キラ☆キラにマジ泣きしてしまいまして。
18歳未満の方々にはアレですが。
千島蒼威を「傷だらけの遠い明日」から知っている人の中には
現在やってる人も居るんではないでしょうか。
兎に角笑って泣けるゲームでした。
そんなわけで、相変わらず次回更新は未定です。
Daysの郁人になる線が濃厚です。
第13話:蛇 - Basilisk -
「……わぁ、久しぶり」
「なぁなぁ、お前らこの子と知り合いなのか?」
少女と神璽の会話が重なり、更に場が混乱に陥る。令はもう何がなんだかわからないし。
紫は紫で懐かしそうな顔で、少女だけを見ているし、太郎は暇そうに海を眺めている。
そんな状況を打破しようと思ったのか、颯太は神璽の前へとゆっくり歩いた。
「お、颯太じゃん。久しぶり」
神璽は笑って颯太へと手を差し伸べたが、颯太は何か複雑そうな表情で、無視した。
更に放心状態の神璽へと向かって、一発やや強めの蹴りをお見舞いする。
「痛っ! お前、何するんだよ!」
「もう少しすれば、俺が何故蹴ったかがわかる。とりあえず神璽、あっちの建物の行け」
「あ? 何? あそこで俺の歓迎パーティでもやってるの?」
「いいから! 俺、キレる前にさっさと行けっ! 中に由加居る!」
「はっはぃぃ!」
普段穏やかな颯太の剣幕に驚いたのか、神璽は乱れた服もそのままで建物へと駆け出していった。
そして神璽の姿が見えなくなると、今度は硬直したままの令達の方へと向き直り、
「紫、碧。続けて良いぞ」
「何かもうワケがわからないんだけど、紫ちゃん。その女の子は誰?」
「あー……こいつは、風早碧。さっき話に出たあたしの妹分なんよ」
「……私の方が、年上。……外見で決めないで」
「あーうっさい! 鬼神なんやから一年も二年も生まれた差なんか関係ないやろ!
アンタがそんな中途半端な年齢で成長を止めるから、ややこしくなるんやろうが!」
「……肌は、女のいのち」
「何やコラァ! まるで、あたしの肌があんたよか老けてるみたいやんか!」
言い合いを続ける紫と碧と呼ばれた少女。大体分かったのは、彼女も鬼神であると言う事。
令は頭を掻いて、太郎の方を見た。──完全にこちらの事には興味ない様で、炎で遊んでいる。
とりあえず、挨拶ぐらいしておこうと思った令は、碧の前まで歩いて行った。
「……紫。この子、誰?」
「令や。十名家に九我山っておったろ? そこの長男で、あたしのパートナーや」
「えっと。九我山令です。お名前は……風早碧さんでよろしいんですよね?」
「……うん。紫がきっとお世話になってます。……紫のお姉さん代わりの、風早碧です。
……この前まで、海外で何でも屋のお仕事をしていました。」
「えっと……という事は、貴女も雷神の鬼神で?」
「……私、風神の鬼神です。……雷神と風神の一族は仲良かったんです。……母親同士が双子なので
人間の世界の世界の関係で言うなら、私と紫は従姉妹同士となります。
……十数年前にあったとある喧嘩の影響で、私と紫は海外で離れ離れになってしまい、ずっと探してたんです」
「はぁ、なる程。……てか、紫ちゃん。ずっとウチに居候してて、碧さんを探そうとすらしなかったよね」
「だって、百年近く一緒に居たんやで。いい加減、そいつの顔も見飽きたわ」
「……相変わらず素直じゃないな。……私に会えて、おしっこちびりそうなぐらい嬉しい癖に」
「そんな事あるかいボケェ!」
再び言い合いを始めた紫と碧。流石に仲裁に入る気力も体力も残っていない令は、颯太の傍まで歩くと、
「颯太兄ちゃん。……全部、話してくれるよね?」
「ああ」
「その口ぶりからすると、久しぶりに会った僕の成長を見てみたかったのかな?
だから、颯太兄ちゃんはわざと僕を試すような事をして──」
「いや、違う。少し、それもあった。でも、本当は……ストレス解消に、誰かと喧嘩したかっただけ」
「え……」
「一応の事情は、仕方ないから話してやる。あっちも、当分終わりそうにないし」
颯太と令は未だに言い合いを続けている紫と碧の方を見た。何時の間にか、太郎も巻き込まれているようで、
紫と碧の真ん中に立たされては、どちらかに暴行を加えられ、殆ど涙目な状態。
それを呆れた目で見つめた後、颯太は一回咳払いをすると、今回の事の発端を語り始めた。
時間は遡り、由加は建物の中へと入ると奥の方に何か気配を感じた。まだ微弱ではあるが
かなり嫌な感じがする。それでも、今更引くことは出来ない。全てを知る為に此処まできた。
何故、自分が此処を知っているのか。何故、懐かしいと感じてしまうのか、何故、涙が出そうになるのか。
由加自身にはわかっていないものの、先程から歩くたびに様々な感情が込み上げてくる。
壁についた血の染みも、薬品の匂いも何故か懐かしい。そして、直感だけで角を曲がって行くと、何かの監視施設のような場所へ着いた。
「ここは……」
ガラスを飛び越え、少ししたの空間へと降りる。そして、勝手に涙が零れた。
良く分からないが、涙が止まらない。何故泣いているのかもわからない。だが、由加は一度気を引き締めると、涙を堪えた。
「変わらないなぁ。昔から亜矢子ちゃんはすぐに泣き止む子だったね」
由加は弾かれたように背後を振り返った。見ると、畳の敷いてあるスペースの一角。
子供用の机に腰をかけて、一人の人間が笑顔で自分の事を見ていた。男か女か判断が難しい外見。
胸がやや膨らんでいる事から、多分女だろうと由加は予測すると、声をかけた。
「お前、誰?」
「六道紡。君たちが、ずっと探していた六道家の頭首さ」
紡はやや悲しそうにそう呟いた。由加はその発言に目を見開き、硬直した。六道紡。
神々の黄昏事件の際にガルムから名前を聞いて、以後ずっと探していたのだが、消息はついに掴めなかった。
過去に六道特区に乗り込んだ事はあるものの、そこに六道の直系の姿は無く、
下の六道の人間達が人の為の研究を続けていたので、何もしなかったのではあるが、まさかこんな場所に居るとは思わなかった。
「教えて……あの手紙は何なの? 何で、貴女は今頃私たちの前に現れたの?」
「うん。もうすぐわかるから」
紡は机から降りると、由加に近づいて優しく頭を撫でた。不思議と抵抗する気は無かった。
ただ、昔にも同じような事があった。そう思い、由加は目を瞑り、紡は手に力を込め、
「返すね、亜矢子ちゃんの記憶」
「亜矢子、ごめんね。本当に、ごめんね」
「ママ? ねぇ、どこに行くの?」
「……か、かくれんぼよ。亜矢子が鬼ね」
「うん。いーちーにーい、さーんしーい、ごーお、ろーく…………ママ?」
「ゆーいち君。亜矢子ちゃん。今日は何をして遊ぶ?」
「俺、おままごとがしたい」
「嫌だ。勇一はこの前つーちゃんとチューしてたじゃん。あんなのおままごとじゃない」
「子供だなぁ。亜矢子は。夫婦なんだからチューぐらいするだろー」
「勇一の馬鹿!」
「……じゃあさ。今日は私が娘の役をやるから、亜矢子ちゃんがお嫁さんね」
「それなら……やってもいい」
「亜矢子ちゃんもゆーいち君の事、好きなの?」
「うん……つーちゃんも?」
「うん。じゃあ、正々堂々の勝負ね! 勝っても負けても私たちは友達!」
「わかった。私とつーちゃんはずっと友達だからね」
「うん。ゆーいち君も亜矢子ちゃんも私もずっと一緒だから!」
「うん!」
「来い! 早くこっちに来るんだ!」
「おじさん……誰?」
「嫌だよ! ここから離れたくないよ!」
「うるさい。さぁ、急げ!」
「つーちゃん……? 先生は?」
「うそつき」
「つーちゃん?」
「私を一人にしないって言ったのに。約束したのに」
「違うよ。先生がね」
「あんなの先生じゃない! あの人はただの裏切り者なんだから!」
「つーちゃん。何を言ってるの」
「もう、いいよ……二人とも大嫌い!」
────全ての記憶が由加の中から溢れ出した。眼前に居る紡の事も思い出した。
そして全てが繋がった。母親にどう捨てられたのか。その後どうなったのか。
断片的に覚えていた全ての記憶が繋がり、由加は紡を正面から見据えた。
「久しぶり、つーちゃん」
「うん。久しぶり、亜矢子ちゃん」
「つーちゃんが、私の記憶を持ってたの?」
「そうだね。六道の継承の力については知っているだろう? 六道内でしか使えないが、
全ての経験、記憶、知識を他の六道に提供することの出来る便利な力だ。
だけど、私は異端でね。更に、他人の記憶を奪ったり、それを返す事も出来るんだ」
「あの時、先生が私達を渡した時に、つーちゃんは奪ったんだね」
「そうだね。今思えば、私も子供だったよ。怒りに任せて、君たちを糾弾し。
あまつさえ、自分の事を忘れさせて他人になろうとしたんだ。かなりのアホっぷりだ」
紡は自嘲気味に喉を鳴らして笑った。その動作一つにも、懐かしさがこみ上げてくる。
六道紡は見た目や喋り方は子供じみているのに、妙に動作が大人っぽく見える子だった。
「それで、つーちゃんの目的は何なの? 二十年前の勝負は……勇一──神璽をかけての勝負だったよね?」
「そうだね。実はさ。亜矢子ちゃんと勇一君が両思いだというのは薄々感づいていたんだ。
でもね。今になっても、君達は結婚していない。どういう事だい? まだセックスもしてないんだろ?」
「う……」
神璽と由加の関係は、神々の黄昏事件の際に一歩進んだモノになろうとしていたのだが、
その間に様々な事件がおき、更にはユニオン設立の為にかなりの時間を費やして居た為、
まだそういう関係ではない。一番の問題は、神璽の女癖の悪さなのだが、それに関してはもう殴って反省させるのが常となってしまっていた。
そして紡は、妙に顔を赤らめると、恥ずかしそうに付け足した。
「実はさ……」
「何?」
「私、五月の颯太君にプロポーズされたんだ。一年ぐらい前に海外で出会って、一緒に仕事
したんだけどね。何かその過程で惚れられてしまってね……うん。結婚してくれって」
「嘘ぉ!?」
意外だった。あの五月颯太がプロポーズするとはとてもじゃないが想像できない。
だが、それが真実なら何故、彼がこの場に居て自分を此処に呼び寄せたのかがわかる。
由加がそう考えていると、紡は表情を引き締め、更に続けた。
「でもね。私は今でも勇一君の事が好き。亜矢子ちゃんと勝負するって約束もしたしね。
だから、この場に勇一君を呼んでもらうから、決めてもらおう。どっちをお嫁さんにするかをね」
「神璽、ここに来るの?」
「お友達に何週間か前から宅急便で届けられるように頼んどいたんだよ。
ま、それがあったから令をここまでおびき寄せたりしたんだけどね。」
「どういう事?」
「私の友達の依頼はね。鳴神紫と自分を会わせる事。ちょっと調べたらあの雷神の鬼神が
九我山に居るって事はわかったから、後は計画を微調整してこうなるように仕向けたわけさ」
その言葉に由加は怒りが沸いた。その為だけに、九我山と浅葱を襲ってコアを奪った
となれば、流石に由加としても黙ってられない。双方ともまだ死者は出てないものの、
大怪我した人や無関係な人まで傷ついている。そして、由加は、
「その為だけに、浅葱と九我山を襲ったの!? つーちゃん。流石にそれはやりすぎ!」
怒鳴る由加。だが、紡から返ってきた答えは、
「違うよ。あの事件を起こしたのは、全て私の意志だ。決して、ふざけてやったわけじゃない。
真剣に、君たちと敵対することを覚悟しての行動だ。罵るなら罵れば良いよ」
「じゃあ……何でそんな事を……」
紡はくるりと後ろに振り返ると、由加と少し離れた場所で止まり、"力"を発動させた。
凄まじい悪意が周囲に充満し、それら全ては紡の体の中心。胸から発せられている。
嫌な予感がした。由加の記憶では、紡は結晶を移植していなかった筈。
だが、紡の体から出ているのは紛れも無く、自分達と同じ気配。そして、反意思で領域を顕現させた紡は、
「亜矢子ちゃん達の中に入ってるのは、九尾の狐なんだよね? お爺ちゃんがそう言ってた」
「うん。二人で半分になってるけどね……」
「私の中の結晶はね。"バジリスク"っていう西洋じゃ有名な大悪鬼の核なんだ」
「何で、つーちゃんが……」
「私ね。許せないの。この計画を立てた純血達が。あいつらは不老不死の方を求めて、
六道を上手く操ってさ。私達の人生をこんなにしてまで、自己の利益だけを求めてたの。
そこにあるのは保身だけ。知ってる? 私たちが被験者になる前にも何人か居たって事を」
「え……」
「私達は最後の段階の被験者だったの。あらゆる人体実験をして、安全に結晶が移植できる
かも知れない程度まで研究が引き上げられてからのね。私は、それを全て知ってしまった。
継承をする事でね。彼らの苦悶の表情、泣き叫ぶ声。全てが耳にこびりついて離れない」
「そんな……」
「だから、あいつらをぶっ殺してやる為に、私はとある勢力の手伝いをしているの。
何のリスクも背負わず、ただ人を踏み台にして生きてきたあいつらを、この力で殺してやるの!」
紡の目には激しい怒りが浮かんでいた。さっき言っていた継承の力が本当なら、紡が怒る理由も分かる。
自分だって腹立たしい。こんな悲しいのは自分達だけだと思っていたのに。自分達もまた人の犠牲の上に立っていたのだから。
しばらく沈黙が流れた。紡も由加も何も喋らない。昔はあんなに仲が良かったのに。
今では紡が遠く見えた。いや、紡はもっと遠くに感じているのだろうと思う。
自分には神璽が居た。神璽には自分が居た。でも、紡には誰も居なかった。その苦しみがどれ程なのかは容易に想像できる。
自分達の罪も、立場も、嫌な記憶も、全て紡は背負ってくれていた。由加の目に再び涙が浮かぶ、
すると、紡はさっきまでの怒りは何処へやら、といった顔で由加の方を振り向くと、
「さぁ、亜矢子ちゃん。久しぶりに三人揃ったね」
由加が紡の視線の先を見ると、神璽が息を切らせてただ呆然と立っていた。
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