出会い シゼン編(3)
以上。思い返し終了。
「くそっ、思いだすと、また腹が立ってきた・・・・」
不服を述べつつも、やはり死にたくは無い。
森の中を進む。日はほとんど落ちていた。と、
「ん?」
レーダーに一瞬反応が出た。
シゼンはインゼルを木の陰に寄せると、反応のあった位置をカメラで確認する。
ウイグルだ。しかし当然ながら軍の物ではない。機体状況を確認する限り、戦闘用ではなく、長時間対空出来るように高空飛行機関の周りにエネルギーユニットが増設されている。
「監視用に換装されてるな・・・・・」
よわった。この位置で気づかれていないということは、レーダーやセンサーなどで偵察しているのではなく視野による監視だ。
恐らく。今ウイグルが見ている光景をそのままカメラか何かで直接監視しているのだ。ここらへんに、そのような施設は無い。と言うことはノストラから来たという事になる。
「・・・・・まてよ。あれ利用できないかな」
赤外線による監視。昼は通常の視野で、夜は赤外線に画像を切り替えて監視を行う。
その時、木の陰に赤い反応を捉えた。大きさを的にアステロイドサイズである。
「・・・・・・・」
その場所を拡大し、ライトをつけ画像を視野に切り換える。
ウイグルが捉えた映像は、何かのユニットであった。高空飛行機関がまるでゴミでも捨ててあるかのように置いてあったのだ。
「・・・・・・・」
拡大し何度も確かめる。
その作業に集中しているウイグルは後ろでレーザーブレイドを振り上げたインゼルに気づかなかった。
南部都市ノストラ。都市と言っても店や軍の施設が集まってできた街である。
いつもならばこの時間帯は活気に溢れている。しかし占拠した『黒十字』によってゴーストタウンのような静けさであった。
「ん?」
放置された軍施設にある通信室の監視用モニターを見ていた一人の男が突如消えた右上の画面に気づいた。
「どうしたんだ?」
横に自分と同じようにモニターを監視していた同僚が様子を察して声をかけた。
「いや、急に画面が・・・・・」
「本当だ。故障か?」
「そうかもな。戻ってきたら修理しよう」
と、会話をしていると後ろから声がかかった。
「どうした?」
その声に後ろを振り向く。
「シバールさん」
そこにいたのは目つきの鋭い男だ。切るのが、めんどうくさいのか、伸びたきった髪に片目が隠れている。首に茶色の布を巻いており、荒々しい雰囲気をまとっていた。
「D2の映像が消えているな。どうしたんだ?」
「急に先ほど映像が映らなくなりまして・・・・・」
「・・・・・・D2の映像を巻き戻してみろ」
シバールが言うと男は映像を巻き戻す。画像が消える手前まで巻き戻されるとそこで止めた。
「これは・・・・」
映っていたのは何かのユニットの映像だ。
「だけどユニットならごろごろ落ちてますよ?」
もう一人の男が答える。
「よく見ろ。煙が出ているだろ?」
二人は映像をよく見ると、暗くて見えにくいが確かにユニットから薄く煙が出ているのが分かる。
「つまりこれは、さっきまで何かに取り付けられていたということだ」
「それじゃあ。ルナテレス軍がノストラを奪還しに来たということですか?」
「それにしては不自然なことが多い。取り返しに来るなら直接ノストラ近辺に降下した方が速いし確実だ」
「・・・・・それじゃあ。俺らで確認してきますよ」
男二人は立ち上がる。
「油断するな。先ほども本部に侵入者が入ったと連絡が入ったところだ」
「侵入者? 『ディアボロ』の調査ですか?」
「そんなはずはない。奴らは『ディアボロ』存在どころか、想像さえもしていまい。俺が考えるに他の惑星のスパイだと考えているが・・・・・・今は監視機の件が気になる」
「わかりました。距離的に二日か三日はかかると思いますので、ここは任せますシバールさん」
「ああ」
「それでは」
二人は通信室を出て行く。
「・・・・・・・」
シバールは再び映像を見た。
「このユニットは・・・・まさか・・・・・」
腕を組みながら食い入るようにその映像を見ていた。
敵のウイグルを撃墜した位置から相当離れた位置にシゼンはいた。
「ふぅ」
ため息をつく。今日は散々であった。先ほどもユニットを囮にし、敵機を迎撃できた。おそらくインゼルの姿は見られていないだろう。
急に敵地に取り残され正直、不安が多かったがここまでこれた。後は山を降りて、南にある谷を渡り、再び森を抜ければノストラである。エルネギー残量は五分の四。このまま戦闘を行わず順調に進めば、明後日の昼にはノストラに辿り着く。
インゼルを崖の陰に隠し、必要な警戒システム以外全て停止させる。本来なら全てのエネルギーを停止させた方がいいのだが最悪の事態を考え、最低限の機能は残しておきたい。
全ての作業を終えると席にもたれかかった。
「・・・・・・・」
コア内を見ると、ふと考えてしまうことがあった。なぜインゼルには座席が二つあるのだろうか? 今までの操作から、一人だからと言って手が足りないと言うわけでもなく他の機体よりも性能が劣るわけでもない。性能面ではむしろ高性能な部類に入るだろう。ならばなぜ座席が二つあるのか・・・・・・・・
「考えても仕方ないな。明日に備えて寝――――」
と、その時レーダーに反応が出た。
「!」
即座に起動する。反応は上空を通過し五百メートル程先の森林に墜落した。
「墜落機?」
シゼンはインゼルを動かそうとしたが下手をすれば敵に見つかる恐れがある。
「距離的には遠くないな・・・・・・」
片膝をつかせた状態にし、コアから出ると墜落地点に向かった。
燃えている木々は分かりやすい目印だった。
その中心で機体が燃えている。見たところウイグルのようだ。
「ひどいな・・・・」
右腕部と左脚部が無く。左腕部にも火の手が上がっていた。
その時コアハッチが音を立てて開き、中からパイロットが出てきた。
パイロットは少女だった。肩ほどの黒髪に、頭には白いヘアバンドに紅いリボンをつけている。年齢は自分と同じぐらいか、少し下。なるべく燃えている機体から離れようと左腕を支えながら弱々しく歩いていた。
「! まずい」
少女の後ろでウイグルが火花を散らしている。爆発は目前であった。
シゼンは少女を助けようと近づくが、彼の存在に気づいた少女は不意に持っていた銃を向ける。
「!」
シゼンは一瞬動きを止めた。少女が紅い瞳を細めながら引き金に力を入れた。
しかし、そのまま力つき銃を落とすと、前のめりに倒れる。
「おっと」
その少女を支える。
「!? この子・・・・どこかで・・・・」
シゼンはアルミと最初に会った時に感じた何かを、少女からも感じた。
一体・・・・この感覚は何なんだ?
その時、ウイグルが小さく爆発する。
「っと、後で考えるか・・・・・」
少女を背負うと急いでその場を後にした。 |