出会い シゼン編(2)
「もう一度おさらいする」
すでに全員インゼルで待機した状態で、セレグリッドは作戦の内容を再確認した。
自分たちの降下する場所は、南部都市ノストラから700キロ離れた荒野だ。まず自分達が敵地の真ん中に降下し、向かってくる敵を迎撃しながら三日かけてノストラに進行する。ノストラを占拠しているテロリスト『黒十字』は自分達に対して攻撃を行うだろう。それが多かれ少なかれ、『黒十字』の気はそっちに集中する。その隙をついて別の部隊がノストラに奇襲。都市を奪還し、残った敵部隊を両側から殲滅するという作戦だ。
「もう一度言う。これは訓練じゃない。殺し合いだ。どんな状況で自分の命が消えるか誰にも分からん。敵がどんなに命乞いをしようと、ためらわず撃て」
「・・・・・了解」
一同は少しためらった様子で返事をした。もしかすればこの中で誰か死ぬかもしれない。不安が辺りを包む。
その様子を察したセレグリッドは、
「そんなに不安がることは無い。事故とはいえ、実戦経験をすでに積んでいる奴もいるんだ。それに俺も【バーンヴェール】で出る」
と、アナウンスが再び入る。
『作戦空域に入りました。降下部隊出撃してください』
ゆっくりと正面ハッチが開き射出デッキがまっすぐ伸びる。
「まずはシゼンから降下だ。敵がいれば殲滅し、味方の降下を援護してくれ」
「了解」
「次はラヴァンだ。シゼンと同様、味方の降下を支援。全機降下終了までその場に待機」
「はーい」
「後は各自順々に降下。全機降下終了を確認したらノストラに進行を開始する」
「了解!」
インゼル(シゼン機)は固定具に脚部を乗せると発進時の抵抗をなるべく受けないように態勢を前かがみにする。
「シゼン・オード。インゼル発進します」
次の瞬間、極端な重力を受けるが、いつもの訓練で慣れているため対して苦ではない。それどころか外の景色に一瞬見とれた。
「・・・・・・」
海のように広がる雲海。
その先に沈んで行く太陽。
時間は夕方だったようだ。
格納庫でほとんど作業をしていた為、時間を忘れていた。
「とっ・・・・・」
急に下への重力を感じ、瞬時に飛行ユニットを起動させる。
そして雲を抜けた。
「シゼン。聞こえるか?」
その時、セレグリッドから通信が入った。
「はい聞こえます」
「よし。敵部隊の反応は?」
レーダーに目を移す。
「いえ、今のところはありません」
「お前の降下が無事終了したら次にラヴァンを降下させる」
「了解」
インゼル(シゼン機)は徐々に大地へと接近していった。
「セレグリッド教官!」
突如、バーンヴェールに通信が入る。艦長のオーベイだ。
「どうしました?」
「君の部隊は降下してしまったか!?」
オーベイは常に冷静なで有名な艦長だ。そんな彼がそこまで慌てるとは一体何が起こったのだろうか。
「先頭のインゼルが先に降下しました」
「遅かったか・・・・・」
オーベイは落胆する。
「一体何が・・・・・」
「先ほど長官から連絡が入ってね。この作戦は一時中止だそうだ」
「一時中止ってことは作戦自体が消えるって事じゃないですよね?」
「そうだ理由は分からないが・・・・。我々には本部に帰還命令が出ている」
「マジで? もう一人降りちゃいましたよ?」
「そこが痛い状況だ。すまない君の方で判断してくれ」
「・・・・・・・」
判断しろ、ということはシゼンをどうするかということだ。いまあいつは降下を終えて地上にいるだろう。しかも敵地のど真ん中だ。状況は悪い。下手をすれば敵につかまる可能性もある。
「分りましたあいつには俺から指示を送ります」
「とっ」
大地に足をつけたインゼルは辺りを警戒する。
「・・・・・・敵反応0っと」
通信を入れようとしたら逆に入ってきた。
「シゼン聞こえるか?」
「教官。敵部隊は0。降下には問題ないと思います」
「あー・・・そのことなんだが・・・・」
「?」
セレグリッドは事情を説明する。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!」
「いや、本当にお前には悪いと思ってる」
「いや、そういう問題じゃないですよ! 誰が好き好んで敵地のど真ん中にほっぽり出されないといけないんですか!? スパイか!? スパイやれってか!」
相当混乱しているのか、ついにはため口になる。
「ええい! 黙れい! 今から作戦を説明するって言ってんだろ! 少し黙って聞け! いいか、お前は今から南部支部を目指せ。本部に戻ってくるよりそっちの方が近いからな」
「南部支部って・・・・・【インゼル】のエネルギー残量的に三日で機能は停止しますよ?」
「三日か・・・・・ギリギリだな。作戦が全体的に変更したわけじゃない。ノストラ付近にいればこちらの側から索的して回収することができる」
「・・・・・・分かりました。ノストラを目標に南部支部を目指します」
納得がいかない様子で返事をする。
「よし、よく言った! 今からそこから南部支部までの地形データを送る」
インゼルにデータが転送される。
「転送、確認しました」
「よし、言い忘れたが、空は使うな」
「えっ? 何でですか?」
「そこは敵地だぞ? 空を飛べば一発で居場所がばれる。お前は本来、そこに居ない存在だからな」
「・・・・・・・」
「後は健闘を祈る。生きて帰れよ? じゃあな」
と、通信が切れる。
夕日はほとんど見えなくなり暗闇になってゆく。
「・・・・・・しょうが無い。行くか・・・」
シゼンはインゼルを森の方に進ませた。 |