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パンデミック・マン 作者:ですの

パンデミック編

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第三十話 ドランカー2

「それでね、名簿なんて自衛隊の人たちとか多国籍軍的な人達しか作ってないわけだし、あたしがひっそりいなくなっちゃったりしても誰も気付かないじゃんって! テロリストの見張り役さんを倒してから直ぐに部屋にあった防護服を結花ちゃんに着させて、あたしは脱出準備してたんだぁ」

「おっと、森崎さん。その話はさっき聞いたと思うな」

「あれ〜? そうだっけ? 山田さんっていう自衛官さんも一緒に逃げようってなったのも話した?」

「それも聞いた。少し休憩としよう。しばらく話し続けていてきっと疲れているんだろう」

森崎とゼルゲ教授が街外れのバーで落ち合って、実に三時間以上が経過していた。

その間、時々洗面所に足を運ぶ以外は飲んで話すだけを繰り返していた森崎は時間が経つに連れ口調がまともになり、話はループするようになっていた。

ゼルゲ教授が森崎から聞いた話の内容は、驚きはしたが何となく彼が危惧していたものと合致もしていた。

ゼルゲ教授は高見博士が何かを隠している事には気付いていた。
しかしそれを詮索したところで、何が変わるでも無いと考えていた。

ゼルゲ教授と高見博士が三上の検査を始めてから数日後には、世界中で感染者の報告が上がり始めていた。

ゼルゲ教授は、感染の大元である三上を拘束しているのにも関わらず、感染が均等に世界中に拡大していく様を見て不自然さを覚えずにはいられなかった。
だがそれなら、あくまで三上を調査して解決の道を見つけるだけだとも考えていた。

しかしゼルゲ教授は、一連のウィルスによる"攻撃"を扇動したのが、かつての自身の助手であると言う事を森崎から聞かされたときは流石にショックを覚えた。

森崎が口を開いた。
店主は今や戦々恐々としながらバケツを構えて、森崎の動向を伺っていた。

「大丈夫、大丈夫吐きませんよぉ。それでね、三上さんをね、何とかしてあげたくて」

「何とかするというのは、何をするのだ」

「兵器として造られたウィルスならさ~、同じノリでそのウィルスを倒せるウィルスを作れないかなぁって。それで、あれじゃん? おじさんの研究所ってバイオセーフティレベル4の施設だしぃ。そういうの出来そうかなって」

「そんな事ならきっとCDCやSWARPAが既に試しているだろう」

「それがそうでもないっぽくて。合衆国の偉い人グループは最初の頃ウィルスが合衆国製だって知られないようにいろいろ工作とかしてて手一杯だったみたいだし。兵器だってことは結局あたしとかおじさんみたいな、ちょー怖い高見博士に近い人くらいしか今も知らないはずだからみんなワクチン開発頑張ってると思うんだぁ」

森崎の意見にはゼルゲ教授も賛成だった。
しかし一点、問題があった。

「しかし、君はどうやってそれを開発するつもりなんだね。まさか私の施設に入ろうなどと考えてはいないだろう? そこにはユウキも居る。君が生きていると分かれば、彼は何をするか予想はつかない」

「そこで今日いちばんのお願いなんだけど! こっそり研究室に入れさせてほしいなぁって! なんかおじさんの所長パワーでどうにかしてよぉ」

「……いいだろう。期待はしないで待っていなさい。用意が出来たら私から連絡をしよう」

そして長かった会談はようやく終わりを告げようとしていた。

森崎なりに気を使っていたのか若しくは緊張していたのか、彼女は立ち上がると共に洗面所に駆け込んでいった。

ゼルゲ教授が店主に話しかける。

「今回の件も、もちろん内密に頼むよカール」

「あんな上客をまた連れてきてくれるってんなら、棺桶が焼かれても口は割らんさ」

夜は間もなく開けようとしていた。
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