挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
パンデミック・マン 作者:ですの

パンデミック編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

56/65

第五十六話 パンデミック・ウォー8

「よし、すべて設置完了した」

三上からの連絡を受けてヤンが素早く通達を始めた。

「準備できたそうだ。囲い込みの方はどうだ?」

その問いかけにすぐさま市街地に拡散していたそれぞれの迎撃隊から連絡が入る。

「北はベネットアベニュー付近で足止めしてる、こっから先は誰も通してねえ」

「俺たちは170丁目で交戦中だ」

次いで山田達からも連絡が入った。

「南は迎撃隊と協力してニューヨーク大聖堂付近まであいつらを押し戻せた。大丈夫だ、これならいける」

「よし、やるぞ! ツグモリ、頼む」

ジェシーの言葉を聞いた三上が手に握っていたスイッチを起動する。
すると、西側に建てられていた何棟ものビル群が一斉に爆破され、大量の粉塵が立ち込めていった。

粉塵は街を包み込んでいく。

「あー、なんて事を……。将来の世界遺産になったかもしれないニューヨークの都市を爆破しちまうなんて……」

山田がそれを見て嘆いていた。
マホーンが笑いながら山田に話しかけた。

「何心配するな。解体するほどの爆薬量じゃ無いんだ。あくまで狙いはこの粉塵なのだから」

粉塵がどんどん広がっていくのを確認して三上が無線で連絡を入れた。

「良い感じだ。上手く粉塵が広がってる。じゃ、最後の仕事してくるわ」

「頼むぜツグモリ、これで決められなきゃ全てお終いだ」

「仕事に対しての俺の実直さをなめんなよジェシー! 俺はこれでも元は伝説とすら言われてる日本のサラリーマンなんだ」

そして三上は粉塵の中へ単身突入していった。

一方ベイズアザディの面々は突然の爆破と直後の粉塵による視界不良に襲われた事で、本日何度目になるかわからない混乱に包まれていた。

「何が起きた!?」

「ビルが爆発したぞ!? 罠か!?」

「全員連絡を取り続けろ! もしかしたらこの粉塵に紛れて奴ら一斉に攻撃を仕掛けてくるかもしれない!」

しかし、彼らの予想に反して銃弾が飛び交う事ような事態は一向に起こらない。
煙に辺りを包まれながらベイズアザディの兵士達は物陰に身を隠し、慎重に事態の把握に努めようとした。

すると一人の兵士から連絡が入った。

「……おい、おい皆。ちょっと確認したいことがある」

「なんだよ、どうかしたのか?」

その兵士はどこか息使いが荒く、とても不安げに話し始めた。

「俺たちの装備してる防護マスクって、防塵タイプのマスクだよな?」

「それがどうした? フルフェイス仕様の強化品だからそう安々とウィルスは通さねえぞ」

「そ、それがさっきから息を吸うのがなんかきつくて……。もしかしてこの粉塵、マスクのフィルターを詰まらせたり破壊するために意図的に撒かれてるんじゃ……」

「なっ……?」

その予想は的中していた。
三上が爆薬と共にビルに仕掛けていたのは粘性の強い粉塵だった。
これをフィルターに詰まらせることによってマスクの通気効果を急激に低下させる事が目的である。

間もなく兵士達は次々と息苦しさを感じ始めた。
しかしここでマスクを外してしまうと今度は三上のウィルスによる致死の危険がある。

兵士の内の何人かがブロードウェイに向かって走り出した。
しかしこれもすぐさま銃撃されてしまい、東側に辿り着くことが出来なかった。
マンハッタンの迎撃隊がしっかりと大通りをマークしていたのだ。

彼らにとってもはやこの状況は八方塞がりであった。

「限界だ、撤退しよう。このままじゃどの道俺たちはお陀仏だ」

「でもそれならサーシャ司令に……」

「それがな、司令に無線連絡してるんだが返答が無いんだよ。急ごう、橋まで戻るんだ」

そして直ぐにベイズアザディの兵士達は撤退を開始した。
三上がそれを確認してジェシー達に連絡を入れる。

「……作戦成功かな、あいつら撤退してる。マスク外してでも交戦続行してくるかと思ってたがそこまで馬鹿じゃなかった」

「良かった……。マンハッタンを守れたんだな、ツグモリのお陰だ。ここまで俺たちの為に身体を張ってくれるなんて。本当に感謝してるよ」

「あ、あぁ……」

三上はそれ以上は返答せずに、ただ兵士達が撤退するのを見届けていた。
その心境はジェシー達には想像もつかないほど複雑なものだった。

(他人の為に、か。本当にそうなのか。今までも、今回のこれも、本当に俺は人の為に行動しているのか……)

橋を多くの兵士達が渡って行く。
ここに最初に進撃してきた時から大きく人数をすり減らしつつも、彼らは尚も百人以上が生き残っていた。
兵士達の姿は次第に遠のいていった。

その兵士達の姿を三上と同じように街からサーシャは眺めていた。

「ケリをつけよう、三上。今日の事にも、ニューオーダーウィルスの事にもね」

※2017/01/15
表現の一部と誤字脱字の修正をしました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ