挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

天魔大戦編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

200/303

193話 それぞれの準備

 魔王達の宴ワルプルギスにて、無事に魔王達の協力を取り付ける事に成功した。
 というより、危機は魔王達にとっても人事ではない。
 なので、正確に言うならば、来るべき大戦に対する警告を無事に終える事が出来た、というのが正解であろう。
 大戦ゲーム開始まで、残り僅かしかない。
 魔王達はそれぞれ、大慌てで準備に取り掛かる事になったのだ。


 俺もまた、ゲルドに命じて様々な作業を行わせていた。
 蘇生させた帝国軍の部隊編成は終了しており、30万を帝都守護に回した残りの40万名についても、順次作業に取り掛からせていた。

 猪人族ハイオークの各集落との連携を確認させ、大規模な工業都市を建設する部隊。
 ジュラの大森林の各部族の集落との連絡道を整備する部隊。
 流通の大動脈となる、一大交通網を設置する部隊。

 ゲルドの采配により、目的を与えられた部隊ごとに作業に取り掛かっていた。
 どうせ軌道レールを設置しても、列車の作製が間に合わない。なので、現状で出来るのは、森を切り開いた上での道路の拡張だけである。
 切った木々も木材として利用する為に、都市建設予定地への運搬も同時に行わせる。
 数年掛かりとなる一大プロジェクトが始動したのだ。
 ジュラの大森林は、一気に活気に満ちる事になった。


 そんな中、一番優先させたのが、転移中継魔法陣トランジットゲートの設置である。
 緊急時に部隊単位での出動が可能となる程度の、転移魔法陣の作製と設置を優先させたのだ。
 長距離になる程に、運べる量が減る事になる。魔石に魔素を貯めておき、魔力を扱えない者にも利用出来るようになるのはまだまだ先の事になるだろう。
 だが、大戦に備える準備としては、そこまでの精度は必要ない。将来的には、再利用するのは言うまでもないが、今は完成度は二の次で良い。
 位置情報を記録させ、目的地を念じるだけで移動出来るようにすればいいのだ。
 利用者の魔素を消費する事になるが、問題ないだろう。超長距離を移動する場合でも、魔素を消費し過ぎて死亡するというような事はない筈だ。
 兵卒クラスが応援に移動する事はないだろうし、移動させるのは精鋭部隊のみなのだから。
 そういう考えで、簡素な造りのものではあるが、各都市に設置させているのである。
 これは、帝国軍の魔法に熟練した者達も協力させて、各魔王の城だけは間に合わせるようにと、厳命していたのだ。
 準備を急がせている事はゲルドに悪いと思うのだが、緊急時の相互利用も可能となる転移魔法陣は必須だと考えていた。
 もっとも、ゲルドは俺に命じられるのが嬉しいのか、少しも苦には感じていない様子。
 それどころか寧ろ、活き活きと嬉しそうに働いていた。
 ゲルド直轄の100名程が、胃袋拡張したらしく、資材運搬も何の問題にもならないようで、現代の建設技術を上回る勢いで作業は進んでいるのだ。
 定点写真などでジュラの大森林の様子を撮影出来るならば、日毎に姿が変わっていく事が良く判るだろう。そう考えて、上空から撮影した光景を、記録珠に保存させていた。後に研究資料として活用させるつもりである。
 そんな感じで、ゲルドは大活躍という状況だった。
 アダルマンと、ガドラ老師が、ゲルドの手伝いを行っている。魔法の専門職の二人が付いているので、大分効率よく魔法陣の設置は進んでいるようである。
 この調子だと、問題なく大都市だけは設置が間に合いそうであった。
 一つ心配なのが、アダルマンって死霊で骸骨なのに、日中に活動しても大丈夫なのか? という点である。
 見た目は幻術で誤魔化しているようだけど、平気なのだろうか?
 まあ、気にしても仕方ないか。平気そうに活動しているし、大丈夫なのだろう。
 そんな感じで、急ピッチで作業は進められたのだった。



 他の幹部達は、それぞれの部下の能力把握と、部隊の再編に勤しんでいるようだ。
 悪魔達は、優雅に寛いで、俺の傍に侍っている事が多い。が、部下達は迷宮に放り込んで、戦闘訓練させているようである。
 迷宮の使い方がおかしいような気がするが、気にしたら負けだろう。
 最初にディアブロが、ヴェノムを放り込んだのが始まりだったか……
 他の悪魔達も真似を始めたのだ。そのヴェノムは、ゼギオンの部下のアピトにて躓いている。
 というか、いつもアピトで躓くな。迷宮十傑は伊達ではないのだ。
 まあ、アルベルトに見逃して貰ったから、アピトの所まで辿り着いたのだろうけどね。
 アルベルトは、アゲーラと楽しそうに戦っていたようだから。
 アゲーラって、爵位は低いくせに、戦闘力は高いのだ。剣術の腕前が物凄い達人級なのである。
 そこにハクロウを加えて、あそこは修行場のような様相を呈していた。
 剣術に関心ある者はあの場にて修行するというのが、迷宮にて修行する者達の間では常識となっている。
 俺も、こっそりと利用させて貰おうと思っているのであった。
 で、アピトには手加減とか見逃すとかいう思考が存在しない。
 はっきり言えば、恐ろしく徹底して扱かれている。精々頑張ってくれとしか言い様がないのであった。
 ちなみに、アピトの能力はこんな感じだ。

 名前:アピト
 種族:蟲型魔人
 加護:大魔王の加護
 称号:"蟲女王インセクトクイーン"
 能力:究極贈与アルティメットギフト
    『女王崇拝ヴァルキリー
      …思考加速・魔蟲誕生・魔蟲支配・
       超速行動・空間操作・多重結界

    常用スキル…『魔力感知』『熱源感知』

    戦闘スキル…『軍隊指揮』『致死攻撃』

 耐性:痛覚無効,物理攻撃耐性,自然影響耐性,
    状態異常耐性,精神攻撃耐性


 普通の冒険者に、これを倒せと言っても無理だろう。
 旧魔王を凌ぐ実力者、それがアピトなのだから。



 ベニマルは、自分の能力を見つめなおすとか言って、迷宮内に一室創って貰って、ソウエイと特訓しているみたいだ。
 シエル先生監督の下、超特訓とかしてても不思議ではない。

 ランガはゴブタと仲良くやってる。ランガは尻尾を振って、非常に楽しそうにしているのだが、ゴブタは日毎にやつれているように見えるのは気のせいだろうか?
 いや、気のせいだろう。仲良くやっていると信じて、暖かく見守ろうと思う。
 ゴブタ、君に幸あれ!

 ガビルは、高速飛行及び、高速機動の訓練に余念がない。
 飛竜ワイバーンとの連携をより高度に行うようになったらしく、魔素を供給して飛竜ワイバーンをパワーアップする事も可能になったようだ。
 最早、一体化に近いレベルで操っている。
 いやはや、お調子者らしからぬ用心深さだ。あらゆる状況に即応出来るようにと、出来る限りの訓練を行っているようで感心した。
 敵は天使なので、空中戦も当然有り得ると思う。ガビルの頑張りに期待したいものだ。

 クマラはゼギオンの所に押し掛け、勝負を挑んでいる。
 自分が90階の守護を任されているのに、80階守護のゼギオンに劣るのが我慢出来ないようだ。
 だが、残念ながら、全く歯が立つ様子ではない。
 それにゼギオンは、正直言うと、統括守護者のような存在である。
 80階はアピトに譲り、全体を統括するような立場に就いているという感じなのだ。
 この大戦の最中、ラミリスを守護する必要もある訳だし、最強の駒を配置するのは、一番重要な場所になるだろう。
 ベレッタがラミリスの副官である以上、迷宮管理者としては心配ない。
 後は、迷宮の防衛戦力を誰にするか、である。
 ゼギオンが統括として守り、ベレッタもラミリスの直属護衛として存在する。
 "聖魔十二守護王"の内、数名を待機させるのは勿体無いかもしれない。
 とはいえ、本丸は迷宮になる。なので、臨機応変に対応させるという感じにするのが良さそうだ。
 来るべき戦いに向けて、それぞれがそれぞれの準備を行うのだった。


 そんな感じに皆が準備に励む中、俺は何をしていたのかと言うと……
 色々と試行錯誤を繰り返していた。
 70階層にて、アゲーラに剣の指導を受けたりもしている。
 アルベルトの剣技は、叩き切るという感じで、盾と片手剣が主流である。
 それに対し、ハクロウやアゲーラは剣術、つまり刀を用いるのが主流なのだ。
 盾を持たないで、刀一本だけで攻防をこなす。流派というよりも、理念が完全に異なるのである。
 俺の武器が刀である以上、アルベルトは残念ながら、師匠には向いていないのだった。
 剣を打ち込み、受け流され、技術を身体で覚えていく。
 こればかりは繰り返しあるのみであった。最適行動で、即座に身体が反応出来るように、強制的にあらゆる型を叩き込まれる。
 簡単なようで、非常に難しい。だが、俺はその鍛錬を楽しんでいたのだった。

 そして、身体を休めつつ、『虚空之神アザトース』について考える。
 この能力は大変に危険である。先のクロエとの勝負の際も、利用したのは"停止世界"の発動のみ。
 時間を操作するこの能力は、誰が発動させても効果は等しい。"停止世界"の中で行動出来るのならば、自分で能力を発動しなくても対応出来るからだ。
 言うなれば、止まった時の中で動ける者同士ならば、能力の発動には意味が無いとも言えるのである。
 互いに動けるのだから、止めても止めなくても、状況は一緒なのだ。
 で、シエルの分析によると、クロエが止められる時間はせいぜい数秒。ただし、先読みのような未来予知が使える可能性ありとの事。
 一度体験した状態から巻き戻り、任意の時間にて遣り直しを行うという感じなのか? ちょっと俺には理解出来ない能力である。
 この能力を使われれば、俺には対処は出来ないだろう。ただし、使われれば、だ。
 別にクロエを倒すつもりは無いのだが、この能力の発動条件は、"時間移動"である。つまり、この能力を阻止するならば、時間を止めてやれば良いのだ。
 "停止世界"の中では、クロエの"時間移動"は発動不可能なのである。
 そして、クロエが数秒しか止められない時間を、俺は結構長時間、停止可能である。
 一日に30分程度、止める事は出来そうだ。
 俺には理解出来ないのだが、シエル曰く、"停止世界"内に於いても、能力の発動も可能らしい。
 放出するエネルギーに停止の法則を織り込んで、時間に縛られない状態にする事が可能なのだとか。
 当然、シエルの補助サポート無しには不可能である。時間の流れを、認識する事すら出来ないのだから。
 つまり、この能力を持つ俺にとって、"停止世界"に存在出来ない者は敵では無いと言い切れるのだ。

 ここまでが、クロエとの模擬戦にて得た情報からの推測と、その後の実験で得た情報を統合して理解した内容である。
 そして、今考えているのは別の事。
 シエルが、クロエとの模擬戦では手出ししなかった理由。それは、手加減が出来ないのだ。
 それはどういう事かと言うと、『虚空之神アザトース』とは、圧倒的なまでのエネルギーの塊なのである。
 "虚無崩壊"という、絶対的な崩壊因子エネルギー
 このエネルギーを流用する事は、シエル先生にとっても至難の業であるらしい。
 この能力は、手加減とか出来るような代物では無いとの事。
 最初、魔法の発動にこのエネルギーを利用して実験したのだ。初歩的な火を出す魔法で、大爆発が生じた。
 迷宮内の実験部屋で行った為、大惨事には至らなかったのだが、二度と軽々しく実験出来ないと悟ったのである。
 今は嬉しそうに、シエルが解析中であった。
 そんな訳で、脳内にて、久しぶりにシミュレーションを行っていたのだ。
 現在、クロエとの勝負の勝率は90%を超える。まあ、あの模擬戦が本気だった場合の話ではある。
 だが、あの動きから予測演算し、ある程度上乗せした状態で勝負しているのだ。ただし、剣技のみで相手したら、勝率は30%未満に落ちるのだ。
 なので、まだまだ修行が足りないと実感していたのである。
 ギィについては、情報不足。一度でも、本気の戦いが見れたならば、予想も出来るのだけど……
 中々そんな機会は無さそうだ。
 ちなみにクロエに対し、ディアブロとゼギオンとベニマルの3名で対処すると、90%の勝率を叩き出した。
 まあ、所詮はシミュレーションの結果である。正攻法で正面から挑めば、100%敗北するしね。
 勝負に綺麗も汚いも無いとばかりに、打てる手を全て打つならば、90%で勝てるという感じであった。
 逆に、クロエのヤツはどれだけ強いんだよ! と思ったものだ。
 ひょっとすると、ギィより強い可能性もある。
 まあ、ギィが"停止世界"の中で行動出来ないという前提での話なんだけどね。

 そんな感じで考察を続け、来るべき戦いに備えるのであった。





 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





 ダグリュールは、自国の様子を睥睨する。
 昨日まで魔王リムルの配下の者達が、転移魔法陣の設置を行っていたのだ。
 良く働くものだ、と感心して眺めていたのである。そして今日の朝、先程作業の終了を告げ、ゲルドと名乗る武将以下工作班は帰還して行ったのだ。
 ダグリュールは出来上がった魔法陣を遠目で眺め、部隊規模での移動も可能にするであろう、その仕上がりに感嘆していた。
 石造りの舞台のようになっており、石の蓋を除けると、後程加工が出来るような空間が設けられている。今回は間に合わせとの事だったが、ダグリュールからすれば、十分に素晴らしい出来栄えであると思えた。
(誰にでも利用出来るようにするらしいが、魔王リムルは一体どこまで将来を見通しているというのやら……)
 つまりは、自身が思い付きもしなかった発想をするリムルという名の魔王について、素直に感嘆の念が沸いていたのだ。
 だが、そんなダグリュールの感動の気持ちを打ち消すように、突然背後から声が掛けられた。
 気配も無く、突然背後に湧き出たようなその人物は、

「やあ、ダグリュール。久しぶりだね。元気そうで何よりだ。
 さて、時間も無い事だし、用件を告げようと思う。
 だがその前に、確認なんだけど……
 君って、今でもボクの部下シモベだよね?」

 その声を聞き、ダグリュールは、ああやはり、と心の中で深く納得した。
 ディーノが裏切ったと聞いた時点で、そうではないかという予想はしていたのだ。
 そもそも、あの馬鹿ディーノが自らの意思で裏切るという行為を選択する筈が無いのである。
 仮に、ディーノに命令する事が出来る人物が居るとするならば、それはたった一人しか思い当たらない。
 その人物は自分達にとっては神にも等しく――

「はは! 当然で御座います、我が主よ!
 このダグリュール、貴方様の帰還を、常に待ち侘びておりました!!」

 振り返り、跪く。そして、視線を下げたまま、ダグリュールは奏上した。
 いつの間にかダグリュールの玉座に座る、その人物へと向けて。
 それは、偽り無く本心でもある。ただ少し、今の立場に愛着が沸いただけなのだ。

「うん。君ならば、そう言ってくれると信じていたよ、ダグリュール」

 その人物、ヴェルダは、当然の事と頷きダグリュールを静かに見つめる。

「さて、それでは君には沢山働いて貰わないといけないし、封印を解く。
 今ならば、多少は制御出来そうだし、ね。
 期待しているよ、"暴虐之巨神ティターン"ダグリュール」

 そう言って、頭を垂れるダグリュールの頭に手を翳すヴェルダ。
 神代の昔、"星王竜"ヴェルダナーヴァに挑み封印された、凶悪なる巨神。
 大地に破壊を撒き散らす、暴虐の王。その凄まじい超能力は、幾つもの国を焦土と化した。
 古代の魔法王国の者達を恐怖のどん底に突き落とした、最悪の破壊神。
 "星王竜"ヴェルダナーヴァに能力を封印された今でさえ、その怒る様は、"大地の怒りアースクエイク"と呼称される程である。
 その巨大な力故に、理性を失い破壊を撒き散らした者。
 その封印が今、解き放たれた。
(ああ、"星王竜"ヴェルダナーヴァ様のお役に立つのならば、それもまた良し、か)
 三人の息子達の事が脳裏に過ぎる。
 今、この国に居ない事が、果たして良かったのか悪かったのか……
 それは考えても仕方の無い事であった。

「ぐぬうぅ!! ワシは、"暴虐之巨神ティターン"ダグリュール!!
 我が身を持って、貴方様に仇為す者共を撃ち滅ぼす者なり!
 何卒、御命令を!!」

 意志の力で暴虐の力を抑え込み、叫ぶ。
 ヴェルダはその様子を楽しげに眺め、重々しく命令を発するのだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ