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クライシス
作:古河新後



騎士(4)


 敵機のウイグルはガランの姿を捉えていた。

 武装から中距離用と判断。攻撃開始。
 
 急降下し、真上からミサイルのようにガランに接近する。しかし横から接近する敵機のウイグルをセンサーに捉えた。小型ハンドガンをロックオンし発砲してくる。

 ガランよりもウイグルを危険と判断。標的変更し攻撃を開始する。
 
 全身のブーストを起動させ機体を安定させると弾を回避する。

 相手の接近速度が速い。接近戦に移行。
 
 ウイグルはレーザーブレイドを集束すると、突貫してきた敵機のレーザーブレイドを受ける。赤色の火花が眼前ではじけ合う。一方的にはじき返すことができない。敵が繰り出してきた攻撃角度は一番反撃するのが難しい角度なのだ。下手に動けば釣り合っているバランスが崩れ功撃を許してしまう。

 敵はクラスSに近い技量と判断。増援要請。
 
 と、一キロほど離れた所を飛行していたウイグルに指示が入る。その位置からはじけ合う、わずかな光を捉えた。

 了解。敵機確認。これより攻撃を開始する。

 加速。さらに加速。小さい機影が徐々に大きくなってくる。ちょうど敵機の死角に当たる位置だった。

 誘爆の危険あり。射撃武装はキャンセル。接近戦に移行。

 レーザーブレイドを集束し、敵のウイグルに突き出した。

 その瞬間、敵のウイグルは組み合っているウイグルを押すと、美しく弧を描くように空中で反回転し後ろからきたレーザーブレイドを回避する。

 「!」

 あまりにありえない行動に突撃してきたウイグルは止まることができず、味方にレーザーブレイドを突き刺す。次の瞬間、爆発しそれに味方機も巻き込まれ二機同時に空中で爆散する。




 「あっけないわね」

 爆散した敵のウイグルを見ながらリンはクーゼに通信を入れた。

 「確かに今のは、どっからどう見てもあっけなかったな」

 「クーゼ君。本当に今のAクラスなの?」

 クーゼは情報をコンピューターのファイルから取り出し確認する。

 「ああ。まちがいないぞ」

 「ふう。なら本当にあっけないわね」

 と、ウイグルのセンサーに反応が引っかかる。敵機体のガランであった。どうやら接近戦闘用にカスタムされているらしく一直線にクーゼのガランに向かっていた。

 「クーゼ君」

 「ん? なんだ?」

 「敵よ。正面」

 次の瞬間、正面の森林が勢いよく吹き飛び、破壊斧ブレイクアックスを高々と振り上げたガランが出てきた。クーゼはガランを器用に操り、敵の一撃を回避する。元いた場所を破壊斧が粉々に粉砕した。とてつもない破壊力である。さすがは重量武器と言ったところか。まともに食らえば機体は原形をとどめないだろう。だが破壊力があればあるほど次の一撃を繰り出すまでの隙が大きい。ガラン(クーゼ機)は逆手でレーザーブレイドを抜くと一閃が敵ガランの胴体部を通過する。

 「なあ、リン」

 「なに?」

 「本当にAクラス・・・だよな」

 クーゼの背後で敵のガランが爆発する。

 「そうらしいわよ」

 と、リンは返答した。




 「さすがね」

 早くもウイグル二機とガラン一機を撃破した報告をシュメルは受けていた。地上での戦いで空を制するということは敵の位置がすべて明白になり戦局が一気に有利になる。

 「リン。敵の現在地と予測地点を教えてちょうだい」

 「はい。現在ジンと隊長が、ガランとシゼン君が交戦中です」

 「足りないわね。後、一機は?」

 その時、センサーに反応が移る。

 「残りの一機は捜索中です」

 「いや、居たわ」

 次の瞬間、警告音が響く。速度、大きさ、から判断するに高速で接近するのはミサイルだ。

 「私にミサイルで勝負を挑む気?」

 ガラン(シュメル機)は移動車輪ロードモーターを使い氷上の上を滑る様に、次々と飛んでくるミサイルを回避する。

 「そこ!」

 一瞬の間をついて、垂直ミサイルを発射する。爆音と同時に上空高くミサイルが飛び目標地点に次々と落下する。

 木々が吹き飛び視界が広がった。そこには一機のガラン。装備は自分と同じミサイルを主力とした中距離型だ。

 「悪いわね。弾薬は限られてるのよ」

 移動車輪を起動し、正面から接近する。

 敵機は閃光と垂直ミサイルを発射した。瞬時に視界が光で包まれる。

 中距離の機体は武装的に正面からの突貫に弱い。支援する武装は大半が隙の多い物ばかりでウイグルを乗りこなす者なら簡単に避けられる。迎撃装備がない事もないのだが、そのための武装は威力が低く、ジンは平気で突っ込んでこれる程度の威力だ。そのため基本的にはチームを組む方がその力を最大限に発揮できる。もし一対一になってしまったら、敵から距離を取るか、敵をくぎづけにし、弾の着弾時間を稼ぐのが基本的な戦い方である。

 「無駄よ」

 次の瞬間、閃光の中からガラン(シュメル機)は敵機の頭部を掴む。

 「!?」

 敵機はどう対処していいか分からなくなった。閃光はどんな者でも一時的に歩みを止める。なぜなら、物を見るという認識がある以上、それらが一瞬で変わってしまった場合、無意識の内にその場に止まってしまうのだ。ある一つの方法を除いては。

 「捕まえた」

 背後で放たれた垂直ミサイルが元いた位置を襲撃している。シュメルは瞑っていた目を開けると、ハンドショットガンを胴体部に向ける。

 正面から向かえば必ず足止めを打ってくる。そう予想していたシュメルは接近と同時に眼を閉じ余計なことは考えず、目の前の敵にだけ集中したのだ。

 トリガーを引くと無数の鉄球が零距離で敵機に命中する。近づけば近づくほど威力の増すハンドショットガンは一撃で敵機を戦闘不能にした。

 「運が悪かったわね。私以外の相手だったら通じたかもしれないわ」




 密林。北西。そこでザガランとシゼンは戦っていた。

 次々に木が薙ぎ倒されていく。

 「これで!」

 ジン(シゼン機)は超振動剣ソニックソードをガランに振り下ろす。ガランは右腕に装備している盾で受け止めるが、威力を殺しきれずそれごと攻撃を受ける。

 命が尽きたようにガランは機能を停止した。

 「倒したかシゼン?」

 ジン(ザガラン機)が木の間から現れた。

 「はい。リーダーは?」

 「聞くまででもないことを聞くな。俺を誰だと思ってやがる」

 通信で会話をしていると敵機のガランがゆっくりと起き上がる。しかし二人は気づいていない様子だ。

 「ん?」

 「どうした?」

 シゼンは何気なく後ろを振り返ると、そこには超振動剣を振り上げたガランがモニターに映っていた。

 「!?」

 シゼンは咄嗟にアサルトライフル構える。相手は既に振り下ろしている。間に合うか・・・・

 その時、ジン(シゼン機)の脇を弾が抜けて行く。

 飛んで行った弾はガランに命中した。ひるんだガランは半歩後ろに下がる。そこに次々と弾が撃ち込まれ後ろに倒れると爆散した。

 「わーい。撃墜!」

 シゼンとザガランのコアに明るい声が響く。

 「ラヴァン。一機を撃墜するのにそんなに弾を使わないで倒しなさい」

 そこにガラン(アルミ機)とガラン(シュメル機)が現れた。

 「悪いなアルミ。助かった」

 「どういたしまして〜」

 「ちょっと! オード!」

 二人の回線にシュメルが割り込む。

 「アンタね・・・・今のはどっからどう見てもやられてたわよ!! これから【バーンヴェール】が出てくるかもしれないのよ!? 一瞬のミスでも命取りになるの! 分かった!?」

 「・・・はい・・・」

 詰めが甘いのは自分の悪い癖だ。怒られても仕方がない、部隊戦では自分一人のミスで隊全体に迷惑がかかるだけではなく、自分の命も危険になる。

 「みんな揃ってますね」

 ガラン(クーゼ機)が林の中から現れた。上空にウイグル(リン機)が飛行してくる。

 「よし! 所属不明機を拝もうとしようぜ!」

 全員にザガランは通信で意気込みを入れた。




 「みんなやるねぇ〜」

 キラセは敵機の撃墜状況を見ながら言った。

 「味方全機の損傷は、ほとんど0です」

 クルスが後ろで見ているセレグリッドに告げる。

 「半年前とは全員別人だな。ラヴァンもちゃんと部隊に馴染んでる」

 半年前はCクラスの部隊と互角に戦うので精一杯だったが、今はAクラスでは相手にならないようだ。相当実力をつけてきている。

 「これより戦闘プログラムをBに移行する。機体のダウンロードは済んでるか?」

 「完了してます」

 「て、言うか教官。これって本当に存在する機体なんですか?」

 キラセが尋ねる。

 「そうだ」

 「じゃあ、勝つのは難しいですね」

 「そんなことは無い。どんな機体でも、戦い方によっては勝利を収めることが可能だ。現に【バーンヴェール】は負けただろ?」

 「それはそうですけど・・・・・」

 「ま、あいつらがどこまで成長したか見てみようじゃないか」












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