挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

天魔大戦編

203/303

196話 獅子王vs四凶天将ヴェガ

 考えて見れば、一箇所に全魔王を集中させて魔王全員で敵を叩く、という作戦には無理があった。
 それは、魔王を信奉する民を切り捨てる決断である。
 大戦に勝利するだけならば確実な手ではあるが、下手すれば人口の大半が失われるという最悪の結果に繋がる可能性もあった。
 ヴェルダを倒すという目的だけで考えれば最適なのだが、四凶天将と名乗ったヴェガと同格の者に対するには、八星魔王オクタグラムが相手にしないと話にならなそうだ。
 いや、八星魔王オクタグラムでも厳しいかも知れない。
 こんな化け物を相手にするならば、全員で掛かるのが手早く安全なのだが、それをすると支配領域が滅亡する事になる可能性が高い。
 シエルさんが、各魔王は納得しないだろうと言った理由である。
 まあ、八星魔王オクタグラムが出れば勝てるというものでも無さそうだけど。
 各個撃破し、転移門ゲートにて、攻められている地点を巡回する場合、最後の方の国は壊滅する事になっただろうから。
 読み違えた点は、敵方の戦力なのだ。
 こればかりは、元となるヴェガやカガリが、出現した熾天使セラフィムを吸収して力を制御した場合の予想を、シエルが行った予測でしかなかったからだ。
 四凶天将ヴェガの能力は、シエルの予想の最上限に達していた。
 このまま地上で暴れ続けるならば、その能力は上限を突破すると予想される。
 また、熾天使セラフィムが何体いたのか不明であるので、敵方の覚醒魔王級の戦力を確定予想出来ないのも致命的ではある。
 まあ、多くても10体前後だろうと予想されるのだが、今となってはそちらは言う程の脅威では無かった。
 俺の守護王級ならば、十分に対処可能であると思う。
 問題は、四凶天将なのである。
 四と言うからには、四名いるのだろう。
 引っ掛けで、四名以上いるのに四凶天将とかは、流石に言わないだろう。
 それはいい。
 予想では、ヴェガ、カガリは確定。もう一人はディーノらしいし、問題は最後の一人だ。
 多分、その最後の一人がダグリュールなのだと思う。
 八星魔王オクタグラムの一柱であるダグリュールと、ルミナス。
 両者は互角程度の戦力だと思っていた。だが、それはあくまでも、ルミナスが究極能力アルティメットスキルに目覚めたからこそ、互角となったのだ。
 ダグリュールは異常に力ある魔王だった。その手の内を全て把握出来てはいない。
 単純な力比べでは、ルミナスを圧倒するのは間違いないだろう。
 ヴェガの力から推測すると、ルミナスではダグリュールに勝てないのではないかと予想出来たのだ。
 だからこそ、シオンにアダルマンと、二人も守護王を派遣したのだが……
 それでも尚、何か嫌な予感がしてならないのだ。
 俺がミリムを相手に出撃したのは、時間を掛けるべきでは無いと判断したからなのである。
 魔物の国テンペストには、ベニマルとゼギオンが残っているので安心だが、油断はするべきでは無いのだから。
 最悪の場合に備えて手は打っているものの、一抹の不安が脳裏を過ぎるのだった。


 あとは、レオンの自信にも疑問がある。
 四凶天将カガリが、レオンの所に向ったのは間違いない。
 カガリとレオンには因縁もあるし、カガリがレオンを恨みに思っていたように思う。
 問題は、カガリの強さがどの程度になっているのか、という事なのだ。
 ヴェガの能力は、ルミナスを超えている。
 レオンと比べた場合、状況次第では、レオンもヴェガに敗北するように思う。
 それ程に、ヴェガは異常に強くなっていたのだ。
 そのヴェガと同格であるカガリが、もしも同等に強くなっているとするならば、レオンの勝利も疑わしくなる。
 救援要請が来る前に、何らかの手を打った方が良さそうだった。


 俺は、転移先の上空に浮かび、地上の戦闘を眺めてそう判断した。
 ヴェガとカリオンが戦っているのだが、その状況は圧倒的にヴェガが優勢だったのだ。
 ヴェガやカガリ、四凶天将とやらの戦力分析を、大幅に上方修正する必要がある。
 やはり、大スクリーンで見るのと直接戦闘を目視するのとでは、得られる情報に違いがあるようだ。
 念の為、俺は思念通話にてギィに連絡を取った。
 現在の状況を教えておく。後は勝手に判断して、適当に動いてくれると信じよう。
 そろそろクロエもギィに接触する頃合だし、今の内に出来る事をしておいて貰おう。
 そうして、全ての準備を終わらせると、俺は静かに下降を開始した。
 全ての事を他人に任せてしまったという状況が不安の原因なのだろうが、ここは仲間達を信じるべきである。
 出来る限りの手は打った訳だし、シエルもそれ以上の作戦は無いと言っている。
 現状では、出来る事は他に無いのだ。
 ならば、俺は俺の仕事をするとしよう。
 この場において最重要な仕事、ミリムを操ろうとする者の排除、を。





 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





 リムルが上空に到達し、眼下を眺めていたその頃。
 カリオンは、絶望的な戦闘を行っていた。

「グワァッハハハハハ!! こんなものか、獅子王の力とやらは?
 貧弱過ぎて話にならぬわ!
 真なる獣王である、この俺、ヴェガ様の足元にも及ばぬな。
 どうだ? 跪いて、命乞いをするならば、俺様の部下にしてやっても良いぞ?」
「っは! 舐めるなよ。このカリオン、ミリム様に忠誠を捧げている。
 貴様の様な三下に、下げる頭なんざ、持っていないんだよ!」
「生意気な……
 ミリム如きに、牙を抜かれた飼い犬風情が!!
 偉大なるこの俺、ヴェガ様に仕えるというなら、命は助けたものを……
 その判断の愚かさを、あの世で悔やむがいい!!」

 叫ぶヴェガ。
 そして迸る、直径50cm大に圧縮された高密度の気弾。
 受ける事は出来ない。カリオンの本能とも呼べる超直感力が、その内包する破壊力の危険性を察知した。
 咄嗟に回避するも、ヴェガはそれを許すつもりは無いようだ。
 カリオンに向けて、連続して気弾を放つ。

「くそったれーーー!!」

 カリオンは叫びつつ、渾身の魔力を込めて、目の前に魔力盾オーラシールドを展開する。
 当然、直撃したらお陀仏なのは理解していた。魔力盾オーラシールドに角度を付けて、気弾を弾くのが目的なのだ。
 ミリムの特訓にて、自分を圧倒的に上回る破壊力の有る力への対処方法は、嫌という程に叩き込まれている。
 というか、本当に何度止めてくれと叫んだか記憶に無い程であった。
 ミリムは楽しそうに笑って、止めてくれなかったけれども……
 その特訓の成果が今、カリオンの助けとなっているのだ。
 ガシガシと魔力が削られるが、何とか生き延びている。弾いた気弾は、周囲の地形を変形させる程の破壊を撒き散らしている。
 魔力が削られてはいても、何とか耐えているだけ自分を褒めても良いと思うカリオン。
 そのまま爆煙に紛れて、変形した地形の窪みに潜り込んだ。影に隠れるように身を潜め、息を殺す。
(全く、何てパワーだよ……。
 ミリム相手に戦闘訓練していなければ、今頃とっくにくたばっていたな――)
 そんな事を考える。
 同時に、自分と一緒に訓練を受けた友を思い出す。

 ちょ! 死ぬっす! それ以上されると、冗談抜きで死ぬっすよ!!

 いつも隣で、喚いていた。
 そして、限界だ無理だと言いながらも、ピンピンしながら訓練に最後まで付き合っていたのだ。
(くそ! 俺はまだ大丈夫。こんなもんで根をあげていちゃあ、アイツに笑われてしまうぜ!)
 ニヤリ、と笑うカリオン。
 こんな状況でありながら、ミリムの訓練の成果は確かにカリオンに力を与えているのだ。
 要は、死ななければいいのだ! という、ミリムの言葉が思い出される。
 その通りだ、と今ならば理解出来た。
 絶対的な格上との戦闘では、相手の力を見極め、とにかく生き延びる事を優先する。
 幸いにも、部下達は副官の指示に従い、この戦闘領域からは離脱したようだ。天使軍も巻き添えを恐れて、周囲には近寄って来ない。
 ヴェガが天使を巧みに使いこなし、カリオンを包囲殲滅させるという知能を持つ者だったならば、今頃カリオンは殺されていただろう。
 だが、ヴェガは自分の力を過信する余り、配下の天使達への一切の指示は行っていないのだ。
(そこに勝機があるかも知れねーな。とにかく、耐える。そして、隙を見て――)
 カリオンは諦めない。
 自分が相手の戦力を引き出し、手の内を曝け出させる事で、ミリムが有利になるのだ。
 後は、自分達の大将であるミリムに任せるのみ。
 フレイの言葉が気掛かりではあるが、今は自分に出来る事を全力で行うのみである。

「チィ! 小賢しいわ!! 隠れるばかりしか脳がない、臆病者め。
 獅子王だと? 臆病者には、鼠の称号がお似合いよ!!」
「うるせーよ!
 作戦だよ、作戦。頭の悪いお前には、俺の作戦は理解出来ないだろうがな!」

 ヴェガの挑発に、叫び返すカリオン。
 挑発には乗らない。
 木霊の法を用いて、居場所の特定を出来ないように小細工を弄していた。
 声に釣られて、ヴェガが何も無い場所へと連続魔弾を放っている。
 先程までの単なる気弾よりも、威力が上昇しているようだった。地形が変化するのではなく、抉られて消滅している。
 まともに直撃を受けたならば、カリオンでも何発も耐えられそうもない威力であった。
 溜めなく放っただけの攻撃で、地形を変える程の威力なのだ。
 練られた魔弾はそれ以上。まともに相手すれば、瞬時にこちらの魔力が切れるだろう。
 下手すれば、回復の余地すらない一撃を受ける恐れもあった。
 白虎青龍戟を持つ手に力が入る。ここで冷静さを失えば、一気に状況の悪化を招きそうだったから。
 自分の奥の手、『獣魔人化』の使用について思考する。
 この能力の発動と同時、その時までに受けたダメージは全て回復し、魔素量エネルギーも全回復する。
 そして、戦闘力の大幅な上昇と、能力の制限解除が可能となるのだ。
 ミリムとの特訓にて、ユニークスキル『獅子心王ライオンハート』を獲得していた。
 この能力は、自身より格上の者に対する能力上昇と、ダメージ貫通効果を与えてくれる。そして、『獣魔人化』と併用する事で、特殊固有能力オリジナルスキル獅子竜身ドラゴンボディ』へと至るのだ。
 不屈の心と不倒の身体。
 強力無比な力を得るのである。
 しかし……
(ヤツに勝つには、特殊固有能力オリジナルスキル獅子竜身ドラゴンボディ』を使うしかないが、制限時間10分は厳しいな……)
 そう。
 無敵の力に思える超絶能力なのだが、10分経過で全魔素量が消費され尽して、変身が解けてしまうのだ。
 現状、ユニークスキル『獅子心王ライオンハート』のみ使用しているが、圧倒的に負けている。大ダメージを受けるまで『獣魔人化』は温存したいが、これを使ってしまっては、ユニークスキル『獅子心王ライオンハート』が使えないのだ。
 使ってしまった瞬間に、10分で倒しきらないと敗北する事になるのだった。
 ユニークスキル『獅子心王ライオンハート』による、格上に対する補正効果がなくなれば、『獣魔人化』による強化などでは対抗出来ないだろうから。
 ヴェガに超回復能力が備わっているのも確認済みである。
 確実に勝てる算段か、弱点を見抜かない限り、奥の手は使えないのだ。しかし、出し惜しみして負けるなど、それだけは避けねばならぬと考えていた。

「作戦、作戦だと? ふははははは、笑わせる。
 貴様如き雑魚が、無い知恵を絞った所で知れておるわ!!
 そうだな……殺すのは簡単だが、絶望を教えてやるとするか。
 俺様は、未だ何も能力を使ってはいない。この意味が判るか?
 貴様では理解出来ないかも知れないから、見せてやるぞ」

 そう告げて、ヴェガは片手を前に突き出す。
 地面に倒れ伏す死体が寄り合わさり、腐敗した邪悪な生命体へと変貌する。
 そして、天を舞う天使を無造作に撃ち落し、今生まれたばかりの生命体へと捕食させた。
 この世に、おぞましき生物が誕生した瞬間である。
 蠢く邪悪な人型に、猛禽の翼が生えている。
 しかし、その目に知性の光を宿す事は無い。そもそも頭が無いのだから。だが、『魔力感知』能力は備えているらしく、正確に周囲の状況を把握出来るようであった。
 名付けるならば、邪龍獣とでも呼ぶべきか。
 ヴェガが、自身の獲得した究極の力、究極能力アルティメットスキル邪龍之王アジ・ダハーカ』を発動させたのだ。

「グワァッハハハハハ!! どうだ、この俺様の可愛いペットどもは!!
 貴様等如き雑魚には、勿体無い程の戦闘力なのだ。存分に楽しむがいい!!」

 哄笑するヴェガ。
 生まれ出た邪龍獣は、全部で4体。
 天使を喰ってその力を取り込んで、歪な生命であるにも関わらず、戦闘能力は高い。

「おいおい……マジかよ……」

 カリオンの超直感力が警鐘を鳴らす。
 嘗ての同格の魔王、クレイマンに相当するかも知れぬ程に強いと、本能が知らせて来るのだ。
 だが、そんな生命体を生み出したヴェガは、さして力が減少していないようである。
 何体生み出せるのかは不明だが、死体は今後増えていく。天使も同様だ。
 被害が出ないよう上手く副官が指揮を執っているからこそ、今生まれたのが4体だけだったのだろう。
(この邪悪な化け物は、さっさと始末しねーと、俺の部下共もこんな姿にされちまうのか!?)
 カリオンに戦慄が走り、そのおぞましさに吐き気と怒りが込み上げる。悠長な事を言って、出し惜しみしている場合では無さそうだった。

「行けぇい!! こそこそと逃げ惑う鼠を誘い出せ!!」

 命令に従い、猛烈な速度で行動を開始した。
 地を蹴り、宙を舞い、周囲の煙を吹き飛ばして。
 こうなると、地面の窪みに隠れるカリオンに気付くのも時間の問題である。
 チィ! 舌打ちすると、カリオンは自身の魔力を凝縮させ、目の前に接近した一体に向けて獣魔粒子咆ビースト・ロアを放った。
 こんな化け物を量産されてしまうのならば、時間を稼げば稼ぐ程、有利な状況から遠ざかってしまうと判断したのだ。
 機を伺うなどと言っている場合ではなかった。
 カリオンの放った獣魔粒子咆ビースト・ロアにより、一匹目の邪龍獣が焼き尽くされる。
 魔粒子砲の絶大な破壊力は、邪龍獣を焼き尽くしても勢いを衰えさせず、ヴェガへと向けて一直線に突き進む。
 カリオンの狙い通りである。死角からの一撃であり、上手く行けば直撃するだろう。
 ただし、若干距離が離れすぎていた。
 もっと至近距離から撃たないと、300m近い距離では威力が半減してしまうのだ。
 以前よりも力が増大したカリオンであったが、獣魔粒子咆ビースト・ロアは完成された高効率の必殺技であった。故に、撃てる数は増え、撃ち出すまでの準備時間は短くなったのだが、射程距離はそこまで伸びていないのだ。
 現状、200mまでは威力低下を生じないのだが、300m地点ともなると、どうしても威力は低下してしまう。
 それでも、特訓の成果により、大幅に改善されてはいるので文句は無かったのだが……この状況では有効打とは成り得ないだろう。
 カリオンの予想通り、直撃したにも関わらず、ヴェガに致命傷を与えるには至らなかったようだ。

「グワァッハハハハハ!! 小賢しいわ! これが貴様の作戦とやらか?
 この程度の攻撃、俺様に取ってさしたる痛痒も感じぬぞ!!」

 哄笑しつつ、カリオンを挑発するヴェガ。
 だが、その直撃を受けた部分は、大火傷を負っており、言う程にダメージが無い訳では無さそうである。

「は! やせ我慢してるんじゃねーよ! 痛いのなら、泣いてもいいんだぜ?」

 挑発に挑発で返しつつも、カリオンは素早く疾走する。
 カリオンに気付き接近してきた二匹目に向けて、左手で魔力砲を撃つと、練った気を込めた白虎青龍戟にて撫で斬りにする。
 魔力砲を回避しようとして体勢の崩れていた邪龍獣は、反応する事も出来ずに斬り捨てられた。
(後、二匹!)
 カリオンの視界の中に、丁度二匹纏めて走って来るのが視えた。
 三角形の頂点にカリオンが居る。二等辺に二匹が頂点を形成し、その底辺の中央にヴェガ。
 位置を調節するならば、丁度均等に射線に入る必殺技があった。
 辺の長さは100m程度。ヴェガはカリオンを舐めきっており、油断している。
 チャンスであった。
(しめた!!)
 幸運に感謝しつつ、カリオンは全魔力を凝縮させ、魔闘気を練り上げる。
 その力が流出しないように集中しつつ、白虎青龍戟へと流し込む。極限まで練られた魔闘気が、白虎青龍戟の先端へと集まったのを見計らい、猛烈な勢いで旋回させる。

「うぉおおおおおおお!! 喰らえ! 拡散獣魔粒子咆ディフュージョン・ロア!!」

 九つに分かれた閃光が走り抜ける。
 各々の対象に、三つの光が突き刺さった。単発の威力は獣魔粒子咆ビースト・ロアと同等であるにも関わらず、拡散させ、様々な角度から対象を撃ち抜く必殺の攻撃。
 三つの光の収束点は、相乗効果により単発の威力を軽く上回るのだ。これこそが、カリオンの編み出した真の必殺技だったのである。

「っは! ザマー見やがれ。人を見下してるから、そういう目に会うんだよ!」

 カリオンはヴェガに向けて吐き捨てる。
 二体の邪龍獣は消滅したようだが、ヴェガは未だ原型を留めているようだ。
 トドメを刺すべく歩み寄る。
 両腕が吹き飛び、全身に酷い火傷を負っていて、両脇腹にも大穴が空いていた。
 本来ならば致命傷であるだろうが、こういう厄介そうな化け物は、細胞の一欠けらすら残さぬ方が良さそうである。
 そう考えて、カリオンは残った魔力を掻き集めて、最後に一発、獣魔粒子咆ビースト・ロアを放とうとした。
 しかし――
 カリオンの背後から忍び寄った、両断された筈の邪龍獣がカリオンに襲いかかる。
 邪龍獣もまた、恐るべき再生能力を有していたのだ。
 両断された程度では、少しの時間で復活してしまったのである。
 更に。

「グワァッハハハハハ!! 小賢しいと言ったぞ?
 貴様如き、この俺様が相手になるまでもないのだが……
 こそこそと隠れられては面倒だったのでな。
 俺様を囮にして、誘き出してやったのよ!
 どうだ? これこそが、作戦よ!!」

 ぐぬぅ……!!
 カリオンに絶望が襲う。
 ヴェガは、そんなカリオンに優越の笑みを見せる。
 そして、見る間に怪我は修復されていき、大怪我を負った形跡などどこにも見当たらなくなってしまう。
 最初から、怪我などしていなかったかの如く。
(ちくしょう! コイツ、俺で遊んでやがったのか……!)
 悔しいが、ヴェガの実力がカリオンの予想よりも遥かに格上であったと、認めるしかないようであった。
 そんなカリオンをゴミを見る様に見下して、ヴェガは、大魔力弾を放射する。
 背後で抑える邪龍獣の事など気にする事もなく、カリオンを消し去るつもりなのだ。
 魔力弾が放たれた瞬間、死力を振り絞り、カリオンは回避行動に出る。
 何とか直撃を避けたものの、左半身が消滅してしまっていた。

 辛うじて、生きてはいる。
 生命力の高い獣人の、王たるカリオンなのだ。この程度で死ぬ事は無い。
 しかし、この状況からの逆転は、どう考えても厳しいものがあった。
(クソ……ここまで、か)
 最後まで生き抜く事を考えたかったが、どうやら他に手は無いようだ。
 後は、最後の手段に賭けるのみである。
 残り10分で、全力攻撃を行う。
 特殊固有能力オリジナルスキル獅子竜身ドラゴンボディ』を使用し、勝負に出るしかない。
 そう考えたのだ。
 全ての怪我も完治し、魔力も回復する。ただし、それで負ければ後が無かった。
 だが、このままでもどうせ死ぬのだ、やるしか無いのである。
 カリオンは、覚悟を決めた。
 そして、

「舐めるなよ! この俺の、オトコの生き様を見せてやるわ!!」

 叫んだ。
 ヴェガがニヤニヤと嫌らしい嘲笑を浮かべ、負け犬を見る目で見下しているのを感じる。
 その視線に怒りが込み上げ、カリオンは痛みを忘れ去る事が出来た。
 そのまま能力を発動しようとしたその時、

「ちょ〜っと、待つっすよ! ヒーローは、遅れてやって来るものっす!!」

 間の抜けた声が聞こえた。
 懐かしい友の、馬鹿馬鹿しいまでに場違いな。
 カリオンの影から飛び出したのは、一匹の人鬼族ホブゴブリン
 見間違えようもなく懐かしい、カリオンの認めた天才しんゆうだった。


 その者の名は、ゴブタ。
 この危機的状況を打破しうる、13番目の男である。
 脳筋同士の化かしあいって、難しいですね。
 カリオンさんの見せ場、終了!

 コメント中々返信出来ず、申し訳ありません。
 励みにさせて貰っております!
 風邪は大分マシになって、喉の痛みと咳は治りました。
 まだ若干頭が痛いので、用心しております。
 心配して下さった方、どうも有難う御座いました!
 お蔭様で、何とか乗り切れそうな感じです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ