表情に出ないようにして笑う。
 そして自身の式神【乖離】の力を発動させ、一気に乖離で棒を断ち切った。
 乖離の力は、発光した瞬間にどんなモノであろうと断ち切ってしまうという厄介な力。
 一気に遥緋に間合いを詰め、斬ろうとしたのだが、その瞬間、遥緋の姿が消えた。
 敢え無く空振りし、後ろからの殺気を感じる。

「ッ──!」

 そのまま回転するようにして、乖離を振りまわすと何時の間にか遥緋が背後におり、棒で乖離を受け止める。
 乖離の切断の力を発動させようとしたが、遥緋の棒の方が早かった。
 千里の斬撃を受け流し、そのまま一度流れにそって回転させると、千里の側頭部に思い切りのいい攻撃が来た。

「痛っ──」

 そのまま吹き飛ばされるも、千里はすぐに体勢を立て直した。流石に、強い。
 ユニオンでも最強クラスの式神使いとして、地味だが遥緋はそれなりに有名である。
 事前に得た情報では、神代刹那を直接打ち破ったのは遥緋。あのラグナロクのスルトを
 破ったのも遥緋。単純に考えて、相当な実力者の筈だった。

「あの、降参しませんか? 今ならまだ──」

 そして、かなりの甘ちゃんだ。未だにこの状況を最小限に食い止めようと頑張っている。
 だが、自分達はもう戻るつもりは無い。大切な妹の未来の為。大切だった友達の為。
 千里はこんな所で間誤付いてる暇は無い。強く──もっと強くと自分に問いかけた。

「いいわ、本気の狂乱。見せてあげる」 

 もはや手加減等一切必要ない。狂乱の力を殆ど制御するのを止めると、大地を蹴って千里は走った。
 先程までよりもかなり早い。流石の遥緋も緋眼終式を発動させて、千里の斬撃を避けていく。
 だが、それでも紙一重。元々の凄まじい剣の技巧に加え、狂乱と式神まで上乗せされている。
 刀に纏わりついていた光も、オーラとなって刀身の大きさを変えている。
 
(一気に決着つけなきゃ──)

 そう決意すると、遥緋はもう一度鉄の棒を分解し、粒子化させると再び再生。
 今度は際限なく。元の大きさまでの再生だ。伸びてくると、それを大地に突き刺し、
 遥緋はそのまま棒に掴まって上昇。この鉄棒の本来の長さは──実は三十メートル。
 地上より三十メートル高い場所まで辿り着くと、遥緋はポケットに入っていた破片を全てばら撒き、

「輪廻転生!」

 全ての破片に対し、再生を働きかけた。すると、一つ一つは小さな破片だったのだが、
 次々と巨大な刃や凶器に変化して行き、地面目掛けて物凄い速さで落ちて行き始めた。
 その数、数百程。あらゆる武器が千里の周囲目掛けて勢い良く落ちていく。

(本当に……化け物みたいな女ね)

 乖離に再び光を纏わせ、全てを"切断"してやろうと剣を構えた。やがて、武器が落ちてくる。 
 狂乱の力と自身の剣技を組み合わせて次々と降り注ぐ脅威をぶった切っていく千里。
 そして最後の一つを斬り飛ばすと自分が致命的なミスを犯していた事に気づいた。
 上空で棒に掴まっている遥緋が片手をこちらに向けていたのだ。

「マズイ!」
 
 このままでは遠距離から式神を破壊されてしまう。咄嗟に身を投げ出そうにも今までの戦術からかなり計算高そうだ。
 自分の逃げられる範囲内全ての空間を認識しているのだろう。そして、逃げようにも地面に刺さった数百もの武器が邪魔で逃げれない。 
 本当にしたたかな女だ。千里は遥緋の事を高く評価した。だが、諦めたわけではない。

「はぁぁぁぁっ!」
 
 斬撃が届かないならば、届かせればいい。そう式神に意思を込め、乖離を振った。
 すると乖離に纏わりついていたオーラが、弧状に変化し上空目掛けて飛んでいく。
 上空に居た流石の遥緋もこれには焦った。発動するか、否か。そのタイミングに迷う。
 すると、オーラが遥緋の掴まっていた棒の中間地点に触れ、棒が切断された。
 更にオーラはそのまま上昇し、遥緋の右肩にを斬り裂いて空へと消えていく。
 集中が乱れた遥緋は、不完全なまま分解を発動。放たれた巨大な力が地面で分解を始め 
 大きく砂埃が舞い上がる。そして、支えを失った遥緋も肩から血を流しながら地面へと落ちて行った。
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