第6話
今日ははりきって地味に更新
何がどうしてこうなった…
またまた深夜の勢いと変なテンションで書き上げたんだ。私。
怖い物理のテスト?捨てました。
陽の光が水平線の向こうへと落ち、空には月が登る。その月の光は闇夜をやさしく照らし出す。その光が照らす地の先の一つに紅く染まった地域があった。そこには馬にまたがった獣人達の集団がいくつもの松明を持って辺りを照らし、一つの集落の前で立ち止まっていた。
「さぁ、やってきてやったぜ我ら銀の団さまがよぅ。前に要求した通りおとなしく食糧と女を差し出せばよし、さもなければ老若男女関係なしに皆殺しにさせてもらうじゃないの。なぁ、兄弟?!」
「「「「「イェェェェェェアアァァァァァッ!!!」」」」」
イノシシのような顔をした大男が叫ぶと周りにいる獣人達はそれに答えるように大声でそれに答える。
「10分だ!10分くれてやるっ!それまでに答えを考えておくことだな!まぁ、俺たちとしてはどっちでもいいことだがなぁ。なぁ?兄弟?!」
「「「「「イェェェェェェアアァァァァァァァッ!!」」」」」
響き渡る声は集落に住む人々にとって悪魔の叫び声にしか聞こえなかった。集落に住む人々はその声に対して怯え、家の中で震える者もいれば何をしても無駄だと絶望するもの、そして何をどうすればいいのかと恐怖でパニックに陥ったものもいる。そんななかでも何とかまともに思考できる者も何人かおり、その者たちは集落の族長の家にてこの要求にどうするべきかを考えていた。
「この条件を呑むべきではないということはわかる。だがしかし…我らには戦うすべがないということも確かなことだ」
「ならば、抵抗もせずに要求を呑めというのか?!それこそやってはならない事だぞ?!」
「ならば、お前があの盗賊団相手に戦いに出向くのか?」
「そ…それは……だがしかしっ!皆で力を合わせれば…」
「集落の様を見たのであろう?皆使いものにならんほどに恐怖で混乱しとるわい」
猫耳を生やした男性が何とかしようと口論するが、猫耳を生やした女性と猫耳の白く長いひげをたくわえた老人男性がそれを否定し続ける。
「ならば、我らの部族はどうすればいいというのですか!!族長!!」
「流れに身を任せ、その流れに呑まれたのならばそれまでの部族ったということじゃろう……」
「ふん。お偉いさんが募って話し合ってるって聞いたから来てみたがオマエらもクリスカ同様の腰ぬけってわけか。猫耳集団は度胸のないことで」
そこに、黒い改造学ランを着込んみ腰のベルト部分に8月の剣を携えた青年。一輝が喧嘩腰で話し合いに割り込んだ。一輝はこの猫耳集団のやる気のなさに失望を感じていた。
「お前は…たしかクリスカが連れ込んできたという猿人だな。これは我々猫人の問題。貴様にどうこう言われる覚えはない!」
「だったらなんで答えをまとめねぇ?さっきから聞いてりゃ戦うすべがないだの、混乱してて使いものにならないだの。最初っからなんにもやらねぇで諦めやがって…オメェらの事じゃねぇのか?あぁ?!」
「我らの事だからこそ、こうして話し合っているのだ!」
「話し合いねぇ…んじゃ、ずっとそこで話し合ってろ。俺は行かせてもらうぜ。奴らのところにな」
「まて!貴様、銀の団がいる場へ向かって何をするつもりだ!!」
「なにもする気のねぇ奴らに話すことはなにもねぇ。じゃあな」
一輝は扉を奴あたりのごとく勢い良く開けると怒りの表情を浮かべつつ家の外へと出て行った。その後ろ姿を見た青年はうつむくと自分の拳を握る。
「何もする気のない…か…」
一輝の言葉が青年の心に酷く響いた。
奴ら、銀の団が現れたという報告が届いてからどれだけの時間がたったかは分からない。クリスカはやけに寂しく感じるリビングで一人、椅子に座ってただぼーっとしていた。
テーブルにはやけになった時にでも注いだのであろう黄色い飲み物が氷の入ったコップに注がれていた。
これから何をするべきなのかわからない。ただただ絶望感がクリスカの思考を包み込んでいった。
「私はまだ子供で、力もなくて…何もできない役立たずなのよ…私にどうしろって言うのよ…」
自嘲気味に誰にも聞こえない独り言をつぶやく。
その瞳には輝きはなく、恐怖と絶望で暗くなっていた。
テーブルに置かれた飲み物をクリスカは手にとって飲みはじめた。
今思えば、もっと小さい時からそうだった。何か怖い事が起こるたびにあきらめて、その時の流れに身を任せて、なにも抵抗することなく生きてきた。でも、抵抗してさらに痛い目を見るだけなら、諦めたほうがまだいい。そうやって今まで生きてきた。でも、お腹がすいて…すいて…死にたくなかったからあの時はたびたび食糧を盗みに行ってた。本当によくあんなことができたわねと今はしみじみ思うわ。
「一輝…私、どうすればいいのかな…」
コップを手放し、テーブルの上に置く。コップの中の氷が少し解け、カランという音を立てて黄色い飲み物に波をたてた。
「そろそろ10分立つな。さて、兄弟!これから向こうの返事を聞こうじゃないかっ!」
おそらく相手側の返答はないということに当たりは付けているがあえて問い。集落へと乗り込んで虐殺し、女を見つけては連れ帰り犯す。それがこのイノシシの男の楽しみの一つであった。
「た、隊長!」
「ここでは兄貴と言えと言っているだろうが!!っで、どうしたんだ兄弟」
「へ、へい兄貴。何やら黒い衣を着た何者かがこちらに向かってきています」
「んなにぃ?ふむ、頭に良い報告ができるといいなぁ」
確かに前方を見ると黒い何かをはおった誰かがこちらへ向かって歩いてきていることが分かる。しかし、その誰かが答えを運んできたのだとするとイノシシの男にとっては正直、悪い話でしかなかった。
それでは自分が好きなように集落で暴れまわる事が出来ない。
ストレスの発散ができなさそうだと半ば諦めの表情を浮かべたイノシシの男は黒い衣の誰かが一歩ずつ近づいてくるのを待ちわびた。
少しずつ近づいてくるにつれて分かるその相手の輪郭。どうやら猿人のようだ。どんな答えが帰ってくるのだろうかとイノシシ男は半分楽しみにしつつ相手に問いを聞く。
「お前があの集落の代表ってことでいいのかい?まぁ、俺たちにとっちゃどうでもいいことだが…さて、返答を聞かせてもらおうか?」
「白銀の腕の男はどうした?」
「あぁっ?お頭の事言ってるのか?だったら残念だったがここにはいねぇぞ?」
「あぁ、そうかい。良いことを聞かせてもらった。ありがとよイノ豚野郎!」
その言葉と同時にイノシシ男の首から下の感覚がおかしなことに気がついた。上を見上げたはずはないのになぜか上を向いている。その上なぜか浮遊感を感じる。だんだんと視界が下のほうへと下がっていき、やがて自分の首から上のない体が自分の目に映った。
俺、死んだ?そこから思考が進むことはなく、イノシシ男の意識は無くなった。
「あ、兄貴が、兄貴が殺られちまったぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「兄貴の…兄貴の敵を討てぇぇぇぇぇっ!奴はたったの一人だ!俺たちが束になりゃどうってことはねぇぞ!!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」
獣人達の雄たけびが響きわたる。そして獣人たちは一輝にむけて殺意をとばし、一輝めがけて突っ込み始めた。
「へっ、頭を落とせばバラけ散ると思ってたが一筋縄じゃいかねぇか。いいぜ、お前らのやり方は気にいらねぇがこの喧嘩、俺が買った!!」
一輝は8月の剣を構え直すと自ら獣人たちの大きなうねりに飛び込んだ。
もう10分はすぎた。そのはずなのに集落にはまだ被害は出ておらず、族長の家で話し合っていた者たちは不思議に思っていた。
「もう、とっくのとうに10分は過ぎたはず…なのに未だにこの集落は襲われていない。一体どうして…」
「ふむ…何か不吉な前触れでなければいいが…」
猫耳女性と老人は不思議がっていた。今頃、この集落が火の海に包まれていてもおかしくないのに、と。
「あいつだ…あの猿人が奴らと戦っているんだ!!」
「いくらあのものが強くても相手は500人はいるのだぞ?バカな事は言うものでは…」
「だったら今の状況をどう説明しろって言うんだよ。くそ、カッコイイじゃねぇかアイツ。それに比べて…今の俺は何をやってるんだよ畜生…」
「……だったら、俺たちも今からやってみないか?今までの俺たちにサヨナラするつもりでさ」
扉のあるほうから今まで聞かなかった声が聞こえたことに驚き、猫耳の青年はそちらのほうへと顔を向ける。そこにはさっきまで恐怖や絶望感に打ちひしがれていたはずの仲間達がそこにたっていた。
「俺たちもさっきまでもうおしまいだって思ってたんだけど…未だに襲われていない事にどうしてなのか?って考え始めて…それで今俺たちが襲われてないのはあの猿人が奴らと戦っているおかげって戦闘を目撃した奴に聞いてさ…」
「よそ者のアイツが一人で気張ってるのに俺たちがなんにもしないってのは流石に俺たちもカッコ悪く思えて、いてもいられなくなったんだ」
「だから、今までのどうしようもない俺たちにサヨナラしたくってさ、それにがむしゃらにでも頑張ってれば何もしないよりはマシかなって」
「お、お前ら……」
「今、他のやつらにも良い回ってるところなんだ、武器は…まぁ、農作業に使う桑や鎌でもなんとかなうるだろ?遠距離なら狩りで使う弓を使えば何とかなるだろうし」
「族長!!」
それを聞いた猫耳の青年は判断を仰ぐように族長に尋ねる。
「おじいちゃん…」
「長様!!」
それにつられるように他の者も族長の判断を尋ねる。
「ふむ…皆の心が一つになったのが感じられるのぅ…それが外からやってきた者にって初めてなされるのが少し癪じゃが…よろしい。これは元々わしら猫人の問題じゃ。皆でうって出ようではないか!!」
それを聞いた周りの猫人は勢いを増し、どのようにして向かうべきかを話し合う。
「希望が、光が満ち溢れて見えてきたのぅ…」
族長は希望に満ち溢れた猫人達をみて一人つぶやくのであった。
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