挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
パンデミック・マン 作者:ですの

パンデミック編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

43/65

第四十三話 ワールドステイト・ピース

薄暗いビルの一室。
青年達が男を囲んでいる。
各々が鉄パイプや工具を握りしめながらその男を睨んでいた。

男は大型のバッグパックを背負ったままあぐらをかいていた。

青年達の中のリーダーらしき人物が声を荒らげる。

「俺達のコミューンに勝手に足を踏み入れるんじゃねえ! 死にてえのか」

取り囲まれた男は動揺した様子を見せない。
男はフルフェイスの防護マスクを装着している為その表情を読むことも難しかった。

リーダーが再び言葉を投げかける。

「なにか言えよ! 朝起きたらお前が俺達の横で一緒に寝ててマジでビビったぜ!?」

「……いや、すまなかった。俺は旅をしててね。世界中の都市を見て回ってるんだ。都市にはそれなりのコミューンがあるし」

「旅人って……。その風貌でそんな事言われてもな」

男が身に着けている衣服は恐らく防護服の一種だろう。
しかしその状態はひどい有様であちこちに補修の跡が見られる。

「あぁ、これね。個人的な事情で気軽に脱いだり別のに変えたり出来なくて」

「怪しいんだよな、そういうやつは……。言っておくけど俺らがただのガキだと思わないほうがいいぜ? 俺たちは10年前のあの地獄を今よりガキの頃自力で生き残ってんだ」

「それは凄いな。見たところ、ここにいる皆はまだ10代くらいに見受けられるし」

男を取り囲んでいた青年の内の一人が痺れを切らした。

「なぁジェシー、こいつはきっと盗人か何かだって! 怪しすぎる!」

「俺は何も取ってないって! ただ合衆国中をえげつないほど歩いたから疲れて思わず寝ちまったんだよ」

ジェシーが一歩踏み込み男を見下ろす。

「じゃあそのバッグの中身、見せてみろ」

そう言うとジェシーは男の許可も得ずバッグを剥ぎ取り中をあさり始めた。

「……? なんだこれ。お前、旅人って……。合衆国中でヤクでも捌いてんのかよ。そういやお前英語もなんか変だし。イカれてるんだな」

「あー、ドラック的なあれでは無いよ。そこに入ってる物も都市を巡ってる理由の一つだけど。それはウィルス殺しさ」

「ウィルス殺し……? なんか聞いたことあるな」

ジェシーがそのバッグに入っていた大量の薬瓶を床に並べ始める。
取り囲んでいた青年達がざわつき始めた。

「ウィルス殺しって、あれだよな。ミシガンのコミューンの奴らが言ってた……」

「あ、あぁ確か、投与すればもう外に出る時にマスクをしなくても良くなるっていう……」

「ホントかよ……」

男がジェシーから瓶を一つ取り上げる。

「この瓶一つにおよそ4〜500人分の量に相当するウィルス殺しを入れてある。合衆国に来る前から各地に配って歩いてたから今はこれでもだいぶ減ったよ」

「お、俺達のコミューンなら十分すぎる量だ」

「ただし、投与にはそれなりの機材を用意しないといけない。だからでかい病院跡地とかありそうな大都市部を巡ってるんだ。発電機も必要だし」

ジェシーが瓶をじっと見つめながら答えた。

「でかい病院ならあるぜ。発電機もな。しかし、信用ならねえ。まずはそのマスクを取って顔を見せろよ」

「悪いな、それは出来ない」

「なんでだよ」

「このマスクを外したらお前ら全員死ぬ。この距離なら一瞬で死ぬ」

「なんだそりゃ。どういう理屈だよ」

「とにかく、それを一瓶やるよ。他のコミューンの人間とかにも分けてやってくれ。一度投与すればもうウィルスに怯えて生きていく必要はないんだ」

「気前いいな。でもただのヤクだったら許さねえ。試してみてからだな。お前が最初に投与して見せてみろ」

「んー、それも難しい。それじゃとびっきりの事実を教えてやるよ。お前らが寝てる間に既に活性化させておいたウィルス殺しを投与しておいた」

青年達が再びざわつく。

「……はぁ!? な、なに、何勝手なことしてんだよ!?」

「ジェシー、とか言ったなお前。勇気出してマスク無しで外に行ってみろ」

「で、できるかよそんなこと!! 無茶苦茶すぎんだろ!!」

「だよなぁ。どこ行ってもこれが困るんだ。ウィルス殺しの効果の証明」

青年達の内の一人が男に問いかけた。

「お前の名前、言ってみろ。俺はウィルス殺しを投与したっていうミシガンのコミューンに友人がいるんだ。そいつからそのウィルス殺しを配ってる男の名前を聞いた」

「俺か。俺はツグモリ。ツグモリ・ミカミ。日本人だ。英語が下手で悪いな。なんせ本気で勉強し始めたタイミングが遅すぎて」

「ブラン、名前あってるか?」

「あ、あぁ。たしかそいつは日本人でツグモリって名前だって聞いた。そういやマスクを人前じゃ絶対外さないんだとか、そんな事も言ってた。ほ、本物かも……」

男は小さく笑い声を上げたあと青年達に向き直った。

「もし良ければ、ウィルス殺しが本物かどうか確かめる手伝いをしてやれなくもない」

「手伝いって、どうやって……?」

「ここ、都市の建物のいろんなところにトラップや防柵が組まれてるよな。野盗とか暴徒とか、けっこう来たりしてるだろ。個人的にはそんな奴らはクズだと思っててな。だからそいつら捕えてこれを投与して実験してみたらいい」

青年達は唖然としていた。

「な、なんて残酷な男なんだ」

「意外とピュアだなお前ら。他の都市部もだいたいそういった輩に襲われてる形跡があってさ。だからこの方法で証明実験やってきてんだよね」

「でも、野盗はいつも集団で来るんだ。捕らえるなんて事……」

「俺一人に任せてくれたらいい。どうだ、やってみるか」

青年達はしぶしぶその提案を承諾した。
※2017/01/15
表現の一部と誤字脱字の修正をしました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ