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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

魔都開国編

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114話 武闘会-本選 その9

PCが壊れて、修復に夕方まで掛かりました。
OSの再インストールしようとしただけなのに、大変な目に逢いました。
 武闘会もついに最終日。
 今日は決勝である。
 ベニマルにディアブロ、どちらが勝利してもおかしくない。
 順当な迄に強者が残った訳だ。
 ここでゴブタが残ったりしていれば、物言いがついた可能性もある。
 まあ、それでもゴブタが4強に残ったのは事実な訳だが。
 しかし、ゴブタが序列4位とは……。
 明らかにゴブタより格上のソウエイやゲルドを抜いての4位だし、強運の持ち主と言える。
 けどまあ、ランガと同一化出来る様になったのだし、一概には強運だけとも言えないのかも知れない。
 現在いまはまだ能力を使いこなせていないけど、その内使いこなせるようになりそうだ。
 何しろ、同一化出来るようになって一晩で"魔狼合一ヘンシン"と言う同一化を最適化してみせたのだ。
 その上、力のコントロールまでは高望みしすぎである。
 ゴブタは頑張った。
 この大会中、もっとも成長したのはゴブタかも知れない。

 さて、本日の試合だが。
 ベニマルは対戦相手に恵まれていると言える。
 ソウエイとは良い勝負を行っているけど、その他の試合は格下のゴズールにゴブタとは不戦勝のようなものであった。
 対するディアブロは、三名とも強者。
 元魔王のカリオンに、俺の最高傑作の聖魔人形ベレッタ。
 そして最後はシオンである。
 全員、魔王級の実力者であり、その尽くを捻じ伏せている訳だ。
 もし、今日の試合でベニマルに勝利したならば、文句無く魔物の国テンペスト最強と言う事になる。
 さて、どうなるか。
 今日の実況はソーカが1人で行う。
 ミリムはゴブタを連れて去って行った。
 どうやら、今日一日で鍛えなおすとか言っていたので、決勝戦には興味が無いのだろう。
 ゴブタにとって良い事か悪い事かは分からないけど、ミリムに直々に鍛えて貰える事など滅多に無いだろうし、精々頑張って貰いたい。
 獅子覆面ライオンマスクことカリオンさんも、同時に修行させるようだし、良い友達になれたらいいのだけども。
 まあ、ゴブタの無事を祈りつつ、試合を見る事にしよう。

「それでは最終試合! 決勝戦、始め!!」

 決勝戦…… ベニマル vs ディアブロ

 ソーカの掛け声で、試合が始まった。






 クフフフフ。
 心の奥深くより湧き出る悦びに、ディアブロは歓喜する。
 実に、実に素晴らしい主に召喚されたものだ、と。
 長き時を生きて来たが、これ程心躍る戦いに巡り合った事は無い。
 彼にとって、戦いとは蹂躙を意味する。
 弱き者を、ただ踏み潰すように殺戮するだけの行為。
 そもそも、精神世界の住人である彼に傷を負わせる事が出来る者の方が少ないのだから。
 稀に物質界に顕現した際も、滞在時間内にその場に生きる者を皆殺しにするのは容易かった。それは、召喚した者も含めての事である。
 身の程も弁えず、上位者である彼、ディアブロを召喚するなどと……
 殺されても文句の言えない愚かな行為と言えた。
 そもそも、悪魔族デーモンとはどのような種族なのか?
 太古の昔、光と闇の精霊が生まれた頃、光の祝福を受けて天使の卵が生まれ、闇の波動を受けて悪魔の種子がばら撒かれた。
 時の精霊の誕生と同時に、卵は羽化し、種子は芽吹いたのだ。
 概念的な存在として、肉体を有していない純粋なエネルギー体として、彼らは生まれたのである。
 それが、天使族エンジェル悪魔族デーモンの始祖であった。
 不思議なもので、同様に生まれた筈の天使族エンジェル悪魔族デーモンは仲が悪かった。
 出会えば戦闘は避けられず、長き戦いを繰り返している。
 しかし、彼らの戦いは影響が大きすぎる為に、何時しか500年に一度、7日間だけ戦闘を行うという協定ルールが出来上がる。
 戦いに悦びを見出すディアブロにとって、戦えない期間は退屈この上ないものであった。
 肉体を持たない彼らに、物質世界への干渉力は無い。
 だからこそ、退屈な時間の終わりを告げる、新たな魔王からの召喚に歓喜したのである。
 魔王リムルは言った。

肉体エサを用意してやったぞ、出てこい悪魔将アクマ
 俺の役にたちやがれ!』

 思い出しても興奮する。
 名指しで自分を呼んでいる! そう直感した。
 抜け駆けして出現しようとしている悪魔ザコ共を容易く皆殺しにすると、何食わぬ顔で顕現する。
 そして、得たのだ。
 新しい肉体と、忠誠を誓うに値する主を。
 その肉体は彼に馴染み、今まで貯めるだけ貯めて消費していなかった魔素を惜しげもなく消費して望む姿へと変貌させる。
 その上、彼のリムルが真の魔王へと進化した事により、消費した魔素を補充するかの如く溢れる程にエネルギーの流入を感じられた。
 そして、決定的だったのが、名前を付けられた事である。
 長き年月で溜め込んだ魔素で肉体を造り、空っぽの身体を埋める程の魔素を注入され、名前を得た事でそれらが安定した。
 彼にとって、戦いとは蹂躙を意味した。
 だからこそ、強さに興味も無かったのだ。何しろ、苦戦らしきものをした記憶も無いのだから。
 天使族エンジェルとの戦いでさえ、彼にとっては虐殺と変わりない出来事だった。
 故に、溜め込まれた魔素を全て消費した時点で、彼は悪魔公デーモンロードに相当する実力者になっていた。
 魔界にも、数える程しか存在しない最上位者である。
 今の彼は、長き年月で蓄えた経験をそのまま安定して行使する、真なる魔王に準ずる程の存在になっているだろう。
 そのディアブロを持ってしても、自分の主であるリムルの底が見えない。
 ディアブロは、上には上の存在がいると、初めて認識した。
 そして、今まで強さに興味は無かったのだが、仲間である魔物達に触発されたようでディアブロも力を求め始める。
 序列1位。
 それは、魔王リムル配下の魔物の中で、最上位者である証。
 もっとも信頼され、役に立つ者という証明である。
 何という、心くすぐられる甘美な響き。
 何が何でも、序列1位の座は自分のものだ、そうディアブロは考えていた。
 序列がどうのと言い出したシオンには、先の戦いにてディアブロが勝利している。
 だが、シオンも認める最強の鬼が、決勝の相手なのだ。
 決して油断出来ない。
(クフフフフ。しかし、勝つのはこの私です!)
 ディアブロは、戦いを楽しみにしつつ、勝利を疑わない。

「……決勝戦、始め!!」

 ソーカの合図により、決勝戦が始まった。
 後は、全力でベニマルに勝利するだけ。
 ディアブロは、気負うでもなく、その身に宿す力を解き放つ!





 ベニマルはディアブロを観察して思う。
 この悪魔、出鱈目だろう、と。
 リムルの配下は、突然変異したように強力な者が多い。
 だが、この悪魔ディアブロだけは別格である。
 ベニマルの感覚では、シオンと自分が正面からまともに戦ったとしたら、恐らくシオンが勝つのではないかと考えていた。
 理由は簡単、自分は集団戦に向いていて、シオンが個人戦に向いている、ただそれだけの事である。
 同じ量のエネルギーを複数に向けるより、個人に向けた方が威力が上がる。
 そうした意味でも、一対一ならばシオンが有利だと考えていた。
 なのに、目の前のディアブロは、そのシオンを降している。
 正面からぶつかり、圧倒した上で、だ。
 ベニマルは、まともに戦うならば自分の勝機は少ないと考えている。
 しかし……。

「……始め!」

 ソーカの掛け声に反応し、瞬時にディアブロから距離を取った。
 小細工や小手先の技は無意味。
 全力の最大最強の技で挑むのが正解だと、敗れた獅子覆面カリオンや シオンの戦いを見た上で、ベニマルは判断していた。
 初手で決める!

黒炎獄ヘルフレア!」

 ディアブロに向け、拳大の黒玉が飛んでいく。
 ディアブロが回避を試みる様子は無く、速やかに魔方陣の展開が完了し、ディアブロを中心とした直径3mの半球形ドームが形成された。
 以前と異なり、莫大な妖力を込め、圧縮に成功させた黒炎獄ヘルフレアは、威力も比べ物にならぬモノとなっている。
 ベニマル同様、ディアブロも自然効果に耐性がありそうだが、魔属性の黒炎は無効化は不可能である。
 半球形ドームが完成した時点で、ベニマルの勝利が確定する、そのハズだった。 

「クフフフフ。この攻撃をまともに喰らうのは、危険ですね。誘惑の時間パラダイス・タイム!」

 ディアブロの声が聞こえ、周囲の時間が停止する。
 黒炎が半球形ドームを焼き尽くす前に、魔素の動きが停止され、熱の発生を阻止されていた。
 瞬時に見ただけで、技の内容と対策を見破られてしまったようだ。
 それが、ディアブロの持つもう一つのユニークスキル『大賢人』の効果なのだが、ベニマルに取ってはどうでも良い話である。
 リムルの持っていた『大賢者』と同等性能のスキルであり、能力を完全に使いこなすディアブロにとって、発動の遅い技は通用しないのだ。
 この事こそが、油断無く能力を使いこなす熟練者であるディアブロの恐るべき点なのである。
 ディアブロが相手の能力をわざわざ受けてみたりする事も、解析鑑定をより確かなものにする為でもあったのだ。
 ある程度の技ならば、見るだけで盗む事も可能なのである。

「ッチ、見ただけで、俺の技を封じるとはな……」

 止まった世界の中で、ディアブロに対し愚痴るベニマル。
 初手を封じられ、次の対策を考えつつ、ベニマルに焦りは無い。
 端からディアブロの方が格上だろうと、内心で見抜いていたお陰である。
 だが、単純な肉体戦闘では互角だと予想しているが、決め手が無ければ無駄である。
 物理無効効果により、斬撃ではダメージを与える事は出来ない。
 闘気剣なら可能だが、お互いに致命傷を与えるには威力が弱すぎる。
 寧ろディアブロの能力発動により、ベニマルは自分が負ける事になりそうだと予想していた。

「クフフフフ。勿体ぶるのはお止めなさい。
 貴方はまだ、奥の手を残しているのでしょう?
 私の技を受けるには、本気を出さねば死ぬ事になりますよ!」

 ディアブロが宣言と同時に、技を放つ動作に入った。
 "世界の崩壊エンド・オブ・ワールド"という、シオンの必殺技を上回った超絶技である。
 ベニマルは考える余裕は無いと判断し、ハクロウに習った剣聖技を放つ。
 "朧流水斬"。それは、流れる水のように、全てを受け流し、相手に跳ね返す。
 捉えどころのない幽玄のように、相手を惑わせる効果もあり、剣技としての最高峰であった。

世界の崩壊エンド・オブ・ワールド!」
「朧流水斬!!」

 世界の崩壊と同時に、誘惑の時間パラダイス・タイムにより止まっていた時間が流れ出す。
 世界崩壊の余波を受け、ベニマルの全身を激しい痛みが貫いた。
 "朧流水斬"により受け流せなかったエネルギーにより、全身が貫かれたのだ。

「クフフフフ。まだまだですね。それとも、降参しますか?」

 止まっていた時が動きだし、ベニマルは吹き飛ばされて地に転がる。
 痛覚無効であるのに発生している全身の激痛が、このままでは生命の危険があるというサインである事には気づいていた。
 そんなベニマルに、ディアブロが気軽な調子で聞いてくるが、ベニマルに答える余裕は無くなっている。
 寧ろ、誘惑の時間パラダイス・タイムの中で放たれた世界の崩壊エンド・オブ・ワールドを受けて、無事に立つ方が異常なのだ。
 しかし、そんな事にお構いなく、ベニマルは自分を不甲斐なく思う。
 剣の腕も上達し、ハクロウと互角に闘えるまでになっている。魔力を用いた戦闘も集中力が増した事で、幅広く応用が利くようになっていた。
 だが……ベニマルは、個人戦ではシオンに劣り、大規模戦闘ではランガに劣るだろう。
 結局、全体を見て指揮をする事に特化した自分では、強さの壁を超越する事は出来ないのではないか?
 それが、ベニマルの抱く悩みであった。
 軍の指揮者として、リムルの役に立つ事は出来るだろう。しかし、このままではリムルの盾となる事すら出来ないのではないのか?
 そうした不安が付きまとうのだ。
 だからこそ……
(って、フザケルな。何で、この俺様が、チマチマと下らねー事で悩む必要があるんだ!)
 だんだん腹が立ってきた。
 もともと短気な性格の持ち主であり、最近でこそ大人になり我慢を覚えているのだが……。
 生まれ持った性格はそう簡単に変わるモノでは無い。
 指揮を取る者としての責任感によって、周囲の調和を目指して来た結果に過ぎないのだ。
(止めだ、馬鹿らしい。俺らしくねーぞ、ぐだぐだ悩むのも面倒だ。
 よーは、勝てばいいんだよ。無いなら、創るまでだ!)

 ベニマルは吹っ切れた。
 ディアブロの問いに答える事なく立ち上がり、刀を構える。
 その様子を見て、戦闘続行と判断したディアブロが薄く笑った。

「クフフフフ。それでこそ、ベニマルです!」

 そう言って、両腕に装着していた手甲から、歪な刃が伸び出す。
 3本の爪のような外見で、左右対称であった。
 一本の爪の長さは1m程度で、鋭い両刃の剣になっている。
 ディアブロがクロベエに作成して貰った専用武器、爪鋏刃シザーズであった。
 今まで武器を用いなかったディアブロが専用武装を出した事で、闘技場内にざわめきが生じる。
 そして、何かを期待するような、熱い熱気に包まれた。

 ベニマルは迷いを捨て、心を集中させていた。
 そもそも、戦闘中に成長した奴は結構いる。最近で言えば、ゴブタだ。
 あの馬鹿に出来て、自分に出来ないハズが無い! それが、単純シンプルなベニマルの得た解答である。
(やってやるよ。この野郎、俺様の強さを見縊るんじゃねーーー!!)
 そして、心を静めたまま、練った闘気を全身に巡らせた。『魔炎化』を発動させて、全身の損傷を修復する。
 同時に、練った気と黒炎が一つに融合されていく。
 薄く揺らめく事も無い、綺麗な黒紅の闘気オーラが全身を覆い、準備が完了した。
 時間にして、1秒にも満たない一瞬の事である。

「次は、本気で行く。死んでも恨むなよ?」
「クフフフフ。その自信、嫌いじゃありません」

 両者の視線が交差し、互いが、互いの持つ最高の技を同時に放った。

生命の収穫エンド・オブ・シザーズ!」
朧黒炎葬破リバース・フレイム!!」

 全ての生命を刈り取るディアブロの鋏、その交差する一瞬を、ベニマルの紅蓮に染まった刀が受け止め跳ね返す。
 そして返す刀で、迸る黒炎気をディアブロに叩きつけるように、斬り付けた。
 流水の如く受け流すのでは無く、包み込む炎のように、全てを焼き尽くす。
 今、この瞬間に生まれた、ベニマルの必殺技であった。
 ベニマルの刀が熱と衝撃に耐え切れずに折れて融ける。
 ディアブロの爪鋏刃シザーズも、ベニマルの刀を受けたダメージにより溶融し、使い物にならなくなっていた。
 当然、その所有者であるディアブロも、胸部に大きな傷を負い、地面に倒れ付している。

「ク、クフフフフ……。見事、です。生まれて初めて、敗北を味わいました……
 何でしょうか、この苦さは。二度と、こんなもの、味わいたくは無いですね……」
「二度と、てめーとは戦うつもりなんざ、ねーよ……」

 ベニマルも膝をつき、精魂尽き果てた様子であった。

「え、えーっと……。ベニマル選手の勝利です!!」

 ソーカが宣言し、この瞬間、優勝者が確定した。
 数日間に及んだ、長き戦いは、こうして終わりを迎えたのだ。
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