緋色の眼シリーズ最終作です。
これで、緋色の眼という話は終わりになります。
皆様よろしくお願いいたします。
プロローグ
──都内某所・居酒屋。
十数年ほど前の話だ。御崎と八神の戦争という中々に大きな事件があったその一年後。
この国史上例の無い大事件が勃発した。一般的には飛行機墜落事件とされているが、
本当の事実を知る者には、こう呼ばれていた──反逆の十文字事件。
数の十名家の元締め、十文字家の長男、次男、三男、長女、次女が起こしたその事件。
死者は数百人にのぼり、怪我人は千人以上にも達し、一つの町が壊滅した。
「あの事件は酷かったね。うん、私はその頃病院に居たんだけどさ」
情報屋と名乗った女は、そう言うとコップに入っていたビールを一杯あおった。
一介の記者である自分が何故、こんな事件を調べているのかというと、知りたいからだ。
あの飛行機墜落事件は、色々とおかしかった。様々な憶測が飛び交った情報。
ネットの掲示板では、魔王光臨とか非科学的な事まで書いてある始末。
普通なら無視するのであるが、そのどの憶測にも妙な信憑性が全てあったのである。
「病院に居た? おいおい、アンタは全部知ってるって話だったじゃないか。
あの国中が大騒ぎになった事件が何故引き起こされたのか。何故、不問となったのかをな」
「知ってるさ。本人に聞いたからね」
「……本当か?」
「ああ、本当だとも。信じるも信じないも君次第だけどね」
「……話してみてくれ」
「まぁ、待て。まずは契約内容の確認と行こうか。私は報酬として、反逆の十文字事件の真実と、現金で一千万円用意している」
「一千万円は初耳だが……」
「少し経費がかかりそうなんでね。これはすぐに君に差し上げよう。そして、問題の私の依頼だが……」
女は一枚の写真を記者に渡した。まだ年端も行かない少女が、笑顔で写っている写真。
純粋に綺麗だと思った。可愛いかそうでないかではない。笑顔が、綺麗だったのだ。
昔自分が記者を志したときも、同じような写真と記事を見てなりたいと思った。
だが、現実は──と思うと、自重気味に笑ってしまう。
「この子を探してほしい。探すだけで良いんだ。他は何も望まない」
「何で俺なんだ? 探偵でも雇えば良いだろうに」
「君の事は調べさせてもらった。中々のコネクションを持っているようだね。
ヤクザ関係。その他企業諸々。何より、警察関係への強みがある」
「怖い怖い。そこまで調べられているとはな」
「私達は今、正直警察とは接触しにくい。腐った政治家や権力者なら居るんだけどね。
でも、今欲しいのは現場への影響力を持っている者。それで、偶々あの事件を
調べようとしている、君の話を聞いて連絡してみたというわけだよ」
「……わかった。その依頼を受けよう。その子の名前とか情報を教えてもらいたいのだが」
「焦るなよ、早い男は嫌われるぞ。そう、まずは反逆の十文字事件についてだ。
その全てを話し終わったとき、君はその写真の子の情報を手に入れられるだろうね」
そう言うと、女は店員を呼び寄せて更に幾つかの酒と料理を注文した。
「おい……この店はあまり安くないんだぞ」
「安心して、ここは私が出すよ。さっき写真を見た時の一瞬見えた君の輝きに、乾杯」
女──七海遠音は悲しげだが、それを感じさせない笑顔でグラスを打ちつけた。
一人の少年が居た。
その少年は体が弱く、常に寝たきりだった。
少年が成長したある日。不可解な化け物と少年は出会った。
だが化け物は少年の理想とした少女へと姿を変え、献身的に少年の世話をするようになった。
それは、奇跡としか言い様の無い事。やがて、少年は少女に惹かれていき、愛を知る。
愛の為に少年は戦った。どれだけ傷ついても、どれだけ悲しくても少年は戦った。
結果、少年と少女は愛の結晶を育み、そして一つの命が奪われた。
一瞬にして、世界が闇に覆われた。残ったのはどうしようもない怒りと愛の結晶。
少年は怒りのままに最愛の兄妹と周囲を破壊した。容赦なく、ただ泣き叫びながら──
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