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月と太陽、決して交わることのない二人
作:沙和子



FILE:13 逃げ道


蘭、蘭、蘭。


新一はソファーの上で蘭の為に頭をフル回転させていた。

何で泣くんだよ?
俺、何かしたか?
様子が変だぞ?
大丈夫か?


こんな当たり前の言葉、かけてやる気力さえない。









「新一」

新一は瞬間的に振り向いた。
蘭の姿。
蘭、蘭、蘭。
俺の蘭。
俺の妹。
大事な妹。
大事な愛しい女性ヒト



「ごめんね? もう大丈夫だよ!」

無理しているのか顔が引きつる。
そんな蘭見たくない。
見たくない見たくない見たくない。


「そうか。俺達、学年一緒だろ? 帝丹高校だったよな」

「うん。クラスは別々だけど」

「俺が2年Bで、蘭が2年A」

「登下校は一緒でいい?」

「勿論! 俺ら兄妹だもんな!!!」




『兄妹』

自分の口からはもう二度と言いたくなかった二文字の言葉。
その二文字は逃げ道のような気がする。
気持ちが抑えきれなくなった時の逃げ道。

「だね」

二人は笑いあった。
何もかも忘れて。












「初めまして、も…じゃない工藤蘭です。よろしくお願いします!」

長く美しい黒髪。

蘭は深々と頭を下げた。
今日は転校初日。
挨拶だった。




「どうも初めまして、工藤新一です。よろしく」

素っ気ない態度が逆に女子生徒の心を動かした。
モテる新一と蘭。
お互いしか目に入っていないが。



「工藤さんってB組の工藤君と兄妹? ややこしいから蘭って呼んで良いかな?」

休み時間に隣の席の女子生徒が声をかけてきた。

「ええ。親が再婚したから…」

「つまり、一緒に住んでるのよね?」

「ええ、まぁ…」

「いいなーあたし、工藤君狙ってるんだ! カッコイイよねー!!」

蘭の耳にもう言葉は届いていない。
顔は真っ青。

蘭は逃げるようにその場を立ち去った。
涙を流して。













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