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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

天魔大戦編

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214話 閉じた世界

 クフフフフ、と笑うディアブロをみやり、俺は溜息を吐く。
 完全に調子に乗っています。本当にありがとうございました! という感じだった。
 そんなディアブロの相手をする事になる太ったピエロ――フットマンという名前らしい――には、ご愁傷様と言ってやりたい。
 ま、精神は崩壊して、この場で動く者を皆殺しにしたいという衝動だけで動いているようだし、そこまで心配してやる事も無いだろうけど。
 心配してやる必要があるのは、目の前に倒れるレオンであった。



 俺はレオンの傍まで歩み寄り、その胸に手を翳す。
 レオンの部下達が目を見開いて驚愕していたが、指を口に当て黙れと合図し、黙らせた。
 言い争っている場合では無いのだ。
 俺は懐(と見せかけて『虚数空間』)に収納していた完全回復薬フルポーションを使って、レオンの胸の大穴を塞いだ。
 けれど、そこで薬の効能は終了である。肉体の修復が完了しているのに、レオンの意識が戻る事は無い。
 だが、慌てる必要は無い。
 何しろ、この場所はミザリーの結界にて閉じた世界なのだから。
 というか、レオンは幸運である。なんせ、俺が来なければ危なかっただろうから。
 そもそも、何故俺達がここに居るのかと言うと――

 俺はヴェルダに死んだと思わせたまま、隠れつつ世界の動向を探っていた。
 ディアブロがこっそりと忍ばせていたモスの分身体は、非常に便利であった。相変わらず、諜報活動は完璧だったのだ。
 俺の監視魔法と、モスの諜報。
 どこに隠れ潜んでいたとしても、状況を把握するのは容易であった。
 まあ、隠れ潜む亜空間に情報を伝達するのに一工夫いったのだが、そこはシエルにお任せで問題解決である。
 俺には理解出来ない魔法理論を駆使し、快適な空間を創り出してくれたのだ。
 流石は先生。マジで万能である。
 その空間内で各地の情報を集めつつ、ディアブロと寛いでいたのだが……
 レオンの領地にて、ヴェルダの気配を察知したのだ。

《高確率で、本体では無いと思われます。ですが、何らかの尻尾が掴める可能性があるかと――》

 なるほど。
 先生が言うのなら、そうなのだろう。
 という訳で、こうして出向いてやって来たのだ。
 まあ、各地の状況も無視出来る訳では無いのだが、ヴェルダを倒せば終了なのだから、優先順位は明白なのだ。
 ギィの所は、クロエとギィの一騎討ちが激しさを増していたが動きは無かった。
 ルミナスの所は結構ピンチのようだが、アダルマンにアルベルト、そしてシオンが居る。まだまだ大丈夫だろう。
 ここでヴェルダを捉えて倒せれば一番良かったのだが、流石にそれは甘い考えだった。
 ヴェルダはどうやら、カザリームに与えていた力を回収するのが目的だったようだ。
 映像に実体を持たせる、つまりは情報の断片を本体と接続させて操る『多重存在』めいた能力を有するという事。
 並列存在は、分身を同時に操る能力だが、個々にエネルギーを分ける必要がある。
 その一歩手前の、思考する意思のみを重ねさせて情報のみ同時に回収する能力、と言えば良いだろうか。
 明確に本体が必要な『並列存在』と、全てが本体に成り得る『多重存在』と。
 どちらが厄介かは、使うものの能力次第であろう。
 だが、能力の格としては、『多重存在』が最上位なのは間違いない。
 俺も現在、シエル先生に解析させている所なので、自信を持って断言出来る。

 話が逸れた。
 俺達が到着したのは、ヴェルダが『多重存在』により、カザリームの力を回収してしまったタイミングだった。
 一足違いである。
 これに関しては仕方がない。何しろ、ヴェルダの存在に気付き転移した時には全てが終わっていたのだから。
 認識と同時に、情報が伝達される。それが、『多重存在』の厄介な所なのだ。
 時を止める能力なりで阻止しないと、その伝達速度に追いつくのは不可能である。
 シエル先生曰く、情報伝達の速度は、実質光速以上であるとの事。
 言葉通り、同時、なのだ。
 なので、ヴェルダを取り逃がした事についてはどうしようもない。
 どの道、断片化した情報体なのだから止めを刺す事も出来なかった訳だし、気にする事は無いだろう。
 問題はその直後に起きた。
 ベニマルとカザリームの戦いで空いたらしい結界の綻びを、ミザリーが修復してしまったのだ。
 恐らく、ヴェルダの情報伝達を阻止しようと結界再構築を行ったのだろうが、悪魔の反応速度を以ってしてもそれは不可能。
 寧ろこの状況で反応出来た事こそ、褒めるべきである。
 俺達もその綻びを利用して潜入した訳だが、閉じ込められる形になってしまったという訳だ。
 ヴェルダに発見されないように用心したまま撤退しようとした俺達にとって、結界を破って移動する訳にはいかないので仕方ない。そんな事をすれば、見つかってしまうだろうしね。
 これは少し恥ずかしい事態なので、ディアブロと二人して気配を完全に隠したまま様子を伺う事にした、という訳であった。
 で、そのまま様子を伺っていたのだが、直後にレオンが倒された。
 このままでは死亡確認! となりそうだったので、俺が何とかしようと姿を現したのである。
 それもミザリーの結界が完璧であり、外部から内部を視る事は不可能というシエルの判断があったからなのだが。
 もしここで、ヴェルダにバレる危険性が少しでもあったのなら、俺はレオンを見捨てていた。
 悪いが、重要なのはヴェルダを倒す事だ。そこは冷徹に割り切っている。
 だが、レオンにとって幸運が重なり、この場は完全に隔離された状態だった。
 俺は素早くミザリーの結界を補強した上で、姿を現したという訳である。

 ――そんな訳で、レオンの治療を開始する。
 視たところ、魂は無事だが、コア部分が損傷を受けたようだ。
 覚醒した勇者が得る、力の根幹部分。ここを損傷すると、力の制御が出来なくなるみたい。
 シエル先生が冷静に診察し、俺に報告してくれる。
 ふむふむ、さてどうしたものやら。



 しかし、外部が騒がしいのも問題だった。
 ベニマルはカザリーム戦で大きくエネルギーを損耗してしまったようで、あのデブ、フットマンを一撃で倒せないようだ。
 流石に無駄に攻撃しても意味が無いと理解しているらしく、無駄な攻撃を仕掛ける気配は無い。
 ソウエイとラプラスという魔人も、決定的な攻撃力に欠けている。
 ミザリーは結界維持に全力を注ぐようだ。その判断は正しいだろう。
 時間をかけてベニマルの魔素が元通りになるのを待つ作戦なのだろうが、それでは落ち着いて治療も出来ない。
 ここはベニマルには悪いが、ディアブロの出番だと判断した。

「よし、仕方ない。やっておしまいなさい、ディアブロさん!」

 そう俺が命令した途端、待ってましたとばかりにディアブロが動いた。

「クフフフフ。お任せ下さい、我が主よ!」

 超嬉しそうに堂々と姿を現し、フットマンの頭を鷲づかみにして地面に叩きつける。
 それを見た感想が、冒頭のものという訳だ。
 驚愕する一同に、ドヤ顔のディアブロ。
 そこから先は、一方的展開が予想された。
 レオンの治癒に専念しつつ、チラッと様子を見てみると――

「クフフフフ。どうしました? こんなものですか、貴方の力は?」

 どこの悪役だよ! と言いたくなるような惨状が展開されている。
 いや、俺の命令の仕方も悪役っぽかったから仕方ないのか? いやいや、そんな事は無いハズだ。
 ディアブロの両手の爪がフットマンを切り刻み、その力の差を明確に示す。当然、切った先はどんどんと消滅させている。
 再生が追いつかない勢いで切り刻むのだ。
 たまに、極大の閃光と衝撃が走るのだが、この結界は大丈夫なのだろうか?
 俺が補強しているとは言え、心配になる。

(おいおい、大丈夫か? ディアブロのヤツ、ヴェルダにバレないようにコッソリと行動してる事を忘れてないだろうな?)

《問題ないと判断します。その辺りは、ディアブロは既に対策済みです》

 自信満々のシエルの回答。
 成る程、いつの間にやら、ディアブロの『誘惑之王アザゼル』による『誘惑世界』が発動していたようだ。
 流石はディアブロ、戦い方が卒なくエグイ。
 ベニマルが仕出かしたような失敗をディアブロがする訳がない、か。

(まあ、大丈夫そうだな。ディアブロに任せておけば、問題ないか……)

《大丈夫でしょう。究極能力アルティメットスキル邪龍之王アジ・ダハーカ』を奪い損なうような事はないかと思われます》

 えっ!?
 そこかよ!? そんな心配してねーよ!!
 どうやら俺の知らぬ間に、敵の能力を奪うのが大前提となっていたようだ。
 任せよう。
 俺は呆れるのを通りこし、半ば投げやりにレオンの治癒を再開したのだった。 





 レオンの治癒をしていると、ベニマル達の会話が聞こえてきた。

「……あの、ワイ思うんでっけど……あの悪魔、無茶苦茶ちゃいますん?
 何であないに――出鱈目に力任せの戦い方で、疲れる気配がないんでっしゃろ?」
「ああ、うん。アイツはそういうヤツだから……」
「流石はディアブロ様……私もまだまだ、という事でしょうか」
「アレを基準に考えるな。俺達には出来ない戦い方だから、敢えて手の内を見せているだけだ。
 真似しようとしても自爆するだけだぞ」

 ラプラスの疑問に、投げやりに答えるベニマル。
 ミザリーは素直に賞賛し、ソウエイは冷静に分析し忠告している。
 一時的に協力しているだけの者にそこまで解説してやる事もないだろうと思ったけど、ソウエイも動揺しているのかもしれない。
 知った所で真似出来るものでもないし、実際どうでも良いだろう。
 目の前の惨状に唖然として声も出なかったようだが、ようやく落ち着いてきたらしい。
 危機一髪の状況だったハズなのに、今は喜劇を見ているような気持ちになっていたのだろう。
 現実を受け入れるのも大変である。

「クフフフフ。おっと失礼。少し力を入れすぎましたか、腕を引き千切ってしまったようです」

 悪魔が嗤いながら、弱い者苛めをするような感じに敵を甚振っている。
 それは戦闘と呼ぶには一方的過ぎて、見ている者達が若干の気まずささえ覚えているようだ。
 遊んでいるように見える程、ディアブロは圧倒的である。
 だが、口調とは裏腹に、ディアブロは超高等技術を駆使して計算高く戦闘を進めているのだ。
 部位破損させつつ、徐々にフットマンのエネルギーを消耗させていく。
 両手に纏わせて爪の形状に維持しているのは、超高圧縮状態の『虚無崩壊』のエネルギーだ。
 俺が貸出したエネルギーを集中させて利用しているのである。類まれなる戦闘センスがあってこそ、成せる技であった。
 そもそも、戦闘形跡をみて判断――当然だが、シエル先生が――するに、ベニマルは俺から借り受けたエネルギーを一瞬にして全て放出させたようだ。
 確かに、この凶悪な虚無崩壊エネルギーを制御して敵に喰らわせたならば、大概の相手には通用する。
 抵抗を許さずに滅ぼす事が可能だろう。
 けど、当然ながら代償も大きい。
 自分の魔素もゴッソリと消費し、今のベニマルのように継続戦闘が困難となるのだ。
 奥の手に用いるならともかく、気軽に使える技ではないのである。
 その点、ディアブロの利用方法は堅実だ。
 ここ二日程、亜空間にて暇つぶしに特訓した成果が出ているようである。
 シエル先生が考案した、閉じた世界でのエネルギー循環の利用方法。
 名付けて、"円環の秘法"、である。
 格好良く言ってみたが、要するに、空間支配系能力によりエネルギーの拡散を防ぐ状態を作り出し、使ったエネルギーを再び吸収するようにした訳だ。
 今回を例に取ると、ディアブロの『誘惑世界』の中でならば、使ったエネルギーの損耗は殆ど発生しない。
 魔法のように理解困難な理屈だが、ディアブロはシエルの言葉を理解してのけた。
 閉じた世界で、自分と敵対者と両方の質の異なるエネルギーが、あったとする。
 これを相殺――或いは、対消滅――させる訳だが、厳密に言えば、相殺というよりも片方のみを閉じた世界から放出するのだ。
 そして、自分のエネルギーはそのまま再吸収。
 敵のエネルギーは創った世界の状態維持に利用する。
 この循環により、一方的に敵を弱らせる事が可能となるという寸法だ。
 正直、俺には理解出来なかったが、ディアブロはやってのけた。
 今も、周囲には単純に力技で戦っているように見えるだろうが、実情は異なるという訳。
 反応を見るに、これを理解出来ているのは、ベニマルとミザリーだけだろう。
 いや、実際には理解には至っていないだろう。ただ、理屈上では有り得ない展開に、疑問を持ったという程度か。
 ベニマルには後で教えてやった方が良いかも知れないが、理解出来るだろうか?
 俺にはシエルがついているから、理解出来なくても問題ないんだけどね。
 ま、気合で何とかしてくれとしか言いようがないのだ。
 流石に閉じた世界とは言え、ベニマルが行ったような虚無崩壊の全力放出には耐えられないだろうから、ある程度の加減は必要だろうし。
 理論を教えて即実行出来るのは、ディアブロくらいなものだろう。



 ディアブロの戦闘を眺めている間に、いつの間にかレオンの治癒が終わったようだ。
 途中から、全てシエルにお任せ! になっていた。
 俺のやる気なぞ、所詮はその程度。
 これが美少女なら気合が違ったが、イケメンでも男はどうでも良い。
 やる気、激減! だった。
 だから途中で、

《完全に蘇生させるには、通常の覚醒状態から、勇者クロエのように万能状態へと聖気の流れを調節する必要がありますが、その為には――》

(任せた!)

 と、聞きもせずにシエルに任せたりもしたのだ。
 適当に聞き流していたが、勇者の核みたいなものが破損したので、別のもので代用したい的な話だったと思う。
 普通に蘇生させたら戦闘能力を喪失するらしいので、喪失しない遣り方でレオンの治療を行ったというだけの事。
 何でそんな事をイチイチ聞くのやら。
 シエル先生は相変わらず慎重だぜ! なんて、気軽に聞き流していた。
 だが、蘇生完了したレオンを見て、我が目を疑う事になる。
 あれ? 何だか、力が増しているような……シ、シエル先生、アンタ一体何をしでかしたんや!! と、思わず叫びそうになってしまった。
 鑑定すると、半神半人デミゴッドとなっていた。
 元から聖気を大量に身に蓄えていたレオンだったが、今は蓄えているのではなく聖気そのものとなっている。
 要するに、精神生命体になったっぽい。
 核がないから、気の流れを調整し、核無しでも大丈夫なように改造したのか。
 なるほど……っじゃねーよ!
 敵対してはいないものの、完全なる味方でもない野郎をパワーアップさせてどうする!
 ……いや、聞き流したのは俺だ。
 文句を言う事は出来なかった。
 やれやれ、ま、敵対しなければ良い話だ。
 それに、半ば強引に調整したので、力を使いこなせるようになるのは当分先だろう。
 それまでには、ヴェルダを片付けてしまえばいい。
 ま、何とかなるだろう。気にしない事にしよう。

 そんな事を思っていると、レオンの意識が戻ったようだ。
 薄く目を開き、俺を見る。そして、

「シズ、か……ッフ、俺に復讐に来たのか?」

 何か、寝言を言いだしたぞ。

「貴様に滅ぼされるなら、受け入れよう。さあ、好きにするが良い」

 そんな事をほざくレオン。
 どうやら、俺とシズさんを間違っているようだ。
 ちょっとイラッっとした。
 なので、

「フォルァ!」

 と、抱きかかえていたレオンを放り投げる。
 そもそも、完全治癒したヤツがいつまでも甘えるなって話なのだ。

「――ッ! リムル、か?」
「ああ、目が覚めたか? 感謝しろ、そして俺を敬え!」
「俺は……そうか、貴様が蘇生を――」

 俺は髪をかきあげて頷く。
 こっそりと練習した、格好良く見える(ハズの)ポーズで。

「感謝する、魔王リムル」
「うむ。感謝しまくれ!」

 俺に感謝するというくらいだ、当分は大丈夫だろう。
 そんな感じにレオンが目を覚ました途端、レオンの配下達が、

「「「レオン様!! よくぞ、ご無事で!!!」」」

 と、駆け寄っていっている。
 大泣きしている者もいるが、無事な者は一人も居ない。
 ここまで来るとついでだ。
 俺は完全回復薬フルポーションを人数分取り出して、全員に叩きつけてやった。

「何を!?」

 と驚く者達もいたが、一瞬で傷が消えて唖然となっている。
 魔法よりも効果的だから、当然だろう。
 傷が治った途端、

「「「魔王リムル様、此度の御恩、決して忘れません!!!」」」

 レオンの部下が一斉に跪き、俺に頭を下げた。
 まあ、そんな事はどうでもいいんだけどね。
 ちょっと小っ恥ずかしいので、畏まるのは勘弁して貰いたい。



 レオンが復活し、配下達が大騒ぎしたのだ、当然ながら俺が居る事がベニマル達にもバレた。

「「リムル様!」」

 ベニマルとソウエイが駆け寄って来た。

「やはりご無事でしたか!」
「な、言ったろ? 心配する必要ねーって!」
「それは、ゼギオンが言ったからだろうが……」
「そんな事はない。俺は最初から信じていた!」

 やはり、俺が消滅したと慌てたようだ。
 直ぐに――というか、全く慌てた様子がなかったそうだが――ゼギオンが加護に気付き、皆も落ち着いたとの事。

「お、おう。元気だったか? 実はヴェルダを油断させようと思ってな。
 ついでに、反乱分子がいたら炙り出す作戦なのだ」

 取り繕うように説明する。
 だが、それで十分だったようだ。

「やはり、な」
「流石はリムル様。それでは我等はどのように動きましょう?」

 ベニマルは納得し、ソウエイに至っては既に行動に移ろうとしている。
 いやいや待て待て。
 まだフットマンと戦っている人もいるんだ、忘れてやってはダメだろう。
 俺が姿を見せた事で、完全に安心しきっているというか張り切っているというか。

「まあ待て、先にこの戦いを終わらせる。ディアブロ、そろそろいいか?」

 皆にも見つかってしまったし、遠慮は要らないだろう。
 さっさとフットマンを倒す事にした。

「クフフフフ。料理は粗方終了です、リムル様」
「よし」

 俺は頷き、フットマンに歩み寄る。

「くそ、クソがぁ! 何なのだ、一体何なのだぁぁあああ!!
 きさ、貴様等! この私に、フットマン様にぃぃいいい!!」

 呂律も回らぬフットマンを、ディアブロが更に一発殴った。

「煩いぞ、黙りなさい」

 そう言いながら。
 下顎を吹き飛ばされ、フットマンは喋る事が出来なくなったようだ。
 何だかグロい。さっさと終わらせる事にしよう。

「苦しみを与える事はしない。お前も、俺の中で安らぎを与えてやる」

 宣言し、喰らう。
 程良くディアブロが削ってくれたお陰で、一瞬でフットマンの捕食は完了した。
 それこそ、最後の足掻きも出来ない程あっさりと。
 シエルの予定通り、究極能力アルティメットスキル邪龍之王アジ・ダハーカ』も獲得成功である。

「クフフフフ。流石はリムル様、お見事です!」
「いや、今回はディアブロが弱らせてくれていたからな。それと、ベニマルにソウエイもご苦労だった」
「「「はは!」」」

 三人が跪き、俺の労いに応じる。
 いちいち面倒だが、形式は大事なのだそうだ。
 こうして、あっけなく危機は去ったのである。



 その後、

「納得いかんわ、何なんや、あの二人……
 いや、あの悪魔はともかく、あの魔王はマジで有り得へんやろ……
 アレと喧嘩しようっちゅうヤツ居たら、キチガイやわ。
 間違いあらへん。カザリーム様が洗脳されとったんは確定やわ」
「アタイもそう思う。
 あの油断ならないカザリーム様なら、あんな化物見たら絶対に敵対はしないよ。
 裏ではこっそりと協力を申し出るくらい、当然するはず」
「せやろ? そんなん卑怯でも何でもないって考えのお人やったしな」

 何か悟ったように放心して話す二人。
 片方のラプラスという魔人は、こんなんだがソウエイに匹敵する程の危険人物らしい。
 野放しには出来ないだろう。
 という事で、

「という事で、君達。俺に雇われろ、な!」

 勝手に決定する。

「ちょ! 何を勝手な事を――」
「クフフフフ。何か、ご不満でも?」
「え、いや……えっとですな――」

 抗議しようとしたラプラスだったが、ディアブロに笑顔を向けられて言葉が消えていった。
 指をモジモジさせている。
 横の少女が頑張れ! と応援していたが、そんなん無理やわ、と小声で反論。
 何だか少し哀れであった。

「あの、ええっと……雇われるって事は、給料を貰えたりするんでっしゃろか?」
「ほぉん、給料!」
「あ! いや、そういう意味やのうて……」
「ほぅ? では、どういう意味なのかお聞きしても?」
「えっと、いやそれは……」

 給料、ねえ。
 そう言えば、魔物の国テンペストは現物支給だから、給料なんて制度はないんだったな。
 その内考えようと思って忘れてた。ミョルマイルと相談する必要がある。

「ま、その辺は後で相談するとしよう。で、どうする?」
「わかりました! お世話になろう、思います!」
「あ、アタイも!」

 ラプラスとティア、二人の魔人も俺に雇われる事になったのだった。
 給料を払ってないので、雇うというより脅した感じなのだが、気にしたら負けだろう。
 笑顔で説得(脅)したのはディアブロだしな。



 それから、復活したレオンを交え、簡単に作戦会議を行った。
 先ず、俺の無事は伏せたままにする。
 当然だが、俺の事をバラした時点で同盟は終了だ。バラしたらこの国を滅ぼすと宣言しておく。
 皆顔を青褪めさせて真剣に頷いていたので、大丈夫だろう。
 俺とディアブロは再び隠れる予定だから、ヴェルダに気付かれないようにするのが最重要なのだ。
 レオンの国に関しては、カザリームの率いてきた軍勢との戦闘が継続中である。
 だが、これは自分達で何とか出来るだろう。全員怪我の治療は終えている訳だし、指揮官も始末した訳だしな。
 ベニマルは、魔物の国テンペストに戻って指揮を行う。
 ソウエイもベニマルのサポートだ。
 ラプラスとティアは、レオンの国の防衛を手伝うように命じた。自分達の襲撃により失った戦力――思った程の損害は出なかったようだが――の補充となるように。
 恨みは消えないだろうが、少しでも禍根を残さぬようにと命じている。
 レオンにも、俺からの恩をチラつかせ、ラプラス達を許すように強要した。
 身勝手だが、それが俺だ。
 取り敢えず今回に限り、両者ともに協力を約束しているのでよしとする。
 その後の事は、この大戦に勝利し、生き残ってから考えれば良いのだ。
 それに、レオン達には悪いのだが、ここでラプラス達を試す意味もある。魔物の国テンペストの戦力を割きたくないという理由もあるので、一石二鳥なのだ。
 精一杯頑張って、この国の防衛に努めて欲しい。
 ソウエイには、念の為に見張るように命じた。
 ラプラス達を信用するかどうかは、ソウエイの報告を聞いてから考える事にしよう。
 少なくとも、大戦中に寝返る事がなければ問題ない。
 ヴェルダが、カザリームを洗脳――というより、思考誘導だろう――していた事をラプラスが激怒したようなので、裏切りはないと思うけどね。
 そんな感じで方針を定め、強引に皆を納得させたのだった。

 こうして、レオンの領土での騒乱は、終わりを告げる事になったのである。
 さて、明日はとある小説の実質発売日。
 前回は発売日に出向いて、特典付きが売り切れているという大惨事だったので、明日は油断出来ません。
 というか、近所の本屋で売ってないんですよ。
 そんな訳ですので、次回は日曜日には更新したいと思います。
+注意+
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