まずはセーラー服を要求する、話はそれからだ。
「あ、こんなところに高校の時の制服が…
うわぁまだとってあったんだ、懐かしーっ」
保存状態が良かったらしく、セーラー服は色褪せることなく清潔な白を保っていた
「…ちょっとだけちょっとだけ」
誰に言い訳をしているのか、独り言を言いつつ自室で誰もいないのにきょろきょろと辺りを見回しさっと着替えてウェストをチェック
「っし!いける!! まだまだ小娘なんかに負けないわよ!!
って何よ小娘って、おいおい」
なんて、虚しく独り言のセルフツッコミ
「さ…さて、着替えよ、うん、あはははははは……はぁ」
何とも言えない居た堪れなさを味わいつつも、スカートのファスナーに手を掛けた、その時
「…巫女さまじゃ」
……ん?
「巫女さまじゃ」
「本当じゃっ、巫女さまがご降臨なされた!」
……え?
ふと顔を上げてきょろりと辺りを見回すと
あたしをぐるっと囲むように、人・人・人…
「ひぃっ?!」
えっ、だれっ、え、なにこのひとたちっ、えっ、なんなの?!、どこよここは!
「だだだ、だれあんたたちっ?!」
「「「「うぉぉぉおおおおおおお!!!」」」」
「ひぎゃあ?! ななななによ!!!」
「喜べ皆の衆! 実に580年ぶりの巫女さまのご降臨じゃ!!」
えぇぇえええ?!
巫女って何よ巫女ってぇぇえええええっ!!!
「間違いない、ちぃと色が違うが"せぇらぁふく"じゃ!」
「セ、セーラー服?!」
「ちびっと薹が立っとるが"せぇらぁふく"じゃ!!」
とっ、とうですってぇぇえええええ!!!
「そうさな、すこしばかり化粧が濃いが"せぇらぁふく"じゃな!」
「なんですってこのやろぉぉぉおおおおおお!!!」
「おぉう?! 今代の巫女さまは"つんでれ"じゃ!」
「"ぽいんと"たかいのう!」
ツンデレじゃないわよぉぉぉおおおおおオオオ!!!
岸田篤子(ピー歳)
第23代聖二位として巫女を務め、食糧問題、調理方法、衛生概念、治水の改善に大きく貢献した
歴代の巫女の中でも最も優れた叡智の持ち主と讃えられた彼女は
皆に等しく平等な対応を貫き、広く人々に親しまれた
後世に発見された、彼女に近しかったと思われる人物達の手記や記録によれば
彼女がよく口にする言葉は
"アタシハトシマジャナイ"
"ナニコノシュウチプレイ"
"イツマデせーらーフクキテナキャイケナイノヨ"
の三つであったという
人格者ではあったが、外見や肌、年齢に話題が及ぶとカリカリしはじめ
"ムシャクシャスル"と言っては、感情の捌け口を求めるかの如く布を丸めて作った玉を棒で打ち飛ばし
飛んだ玉はその度毎に彼女の夫君が大層幸福そうな表情で甲斐甲斐しく彼女の元へ持ち帰ったという
今までは正真正銘女子高生しか異世界に招かれていなかった為に年齢相応の知識しかなく
彼女が来るまではインフラ整備はあまり進みませんでした
因みにセーラー服は何歳になろうが関係なく行事のたびに着るはめになりました