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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

王都生活編

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50話 辺境警備隊

 明けて翌日。
 その日は朝から大忙しだった。
 まず、朝一番にミリムを起こした。
 ぐずるミリムに服を着替えさせ、身支度を整えた。
 昨日のうちに用意してもらった衣服だが、良く出来ている。
 ゴシックドレスでは動きにくかろうと用意させたのだ。

「何で魔王が早起きせねばならんのだ!」

 などと舐めた事を言っていたが、朝食を食べる頃には機嫌が良くなっていた。
 子供って、本当に単純である。
 ミリムが朝食を食べている間に考える。
 俺が担当する事になったのはいいが、俺は人間の町に行ってみたい。ミリムを連れていけるだろうか?
 ちょっと自信が無い。いや、訂正しよう・・・全然自信がない!
 あんな危険な子供を連れて行った事も無い場所へなど、とてもではないが行く事は出来ない。
 かと言って、置いていくのも不安が大きい。
 ミリムがいる間は、人間の町に行くのは見合わせた方が良さそうだ。

 朝食を終えて、俺はミリムを連れて鍛冶場へ行く。
 人の姿のままで、仮面を取り出し被った。武器を試すにはスライムでは持てないのだ。
 鍛冶場にて、クロベエに挨拶する。

「昨日頼んだヤツ、出来てる?」
「おお! コレですな! ミリム様の専用武器として、良いかもしれませんな!」

 そう言いながら、俺に完成品を渡して来た。
 昨日、ミリムの手のサイズを粘土で型どって用意してもらったのだ。
 それは、ドラゴンナックル!
 強力なパンチを素手で放って怪我しないように! というのが本来の使用方法であり、威力増大を目的にするのが普通なのだが、これは違う。
 正に正反対の目的である。さり気なく、軽く硬い"魔鋼"の芯を、ショック吸収素材で覆ってある。
 そう! これを装備すると、殴る威力を十分の一くらいに抑える事が可能なのだ!
 自己再生に期待して、"魔鋼"を用いている。威力増大目的では無いというのがミソである。

「ミリム、これ着けてみて!」

 俺がドラゴンナックルを渡すと、興味津々にそれを眺めていたミリムは、嬉しそうに受け取った。
 さっそく着用する。
 軽くシャドーをこなすように、パンチを出したりしている。

「おお! いいぞ、これ! 手が軽くなったような感じだぞ!」

 よしよし。成功である。手が軽く感じるのならば、威力も下がった事だろう。
 俺は自分用に、新型の刀を受取った。
 前回のは自分で壊してしまったので、作り直して貰ったのだ。
 自分でコピーしてみて判明したが、まったく同じ刀であっても、使い勝手が違った。
 どうやら、作り手の技量まではコピー出来ないのかもしれない。
 見た目も鑑定性能も同じなのだが、本当に些細な差異があるのだった。
 刀を抜いて確かめる。素晴らしい。クロベエの腕は確かだ。
 早く、俺専用の刀を手にしたいものである。もう少しで馴染みそうなのだが、焦りはしないが待ち遠しい。
 俺は頷き、刀を仕舞った。



 俺とミリムが受け取った武器を確かめ終えた時、リグルドが走ってやって来た。
 よく走るヤツだ。

「リムル様、コチラでしたか! 不審な一団がやって来ております!」

 話を聞いてみると、町に武装集団がやって来たらしい。
 その中に、3人組の冒険者がいるとの事。
 どうやら、3人組バカが武装した集団を引き連れて町へとやって来たのである。
 どうして、問題ばかり起こすんだろね、アイツ等。そんな事を思ったが、

「まあ、会ってみよう。」

 そう言って、リグルドが待たせているという場所に向かった。
 当然のようにミリムもついてくる。
 到着してみると、リグル達、警備隊が10数名の武装した者達を取り囲んでいた。
 身なりは一応は統一されている。しかし、そんなに高価そうな装備では無く、性能も悪かった。
 この町作成の装備品の比では無い。
 ただし、そんな集団の中に二人、桁違いに凄い性能の装備をした男女がいた。
 装備だけではなく、実力も高そうである。
 そして、見慣れた3人組バカ。俺の姿を目にするなり、

「あ! リムルの旦那、お久しぶりです!」
「やっほー! 遊びにきましたよぅ!」
「お久しぶりでやす! ちょっと色々あって、大勢になってやす!」

 と挨拶して来た。
 色々、ね。どうせこの3人が原因で間違い無さそうだ。

「おいっす。で、こちらの人達は?」
「それがですね・・・」

 経緯の説明を受けた。
 隊長と紹介された、ヨウムという名の男は、油断無くこちらを窺っている。
 話を聞き終わると同時に、

「初めまして! ファルムス王国・伯爵領所属の辺境警備隊に所属、隊長のヨウムという。
 こちらの方に、魔物の町があるいう話を聞き、真偽を確かめに来たのだ。
 町の長はスライムだと聞いたのだが、会わせては貰えないか?」

 と、挨拶してきた。

「ああ、申し遅れました。私がこの町の長というか、代表をさせて貰っております。
 リムル=テンペストと申します。
 こんな風に人の姿をしてますけど、スライムですよ!」

 俺も挨拶を返しておく。

「そうでしたか、これは失礼しました。
 カバル殿に、リムルという名が長の名前であるとは窺っていたのですが、スライムだと聞いていたものでね。
 見事に人に化けれるものですね!」

 お世辞か本気か知らないが、こちらを褒めているらしい。
 人に化ける魔物って珍しいのかな? まあいいけど。

「それほどでも。人に化ける魔物は珍しいのですかね?
 まあそれはいいとして、御用は町の確認だけですか?」
「ああ、そうですね……
 確かに、目的は町の確認でした。魔物が町を作るなど、聞いた事が無かったものでして…。
 それに、仮に本当の話だとして、その町が我々の脅威にならないかという不安もありましたしね。
 ですので、こうして本当に町があると判明した以上、我々の国に対して脅威とならないか調べる必要があるのですよ。
 是非とも滞在を許可して頂きたいのですが?」
「ふむ。しかし、脅威と為り得ると恐れる町には、滞在など出来ないでしょう?」

 俺が逆に問いただすと、ヨウムという名の男は頭をボリボリと掻いて、

「ああ、面倒くせー。本音でいいますわ。
 ぶっちゃけ、魔物の町なんて信じてなかったんですがね、あるのは判ったので信じます。
 で、この冒険者の方達の話を信じるならば、この町は大変居心地がいいらしい。
 ぜひ、ここに滞在許可を貰い、駐屯基地として利用させて貰いたいのですよ!」

 と、一気に話し込んできた。
 そのまま3人組バカに向き直り、

「疑って済まなかった、謝罪する!」

 深々と頭を下げて謝罪した。
 観察していて思ったのだが、この男、案外律儀なヤツなのかも知れない。

「ふっふーーーん! だから言ったじゃないですかぁ!
 まあ、判ればいいんですよぅ! あんまり人を疑うものじゃ、ないですよぅ!」

 エレンが何故か大威張り。
 他の二人は、照れたように、おう! とか、参りやしたね! などと呟いている。
 まあ、悪い奴では無さそうだが、滞在許可は別の話。

「駐屯基地として利用というけど、どういう事をするつもりだ?」

 ヨウムは俺に向き直り、事情を説明して来た。
 ファルムス王国の伯爵領で魔物対策として設置された部隊である事や、30人位のメンバーを3分割して活動している事。
 この場所からならば、直ぐに街道へと抜けれるし、村々を周りやすい事。

「何なら、街道までの道を舗装させて貰えれば、時間短縮になるし今後の取引にも便利だと思う。
 当然、作業は俺達が行うつもりだ!」

 と、提案までして来た。
 馬は抜けれるが、馬車は通り抜け出来ない道である。
 街道方面の木々の伐採は行っていなかった。
 目立つのを恐れたというのが最大の理由だが、それは森の騒乱以前の条件での話。
 今となっては、森も落ち着きを取り戻しているし、町との貿易にも街道は使用したい所。
 この提案を受けるのも有りかもしれない。

 立ち話も何なので、大食堂に皆を案内した。
 食事のメニューは乏しいのだが、味は結構良くなってきている。
 残念ながら塩や胡椒といった調味料が不足気味なので、濃い味付けは出来ないのだけど。
 それでも、シュナの努力によりそこそこの料理が出せるのだ。調理人は、シュナの弟子たる女性達ゴブリナである。
 ゴブリンも大規模に増えた御蔭で、女性の数も多い。
 町の治安維持は男が行っているが、宿の掃除や料理洗濯は女の仕事なのだ。
 得手不得手があるので、料理・掃除・仕込み・裁縫・手伝い・その他と役割分担が決まっている。
 この辺りは、リグルドの手腕は大したものだと思う。
 場所を大食堂に移した所で、話を再開する。
 何が面白いのか、ミリムも俺の隣に座った。
 大事そうに、ドラゴンナックルは付けたままなのが微笑ましい。

「ところで、リムルの旦那、そちらのお嬢さんはどなたで?」

 カバルが聞いてきた。
 ミリムは、お嬢さんという単語に反応しかけたが、自重したようだ。助かったな、カバル。
 この大食堂には、ミリムという爆弾もいる。油断は出来ない。

「ああ、お客だ。とても大事な人なので、最上級に丁寧に接しろよ?」

 忠告を込めてそう言っておいた。
 忠告を無視した者は、自らの愚かさを身をもって実感する事になるだけの話だ。そこまでは俺も知った事では無い。

「ミリムと言う。 宜しくな!」

 気軽にミリムが挨拶してるが、その本性は凶悪な魔王。
 見た目の愛らしさに騙されてはならないのだが…
 二人の男女、装備が桁違いに良かった者達が一瞬動揺したような表情を見せた。
 表情というか、その雰囲気に変化があったと言うべきか。
 信じられないモノを見る目つきでミリムを見たのである。
 まさか、気付いたのか? それは流石に有り得ないだろう、そう思って二人を良く見てみると……
 何だよ、何で魔人が人間に化けているんだ? そう、二人は魔人だった。
 俺の『魔力感知』でさえ、人間と判断するほど巧妙に化けているが、鑑定解析までは誤魔化せない。
 聞けば、道の途中で仲間になったとの話だったので、潜入でもしたのだろうか?

(おい、魔人が二人、町に潜入してるから、警戒するように!)

 この場で、『思念伝達』を用いて警告しておいた。
 まあ、怪しい動きを見せなければ問題ないのだが、

(リムル様、魔王ミリムと同時期に来たというのは、何らかの関連があるのでは?)
(自分もそう考えます。油断させる作戦とか?)
(ちっがーーーーーう! ワタシはそんな面倒な真似はしない!!!)

 俺の『思念伝達』にミリムが割り込んで来た。周波数を割り出し、強制的に進入して来たようだ。
 出鱈目な事をする。
 簡単に言っているが、とんでもない高等技術なのだ。

(って、お前、思念に割り込みかけれるのかよ!)
(ふふん! 無論、ワタシにとっては簡単な事!
 って、そんな事はどうでも良いのだ。その二人はワタシとは関係ないぞ!)
(知っているのか?)
(…え? し、知らないケド?)
(……)
(……)
(まあ、いいや。警戒だけしておいてくれ!)

 どうも関係は無いが、知り合いではあるようだ。
 言いたくないなら言わなくてもいいさ。その件については警戒だけ慎重に行う事にした。
 俺達が思念で話している間に、各々自己紹介が進んで行く。
 いつの間にか、一通り終わったようだ。

「さて、自己紹介も終わった事だし、本題に入ろう!」

 本題として、この町に拠点を置きたいとの話だったが、問題点を洗い出す。

「これは、ヨウムさんの個人的な要望という事でいいのか?」
「ああ、そう受け取って欲しい。むしろ、国には報告しないでおこうと思う。」
「何でだ?」
「ふむ。いくつか理由があるのだが、正直、あの領主は好かんのだ。
 二ドル・マイガム伯爵というのが雇い主なのだが、碌な奴じゃない。
 領民の事より、自分の利益を優先する男だ。
 強欲でがめつく、人使いも荒い。
 高額の税を領民に課すわりには、その安全を守る為の警備には金をかけない。
 最低の野郎なんだよ。
 まあ、自分の雇い主を悪く言う俺も、碌な奴じゃないけどな。
 そんな訳で、各村の安全を守るには人手が足りてないんだ。
 ここに拠点を置けたら、見回りがスムーズに行えると言う訳だ。
 だが、これを報告すると、奴がこの町にちょっかいを出さないと言い切れない。
 この町の住民の衣服、ここでの生産品だろ? 領主の町の品よりも格段に上質だぜ?
 ここは中立地帯のようなモノだから、奴が個人的に手を出せるとは思えないがな……」

 成る程。
 領主が強欲。よく聞く話である。
 確かに、そんなうっとおしい奴に絡まれるのは御免こうむる。
 だが、こういう話を打ち明けてくるとはこの男、本気か。
 本気でここに拠点を置きたいのだろう。俺の信用を得る為に、本音で喋っているのだ。

 その後も話合いは続いた。
 リグルドや、鬼人達の意見も交え、俺達は結論を出した。
 空いている宿舎を一つ、提供する事にしたのだ。
 勿論、町でトラブルを起こしたら追い出すという条件を付けた。更に、飯代含む料金も徴収する事にした。
 これはカイジンの意見を参考に料金を設定する。
 1日1人当たり銀貨3枚。町での平均日当が銀貨5〜8枚らしい。
 町の宿屋が、平均して一宿銀貨3枚。食事は軽食が一食だけ付くそうだ。
 素泊まりなら銀貨1〜2枚という所らしい。
 王都等、人が多い場所では5割高くなるそうだけどね。
 ちなみに、銀貨100枚で金貨1枚。前にカイドウに金貨20枚貰ったのが残ってる。
 単純に考えて、銀貨1枚=1,000円。金貨1枚=10万円である。
 物価の関係で大雑把ではあるけれども、カイドウは大分奮発してくれたようだ。
 回復薬の価値を聞いたら、それも納得ではあったけれども。
 まあ、町で活動する軍資金としては十分だろう。

「銀貨3枚は高い! もう少しまけてくれ!」

 ヨウムが値下げ交渉をして来た。

「ふん! いいか、ここの宿は、3食付だ。更に風呂付き!
 文句があるなら宿じゃなく、仮倉庫が空いてるから、そっちを貸そうか?
 そこなら、銀貨1枚でいいぜ? 飯も付かないけどな!」

 カイジンのその言葉に、暫く悩んでいたヨウムだったが、根負けしたのか納得したようだ。
 先程食べた食事の味でも、思い出したのだろう。
 こうして、ヨウム率いるファルムス王国・伯爵領所属の辺境警備隊の宿泊施設を貸し出す事になったのである。
 それとは別に、宿屋の一階を詰め所として提供する。
 ヨウム達はそこに機材を持ち込み、設置していった。
 何でも、魔力通信というトランシーバーのような機能を持つ魔力珠で、部隊同士の通信が可能なのだそうだ。
 ただ、残念な事に、1時間に3分しか喋れない。魔力消費が多くて、補給が追いつかないそうだ。
 部隊間の定時連絡用と、緊急連絡用に各2個づつ持ち歩いていたそうである。
 高価な物らしく、6個しか支給して貰えなかったそうだ。
 そのあたりにも、領主のケチさが現れているようだった。



 部隊の人間は新人二人を加えて、全員で32人らしい。
 立地的に、この場所からだと、辺境の村々には1日以内に辿り着ける。村から村を回るより大分効率良くなったそうだ。
 隊員もここでの生活に慣れて来た。
 魔力通信にて連絡し、一度ここに集合したのだ。皆気さくで陽気な者達だった。

「「「これから宜しくお願いします!!!」」」

 全員でそう挨拶された。

「こちらこそ! ただし、町でトラブルを起こすと命の保障はしない。気をつけてね!」

 軽く脅しを入れつつ、挨拶を返す。
 俺達が魔物であるのは見ての通りだが、彼等が警戒したのは最初だけであった。
 油断しすぎて、町で暴れて返り討ちにあったりしないように釘を刺しておいたのだ。
 思ったよりも気のいい奴が多そうで、心配しすぎだろうけど。
 ヨウムとの打ち合わせで、リグルを紹介した。
 この町の警備状況を説明し、それの足りない部分から村々の間をヨウム達が調査する。
 余裕が出来たので、一部隊は街道整備に回る。
 猪人族ハイオークの工作部隊が空いているので、街道整備の手伝いを任せる事にした。

 こうして意外なほどすんなりと、ヨウム達の辺境警備隊は町に馴染んでいったのである。
+注意+
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