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クライシス
作:古河新後



創生剣(3)


 「!?」

 突然の不意打ちに勢いよく吹き飛ばされる怪物。

 「おうおうおう! よーく聞きやがれ! そこの怪物!」

 倒れた怪物に向かってザガランが言う。

 「一度救われたこの借りは、見返り無くとも何度も返す! 男の生きざまこの身に刻み! 進んだ道は、決して振り返らねぇ! それがぁ! 十七部隊リーダー! ザガラン・クラフク様だぁ!!」

 ゆっくりと置き上がった怪物に対して勢いよく言いきる。

 「面白イ奴ダ」

 「!?」

 「しゃべった!?」

 ザガランとシゼンは驚いた。インゼルの分析データを見る限り、敵は全体の九割が岩なのだ。生体反応も無く。コアも存在しない。パイロットが乗っていなければ、無人兵器の可能性が高かった。しかし、敵は自分たちを見て言葉を発した。つまり物を見、考えることができるということだ。

 「ヨモヤ、貴様ニ邪魔サレルトハ・・・・・・【イザヴェル】」

 「【イザヴェル】?」

 「何だ。てめぇ、何者だ?」

 「ソノ問イ、答エヨウ。私ハ『王』ニ認メラレシ『吟遊集』ノナリソコナイ」

 怪物の答えに、シゼンとザガランは眉を曲げた。

 「・・・・・・」

 「なりそこないだと?」

 「『創生剣』。ソレヲ手ニスル事ニヨリ、我が身は『吟遊集』ヘト新説スル」

 「『吟遊集』・・・・・・?」

 シゼンは初めて聞く単語が頭に引っ掛かった。

 「よくわかんねぇが、テメーをぶっ倒せばそれで終わりだろうが」

 インゼルは怪物に急接近するとレーザーブレイドで斬りつけた。

 だが、

 「ヌルイナ」

 怪物は防ぐ様子もなくその攻撃を無防備のまま受けていた。見ると、エネルギーの接触している部分が、弾かれている。

 「なにぃ!?」

 「長キ世紀ヲ得テ、エネルギーヲ留メル高技術カ・・・・・・ダガ!」

 怪物は勢いよくインゼルの腕を弾いた。

 「我ニ、ソンナ攻撃ハ、効カヌ!」

 レーザーブレイドは、インゼルの手から離れると、回転しながら森に落ちる。

 「チィ! これならどうだ!」

 今度は勢いよく右拳で、怪物の顔面を殴った。

 あまりに原始的な攻撃だが、効果があったのか顔半分が砕け散る。

 「ヘッ、どうだ!」

 「ソレモ無駄ダ」

 顔が半壊した状態でギロッと、インゼルを見る。頭部はゆっくりと岩が集まり再生してゆく。

 「我、真ハ身ノ中心ニアリ。ソレ以外ハ、ドコヲ破壊シヨウト無駄ダ!」

 怪物は、体勢を低くすると、盾を構え、勢いよくインゼルにぶつけた。

 「!?」

 「スパイクシールド」

 次の瞬間、まるで空箱のようにインゼルは後ろに吹き飛ばされた。

 「くっ!」

 「チィ!」

 そのまま、先ほどの洞窟に背中から叩きつけられる。

 「盾ハ防グダケノ物ダト思ッタカ?」

 インゼルはゆっくりと機体を起こす。その時、警告が鳴った。

 「リーダー、高空飛行機関が、今の攻撃で・・・」

 「――――爆発する前に切り離せ」

 フライトユニットを切り離す。

 「終ワリダ」

 いつの間にか敵が目の前で、無骨な岩の剣を振り上げている。

 まずい。今は、ユニットを切り離したため、脚部のOSが動きに対応してない。あんなものを食らえば、ただではすまない。

 「リーダー!」

 「なんだ!?」

 シゼンはザガランの画面に一つの映像を移した。それは崩れた岩から覗く長い岩。

 「あれ、岩じゃないよ!」

 「なにぃ!?」

 吹き飛ばされ、索敵範囲が極端にずれた時、あの岩が範囲に入ったのだ。

 咄嗟に、その岩を掴むと、力まかせに引き抜き、剣を受け止める。

 「うぉぉぉりゃ!」

 インゼルは勢いよく剣を弾き上げた。怪物は数歩後ろに下がった。

 「ソレハ・・・・」

 インゼルの武器装備画面には、何も表示されていない。だが、右腕に持っているのは間違い無く武器であった。

 「へっ、おあつらえ向きの武器だぜ」

 OSの変更を終え、立ち上がるとインゼルはゆっくりと怪物に歩み寄る。

 「『創生剣』! ソレヲヨコセ!」

 怪物が勢いよく斬りかかる。

 インゼルはその攻撃その岩で受け止めた。

 「どうだい! 化け物大将! これで互角だぜ!」

 「オノレ・・・・」

 怪物は剣を引き、再び態勢を低くすると、盾を突きだした。

 「スパイクシールド!」

 「無駄無駄無駄ぁ!」

 インゼルは、それさえも武器で受け止めた。機体は反動で僅かに後退する。

 「ナニ!?」

 「覚えとけ、化け物野郎。戦いってのはなぁ、闘志と闘志の勝りあいなんだよぉ!!」

 次の瞬間、インゼルは横に武器を振り抜く。盾が砕け、怪物は勢いよく後退した。

 「男の闘志、この手に宿る・・・・・」

 その時、ゆっくりと岩が剥がれるように落ちていく。その中から現れたのは、黒い刀身をした刀であった。

 創生剣――鳴月

 ザガランは勢いよく吠えた。

 「これよりこの武器の名は、『鳴月』だぁ!!」

 先ほどまで、岩を持っていたインゼルの右腕には一本の刀が握られていた。

 鳴月。横文字が苦手なリーダーらしい武器名である。

 「オノレ・・・スデニ形ヲ成シタカ。ナラバ! ソノ剣ヲイタダク!」

 怪物は剣を構え突撃してくる。

 「『鳴月』って、言ってんだろうが!」

 怪物の突進に突きを繰り出す。

 剣と鳴月が触れた刹那、剣は壁にぶつかる泥団子のようにあっさりと破壊された。

 「!?」

 馬鹿な、創生剣は最初に持った者が望む理想の武器となる。つまりこの宇宙全体を支配できるほどの兵器を創りだすことも可能だ。より人外なる者が望めばより人外の武器となるのだ。たかが人間ごときが創りだした武器がこれほどの力を何故持っている?

 「ナゼダ!?」

 「お前には絶対にわかんねぇよ!!」

 「オノレェェェ!!」

 怪物が叫ぶと周囲の岩が右腕に集まり始める。

 「な・・・」

 「なんだ!?」

 ザガラン達が見ている目の前にインゼルよりも遥かに巨大な剣が現れた。いや、剣と言うよりも無骨な柱のようだ。

 「コウナレバ貴様ラヲ潰シ。ソノ剣ヲイタダク!」

 ゆっくりと倒れるように振り下ろしてくる。

 避けるわけにはいかない。この剣の範囲には村も入っている。

 「踏ん張れよ、シゼン!」

 「分かった!」

 振り下ろされた石柱を、鳴月を横に構え受け止めた。

 受け止めた拍子に足もとが、わずかに陥没する。

 「!? ナゼタ? ナゼ? 受ケ止メラレル!?」

 確かに怪物の言う通りだ。本来ならあっという間に潰されてしまうはずだ。だがザガランを信じれば信じるほど、インゼルは不可能を可能にしている。

 「行くぜ! シゼン!」

 その時、ザガランの意気込みに反応するようにゲージが上昇してゆく。

 次の瞬間、インゼルは石柱を弾き返した。

 あまりの重量にバランスがとれず怪物は後ろに倒れる。

 「必殺!」

 インゼルはブーストを全開に上昇すると、鳴月を振り上げ、怪物めがけて一直線に降下する。

 「一刀切断!!」

 怪物の身体を縦に切り裂く。

 「バカナ・・・・・」

 身体の中心にあった真をも、切断されていた。

 岩が粉々に砕け、砂になってゆく。

 「ふーぃ」

 その様子を見たザガランは改めて一日の疲れを吐き出した。




 「もう行くの?」

 早朝。イレーヌが多少残念そうに尋ねた。

 「おう。フライトユニットはやられちまったが、新しい武器を手に入れたからな。戦力の低下はないぜ!」

 「それに、『黒十字』が何をしようとしているのか分からないから、少しでも早く奴らの本拠地を叩きたいんです」

 「すまないな。一度ならず二度も助けてもらうなんて」

 ラントンがすまなそうに言った。

 「気にすることはねぇ。俺達もあんた等に助けてもらったからな」

 「―――――また、来なさいよ。今度はあんた達だけじゃなくて、部隊全員でね」

 「おう」

 と、イレーヌの横からルルゥが出てきた。

 「・・・・村・・・助けて・・・ありがとう・・・」

 イレーヌは驚いた。今までルルゥ自分から相手に話したことは自分以外無かったからである。

 「ああ、ルルゥも元気で」

 シゼンが答えると、ルルゥはペコッとお辞儀をした。相変わらず無表情であったがどこか違う印象を受ける。

 ザガランとシゼンはインゼルに乗り込むと、本拠地を目指して前進していった。












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