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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

魔都開国編

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116話 反省会

 ここ数日、多忙な毎日を送っていた。
 そう、主に地下迷宮ダンジョンが原因で、である。


 俺の魔王としてのお披露目に始まり、武闘会の開催と順調に進んだ。
 この二つは大成功だったと言える。
 特に、遠距離通信玉を改良した撮影相互受信機能を有する水晶球にて、大スクリーンに投射する方式は大好評だったと言える。
 武闘会の戦闘も、大画面による拡大映像にてハッキリと観戦出来た。
 そして何よりも、迷宮内部という離れた地点の光景も安全に見学出来た事は、各国の重鎮にとって、凄まじい文化的衝撃カルチャーショックを与える事になったのだ。
 ドワーフ王など、

「おいおい、これはまた凄まじいものを公開したな……
 これは利用の幅が広すぎて、何と言えばいいのか迷うぞ。
 これを公開する前に、一言、相談して欲しかった」

 と、苦言を呈してきた。
 俺達にとっては、便利な娯楽系アイテムという価値しか持っていないのだけど、一般のジュラの森周辺の国々に取っては話が異なるらしい。
 簡単に思いつくのが、軍事利用。
 安全な場所で、軍に指示できるのは大きな利点である。
 何より、特攻部隊により敵情視察を行い、速やかに軍に反映させる事も可能となるだろう。
 俺達が気軽に公開してしまった技術は、この世界においては超文明とも言える革新技術だったのだ。
 思念リンクの能力を解析し、魔法と科学の融合のように開発した技術である。なので、案外簡単に量産も可能だった。
 しかし、使用者がそれなりに魔力を消費するので、伝達距離や情報量が使用者の能力に左右される事になる。
 そうした不都合も、魔素の集積システムの開発により改善しそうであったのだが、言わない方が良さそうだ。

「ともかく、軍事に利用出来そうなものを、娯楽に用いるのはお前らしいよ」

 と、呆れたように言われたのだった。
 だがまあ、宣伝効果としては抜群である。
 魔導王朝サリオンは、皇帝自らがさっさと協力を申し出て来た。

「何なら、お金の支援をしても良いぞ?」
「ああ、そっちは今の所間に合ってる。だが、そちらの魔導科学とやらの専門家が協力してくれるなら助かる」
「ふむ、判った。国に帰り、即、検討する事にしよう!」

 そう言って、エラルド公爵を伴い帰って行った。
 サリオン皇帝の表情は、新たな玩具オモチャを見つけた子供のように輝いており、憂鬱そうなエラルド公爵と対照的なのが印象的だった。
 最早、当初の技術協定の約束所の話ではなく、本格的な共同研究が始まるのも時間の問題だと思う。
 ドワーフ王も、自国で技術研究班を用意し、魔物の国テンペストに向けて送る事を約束し、帰って行った。
 ここまでは順調だったのだ。


 そして、問題が発生する。
 先ずは、長鼻族テングである。
 大会が終了と同時に、俺の下へ訪れた。そして開口一番、

『先日は、大変無礼な振る舞い、誠に申し訳御座いません!
 何卒、お許し願いたく、こうして参上致しました!!』

 と、全員で謝罪して来たのだ。
 まあ、それはいい。
 別に、俺にとってはそれ程問題ある行動だとも思えなかったのだから。
 だけど、その後が問題だった。

「つきましては、謝罪の意味も込めまして……、
 私がベニマル様の下に嫁ぐと言う事で、話を進めさせて頂きたいのです!」

 はあ? 何言っているんだ、コイツ!?
 長鼻族テングの長老の孫娘、モミジが、そんな爆弾発言を発したのだ。
 思い込んだら一直線、まさに暴走特急みたいな性格をしているようだ。
 チラリとベニマルを見れば、寝耳に水だったらしく大慌てしている。俺に視線を向けて、ムリムリ! という感じのアイコンタクトを送って来た。
 だが、そこで俺は考えた。
 別に、いいんじゃね? 本人同士の話なのだ、ここで俺が口を挟むとややこしくなりそうだし。
 何より、"君子危うきに近寄らず"と言う。
 前々からそうであるように、俺はそう言う危険な話に首を突っ込む趣味は無いのだ。

「う、む。そうだな……。まあ、そういう話は、本人同士。
 我々、部外者が口を挟むべきでは無い、そうではないか?」

 ここで、部外者である事を強調し、話をベニマルに任せる事にした。
 俺の言葉に、賛同の意を示す幹部達。
 巻き込まれたく無い気持ちは、皆一緒。
 という訳で、頑張れベニマル! 優勝したご褒美だと思って、イチャイチャするが良いさ!
 と、心の中で応援し、問題を先送りにしたのだった。
 長鼻族テングの件はベニマルに任せ、一切関与しないと決めた。
 無責任? 知らんよ、そんな事。
 で、その問題を放置すると決めた時、別の問題が発生していた。
 その問題こそが、ここ最近の忙しさの元である。


 その問題とは……
 地下迷宮ダンジョンの攻略が思った程進まなかった事である。
 最初の一階層は、罠も無く、ただ迷宮の雰囲気に慣れて貰うだけのつもりで作成している。
 なので、俺の感覚では一日も篭ればクリア可能なレベルの筈だったのだ。
 ところが、三日経ってもクリア者は現れなかった。
 部屋に配置したCランク相当の魔物に殺されるパーティも存在したのである。
 というか、多かった。
 欲に目が眩んだのか、部屋の隅に隠れる魔物に気付かずに、宝箱に殺到する馬鹿も居たのだ。
 基本がなっていないのである。一言で言うと、危機感が足りない! であった。
 また、徘徊する魔物は、Fランクの発生したての雑魚とかも居る。
 しかし、メインはEランク。偶にDランク相当が混ざったのだが、これも失敗である。
 一人で挑む馬鹿も居て、3体程のEランクの魔物に、簡単に殺されたりするのだ。
 まして、Dランクに遭遇したら、きっちりと殺されていた。
 余りの予想外の低レベルさに、開いた口が塞がらない状態だった。
 だが、まだ慌てるような段階ではない。
 今回挑戦した者共は、用心棒や傭兵であり、探索等を得意としない奴らなのだ。
 そう思って様子見を続けた結果、3日経っても一階層攻略者も出ないという現状だったのである。
 中には、ギブアップを宣言する者も出る始末。
 そりゃそうだ。
 記録地点セーブポイントは10階層毎なので、大量の食料を持ち込むなりしないと、空腹になるのである。
 そして、迷ったりすると、なかなか出口にも辿り着けなくなる。
 だから、最初の説明で食料や装備を整えるように忠告しているのだが、聞いてはいなかった様子。
 本気で俺がこいつ等を殺すつもりでこの迷宮を用意したのだとしたならば、100年経っても攻略者が出ない事間違いなしであった。
 これは、根本から見直す必要がありそうだ。
 そして、この事こそが、ここ最近で一番俺の頭を悩ませているのだ。


 このままでは不味い。
 いや、迷宮攻略に乗り出す者は結構いるのだ。
 魔晶石が出れば、それなりに小遣い稼ぎが出来るらしく、結構続々と迷宮に入って行く者が居る。
 各国の重鎮や大商人が帰国する際、雇われ者に攻略を依頼して行った者も居たようで、中にはきちんと準備をしているグループも居るのだ。
 だが、そういった者は少数であり、依然として杜撰な準備の者達が大半だったのである。
 という訳で、反省会。
 参加者は、俺、ヴェルドラ、ラミリス、そしてオブザーバーとしてマサユキである。

「よし、まず現状は見ての通り、全然駄目だ。
 俺達が楽しむ、じゃなく、上手く何度も攻略に挑戦したいと思わせる為にも、ある程度の指導を行った方が良いと思う」

 まず、このままでは10階層までも到達出来そうも無い。
 少なくとも、一人で挑戦など、馬鹿としか思えない。
 あと、警戒心の無さも指摘してやらないと気付かないだろう。

「そこで、最初の一階層は体験の意味も込めて、
 魔物の出ない"アスレチックステージ"にすべきではなかろうか?
 この階層で、罠について学習したり、魔物との戦闘訓練をしたり……
 まあ、魔物の国テンペストの新兵の訓練等も行えると思うし。
 どう思う?」
「うむ、我が思うに、歯応えが無さ過ぎてツマランぞ。
 ある程度、修行するなどして、もっと腕を上げて欲しいのは同感だな」
「アタシもそう思う!
 ミリムが居たら、激怒してあいつ等全員ブッ飛ばされてると思う!」

 と、迷宮を創った俺達は無責任にも挑戦者が悪いと、難易度が高かった事を誤魔化した。

「あと、ある程度の迷宮攻略に関する基礎知識の講習も行った方が良いかも知れないですね。
 ゲームで言う、チュートリアルみたいに」

 何気ないマサユキの発言に、俺達は目を見合わせる。

「ちゅーとりある? 何だ、それは?」
「美味しそうな名前だけど、食べ物?」

 ヴェルドラは知っているかと思ったが、ヴェルドラが知らないのではラミリスも知りようがないだろう。
 そこで、俺とマサユキでチュートリアルについて説明した。
 納得する二人。

「そうね、あった方が良さそう。分かった! 早速創り換えるよ!」

 と、ラミリスが頷く。
 だが、

「あ、待って下さい。他にも気付いた事があります。
 階層毎に、宿屋と食事処を用意しても良いのでは?
 というか、空間を繋げられるのなら、扉だけ繋いで全部一箇所で賄えないですか?
 寝袋も用意せず攻略に乗り出す人も居てますし、割高でも利用して貰えると思います」

 なんだと?
 コイツ……天才か!?
 ラミリスに視線を向けると、力強く頷きが返される。

「マサユキ君、その案、採用しよう。
 もっと思った事があるなら、遠慮せず言い給え」

 俺が促すと、マサユキは思案し、自分がやっていたのであろうゲームを思い出しつつ、

「そうですね……
 例えば、一回だけ使用可能な記録地点セーブポイントを配置するとか?
 10階層を攻略する迄記録出来ないのは、かなり難易度が高そうですし。
 本番である30階層以下では、甘えを無くすのも良いと思いますけど……
 せめて20階層あたりまでは、少し甘さを残して攻略の手助けもアリだと思います」

 ふむん。
 なるほど。

「うむ、我もそう思っておった!
 マサユキの言う事ももっともである!」

 ヴェルドラが、さっさとマサユキの案に乗っかった。
 まあ、俺としても反対意見は無い。

「よし、では各層に隠し部屋を用意し、95階の食堂に繋ごう。
 これで、それなりにあの町の有用性も増すしな。
 後は、記録地点セーブポイントをどこでも作れるアイテムをドロップさせるか。
 出来るか、ラミリス?」
「もっちの、ろんよ! 余裕ですとも。
 記録玉というアイテムを、雑魚からの希少レアドロップにしておくよ!」

 よしよし。
 1階層はアナウンスを含む、事前体験用のステージにする。
 利用するしないは各人に任せて、この階層では死亡しないように設定して貰った。
 その場で即座に復活する仕組みだ。子供の遊び場にも最適かも知れない。
 そして、2階層では各魔物との擬似戦闘バーチャルバトルが可能にしておく。
 一度遭遇した魔物を、ある程度再現して攻略の手助けを行うのだ。
 もっとも、これはユニークモンスターやボスモンスターは対象外にしておいた。
 そこまで便利にするのも考え物だろうしな。
 なので、2階層は、各人毎に別空間に飛ぶ感じになる。
 本番は3階層からだ。
 だが、3階層には罠は設置せず、徘徊する魔物も低レベル。Fランクだけにしておく。
 部屋に一体だけEランクを配置し、宝箱からは下位回復薬ポーション系が出るようにしておいた。
 高価なアイテムは、5階層以下から出現させるのだ。
 こんな感じで、調整を考え、難易度の変更を行った。
 ゲーム開発でも、クローズドテストとか行うものだし、ぶっつけ本番は無理があったようだ。
 本当は、一応、テストは行ったのだ。
 ただし、攻略に向かわせたのは、シオン配下の"紫克衆ヨミガエリ"の兵士6名。
 何の問題も無く、地下40階まで攻略していた。
 まあ、30階にゴズールを配して居なかったのだけども。
 しかし、罠や雑魚には、大して苦戦せずにサクサク攻略していたのである。
 お陰で、俺達は迷宮難易度を見誤っていたようだ。
 テスターは慎重に選ぶ必要があったのだ。
 今後の課題である。
 こうして、俺達は反省会を行い、新たな迷宮へと創り替えたのだった。


 ミョルマイルが各国の自由組合支部に伝達し、攻略者への報酬を提示し、依頼を行った。
 彼は順調に仕事をこなしている。
 ゴズールは腕輪と足に重しを着け、30階層を守護している。
 馬頭メズにもメズールと言う名前を付け、ゴズールと交互に守らせる。
 50階層は制限無しのゴズールかメズールが守護する事になる。
 仲良く守護者をやって貰いたい。
 95階層のトレントやエルフの町(予定)も、ゲルドとミルドが協力しあい、美しく幻想的に仕上がっている。
 地下なのに、空に太陽、夜には星が見えるのだ。
 こうして、迷宮は日々その姿を変化させ、新たに生まれ変わっていく。

 そしてついに、冒険者による攻略組が、魔物の国テンペストに到着したのであった。
 
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