創生剣(1)
「シゼン。なんか見えるか?」
「何にも、ずっと同じ景色だよ」
ザガランは退屈そうなため息をついた。
出発して一週間足らず、インゼルは航空しながら敵本拠地を目指していた。その間、幾度が敵の攻撃にあったが特に問題なく迎撃し、順調に進んでいた。
「暇だぜ〜」
「ま、平和が一番だからね」
と、レーダーに反応が映る。どうやら真下に敵反応だ。
「リーダー下に・・・・」
「ん?」
ザガランも何気なくカメラを見ると、下の森の中に出来た道を、ガランが走っていた。その先に、車が走っており、追ってくるガランに向かって攻撃をしていた。
「リーダー! あれ、追われて――――」
「行くぞ! シゼン!」
シゼンが言い終わる前にザガランは機体を急降下させた。
「くっ! しつこいな!」
後ろの座席で追ってくるガランをマシンガンで撃っていた男は悪態をもらした。健康そうに日焼けした顔つきに、体全体に、バランスがよく筋肉がついている。
「見たもんがヤバすぎたのかもねぇ〜」
運転している女が慌てた様子もなく言った。長い髪を細く後ろで一つにまとめ、口には煙草をくわえている。
ガランは細い道を上手く移動できない様子だった。そのため車で何とか逃げ切れているという状態だ。
と、ガランが発砲してきた。
「おっと―――」
ハンドルを切り、弾を回避する。
「まだ、小さな道だからいいが、平原に出たらやられるぞ!」
男が、ロケットランチャーを発射しながら言う。
「それまでに何とかしなきゃねぇ〜」
「姉さんのせい・・・・・・」
助手席に座っている髪の長い少女が冷静に答えた。
「妹よ、断じて私のせいではないぞ」
「いいや、イレーヌ。お前のせいだ!」
再びマシンガンを乱射する。
「ほら、私って見た目は大人だけど、心は子供だからさぁ〜」
キシシと、笑いながらさらにアクセルを踏み込む。
その時、何かが破裂したような音とともに速度が激減した。
「ゲ!」
「嘘だろ!」
「冗談・・・」
三人はそれぞれの反応を正直に口に出す。どうやらパンクのようだ。
後ろから敵が迫る。
「まずいわね・・・・・」
と、女が言う。
「お前からそんな言葉が出るとは夢にも思わなかったよ・・・・・・」
男がため息をつきながら言う。
「これが夢だったらいいのにねぇ〜」
「ええい! お前は少し黙れ!」
「絶対絶命・・・・・」
少女が静かな声で冷静に言った。
徐々に敵の姿が大きくなる。
「おうおうおう! テロリストども!」
その時、とてつもなく大きな声が響いた。
ガランは動きを止め、一斉にその位置を見る。一段と、高い崖の上に一機の機体が太陽を背に勇ましく佇んでいた。
「この地で暴れるテメ―らを、不屈の闘志で叩き潰す! 天下無敵の十七部隊リーダー! ザガラン・クラフクが相手だ!」
音量を最大にしているのか辺りに響く。
「どっからでもぉ、かかってきやがれぇい!!」
その機体は脚力だけで跳躍すると、ガラン二機に勢いよく突っ込んでいった。
数分後。もはや起動していないガランをインゼルは見ていた。武装らしい武装はレーザーブレイドしか装備していないため、時間がかかると思ったが案外そうでもなかった。
「まったく手ごたえがねぇ」
ザガランはつまらなそうに言った。
「ま、相手が相手だし・・・・・」
ガランとインゼルでは性能がまるで違うのは自分たちが一番よく知っていた。それに加え、二人搭乗しているのだ。相手にならないのも当然である。
「ん?」
シゼンは助けた人が手を振っているのをカメラの隅に捉えた。
「どうした?」
ザガランが尋ねる。
「リーダー。あれってイレーヌさんじゃない?」
「いやー、本当に助かったよ」
インゼルのコアから降りた二人は追われていた三人の内、男と女と話をしていた。
「久しぶりね。二人とも」
女は笑いながら言う。
「おう。あんた等も元気そうで良かったぜ」
「さっきは本当にやばかったがな・・・・・・」
男は安堵したように言った。彼らは、この当たりに住んでいる住人で、一ヶ月前に敵地にいたザガランとシゼンを助けてくれた人たちであった。
「ラントンさんも、元気そうで」
シゼンは男を見て言う。
「ああ。それにしてもまた会えるとは思わなかったな」
ラントン達は、民間として東部支部に登録されているため、会うことはほとんど考えられないことだった。
「ま、いいじゃない。こうやってまた会えたんだし」
と、イレーヌは明るい表情で言う。
「あれ? そう言えば、ルルゥは一緒じゃないんですか?」
いつもイレーヌの傍にいた(正確には無理やりイレーヌが連れまわしていた)彼女が居ない事にシゼンは疑問に思った。
「シゼン殿・・・・・我が妹が気になるのかな?」
イレーヌがニヤニヤしながら楽しそうに言った。
「いや、いつもイレーヌさんが連れまわしてるから、今回も連れてきてるのかなって」
「そういうことなら連れてきてるけど・・・・・・・・」
と、イレーヌはパンクした車に近づくと窓から頭を突っ込む。
「どうしたの?」
「・・・・・・」
「ふぅ。一応命の恩人なんだからお礼くらい言いなさい」
「・・・・・・・・・わかった」
全く、この妹は・・・・・・
助手席のドアを開けると、ルルゥは二人の前に立つ。
「はいっ。お礼は?」
「・・・・・・・・・ありがとう・・・」
ぼそっと無表情で言った。おそらく二人には聞こえただろう。
「相変わらず。無口だな」
ザガランが言う。
「最近は、少しずつ喋るようになってきたんだけど――――――ねぇ」
と、ルルゥを見ながら言った。 |