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パンデミック・マン 作者:ですの

パンデミック編

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第三十三話 パンデミック・バスター

その日が来た。

高見博士は今日もウキウキしながら研究室に現れた。
三上はその姿を見るたびに苛立ちを覚えていたが、今日に限ってはそれを態度に出さないようにしていた。

「やぁ、三上さん。昨日すごい事を思いついてね。この世界はいずれ滅ぶ訳だけど、きっとその世界を知ったら君は変わると思うんだ」

「そ、そうか。期待しないで待っててやるよ」

いつもと違い、まともにリアクションが返ってきた事に高見博士は驚いた表情を見せた。
三上は早くも焦りを感じる。普段通りに接しようと努めてはいたが、どうにも違和感のある態度になってしまう。

しかし数秒後、高見博士は子供のような笑顔を見せて、早口気味に話し始めた。

「期待はしないでいいさ、いいんだ。君が人間を、人と人の作り出したこの世界の汚さを理解してくれればいいんだ。楽しみだ。本当に楽しみだよ。さて三上さんそろそろ教授が来るからお喋りはここでやめにしておこう」

間もなくゼルゲ教授が研究室に入ってきた。
いつもと変わらない気のない挨拶を二人にした後、黙々と準備を進める。

高見博士がゼルゲ教授を手伝おうと近づく。
すると、高見博士が話しかけるよりも先にゼルゲ教授が振り返って話始めた。

「ユウキ、今日は君に少し協力してもらいたい事がある」

「なんでしょう教授?」

「君の特性抗体を採取させてほしい。もちろん取り出したら効果が無い事は分かっているが、今の三上君のウィルスがどのように作用するのか調べたい」

「そんなことしても、なんにも解決にはなりませんよ。特性抗体でわざわざ試さなくとも……」 

「正直言うと手っ取り早いんだユウキ。他の人の血液を取るにはいちいち消毒して防護服を着脱してと時間と手間がかかる。君に頼めばこの場で血液実験が出来るんだがね。やってもらえないだろうか」

高見博士はしばらく考え込む。
明らかに疑いの目をゼルゲ教授に向けていた。

数分ほど考え込んだ後、高見博士はそれを承諾した。

「すまないねユウキ」

ゼルゲ教授が高見博士の血液採取を始めた。
その姿を見ながら、三上は内心ほくそ笑んでいた。

その後は普段通りの何でもない検査が続いた。

三上は次第に気づいていた。
自分に対する検査や研究は、自分をここに拘束するための口実なのだと。
ゼルゲ教授もそれに敢えて合わせているようだった。

夜になると高見博士はまたどこかへと去っていった。

高見博士の去った研究室で三上が歓喜の笑い声を上げた。
ゼルゲ教授がそれを窘める。

「三上君、まだウィルス殺しが完成した訳じゃあないんだ。喜ぶのはまだ早い」

「でもさぁ教授、こんな簡単にアイツの抗体サンプルが手に入るとは思わなかったじゃないですか! これからは上手く行く、きっと何でも良い方向に進むに決まってる……」

間もなく現れた森崎に採取したサンプルの確認をしてもらう。
彼女は笑みを浮かべてオーケーサインを出していた。

ウィルス殺しの開発が遂に始まった。
※2017/01/15
表現の一部と誤字脱字の修正をしました。
タメ語の三上がこっちにも出現してたので修正しました。
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