他人(2)
暇だ。
退屈というのは贅沢かもしれない。
忙しければ、忙しいほど、人は暇がほしくなる。
いや、訂正しよう。退屈ではなく簡単すぎるのだ。
今目の前でやっている事。
見ている事。
聞いている事。
全てが簡単すぎる。
だが俺にはこの道しかない。
自らの過去を清算するには・・・・
ふと、鐘が鳴る。
いつもの簡単な一日の半分が終わった。
席を立ち、教室から出る。と、
「よっ―――――」
他の生徒にまぎれながら扉を抜けると、自分が北部支部で信頼できる人間の一人が目の前に立っていた。
「よっ、カナン」
セレグリッドは片手を上げて司令科のクラスから出てきた一人の青年に声をかけた。
肩ほどまでつく長髪に、鋭くもなく穏やかでもない眼。きっちりと軍服を着こなし、同じ科でも、他の者とは、まとっている雰囲気が違っていた。
「どうしたんですか? 正式な七部隊の先行隊長である貴方がわざわざここに足を運ぶとは・・・・・」
淡々とした口調でカナンと呼ばれた青年は尋ねる。
「ちょっと緊急事態が起きてな。お前の力を借りたい」
会話をしている内に徐々に人が集まってきた。
「場所を変えるぞ。ついてこい」
セレグリッドの後をカナンが歩く。
しばらく進んで、人気の無い場所に出た。
「それで、俺の力を借りたいというのは、どういうことですか?」
「一直線だな。ま、俺も回りくどいのは好きじゃない」
「十分まわりくどいです。早く言ってください」
セレグリッドはこれまでの事、これからのことを説明した。
「――――ってことだ」
「なるほど。ですが、それなら俺以外にも、もっと適任の人がいるのでは?」
カナンの意見に、ため息をつきながら答える。
「はぁ。いいか? お前は自分を過小評価しすぎだ」
「そうではありません。自分のような訓練生が一つの艦を任されるなど――――」
「・・・・・。その様子だと、自信がないわけじゃないよな?」
「はい。――――しかし、軍にも色々と手前があるのでは?」
「今さらかんけーねーよ。十七部隊も、問題子ばっかりだからな。それに長官も承諾してる」
「・・・・・・・」
「お前、まだ。所属部隊が決まってないだろ? ちょどいいから十七部隊に入れ」
「なんか色々と無茶苦茶を押しつけようとしてませんか?」
「―――気のせいだ」
「・・・・・・。分かりました」
「よし。それじゃあ、今から荷物まとめて本部格納庫に来い」
「・・・・今からですか?」
「時間制限があるんだよ。今から約三十六時間後には南部都市ノストラにつかないと、いかんからな」
セレグリッドは来た時と同じように片手を上げて去って行った。
「すごい機体だな。これは」
移動中。エイルはシゼンに尋ねた。
「能力を見る限りでは不満なところは一切ない。むしろ高性能すぎるほどだ」
エイルはさらにパネルをいじる。
「なのに、なぜ二人乗りなんだ? 一人でも十分すぎるだろ?」
「さあな。俺にもよく分からない」
「・・・・・。貴様の機体だろ? 把握していないのか?」
「まだ解析中なんだよ。この機体は」
「ならば何故、実戦投入する?」
「俺じゃなくて、上のお偉いさんに聞いてくれよ」
「・・・・・・・」
この機体は、明らかに高性能すぎる造りだ。下手をすれば自分のリヴェリオンとも張り合えるかもしれない。それほどの性能に二人乗りにする必要があるのか? 二人搭乗することで更なる性能の高上も考えられるが・・・・・・・
「今は、どこに向かっているんだ?」
「霧の谷」
シゼンは静かに答えた。 |