FILE:26 夫婦 2
すっかり泣き止んだ蘭は、笑顔とはいえないが清々しい顔で料理をしていた。
メニューは、小五郎と英理の思い出の料理。
英理が初めて小五郎に作った料理は、ビーフシチュー。
それを蘭は作っていた。
せめて最後だけでも、いい気持ちで終われるように。
「蘭も大人になったんだな…」
小五郎は暫し寂しそうに、感心したように呟く。
それを聞きとがめた英理は、ふっと笑って言い返す。
「あら、あの子は大分前から大人よ。少なくとも、新一と出会った日からはね」
「けっ!」
拗ねたように、小五郎は煙草をふかす。
英理はすくっと立ち上がった。
「何処行くんだ?」
「トイレよ」
英理は即答した。
しかし、行き場はトイレではない。
小五郎の部屋にメッセージカードを置いて帰ろうと思ったからだ。
“小五郎へ これを呼んでいる頃、私は涙を流しているかもしれないわね。貴方とのことで蘭には不安を覚えさせ、傷を残してしまった。でも、ようやく現れたのね。恥ずかしいけれど、貴方と蘭と過ごした短い日々、色んなことがあったわね。全て、私の宝物よ。幸せに。 英理”
ピンク色の文字に白地の紙。
英理は小五郎の部屋の電気を点けた。
照らし出された机の上には、1冊のアルバム。
英理は開いてみた。
蘭と小五郎の写真。
家族3人の写真。
遊園地へ行った写真。
そして隣には封筒。
中身は英理と蘭の写真だった。
所々破けている。
「きっと…水の中に落としてしまったのね」
涙で濡れて破けたとは思いたくなかった。
自分もあったから。
こういう夜が。
英理は静かにカードを置き、その場を後にした。
|