アルスヴィド(2)
攻撃と防御。インゼルとイサハラはそれを繰り返していた。もともと高空用の機体であるウイグルを地上用に改良したイサハラは凄まじい速度とパワーを誇っている。次々に繰り出すインゼルの攻撃を巧みに受け流してゆく。そして流した半面で反撃するが、基本性能が高いインゼルはその攻撃に次々と対応し防いでゆく。あまりにも高レベルなこの戦いは実際に剣を交えている二機にしか理解できない速度であった。
「わざわざ機体に乗る時間をくれるたぁ。ずいぶん余裕かましてくれんじゃねえか!」
めぐるしい攻防の中でザガランがシバールにスピーカーで話しかけた。
「ふんっ。無防備の貴様らを倒したところで、何の戦果にもなりはしない。聖地カイラスの戦士は何より名誉を重んじるのだ!」
イサハラの装甲の一部が開き、そこからミサイルが飛び出してきた。
インゼルは瞬時に誘導範囲外にブーストを使い高々と飛びあがる。
「聖地だと!?」
「たぶん奴らの本拠地だよ。リーダー!」
その言葉を聞いたシバールは、即座に否定する。
「本拠地だと? そんな言葉一つで表せるほど単純なモノではない!!」
イサハラはバーニアを全開にし、降下しているインゼルに斬りかかった。
「ちぃ!」
両手で刃を挟み、なんとか斬られる寸前で受け止める。
「聖地カイラスこそ、我々『賢族』が治める。このルナテレスで最初の文明なのだ!」
そのままイサハラはブーストを最大にし、地面にインゼルを叩きつける。
「『賢族』・・・・・?」
「文明だと!?」
インゼルは一瞬の隙を見抜き、鳴月を抜くと、着地と同時に超振動剣を受け止めていた。
「知らなかったのか? 異星人は貴様らの方だ。ルナテレスを荒らすだけ荒らし、我々を隅に追いやったのだ!」
「ケッ、偉そうなこと言ってる割には、やってる事は本物のテロリストとかわんねぇよ!」
インゼルは踏ん張り勢いよく鳴月を振り抜くと、超振動剣が音を立てて破壊された。
「―――――そこまで我々に立てつくか。いいだろう。我々の力! 思い知るがいい!」
イサハラは横に飛び退くと、その向こうから何かが飛んできた。
一瞬の出来事に避ける間もなく、インゼルの足もとで大爆発が起こる。
高々と打ち上げられ地面を滑るインゼル。
「誰だ!? こんな攻撃してくる奴は!?」
シゼンはレーダーを見るが反応はイサハラと、もう一つ最初に移った大きな物体。よく見ると大きな物体の方はさらに近付いている。
「諦めて、負けを認めろ」
イサハラがもう一本の超振動剣を構えて言う。
「お前こそ、いい加減諦めて帰れってんだ」
インゼルは鳴月を同じように構えながら返す。
「その余裕も、それまでだ・・・・」
ゆっくりと何かが回る音。
森の木をなぎ倒す音。
何かが近づいてくる。
それだけは、はっきりと理解した。
そして、木をなぎ倒し、ソレが姿を現した。
山のように大きなソレは、よく見ると先が尖り、船のような形をしている。
大きさはインゼルの十倍、いやそれ以上はあるだろう。移動する動力は左右についている巨大な車輪が回りゆっくりと移動していた。広い甲板には五十機近くのアステロイドが乗れそうである。船体には無数の砲台と、ガトリングが付いていた。
ソレはインゼルの前で進むのを止めた。
「見たか! これが我々『賢族』に与えられし、太古の移動要塞アルスヴィドだ!」
凄まじい質量差である。
「リーダー・・・・これちょっと、やばいんじゃない?」
「へっ、おもしれぇ・・・・」
ザガランはそれを見上げて言った。
真近で見るアルスヴィドはまさに圧倒的であった。突き出した舳先は完全にインゼルに影を落としており、取り付けられている砲台は全てインゼルに狙いを定めていた。
『シバール。貴様ほどの戦士がここまで手こずったのは、この機体か?』
巨大なスピーカー音を聞いてシバールは答えた。
「はい。申し訳ありません」
「はっ、そこまで高い所からこの俺を見下ろしたのは、お前が初めてだぜ。タダで帰れると思うなよ?」
イサハラを横に、その質量差に全くひるむ様子もなく、ザガランは睨みつける。
「リーダー・・・・帰るのは俺達の方じゃない? こんなバカでっかいの一個小隊でも敵わないよ・・・・・」
「敵わねえから、ぶっ倒すんだろうが!」
ザガランはシゼンに怒鳴り返す。
「どうした? 怖気づいたか?」
シュッ、と跳びかかってきたイサハラをインゼルは横に蹴飛ばす。
「どけっ! このタゴが!」
『貴様らは我々を甘く見すぎた。それが今の結果だ』
巨大な声が言う。
「そこかぁぁぁぁ!」
鳴月を抜きブーストを全開に、声のしたところに向かって勢いよく飛び上がる。
だが、次々に砲台が火を噴き、勢いよく吹き飛ばされた。
『フハハハハ! 無駄なことはやめておけ』
インゼルは背中から地面に着地する。
「ちぃ!」
ザガランはインゼルを立たせると、再びアルスヴィドに走る。
一直線に行かず迂回するように走った。その間でも凄まじい砲撃が襲う。
「くそ、なんとかして甲板に上がれねぇか・・・・・・」
「砲撃が激しすぎるよ」
「よしっ、なら」
インゼルはアルスヴィドの前で立ち止まる。
その様子を甲板に上がったイサハラが見た。
「どうした? 諦めたのか?」
そこにアルスヴィドの集中砲火が見舞う。
砲撃を受け高々とインゼルは空に上がった。
「所詮は、このアルスヴィドの前には無力だったようだな」
イサハラは超振動剣をおさめ、格納庫に向かう。
落下するインゼルに全主砲が向く。しかしザガランとシゼンは諦めていなかった。
「いまだシゼン! 突っ込むぞ!」
シゼンはバーニアを全開にブーストをフル稼働させる。
その噴射音をイサハラは鮮明に捉えていた。
「何!?」
瞬時に振り向くと、インゼルが甲板に向かって突っ込んできている。
『撃て撃て撃て!』
指示と共に次々と砲門が火を噴く。
しかしインゼルは不思議な光に包まれており、砲撃を弾いているようだった。
これは、あの時の・・・・・・
シバールはノストラでインゼルを追い詰めた時のことを思い出した。確かあのときもこの様な光を纏っていた。
「させるかぁ!」
イサハラも装備しているミサイルをインゼルに向かって放つ。
しかし、インゼルは一向に止まる気配がない。むしろ加速しているようだ。
「燃える男の〜」
さらに接近するインゼル。
「闘魂アタァァァァック」
加速を利用し、イサハラに向かって強烈な蹴りを叩き込んだ。
勢いよく内部にイサハラは吹き飛んで行った。 |