出会い エイル編(3)
「さて・・・・」
エイルは巨大な扉の前にいた。データを見るにこの先が問題の場所のようだ。
扉の他に中に入る通路がないか確認するが、
「無いな・・・・・ん?」
ふと、上を見ると斜め上に排気口の入口があった。
「仕方ない・・・・・・」
ため息をつくと、網を外し排気口の中に入る。
しばらく進むと、どうやら中に入ったようだ。中から外の様子を確認する。
照明が消えており人の気配がない。どうやらすでに作業を終えたようだ。
金網を蹴り出すと、身軽な動きで外に出る。
「これかしら・・・・?」
エイルは暗闇に浮かぶソレを捉えた。
体格、全長は普通のアステロイドと、ほぼ同各。古く錆びている装甲もあり、それを整備する為に、いたる所に人の乗る台が作られていた。
エイルは近くにあるコンピューターのスイッチを入れ、データを引き出す。
「・・・・・・・これね」
ほどなくして現れたデータを画面に大きく表示する。
『機種名ディアボロ。
もともとは一機で複数の機体を相手にする為に造られたと思われ、その戦闘能力は惑星一個分の戦闘能力と同格と思われる。
様々な攻撃を遮断する不可能領域。エネルギー兵器を主体とした、集束ソニック砲に追尾レーザー。高空飛行機関を搭載しており、現在も新たなシステムとしてACを搭載中』
「過大評価しすぎね」
エイルは思った事を述べる。単体で惑星と戦える機体など自分が知っている限りでは『吟遊集』の『アバタ』ぐらいだ。
「・・・・データを取って帰るか」
呆れながらデータのコピーを始めた。
別の部屋でディアボロのデータを整理していたヴィルフォールはある事に気づいた。
ディアボロは一人乗りである。しかし、機体性能の事を考えると最低でも二人は搭乗者が必要だ。不可能領域と他全ての武装のエネルギー調整をする者と、機体を操縦し攻撃を行う者。二人いなくては機体が完璧でも全力を出しきることが出来ない。なのに、なぜ一人乗りなのだろうか・・・・・
「もしかすればこれは・・・・・・・」
ある事が頭に浮かぶ。これは『あの方達』の機体の一つではないのか? だとすれば乗るべきは我々ではない。
と、そこへ一人の男が慌てた様子で入ってきた。
「大変です! ヴィルフォールさん! 何者かに機体データをハッキングされています!」
「何だと! 『ディアボロ』がある二十四番倉庫は遮断合金で造られているんだぞ?!」
「いえ、外部からではなく内部から直接データをコピーされているんです」
「何だと!? 場所は!?」
「二十四番倉庫です」
「!? 直接か! 急いで同士を向かわせろ!」
「もうやってます! しかし扉にロックがかけられていて、開かないんです」
「何!?」
二十四番倉庫は遮断合金でつくられており、外部からのハッキングは完全に受け付けないのである。元々我々の先祖が造った物であるため自分達が書き換えもできるはずがない。
「っ! 私も倉庫に向かう!」
ヴィルフォールは慌しく部屋を後にした。
「・・・気づかれた・・・・」
コピーの終わったディスクを、懐にしまう。
「ん?」
その時、何かが光った。針を刺すような小さな光だったが、エイルは見逃さなかった。
銃を持ちながら慎重に辺りを見回す。長居をするのは危険だが、どうしてもそれが気になった。
見るとディアボロのカメラの部分が光っていた。
「っ・・・・」
その時、エイルの見ている光景が変わった。
先ほどは倉庫であったはずが、目の前には一面緑豊な草原が広がっている。
「ここは・・・」
不思議と懐かしい感じがした。そして目の前にはディアボロが存在し、その機体を見上げるように二人の男女がいた。彼らの後ろにはもう一つ別の機体が佇んでいた。
男は白銀髪にマントのように長いコートを着ていた。女は長い黒髪を一本にまとめ、ワンピースにその上から男とは違うタイプの長いコートを着ていた。
「いいのか?」
男が女に聞く。
「なにが?」
「なにが? って事はないだろ。十年近く乗ってきた機体だろ? いいのかこんな所に置いて・・・」
「あら。それを言うなら貴方も何故【イザヴェル】をここに?」
「子孫に『希望』を託すのは当然のことだろ? 血のつながりがあるかは分からないが、それをお前まで、する必要はない」
「・・・そうかもしれません。・・・・・・でも、そうしないと不安なのかもしれません。私は・・・」
女の意見に男は呆れた感じで答える。
「ま、【クライシス】は二人乗りだ。・・・・・・戦力の低下は無いな」
「はい」
男は後ろの機体に向かって歩き出す。その後に女が続く。
「最後の戦いだ。ファラフリ達と合流する」
「はい」
次の瞬間、再び景色が戻った。気がつくと元いた倉庫にいる。
「っ・・・・」
頭痛が走り、力無く壁に寄り掛かる。
「・・・・・・ありえない事じゃない。お父様から聞いていたけれど・・・・・・・この機体は・・・・・」
次の瞬間、扉が開きそこから次々と敵が入ってくる。
「探せ! 低いが、まだここにいる可能性はある」
ヴィルフォールが適切な指示を飛ばす。
「ヴィルフォールさん!」
一人の男が起動しているコンピューターに気づく。
「っ! 敵はすでにデータを抜き取った後か!」
「ここには誰もいません・・・・」
倉庫内を捜索していた一人が告げる。
「侵入者を急いで捕えろ! まだ『聖地』内にいるはずだ!」
エイルは、格納庫を目指していた。最初に入ってきた通路は使えなくはないが、正直使いたくないというのが本音だ。それにここにはアステロイドがある。それを使って奴らの手の届かない場所まで退避し、そこにリヴェリオンを持ってくる。
「・・・・・・」
小型記憶機で、格納庫の位置を確認する。ここからそう遠くない。
敵に気をつけながら何とかたどり着く。そこには軍隊の整列のようにアステロイドがウイグルとガランに分けられて並んでいた。
中では何人かの敵が何か慌ただしく話し合っていたが、すぐに走り去ってゆく。
一番手前のウイグルのハッチを開け、中に乗り込む。
起動させる。ゆっくりと機体に命が入っていく。カメラが起動し、ゆっくりと機体を動かす。
「誰だ! ウイグルを動かしているのは!?」
気づいた者達が発砲してくるが効くはずもない。装備されている小型ハンドガンで隔壁を破壊する。爆音と同時に、煙が辺りに立ち込めた。
ウイグルは破壊した隔壁から外に向かって飛び出した。
「逃げられただと!?」
「すいません。すでに格納庫まで移動しているとは知らず・・・・・・・【ウイグル】を持ち去ったようです」
「早く追撃部隊を出せ!」
慌ただしい倉庫内の中、アンドロイドはディアボロを見ていた。
「必然か・・・・又は・・・・偶然か・・・・・」
静かなその声は誰にも聞こえなかった。
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