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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

地位向上編

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11話 進化する魔物達

明日は仕事でずっと外にいて、サボって書く余裕がない…。
 牙狼達は動く気配がない。
 ヤバイな…。
 服従するくらいなら死を! 的なノリで一斉に向かって来るつもりだろうか?
 そうなったら全面戦争だ。
 数の上では負けているし、こちらも無傷では勝てないだろう。
 せっかく今のところ負傷者がいないのに…負ける事はないだろうけど、出来れば争いたくない。

 さっきまで争いの騒音が、嘘のような静けさだ。
 牙狼達の視線が俺に集中している。
 俺は、その視線の中をゆっくりと歩き出した。
 これがどう判断されるか判らないが、こいつらにボスの死をより強く認識させる為に。
 牙狼族のボスの死体の前に辿り着く。俺を妨害しようとする者はいない。
 ボスの傍に控えていた個体が、一歩、後ずさった。
 俺は、牙狼族のボスを『捕食』した。
 この行為は、戦って勝ち得た正当な権利なのだから。

《解析が終了しました。
 擬態:牙狼を獲得しました。
 固有スキル『超嗅覚,思念伝達,威圧』を獲得しました 》

 俺の心に、『大賢者』の言葉が響く。
 ふむ。
 目の前で、自分達のボスを喰われる所を見せつけたのだが、それでも動きはない。
 うーむ。
 ここまでされると、ビビって逃げ出すか、恐怖で向かってくるかの二択だと思ったのだが・・・
 あ! 服従か、死かって言ったっけ。
 しまった。調子に乗って、無茶振りしてしまったのか。
 仕方ない。逃げ道を用意してやろう。
 そう思い、俺は牙狼に擬態した。
 そして、

 グルッ、ウォーーーーーーーーーーーン!!!

 と大音声で咆哮『威圧』した。

「クククッ! 聞け。今回だけは見逃してやろう。我に従えぬと言うならば、この場より立ち去れ!!!」

 と、続けて牙狼達に宣言する。
 これで、この犬っころどもも逃げ出すだろう。
 そう思ったのだが・・・、

(我等一同、貴方様に従います!!!)

 と、一斉に平伏された。
 犬が寝そべったようにしか見えないけれど、ね。
 どうやら、俺に従う事を選択したようだ。
 動かなかったのは、"思念伝達"で会議でもしてたのだろうか?
 まあ、争う必要が無くなったのはいい事だ。
 こうして、ゴブリン村の戦いは終結した。



 なんてな。
 大変なのは、戦いよりもその後の後始末なのだ。
 誰だよ、家壊せとか命令したの・・・
 どうする気だ? さて、ゴブリン達の寝床、どうしよう?
 で、犬共の面倒も誰がみるんだよ・・・
 何匹か死んだようだが、まだ80匹は生き残っている。
 これは・・・、ともかく今日は終了! 考えるのは明日、こいつらが起きてからにしよう。
 俺は取り敢えず、ゴブリンには焚き火の傍で就寝を、犬共には村の周辺で待機を命令し、その場は解散としたのだ。

 明けて翌朝。
 昨日一晩考えた。そして思いついたのが、
 ゴブリンに牙狼の面倒を見させる作戦! である。
 戦えるゴブリンの総数は、74匹だった。昨日の戦いでは負傷者はいない。
 皆無事で、せいぜいがカスリ傷程度である。
 牙狼族の生き残りは81匹。
 こちらは負傷した個体もいたのだが、回復薬ですぐに治癒した。
 ほっといても大丈夫だっただろう。それほど牙狼族の治癒力は、高いようだ。
 起きてきたゴブリン達を整列させる。
 戦えない者達は、周囲で眺めていた。何しろ、家もなにもない更地だ。目立つのは仕方ない。
 村長は俺の隣に控えていた。
 何かと俺の面倒を見ようとしてくれるのだが・・・ゴブリンの爺さんに世話されても嬉しくはなかった。
 俺の美的感覚は、生前のままである。
 いくら魔物に転生しちゃったとしても、その点だけは譲れない。
 しかし、魔物の村に可愛い者などいないのだ。そこは当分諦めざるを得ない・・・。
 整列したゴブリンの横に、牙狼族を呼び寄せる。
 さてと…

「えーと、君達。これから君達には、ペアとなって一緒に過ごして貰う事になります!」

 反応を覗う。
 俺の言葉を待つという意思を見せ、物音一つさせまいという感じにこちらを見つめて来る。
 ペアとなる事に、嫌そうなそぶりを見せる者はいない。
 どうやら大丈夫そうだ。

「意味は判るか? 取り合えず、二人一組になってくれ!」

 俺がそう言った途端、
 ゴブリンと牙狼達が隣に座る者同士、視線を交わしあった。
 そして、

「グガ!」(宜しくな!)
「ガゥ!」(おう、こちらこそ!)

 という感じに二人一組になっていく。
 "昨日の敵は今日の友" 若干違うかもしれないが、概ねそういう事で納得したのだろう。
 そこで、俺はあることに思い至った。
 こいつらに名前はないのか?? と。
 呼びかけるのに不便でしょうがない。
 ゴブリンと牙狼達が二人一組になっていくのを尻目に、

「村長、お前らを呼ぶのに不便だ。名前を付けようと思うが、いいか?」

 俺がそう言った途端、ザワリ! と周囲の視線が俺に集中した。
 周りで見物していた、非戦闘員のゴブリン達も一斉に。

「よ、宜しいの…ですか?」

 おそるおそる、といった感じで村長が問いかけてくる。
 なんだ? 何を興奮してるんだ?

「お、おう。問題ないなら、名前をつけようと思う。」

 俺がそう言い終わった途端、固唾を呑んだようにこちらを覗っていたゴブリン達から歓声が上がった。
 一体どうしたというんだろう?
 何やら、大 興 奮 !!! と言った様子なんだが…。
 名前貰うのがそんなに嬉しいなら、自分らでつければいいのに…
 俺はその時、そう気楽に考えていた。

 まず最初に、村長からだ。
 息子に付けられた名前を尋ねた。"リグル"という名前だったらしい。
 村長に"リグル・ド"=リグルドと名をつけた。
 名前に意味はなく、語呂がいいからというだけの適当さで。
 息子がいたらリグルを名乗り、自分に"・ド"を付けろ! と冗談で言ったら、大真面目に本気にされた。
 さらに、

「息子にこの名前を継がせる許可までいただき、感涙に耐えませぬ!!!」

 などと、大げさに喜ぶ始末。
 そんな適当につけただけなので、若干罪悪感がしたが…。
 まあいいや! と流す事にした。
 という訳で、ゴブリンリーダーの名前は"リグル"である。
 二世とか付けても面倒なだけだし、リグルでいいや。
 何やら、俺に祈りを捧げるような体勢で感激している。
 本当に大げさな…よく似た親子だ。
 そんな感じでゴブリンに名前を付けていった。
 ついでなので、見物していた者も親子なら名前を確定させていく。
 独り身や、孤児にも名前を与えた。
 こいつらは、この先何年もこの名前を引き継いでいくのだろうか…
 孫が生まれたら、村長は"リグル・ドド"。
 ひ孫が生まれたら、ひ孫が"リグル"で村長は"リグル・ドドド"
 本気か? と言われそうな適当さなのだが…まあいいや。
 こうして俺は、名前を付けていく。
 その俺に、

「リムル様…大変有難いのですが……、その、宜しいのですか?」

 と、若干慌て気味に村長改め、リグルドが尋ねてきた。

「何がだ?」
「いえ、リムル様の魔力が強大なのは存知て居りますが…その、そのように一度に名を与えられるなど…大丈夫なのですか?」

 何を言っているんだ? 名前を付ける程度に何を…?

「む? まあ、問題ないだろ。」

 そう言って、名前付けを再開した。
 それならば…などと、リグルドは何か言いたげであったけど、俺の意識には残らない。
 そして、ゴブリンの名前を付け終わり、牙狼族の番となった。

 牙狼の新たなリーダーは、前ボスの息子であった。
 親父に似て逞しい体つきに、すでに風格も併せ持っている。
 その血色の瞳を見ながら、名前を考える。
 そうだ! 嵐の牙で"ランガ"これでいこう!
 またしても、安直に名前を決めた。
 自分のファミリーネームが嵐だから、その牙として嵐牙。
 まあ、名前付けなんて適当でいいのさ。俺にその辺りのセンスはない!

 その瞬間!

 俺の体内から、魔素がゴッソリ抜き取られる感覚がした。
 猛烈な虚脱感が、俺を襲う!
 何…だ、これ?
 この身体に生まれ変わってから、感じた事もない疲労感。

《告。体内の魔素残量が一定値を割り込みました! 低位活動状態へと移行します。
 尚、完全回復の予想時刻は、三日後です 》

 意識はある。
 俺に睡眠は、必要ないのだから。
 『大賢者』の声も聞こえている。ゆっくりと、理解が俺の心に到達した。
 魔素の使いすぎ…だと? MPを使い切ったみたいなものか。
 しかし、一体何をしたから魔素を消費したんだろう? 今までの使用が一気にきたとか?
 というか、そういう感じでも無かったのだが。
 身体を動かそうとしても動かせない。
 低位活動状態とは、冬眠みたいな感じになるようだ。寝てる訳ではないのだが…。
 リグルドが大慌てで、俺の身体を介抱している。
 最も、出来る事など無く、焚き火の傍に設けられた上座に座らされているだけだが…
 意識はあるものの、出来る事はない。

 俺は、今の現象について考察する。
 名前を付けていたら、魔素切れを起こした?
 …名前付けるのに、魔素を消費したとか?
 そういえば…牙狼リーダーに名前付けた瞬間に、大きく魔素が抜け落ちたような…
 仮定だが、魔物に名前を付けるのには、魔素を消費するのではないだろうか?
 その結論を出すのに二日かかった。
 そう考えると、リグルドが心配していた理由に思い至る。
 ちょっと待てよ…もしかして、魔物には常識だった、とか?
 言えよ!!! と思わなくもなかったが、聞き流していたのは自分だ。
 ここで文句を言ったら八つ当たりだ。
 しかし、身体が自由に動いたら文句言っていただろう。
 八つ当たり? そんなの知らん。
 しかし、最初、俺の動きが止まった事を心配していたゴブリン達だが…
 いつの間にか、俺の身体を拭く係りを巡って、熾烈な争いを行うようになっていた。
 何やっているのやら…冗談ではなく、こんなハーレムは勘弁してもらいたい。
 …どこぞの、撫でるとご利益のある置物のような扱いであった。

 そして、三日が経過した。

 完 全 回 復 !

 魔素の枯渇を起こしたのだが、倒れる前よりも魔力と魔素の総量が上がった気がする。
 魔力とは、操作する力。
 魔素とは、使用するエネルギー量。
 そういう認識で、大体合ってると思う。
 死に掛けると強くなる! みたいな感じなのだろうか?
 一瞬、試して見るか? と思ったが、止めておこう。
 そこまでする必要を感じないし、死に掛けるつもりで死んでしまったらしゃれにならん。
 何しろ、俺はすぐに一線を越えてしまう男なのだ。
 油断したら負け! である。
 さて…、
 俺が起き出した事に気付き、作業していたゴブリン達が集まって来た。
 外に出ていた牙狼達も中に入ってくる。
 それはいいのだ…だが、これは一体…。

「お前ら…なんか、でかくなってない?」

 そう。
 体長150cm程度だったゴブリン。なのに、今は180cmはありそうだ。
 俺の目の前に控えたヤツなど、2m超えていそうである。
 え? ゴブリン…だよね?
 牙狼達も、焦げ茶色だった体毛が漆黒に変色しており、艶やかな艶と光沢を放っている。
 更に、体長が3m近くになっていた。確か、2m程度しかなかったハズ…。
 先頭に音もなく歩いてきた個体は、異様な妖気と風格を漂わせ、その体長は5mに届きそうな程。
 ちょっと怖い。
 その上、

「我が主よ! 御快復、心よりお慶び仕ります!!!」

 等と、流暢な人語で語りかけてきた。

 …まさか、こいつ"ランガ"なのか!?

 この三日間で、一体何が…
 俺の戸惑いを他所に、魔物達は喜びの雄たけびを上げ始めていた!

 

 






ステータス
 名前:リムル=テンペスト
 種族:スライム
 加護:暴風の紋章
 称号:"魔物を統べる者"
 魔法:なし
 技能:ユニークスキル『大賢者』
    ユニークスキル『捕食者』
    スライム固有スキル『溶解,吸収,自己再生』
    エクストラスキル『水操作』
    エクストラスキル『魔力感知』
    獲得スキル…黒蛇『熱源感知,毒霧吐息』,ムカデ『麻痺吐息』,
          蜘蛛『粘糸,鋼糸』,蝙蝠『超音波』,トカゲ『身体装甲』
          牙狼『超嗅覚,思念伝達,威圧』
 耐性:熱変動耐性ex
    物理攻撃耐性
    痛覚無効
    電流耐性
    麻痺耐性
+注意+
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