出会い シゼン編(1)
「くっそ〜」
シゼンは密林の中をインゼルで進んでいた。生い茂る木々で視界は遮られるがレーダーを見る限り敵機の姿は無い。これなら夜までには山に入れそうだ。
これはシュミレーターでなければ訓練でもない。命を片手に実弾で戦う殺し合い。すなわち実戦である。
なぜこんな所にいるのか、シゼンは数時間前の事を思い返した。
数時間前。
「みんな喜べ! 今日はこれから軍の任務に十七部隊が参加することになった!」
セレグリッドが集合をかけ、高々に言う。
「何でですか?」
シュメルは手を上げて尋ねる。
「馬鹿野郎! シュメル! たとえどんなことがあろうとも俺達は俺達の道を突き進めばいい! ただそれだけの事じゃねえか!」
ザガランは叫ぶように言う。
「おお。ザガランいいこと言った。と、言うことでこれより荷物をまとめて本部前に集合。急げよ? それじゃあ解散」
と、言うとセレグリッドは訓練所を後にする。
「はぁ。まったく・・・・」
疲れたようにシュメルは額に手を当てた。
「おお」
「すごい」
「わー、おっきい」
すでに出撃準備が終わり慌しくなっている格納庫でシゼン、クーゼ、アルミは巨大な物質を見てそれぞれ声を出した。
三人の目の前にはくちばしのように尖った船首に司令室とクルーの個室が存在する船体。船尾には、出力エンジンとブースターをかばうようにして装甲板が存在している。
戦艦エンキ。ルナテレスが要する主力戦艦である。
「【エンキ】。宇宙戦、対空戦はもちろん。海中戦まで出来るルナテレスの主力戦艦よ」
後ろからリンが説明する。
「やっぱ。本物って迫力が違うよな・・・・」
「そうね。私たち訓練生を乗せるくらいの戦艦だから期待はしてなかったけど・・・・・」
と、感心している四人に声がかかる。
「ちょっと! そこ、早く乗りなさい!」
エンキの入口からシュメルが四人に声をかける。
「感心するのはまた後ね」
「そうだな」
現在十七部隊が乗っているエンキは第四部隊の戦艦であった。
ブリッジ。二段に分かれているこの空間は下段に居るオペレーター達が艦を統率しており。彼らに命令を出すのが艦長であった。
「私が艦長のスノ・オーベイだ。よろしく」
整列している十七部隊の前で、年長の男が自己紹介をした。
「今回、作戦に参加させていただく。十七部隊です。よろしくお願いします。オーベイ艦長」
「うむ。私の方もよろしく頼む。セレグリッド教官」
二人は握手を交わす。
「教官」
シュメルがそんな二人に声をかける。
「私達が搭乗させていただく機体を拝見しておきたいのですが・・・・・・」
彼女の意見にオーベイが答える。
「それもそうだ。君たちは作戦前に自分たちの機体を確認するといい。オペレーター科の者達もここで本職を学んで行ったらどうだ?」
キラセとクルスは顔を見合わせる。
「やった!」
「それじゃあ。残り者は俺に続け」
セレグリッドを先頭に残り者は格納庫に向かった。
格納庫。説明によると、広いこの空間にはアステロイドを十機は搭載できるという。アステロイドの数に応じて、整備員も増えるためこの広さが理想のようだ。
「教官。この作戦に使用する機体・・・・・まさかこれとは思いませんでした」
シュメルは目の前に固定具で固定されている機体を見て棒立ちになっていた。
「まだ百機程しか量産していない。だがこの作戦はそれほど重要なものだからな。お前らも訓練生ということで【インゼル】を投入することにした」
「まさか・・・・自分がこの機体に乗るとは思いませんでした・・・・・・」
「明日の敵は今日の友って言うだろ? 今の内に【インゼル】自分に合った機体にしとけよ」
「そこまでしてもいいんですか!? 私たち訓練生ですよ!?」
「かまわねぇよ。それだけこの作戦は重要だ。それに【インゼル】は自分のスタイルに合わせることで全力を出せる機体だからな」
「・・・・・分りました」
シュメルは嬉しそうに整備員の者と協力し自分に合った機体にしていく。
他の者も自分インゼルのところで色々と作業を行っていた。
「あのー。教官」
後ろからシゼンが声をかける。
「ん? おっとそうだったお前の【インゼル】はこっちだ」
セレグリッドはシゼンを誘導する。そして一つの扉の前に立った。
「ここだ」
と、パネルを操作しコードを入れる。
「あれ? 何で俺のだけこっちに?」
「色々と都合があってな」
コードを入力し終わると、音を立ててゆっくりと扉が開く。
「・・・・・・」
そこにインゼルはまるで待っていたかのように、たたずんでいた。そのまわりで白衣を着た者達がメモをとったり、指示を出しあっている。
「教官・・・・この【インゼル】は・・・・・」
「【オリジナル】だ」
「・・・・・・」
シゼンはゆっくりとインゼルに歩み寄る。一ヶ月前、自分とリーダーを窮地から脱してくれた機体。最初に乗った時から何か懐かしい感じがしていたが一体この感覚は何なのだろうか?
「セレグリッド教官」
横から白衣を着た者達の中で一番年をとっている者が話しかけてきた。
「トルシノ班長」
「よく来てくれた。教官」
「個人的にも【オリジナル】は一度見ておきたかったので・・・・・・」
「ふむ。彼がシゼン・オードかな?」
インゼルの真近で機体を見上げているシゼンに目を移す。
「そうですよ。彼がシゼン・オード」
「・・・オード。必然か・・・・はたまた偶然か」
「俺は前者だと思いますけど。それより解析は順調ですか?」
「君に言われずとも、やっている。我々のほとんどは好奇心の塊のような者達だからな。高価な箱を見つければ、出来るだけ傷つけず開けてみたいものだ」
「もし、箱を開ける鍵があれば?」
「そんなものがあれば我々は必要ない」
セレグリッドはフッと微笑をつくる。
「しかし今回の作戦は【オリジナル】も投入させます」
「長官から話は聞いている。私としては【オリジナル】戦場に出すのはあまり気が進まないのだが・・・・・」
と、その時シゼンが声を上げる。
「教官! 久しぶりにコア内を確認したいんですけどいいですか?」
ちょうどコアハッチの位置に設置されている台に乗りながらセレグリッドに尋ねる。
「!?」
その言葉に白衣を着ている者たち、トルシノも驚いた表情でシゼンを見る。なぜなら、コアだけは絶対に開けることが出来なかったからだ。アステロイドを製造する時はコアから製造してゆく。コアはアステロイドのデータがすべて詰まっているからだ。そのためインゼルを回収した時、先にコアを開けようとしたのだが外部からの干渉をまるで受けなかった。トルシノ達は半月ほどかけてコアを開けようと様々な方法を試みたが、結局開けることができず外部から解析を行い現在の形になった。
「オード君! 君は【オリジナル】を開けられるのか?」
トルシノは走り寄りながらシゼンに尋ねる。
「あ、はい。開け方は一応覚えてますけど・・・・・」
「いいぞ別に」
「それじゃあ」
セレグリッドの言葉を聞くと、胸部の位置にある一部分を軽く押す。するとそこが開き文字の付いていないパネルが現れた。それを一つずつ押してゆく。
全員が見ている目の前で、ゆっくりとコアハッチが開いた。
シゼンは中に入る。白衣の者たちが台に集まりコア内を見る。
その中を見た者は目を丸くした。なぜなら搭乗席が二つあったのだ。
アステロイドは本来、搭乗席が二ついるほど複雑な戦いは出来ない。それどころか席が一つ増えるだけで大幅にステータスは低下する。一体何のために二つあるのか・・・・・・
「ちょっと失礼するよ」
トルシノはコア内に入る。
目を丸くしたのは席だけではなかった。コア内全体がカメラのモニターとなっていたのだ。ほかにも機体を調整するコントロールパネル。その上に表示されている三本のゲージ。他にも見ただけではまるで分からないさまざまな機能があった。
「・・・・・・この技術は、我々の技術よりも100年近く先を行っている」
トルシノはそう決断すると、コアから出る。
『まもなく作戦空域に入ります。降下部隊は出撃準備をお願いします』
アナウンスが格納庫内に響いた。
「シゼーン! 作戦の再確認を行う。こっちに集まれー!」
「あ、分かりました」
シゼンはコアから出ると倉庫内を後にした。 |