プロローグ
偽物。
それらは、全て仮に創られた世界だ。
強く降りそそぐ雨。
鋭くそり立つ岩壁。
鬱蒼と生える木々。
架空とは思えない程の自然界。しかしその世界が架空であることは、誰もが知っていた。
密林。
そのフィールドは、そう名付けられている。
今は雨天となっているが設定を変えれば、さまざまな状況を創りだすことが出来る。
と、広大な爆音。
フィールドの一角に赤黒の煙が上がる。
その煙を上空から見ている者がいた。正確には者ではなく物だ。
金属の装甲。全体的に細身の体格。不気味なほど空中で安定しているその様は、まるで空中を足場にしているような姿である。
アステロイド。
その機体に限らず人型の大型アンドロイドはすべてそういった名称で呼ばれている。
現在空中に停滞しているこのアステロイド―――――ウイグルは、単独飛行を可能としているアステロイドだ。だがその反面、装甲は軽量化され一発の弾丸でさえ致命傷になる。さらに武装が限られ、使えるのは取り付けてあるレーザーブレイドと軽量の射撃武器だけとなっている。そのため扱うには難しい機体である。
「・・・・」
ウイグルのパイロットは無言で煙を見ていた。雨の中、センサーで煙の根元を中心に検索する。
落としたか。いや・・・・まだだ。
次の瞬間、煙の中から一発の弾丸がこちらに向かって直進する。その熱源をセンサーが感知しコックピットコアに警告音が鳴り響く。
「そこか!」
ウイグルは瞬時に身を翻すと、弾丸を回避し煙に向かって接近する。
巻き込んだ大気が煙を一気に吹き飛ばす。するとそこに居た。
灰色と薄い青で塗装されている装甲。ウイグルに比べ全体的に大柄な体格。
ガラン。
それが相手の機体の名前だ。
重く安定感のある全身は地上戦闘に優れ、様々なな武装やタイプをカスタマイズする事が出来る。万能で初心者でも使いやすいアステロイドだ。乗っている搭乗者は初心者ではないが、多数の武装が使えるガランを好んで使っていた。
「オレの勝ちだな」
ウイグルの搭乗者は通信で相手に伝えた。ガランは地上戦で本領を発揮する機体だが、空中を制するウイグルとは相性が悪い。地上で攻撃を行うガランはウイグルから見れば隙だらけだ。ウイグルは右腕部に取り付けられているレーザーブレイドの出力を解放すると、刃状の形にエネルギーを収束する。どこに逃げようが煙の晴れた今なら確実に捉える事が出来る。
「―――いいや、俺の勝ちだ」
次の瞬間。雪崩のように押し寄せてきた煙が二機を飲み込む。
「!?」
ウイグルは反射的に直進を停止した。
「煙幕弾か!?」
ウイグルの搭乗者がメインモニターを見ると、アサルトショットガンを構えたガランの姿が映っていた。 |