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パンデミック・マン 作者:ですの

エピデミック編

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第二十二話 エピデミック・セル

「はじめましてぇ~! お話は博士から聞いてますよぉ三上くんと大町ちゃん~! 博士の助手のぉ、森崎百合です~」

三上は直感で察する。この女性は天然だと。

高見博士の助手であるこの森崎という女性は、三上と大前が機内室に通され暫くした後突然現れた。
というより、シャワーを浴びていた大町の元に突然現れ、そのまま機内室に戻る彼女の後についてきたようだ。

大町が少し強張った表情で彼女に質問をする。

「も、森崎……さん? えっと、いきなりこんなこと聞くのはよくないかなって思うけど、おいくつかな? 高校生かな?」

「え~いきなり年齢から聞く~? こう見えてまだ23歳ですよぉ! まだ博士の助手になってから一年くらいかなぁ?」

「と、年上……!」

大町はそれ以上は何も言葉を発さなくなった。
無理もない、と三上は思った。

森崎の外見は明らかに若い。
若作りとかそういうレベルではなく本当に高校生くらいの女の子にしか見えなかった。
その上どこか気の抜けた話し方をするので大町が年下だと思ったのも当然の事だった。

高見博士はそのやり取りを黙って見ていた。
三上が高見博士に話しかける。

「ていうか博士に助手なんていたんすね。しかも女の子で。おっさんの癖に、こんな麗しい女性と日夜なんの研究をしてるんすかね」

「僕まだギリギリおっさんじゃないよ三上さん、きっと、たぶん……。来年まではまだ20代だし。森崎君はあんな感じの人だけど、中々有能なんだよ」

森崎が一方的に大町に絡む声が延々と室内に響き渡る。

三上はそちらには目もくれず席にもたれ掛かっていた。
緊張が解けたのか、長い一日の疲れが三上を包み込んだ。

三上は眠気に身を任せながら窓の外をぼんやりと見つめていた。

遠く雲の下に一瞬光が走った。

(雷、いや太陽か……? そっか、もうそろそろ朝だもんな……)

三上はそのまま目を瞑った。

「少し席を外すね」

高見博士は小声で三上にそう伝えると機内室を出て行った。
三上は返事をすることも無く眠りにつこうとしていた。

しかし高見博士が部屋から去った瞬間、森崎の態度が一変する。
焦っているか、或いは怯えている様子で話し始めた。

「皆さん大変ですよ、ちょ~エマージェンシーですよぉ! 博士から逃げなきゃ! あぁでも飛行機の中じゃどこにも逃げられないしぃ! まずこの飛行機が危ないしぃ!!」

突然の事に三上は思わず目を開ける。

「な、なんすか急に……? 眠る直前に起こされるのが人間一番ストレスなんですよ……!! サラリーマンの数少ない楽しみを奪う気ですか……!!」

森崎はアタフタしながら、なんとか言葉を整理しようとしている様子だった。

「ごめんね三上くんおはよぉ! えっと、あの、高見博士はみんなの思っているような人じゃないんだよぉ! つまり、なんてゆ~か、怖い人なんだよぉ! あたしも最近気づいて、それでどうしようって、うわぁどうしよぉ~!? 助けてぇ!!」

大町が唖然としながら三上に声を掛ける。

「森崎さん急にどうしたんでしょうね、下社郎さんはどう思います?」

「遂にあだ名略しちゃった! 言いやすさ重視されても! ……まぁ、なんというか、森崎さん急に焦りだしたね。高見博士が出て行ってから。正直ちょっと見てて面白いよな」

森崎が怒っているのか焦っているのかよくわからない様子で三上に言葉を返す。

「笑い事じゃないんだってぇ! あたしだってホントに最近まで博士ちょ~すごいって尊敬してたけど怖いことしようとしてるんだよぉ~!! ちょ~マッドサイエンティスト! 前にうっかり博士が電話してるの盗み聴きしちゃって。いや悪気は無いんだよぉ! これはホント、あっ、これはってゆ~か全部ホントだけどっ! あれ今あたし何話してるん?」

大町が堪えきれず噴き出した。
三上が大人の冷静さを演じながら森崎に話しかける。

「落ち着いて下さいよ森崎さん、もうちょい詳しくお話聞かせてください。今のところ俺達が共有できた内容は、高見博士実はヤバいくらいの事しか無いんで。とりあえずその電話の内容とやらをお願いします」

「三上くん冷たいっ! えっと、簡単に言うとぉ、高見博士が誰かに電話してて~、その内容が送電所を攻撃ぃとか、そんな感じだった! それでそのすぐあと原発の事故とかあってぇ! ちょ~やばい」

「ん……? それはどういう事……ですか?」

「あたしにもわかんないけどぉ! それで博士何言ってるんって思ってちょっと博士の端末とかこっそり調べちゃったりして! そしたら博士、なんか、たぶんテロリストっぽい!! この飛行機にも博士のテロ友達とか乗り込んじゃってる感じっ! 博士が居なくなるまで話せなくてごめんなさい!」

何を言っているんだ、というのが三上の率直な感想だった。
森崎は真剣に話そうとしていたが、如何せんその慌てっぷりが緊張感など微塵も感じさせてはくれなかった。

大町が少し窘めるように森崎に言葉をかける。

「森崎さん深呼吸してみましょう、落ち着いて。あの、つまり高見博士は実はテロリストで、これからこの機体もハイジャックとかされるって事ですか? でも何が目的で? 第一、この機には自衛官や多国籍軍がいっぱい乗ってますし、いざそんな事になってもきっと大丈夫な気が……」

「信じてよぉ……。博士のテロ友は兵隊の人達に紛れ込んでるんだよぉ! 目的は三上くんを海外に連れていく事なんだよぉ! 他の国でもウィルスをまき散らしちゃおって! そしたら世界中がちょ~やばい事になるじゃんっ!」

その時、部屋の外から慌ただしい物音が聞こえてきた。
思わず森崎が口を閉じる。

そして銃撃音が聞こえた。

「マジかよ」

三上は機内室の扉をじっと見つめる。

扉から最初に勢いよく入ってきたのは山田だった。
肩から流血している。

「お前ら何処でもいいから早く隠れろ! この機は何者かに奪われちまったらしい! 兎に角身を隠せ!」

その言葉を発した瞬間、山田は背後から銃床で後頭部を勢いよく殴りつけられその場に倒れた。
高見博士が倒れた山田を乗り越えて部屋に戻ってきた。

Tシャツの上から防弾チョッキを身に着け、先ほど山田を殴り倒したライフルを肩に担いでいた。

「さて、皆さん。大人しくしてくれれば保証するよ、身の安全は。騒がずに席についていて欲しい」

高見博士はいつもの笑顔でそう言った。
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