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クライシス
作:古河新後



第十七部隊(2)


 「ザガラン。あんた死にたいの?」
 
 訓練終了後。シュメルは、凄みのある声で自販機の前にいるザガランを睨みつける。だが彼はそんな彼女を全く意に介さない。
 
 「どうした? シュメル。なんか飲むか?」
 
 「あ、じゃあ。烏龍茶で」
 
 「おう」
 
 ザガランは、烏龍茶にスイッチを押す。
 
 「じゃ、なくて! ザガラン! よく聞きなさい!」
 
 再び火山の如く怒りを噴火させる。
 
 「ほい」
 
 シュメルは抛られた烏龍茶をあわてて受け取った。
 
 「あ、ありがと・・・」
 
 フタを開けると口をつけて飲む。
 
 「じゃ、なくて!」
 
 烏龍缶を机に叩きつける。
 
 「アンタ! 隊長としての自覚があるの!?」
 
 溜まっていた怒りをようやくぶつける。
 
 「あるぜ! だが隊長としての自覚じゃねえ!」
 
 「じゃあ、なによ」
 
 ザガランは誇らしげに、
 
 「リーダーとしての自覚だ!」
 
 「はぁ!?」
 
 シュメルの怒りゲージはさらに上昇した。




 「いつもながらに盛大だな・・・」
 
 少し距離を置いて、見ていたクーゼとリンは慣れた様子だった。
 
 「まあ、副隊長が怒るのも無理がないわね」
 
 落ち着いた様子でリンは答える。あの後、ジンは敵本陣に突撃。その様子は、全機確認していただろう。それを援護するような形で各自、役割を無事遂行した。
 
 「でもな、あそこで隊長が突撃してなかったら撤退は難しかったかもな」
 
 「・・・アステロイドでも居たの?」
 
 先ほどのウイグルの戦闘空域からは砲台は確認できても、アステロイドは確認しづらい。そのためクーゼとリンは互いに通信を取り合いながら戦うのが基本であった。
 
 「ああ。正確には射出デッキだったな。だけど隊長が出たおかげで気づいたよ」
 
 クーゼは怒っているシュメルと、誇らしげに何か言っているザガランに眼を移す。
 
 「やっぱ隊長は、隊長だな。部隊全体のことをちゃんと見てる」
 
 「そうね。でもあれは危険すぎると、私も思うわ」
 
 リンの意見にクーゼは微笑を浮かべる。
 
 「まあ、俺たちの部隊にはちょうどいい隊長じゃねえか? やっぱり」
 
 「たしか、シゼン君も隊長の影響を少し受けてるわね」
 
 「あいつも、もともとは突撃タイプだからな」
 
 「フフフ。ウチの部隊をまとめるには、ちょうどいい隊長かもね」
 
 リンは微笑を浮かべる。と―――
 
 「あー疲れた・・・・」
 
 横からシゼンが現れた。
 
 「お疲れさま」
 
 「ラヴァンの戦闘距離は分かったか?」
 
 シゼンは自販機で四人分のお茶を買うと、二人に渡してから返答する。
 
 「ああ、ズバ抜けてる・・・」
 
 「と――。回避は、だろ? それは俺も聞いたぞ」
 
 「違う。回避以上に射撃センスが抜けてるんだよ」
 
 「どのくらい?」
 
 リンが缶に口をつけながら尋ねる。
 
 「信じられんと思うが、高速ミサイルを全部、撃ち落としてた・・・」
 
 その発言にクーゼはお茶を噴き出す。
 
 「ガランの射撃武装でか?」
 
 「正確には狙撃用ライフルだ」
 
 「まぐれじゃねえの?」
 
 「いや。至近距離で見てたし、モニターにも記録が残ってたからな。しかも全部、弾頭を外して撃破してるんだよ。たぶんミサイルの爆発をなるべく抑えるために狙ったんだと思う」
 
 「おいおい。冗談言うなよ。高速ミサイルは最低、秒速百メートルだぞ? 撃ち落とすとしたらエネルギー兵器か・・・・・それ以前にロックオンできねーじゃねえか」
 
 「でも理屈では、説明できるわよ。高速ミサイルの最高速度は秒速三百メートル。対するアステロイドの狙撃武装は秒速四百メートルだからロックオンが追い付かなくてもパイロットの視線で追いかければ、当てることは可能よ」
 
 「・・・・・」
 
 シゼンは先ほどの戦闘のことでクルスと話しているアルミに目を移す。
 
 「ラヴァンさんが視線でミサイルの動きを捉えて打ち落とした。と、考えるのが妥当な線ね。」
 
 「マジかよ・・・」
 
 と、話の終わったアルミは三人の所によってくる。
 
 「あー、疲れちったー」
 
 「ほい、お疲れ」
 
 シゼンがアルミにお茶を渡す。
 
 「わーい。ありがとー」
 
 缶を開けると、ゴクゴクと飲み始める。
 
 「なあ、ラヴァン――」
 
 クーゼが声をかける。
 
 「お前、アステロイドを動かしたことあるか?」
 
 アルミは飲むのを中断すると、んー、と考え込む。
 
 「三回・・・ぐらいかなー」
 
 「ミサイルを撃ち落としたってシゼンから聞いたが―――」
 
 「かんたんだよー。みんなもやってみれば?」
 
 と、笑顔で言う。
 
 「フフ。今度はラヴァンさんと、手合わせを願おうかしら」
 
 男二人が驚く中、リンは苦笑しながらそう言った。












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