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パンデミック・マン 作者:ですの

パンデミック編

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第六十四話 ファイナルパンデミック・ディスティネーション


「間もなく降下ポイントだ、準備は良いな?」

山田からの問いに三上は頷く。
そして手を差し出した。

「今まで本当にお世話になりました。初めて会った時から、本当にいろいろ……」

「良いんだよ。面白いやつに出会えて良かった。三上君の謎に生意気な態度は一生忘れねえって」

「なんすかそれ」

そして二人は固く握手を交わした。
それ以上は言葉を発する事は無かった。

山田は三上にはもう二度と会えない事を予感していた。

ハッチが解放される。
三上が降下姿勢を取り、山田は三上のパラシュート装備の最終確認を行う。

機内のランプが点灯し、降下ポイントに到達した事を知らせる。

「さようなら」

三上は最後にそう言うと、思い切って飛び降りた。

遥か眼下に懐かしい故郷が広がっていた。
所々クレーターのような物が見える。地形の一部が変わってしまっているようだ。
10年以上前、かつてそこに存在した国家を消滅させた核兵器の威力の凄まじさを三上はようやく、そして初めて思い知った。

三上の装備しているマスクのゴーグルに高度が表示されている。

「こんな機能までついてたんだな」

予定高度に達したところで、三上は山田に教わった通りパラシュートの展開を行う。
パラシュートは無事に開き、三上はゆっくりと下降していった。

空中での姿勢制御は当然初めての経験だった。しかしなんとかなっているようだ。

三上は改めて眼下を眺める。
建物は吹き飛び、残骸に塗れた本土の姿は遠くからでもよく分かった。

三上には不思議とその光景が美しく思えた。

やがて地面が近づいてきた。
三上は着陸態勢を取り、慣性制御を行う。

勢いを殺し、ゆっくりと滑り込むように三上は着地した。

パラシュート装備を外して、改めて辺りを眺める。
ゴーグルには放射線量を示す計器が表示された。

当然10年経っても、その放射線量は明らかな致死量を示していた。

「さて、向かうか」

三上は一人、ただ歩き始める。
自分がどのあたりに降下したのかは上空からある程度確認していた。

当然誰もいない。生物の気配は一切感じられない。
10年間放置された地面からは雑草が生い茂っていた。それ以外には何も無い。

恐らくかつて道路だったであろう砕けたコンクリートの残骸を追う様に、三上は歩みを進めていた。

変わり果てた祖国の姿を片目に、三上はしばらく封印していたある感情が噴き出すように心に溢れていくのを感じる。

それは後悔だった。
前に進むために必死に押し殺してきたその感情が、否応にも三上を包み込む。

「なんて遠回りをしたんだ俺は。たくさん犠牲を出して、たくさん迷惑をかけて、結局辿り着いた答えがこれなんて……」

『君はまた一つ選択を誤った。現状から目を逸したんだ、無責任に』
『君はまたその責任から逃れる事になる』
『私利私欲の為に他者を犠牲にする事が最良であるとする人達を見てきた。そんなどうしようもない生き物が救われる方法は一つしかないと確信したんだ』

かつて高見博士から言われた言葉の数々が、まるで記憶の底から這い出るように三上の脳裏をよぎる。
その言葉の意味を、彼が何を言おうとしていたのかを今になって三上は初めて理解した。

かつて高見博士が望んでいた誰も居なくなった世界を、三上は今目の当たりにしている。

「そうか……。あいつの言ってた俺とあいつが似てるって、そういう事だったんだ。あいつも、高見博士も自分を止められなかったんだ。選択を誤り続けた自分を、逃げ続けた自分を、認められなかったんだ。突き進むしかなかったんだ……。それをずっと俺に伝えようとしてたんだ。なのに、なのに俺は……」

三上は思わず泣き崩れそうになる。しかし何とか前を向き、決して歩みを止めなかった。
そして、彼の決意はより固いものとなった。

三上は歩き続けた。
※2017/01/11
仮タイトルそのままだったんで変更しました。
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