挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
パンデミック・マン 作者:ですの

パンデミック編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

57/65

第五十七話 パンデミック・トーク

橋の向こう、ベイズアザディの兵士達の姿は完全に見えなくなっていた。
文明社会の崩壊後、実質的に世界最大勢力のコミューンであったベイズアザディが敗北したというニュースは人伝にたちまち大陸全土に拡まるだろう。

三上には遠くから響き渡るマンハッタンの人々の歓喜の声が聞こえていた。
それとは裏腹に異様なほどの静寂に包まれた市街地で、三上はその女性と対峙していた。

「サーシャさん、なんであの人達と一緒に戻らなかったんですか」

「君と話すためだよ。戦いは終わった事だし、無駄話でもしようじゃんって事」

三上にはその目的が全く読めない。
数十分前までこの女性の率いる兵士達と殺し合いを繰り広げていた三上にとって、無駄話をしようという提案はあまりにも突拍子もないものに思えた。

「昔、散々話したじゃないですか。俺がLAに立ち寄ってた頃に」

「お互いに嘘をつきながら、ね。違うんだよ三上、腹を割って話そうって言ってるんだよ」

「俺はあなたに話す事なんて何も……」

サーシャはただ笑っていた。
なぜ彼女にはこんなにも余裕があるのか三上には理解が出来ない。

「うん。会話の糸口ってやつを作ろう。まずは自己紹介だな。アイスブレイクってやつだ。三上は元ビジネスマンなんだろ? アイスブレイクの必要性は理解してるね?」

「自己紹介も何も、サーシャさんですよね? まさか名前から嘘ついてたんですか?」

「流石にそれは本名に決まってるじゃん。私はお前が何者かある程度想像はついてる、というかわかってるけど、お前は私が何者か知りたくないか?」

「そりゃまぁ……」

「それじゃとりあえず、お互いこれは地面に置いておこう」

そう言うとサーシャは手に隠すように持っていた拳銃を地面に放った。
それを見て三上も隠し持っていた銃を地面に置く。

サーシャに敵意は無いという事は分かったものの、それが三上にとっては不気味でしかなかった。

「私はね、世界がこうなる前はWHOの職員だったんだ。ウィルスに関する分野を担当していた。ウィルス災害対策に関する仕事をしていたんだ。表向きはそういう事になってた」

「表向きは……?」

「実際にWHOで私が進めていたのは人口削減の為のプランだった。人口調整ってやつだね。あの当時の地球規模の切迫した諸々の問題って、殆ど人口削減で片付いちゃうことばっかりだったから」

「淡々とエライ事言ってますよサーシャさん……」

「どうせ今じゃもうどうでもいいことだろ。さて、いよいよ人口調整をしなくちゃいけなくなってきて、私達はアメリカのSWARPAにウィルスの開発を依頼した。もちろんそれは表向きには災害対策の為のテストケースのデータを得る為だと伝えてね。それが今もお前の中にあるウィルス、ニューオーダーウィルスだ」

「え……? じ、じゃあそのウィルスはなんで俺に、そ、そうだ。ずっと気がかりだったんです。なんで俺が原株のキャリアーなのか。俺は昔SWARPAの日本支部に隔離されてたことがあったんですけど、そこに居たSWARPAの人達も原株は自分達が保管してるはずって言っていたんです」

サーシャは少し間をあけた後、再び話し始めた。

「SWARPAに保管されてたってニューオーダーウィルスは、私達が複製したものだろうな。データを実際に取るからウィルスを一度私達に預けてほしいって頼んでさ。その時にすり替えたものを持って帰って大事に保管してたんだろ」

「そんな簡単にいくものですか」

「簡単じゃないよ。お前には想像もつかないほどの人員が隠蔽と偽装に時間と労力を費やして達成できたんだよ。そこまでしても絶対にニューオーダーウィルスが必要だったからね。地球がダメになるまでのタイムリミットはそれだけ差し迫っていたんだ」

「で、でもそれをどうやって俺に……」

「……私達が直接ウィルスを撒いたりするとどうしても痕跡が消しきれない。だからそういうのはヤバい事をやってくれそうな奴らに頼むんだ。私の知り合いの日本人に一人、そういうヤバい事をしてくれそうな人がいた。その人は割と過激派っぽい環境保護団体だか何だかに参加しててさ、上手く口車に乗せてやったら、ウィルスの拡散を手伝ってくれると承諾してくれたんだよ。すげえビビりながら『それが地球の為なら』って言ってさ」

「日本人……ですか」

「お前はその人の事を知ってるはずだろ」

「え……?」

サーシャのその発言に三上は動揺していた。

「その人は清水って名前だった。普段はフリーで通訳の仕事をしてたらしい」

「清水……!? そ、そんな、そんなまさか……」

三上はその男の事を忘れるはずはなかった。
清水、通訳者のこの男はサラリーマン時代の三上の仕事仲間であり、唯一の友人とも言って良い存在だった。
※2017/01/07
サーシャさんの口調が流石に乱暴すぎたので一部修正しました。
※2017/01/15
表現の一部と誤字脱字の修正をしました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ