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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

色々番外編

287/303

番外編 -未知への訪問- 05 ヴェルドラの言い分

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 四巻発売中!
 宜しければ活動報告の方に、書籍版の感想をお願いします。
「――何をやっているのよ、師匠……?」

 いい笑顔でお好み焼きを焼くヴェルドラに、真っ先に戻ってきたラミリスが声をかける。
 ラミリス達がちょっと目を離した隙に、ヴェルドラが打ち合わせた事を守らず勝手な行動をしているのだから、その声に棘が含まれているのは仕方のない話だ。
 しかしヴェルドラは気にした風もなく、次々に鉄板に生地を広げその上に刻んだキャベツを乗せていく。
 その他の具材もどこからともなく取り出すと、手馴れた手付きで生地と練り混ぜた。
 そして言う。

「クアーーーッハッハッハ! ラミリスよ、お前も食べたいのか?」
「食べるけど、ってそうじゃなくて!!」

 能天気なヴェルドラの言葉に、ラミリスも頷きかけて思いとどまった。
 食べ物で釣られたりはしない! という強い意思を以って、ヴェルドラに非難の言葉を浴びせた。

「さっき話し合って、慎重に行動しようって決まったじゃん!」

 しかしヴェルドラは、そんなラミリスを鼻で笑った。

「ラミリスよ、落ち着くがいい。そんなに文句ばかり言うのなら、この戦利品は我だけで独占するがいいのかな?」
「――え?」
「これを見るのだ。こうやって組み立てると――」

 鉄板で生地が焼けるのを待つ間に、ささっと一体のロボットを組み立てるヴェルドラ。
 戦車のような下部に、寸胴。
 その両側に両腕が付いただけの、シンプルな機体だ。
 しかしその左腕は、特徴的なドリルの形状をしている。

「へえ、あんな組み合わせもあるのか」
「なんか、格好いい」
「オレも真似してみようかな……」

 年長の子供達が興味深そうに観察し、賞賛の言葉をかけた。
 それによって、ヴェルドラはますます得意そうになる。

「クックック、まあな。我にかかればこのように、格好よくて強い相棒が生み出されるのは必然なのである!」

 満足そうに頷くヴェルドラ。
 そしてラミリスをチラリと見て、続けて言う。

「どうだラミリス? これでもまだ、お前は興味がないと言うのだな?」

 勝利を確信したように、胸を張って誇らしげに。
 ヴェルドラの言葉は、ラミリスを惑わせるに十分な誘惑を秘めていた。

「え? えっ!?」

 目をグルグルさせながら、悩み始めるラミリス。
 そんなラミリスの前に、焼きたてのお好み焼きがそっと差し出された。
 エビや豚肉がふんだんに使用された極上の一品。
 香ばしいソースに青のりやカツオ節が振りかけられており、その匂いだけで涎が溢れ出そうなほど。
 ラミリスはゴクリと唾を飲み込んだ。

「お前の分だ。食べるがいい」
「え、ああ……うん。じゃあ、頂くよ……」

 騙されないぞという強い意志は、ラミリスの心から既に消えかけていた。
 勝ったと思ったヴェルドラだったが、そうは問屋が卸さなかった。

「ラミリス様、騙されてはなりません」

 目をキラキラさせてお好み焼きを見るラミリスに、ベレッタが冷静に忠言したのである。

「え、え?」

 動揺して、視線を彷徨わせるラミリス。
 その視線はヴェルドラとベレッタ、そしてお好み焼きを交互に行き来し、気持ちが揺れ動いているのが丸わかりである。
 ラミリスとしては、本心ではヴェルドラに同意したいと思っているのだが、それは不味いと理性が訴えかけていた。
 迷うラミリス。
 ヴェルドラはその様子を見てニヤリと笑い、「ロケットパーーーーーンチ!」と突然叫んだ。
 するとラミリスの目の前で、今組み立てたばかりの機体が動き出したのだ。
 ズドン!! という衝撃音。
 ヴェルドラの命令を受けて、右手部分の肘から先を発射したのである。
 壁にめり込む拳。
 ヴェルドラは更に叫ぶ。

「トドメだ、ドリルブレイク!!」

 その声が届くなり、ロボットは動き始める。
 キャタピラが唸り、有線で繋がった右拳に引っ張られるように走り出した。
 そして右手が腕部に収納されると同時に、猛烈に回転する左手のドリルを、壁に向けて突き出したのだ。
 轟音。
 そして、崩落。

「「「すっげえええええ!!」」」

 子供達も大興奮だ。
 そしてそれは、ラミリスも同様である。
 箸を握り締めて立ち上がり、興奮したように叫んだ。

「凄い! 凄いよ、師匠!!」
「クアッハッハッハ! クアーーーッハッハッハッハ!! 当然である」

 美味しいお好み焼き。
 遊び相手の子供達。
 格好いいロボット。
 新たな娯楽。

 そこには全てが揃っていた。
 ラミリスが陥落したのは言うまでもない。


      ◇◇◇


 嬉しそうにお好み焼きを食べ始めたラミリスに、呆れたような溜息を吐くベレッタ。
 しかしベレッタは諦めていない。
 ラミリスは単純なので、ヴェルドラにいいように騙されるのも想定内なのだ。
 重要なのは後で責任問題になった時――というか、まず間違いなくそうなるだろう――に、どうすればラミリスが怒られずにすむか、なのだから。
 ラミリスの失態=自分への叱責である、とベレッタは考えていた。

 ――お前がいて、なんで二人を止められなかったんだ?――

 という、リムルから向けられるだろう視線まで、ベレッタには容易に想像出来た。
 そんな無茶を言わないで欲しい――というのが本音だが、それは決して口に出来ない。
 ベレッタは真面目なのだ。
 そしてベレッタは、何が足りないのか考える。
 例えばの話、理想とするのはミリムとフレイの関係だ。
 あの我侭で強引なミリムでさえも、何故かフレイの言う事には素直に従っている。
 ヴェルドラもまた、姉二人には逆らえない。
 ヴェルザードやヴェルグリンドの命令だったならば、ヴェルドラも大人しく言う事を聞いただろう。
 世の中には、天敵と呼べるような存在が確かにあるのだ。
 戦闘能力の強弱ではなく、特殊な力関係で成り立つ上下関係……。

(ワレがラミリス様に対して、もっと強く信頼されていたならば……)

 と、ベレッタは嘆いた。
 自分がもっと信頼されていたならば、ラミリスはもっと言う事を聞いてくれるのではないか、ベレッタはそう考えたのだった。

 だが、ベレッタは勘違いをしている。
 ミリムに対してのフレイだが、彼女は彼女なりに毎日頭を痛めているのだ。
 ヴェルドラに対する姉二人もまた然り。
 ヴェルドラが素直に言う事を聞いていたならば、彼女達はもっと苦労せずに済んだだろう。
 今でこそヴェルドラはそれほどの悪事を働かないが、過去には大概の事を仕出かしているのだから。
 信用や信頼は、一晩で成らず――ベレッタもこの十数年で、十分にラミリスからの信用を勝ち得ている。
 ただ今回は、ヴェルドラの悪乗りに同調してしまっただけの事。
 もしもベレッタとラミリスの二人だけだったならば、ベレッタの苦労はもっと少なくてすんだのだ。
 今回はラミリスだけでなく、ヴェルドラも居た。
 それこそが、ベレッタ最大の不幸の原因であった。

 ベレッタは美味しそうにお好み焼きを頬張るラミリスを見て、もう一度溜息を一つ吐いた。
 そして気持ちを切り替えて、話しかける。

「ラミリス様。落ち着いて、よく聞いて下さい。このままでは、ヴェルドラ様の悪事の共犯にされますよ?」
「えっ?」

 驚き固まるラミリス。
 そんなラミリスにベレッタが更に忠告しようとしたのだが……。

「クックック。ラミリスよ、安心するがいい。お主は既に共犯だ!」
「はえっ!?」
「そのお好み焼きを食べた時点で、言い逃れなど出来ぬであろう。共に歩もうではないか、この血塗られた修羅の道を!!」

 そう言って高笑いするヴェルドラ。

「ヴェルドラ様、笑っている場合ではありませんよ。ラミリス様を巻き込むのはお止め下さい」
「クアーーーッハッハッハ。安心せよ、ベレッタ。我も馬鹿ではない。ちゃんと色々考えておる」

 余計な事は考えないで欲しい、とベレッタは思った。
 どうせ碌でもない事を企んでいるに違いないと、ベレッタは見切っていたのだ。
 ベレッタが諌めるも、ヴェルドラは意に介さない。
 クアーーーハッハッハと笑いながら、どんどんとお好み焼きを焼き、子供達が持ち寄った部品とトレードしていったのである。

「――ちょっと貴方、何をやっているのですか!!」

 その時、ラミリスとベレッタに追いついたシャルマが、ヴェルドラを見てまなじりを吊り上げるようにして叫んだ。
 その隣では、リンドウも唖然となって鉄板を凝視していた。
 おいおい、と溜息を吐くザザ。
 彼等の心情が理解出来るだけに、ベレッタもどうすべきか思案に暮れた。
 だが、ヴェルドラはまるで気にする事なく……。

「おう! 貴様達も食べるか? ここで暫く世話になるつもりだから、遠慮はいらぬぞ!」

 眩しい笑顔で、そう言い放ったのである。

「ちょ、ちょっと待って下さい。貴方は子供達になんてものを……!?」
「ひ、非常識な。私達だけならばまだしも、何も知らぬ子供達にまで我慢を強いろと――?」

 激昂するシャルマ達。
 しかし先程のベレッタへの返事と同様に、ヴェルドラは高笑いして反省の色などまるで見せない。

「問題なかろう。先程の話では、"都市"とやらには天然食材があるのだろう?」
「いや、それは……」
「――あくまでも噂ですよ。私共も、都市の中の事情までは存じません。ただ、幼き頃より聞かされた憧れがあるのみでして……」
「でもまあ、都市外縁部の食糧生産プラントと違って、都市近郊は警備も厳重だ。科学食糧以外の"本物"の食材があったとしても、不思議ではないだろうさ」

 うむ、とヴェルドラは頷いた。
 レジスタンスが争う相手――機械化帝国アルムスバイン――については、先程の面談の際に詳しく説明を受けていた。
 どちらが正義だなどと、ヴェルドラは難しい事は考えない。
 争っているという事情を聞いて、そういうものかと受け入れただけである。
 敵なら潰せばいいが、別にヴェルドラにとっては、帝国が敵だという訳ではないのだ。
 だが、だからと言って味方でもない。
 そこに食材があるのなら、それをレジスタンスに分け与えればいいと、相手の事情を全く考慮せずに閃いただけの話であった。
 そもそもヴェルドラが相手の事情を慮る事など、期待しても無駄なのである。

「そうであろう? ならば、奪えばいいではないか」
「無茶を言うなよ!?」
「不可能です!」

 ザザとシャルマが同時に叫んだ。
 当然だ。
 今回のように警備の緩い食糧生産プラントへの襲撃でさえ、レジスタンス側に犠牲が出る場合もあるのだ。
 それなのに、警備の厳重な"都市"そのものへの襲撃など、自殺行為以外の何者でもなかった。

「クアーーーハッハッハ! 笑止であるぞ。そんな事では、子供達に希望を与える事など出来ぬであろう?」

 澄んだ瞳で真っ直ぐに、詰め寄る者達の顔を見回すヴェルドラ。
 そして真面目な顔になり、続けて言う。

「我は考えた。子供達に、世の中には素晴らしいものがあると伝えたい、と。この味が変化する食事も、これはこれでアリなのだろうが、しかしそれだけでは心が満たされぬであろう。高きを知り、それを求める。その行為こそが尊いのだと、我は思う!」

 キリッとして、そう言い放つ。

「いや、しかし……」
「それは流石に帝国の怒りを買う。今は見逃されている面もあるのだ、これ以上表立って行動すれば、帝国を本気にさせる結果になりかねん」
「そうですね、私共はレジスタンスと名乗ってはいますが、現実には帝国を打倒し得る戦力などない。各地区の全戦力を統合出来たとしても、たった一つの"都市"にすら劣るでしょう……」

 ヴェルドラの言葉に対し、シャルマ達三人は否定的だった。
 そして事実、彼等の見立ては正しい。
 レジスタンスの全戦力で以ってしても、"都市"の防衛部隊が出てくれば一網打尽にされてしまうだろう。
 そうならぬように彼等は常に努力していたのだから、ヴェルドラの言葉に頷けぬのも当たり前なのだ。
 だがしかし。

「甘い!! 考えが甘いぞ、お前達。豊かな時代があったのであろう? ならば、それを取り戻したいとは思わぬのか? お前達が歩んできた絶望の道を、子供達にまで歩ませるつもりか!?」

 ヴェルドラの一見真面目に見える論調に、一同は静まりかえった。
 良い事を言ったと思っているのか、ヴェルドラは得意そうだ。
 ドヤ顔で、皆を見回している。
 そんなヴェルドラに、ラミリスが恐る恐る問いかけた。

「で、でもさ、師匠。確かにこのお好み焼きは美味しいし、子供達も喜んでる。でもさ、もしも"都市"にこういう食べ物がなかったらどうするの? 本当に絶望させちゃうかもしれないじゃん? ベレッタの言い分ももっともだし、ホラ、アタシも巻き込まれて一緒に怒られたくないし……」

 どうしていいのかわからずに、ラミリスは目をグルグルさせて言い募った。
 ここで勝手な事をして、事態がよりややこしくなる事を危惧しての発言だった。
 ベレッタに言われて、自分が巻き込まれると気付いたのだ。
 それに、普段は能天気なラミリスだが、流石にそこまでするのはどうかと思ったのである。
 そこでようやく、ヴェルドラはニヤリと笑った。

「安心するのだラミリスよ。我は考えた。そして、とある結論を出したのだ」
「……とある結論?」

 騙されないぞ、という強い決意を再び心に武装して、ラミリスはヴェルドラの返事を待つ。
 ヴェルドラは重々しく頷き、言った。

「もしも万が一失敗したとしても、全部リムルに任せてしまえば安心だ、とな!!」
「なるほど!!」
「なるほど、じゃありませんよ、ラミリス様!!」

 ベレッタが絶叫するが、その声は二人には届かない。
 ヴェルドラもラミリスも、既に問題は解決したかのような笑顔になっている。

「リムルならば、この程度の問題など簡単に解決するであろうよ。我等はそれを待てばいいのだ」
「だよね、だよね! リムルなら楽勝だよね!!」

 なんの事はない。
 困ったらリムルに丸投げすればいい、とヴェルドラは言ったのだ。
 そして、それに同意するラミリス。
 その表情からは既に不安が消えうせており、そのまま美味しそうにお好み焼きにかぶりつくのだった。


      ◇◇◇


 駄目だ、この人達――と、ベレッタは嘆いた。
 リムルに丸投げする時点で、確実に怒られるだろう。
 二人はその点から、完全に目を逸らしているようである。
 そもそも最初の話では、リムルが戻る前に元の世界に帰還し、証拠を隠滅する計画だったのだ。
 それを完全に失念したのか、ヴェルドラとラミリスは問題は全て片付いたな、と笑い合っていた。

(どうしようもない方々です。ラミリス様も、今完全に巻き込まれてしまったというのに、自覚がないようですし……)

 一人ベレッタだけが、正確に現状を把握していた。
 なんの事はない、ヴェルドラは拗ねて自分が人気者になりたいが為に、ラミリスとベレッタを巻き込んだだけであった。
 そのついでとばかりにシャルマ達も巻き込み、その上で帝国にも喧嘩を売るつもりなのだろう。
 完全にやりたい放題であった。
 だが残念な事に、ベレッタはヴェルドラの思惑に気付いていても、それを阻止する事は出来ないのだ。
 ベレッタはやれやれと内心で思いつつも、最悪、リムルからの叱責を受ける覚悟を固めたのである。

「それでどうするのだ? こうなった以上、我等は全面的に協力してやるぞ?」

 ヴェルドラの声が響く。
 こうなったも何も自分が原因だろうに、とベレッタは思ったが、口には出さない。
 仕方なく、話の成り行きを見守る事にした。



 シャルマは冷静だった。
 ヴェルドラの勢いに流される事なく、先ずは一旦、ヴェルドラの申し出を保留する。
 昨日までのシャルマだったなら、帝国の"都市"を攻めるなど正気とは思えなかっただろう。
 狂人の戯言と、笑って無視していたに違いない。
 だが今は、ラミリスやベレッタの持つ超技術を目の当たりにして、その力は利用出来ると考えていた。
 帝国を攻めるかどうかは置いておくとしても、その協力は失いたくないと判断したのである。

 ――高きを知り、それを求める――

 その言葉が胸を熱くする。

(簡単に言ってくれますわね。それを望む事が、どれだけわたし達を苦しめてきたのか知らぬ癖に――でも、それはこの方も同じなのかしら? 同じように、苦難の時を過ごされたのかしら?)

 どこの誰ともわからぬ者の言葉に、シャルマは心を動かされる自分に気付いていた。
 だが、あくまでも慎重に。

「帝国に攻め入る、そのような大事、軽々しく決められるものではありません。黎明の光の本部とも連絡を取り、どうすべきか相談しなければなりません」

 必然、即答を避け、返事を先延ばしにする。
 それでもシャルマは内心では、前向きに検討し始めていたのだった。



 リンドウは思う。

 ――絶望の道を、子供達にまで歩ませる――

 そんな事は、断じて認められない。
 認めたくなくて、今まで目を逸らしていた現実。
 生きるのに精一杯で、何を楽しみに生きているのかさえ定かではなかった。
 それなのに、今日会ったばかりのヴェルドラという男は、あっと言う間に子供達に認められ楽しそうに一緒に遊んでいた。
 それをリンドウは羨ましく思った。

(そうですね……。私は、今まで一体何を見ていたのか。絶望していたのは大人だけで、子供達はこんなにも楽しそうに――もしかすると本当の幸せとは、与えられるものでも奪うものでもなく、自分の力で見出すものなのかも知れません。もしも叶うのならば、一度、帝国の人間とも話し合ってみたいものです)

 そう思った。
 そうすれば、何かが変わるかも知れない、と。
 自信満々のヴェルドラを見ていると、自分だってなんでも出来そうな気になってくる。

「シャルマ様の言われる通りかと。ですが、私個人としましては、その申し出は嬉しく思いますよ」

 リンドウは目を細めて小さく笑い、少しだけ自分の本心をのぞかせたのだった。



 ザザも、シャルマと似たような考えである。
 ただ少し違うのは、ベレッタの戦闘能力の高さを知っている、という点だ。
 もしかしたら、と考えてしまうのも仕方のない話であった。
 ベレッタの底知れぬ強さに、僅かばかりの勝機を見出していたのだ。

(だがなあ、それは簡単じゃないぜ? 帝国は強大だ。その行為は、虎の尾を踏むに等しい。だが……)

 戦闘要員としての長年の経験から、帝国の強大さを身に染みて実感しているザザ。
 だからこそ、軽々しく賛成出来ないでいた。
 それに、理由はそれだけではなく……。

(もしかすると――)

 ザザは、ヴェルドラ達に新たなる希望を見た。
 この閉塞感の漂う日々を必死になって生きるザザの目には、自由奔放に振る舞うヴェルドラ達が眩しく映ったのだ。
 ザザは暫し考えた後、一つの決意を胸に頷く。
 もしかすれば、この状況はきっかけとなるのではないか、とザザは思った。
 帝国とレジスタンス、両者が新しい関係を築くその一歩になるのでは、と。
 しかし、それは一つ間違えると、大いなる不幸を呼ぶ事になる。
 そうならないようにする為にも、ザザは覚悟を決めてヴェルドラを見る。
 不敵に笑う自信満々の男。

(ヘッ、不思議な人だぜ。自分は全く動かずに、戦いはベレッタさんに任せるだけだっていうのに、何故そんなに偉そうなのやら。だが――)

 嫌いではない、とザザは思った。
 どちらにせよ、このままではジリ貧だったのだ。
 どこかで決断しなければ、このままでは自分達の命運は尽きるだろう。
 この隠れ家とて、いつまでエネルギープラントが稼動しているか不明なのだから。

「やるっていうのなら、俺も知り合いに当たってみるぜ。生き残っている傭兵部隊に連絡を取り、この地に戦力を集めよう。やるなら、全力だ」

 シャルマは決定を先延ばしにしたが、いずれは決断する必要がある。
 遅いか早いか、その違いでしかない。
 それならば、頼もしい助っ人のいる今こそが、その決断の時であると思えたのだった。


 こうして、ヴェルドラの言葉に各人がそれぞれの反応を示した。
 好意的なものが大半である。
 ただ一人、ベレッタを除いて……。

(――やれやれ。どうやら皆さん、完全に誤魔化されてしまったようですね。ヴェルドラ様は何も難しい事など考えていないでしょうに。お好み焼きを子供達に与えた言い訳をしただけで……)

 ――何故。
 ほんの少し目を離しただけで、これ程の大事になっているのか。
 ベレッタには理解出来ない。
 気が付いたら、この世界の大戦争に巻き込まれそうな雰囲気である。
 ベレッタはその理不尽な状況を嘆きつつも、どうすれば被害が少なくてすむか、一人苦悩しつつ思考を重ねるのだった。
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