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七人の勇者と咎の龍 作者:ホライゾン

第一章 終わりの始まり

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1-8 魔法習得

 とある小さな家屋に連れてこられた。そこで、魔法を習得するということだ。飛鳥達はどのような方法で魔法を習得させてもらうのか不安のまま、その時を待っていた。なにしろ、少し痛い思いをするらしい。まともな方法じゃなさそうだ。

「さて、さっそくじゃがとりかかろうかの」

 長老が飛鳥達三人と向かい合うようにして立ち、右手をすっと自分の方の位置まで持ち上げた。

「――絶魔法・ブラックアウト」

「?…………!?」

 一瞬、何をされたのか分からなかった。だが、それはすぐに判明した。

「長老、何したんですか? 体が動かないんですが……!」

「すまんのう。悪いがしばらく体の動きは封じさせてもらうからの。その方が都合がいい。言ったじゃろう? 少し痛い思いをすると」

 そう、飛鳥、弥生、和弥の三人の体が直立不動状態で固まり、身動きが取れない状態になっていた。
 身動きが取れない中、一人だけ特に取り乱している者がいた。弥生だ。

「ジジイ! 今すぐ私達を動かせるようにしろ! 殺すぞ!」

 怒号にも近いその叫びにそばにいた飛鳥と和弥は狼狽し、弥生を窘めるようとした。

「どうした弥生? 確かに今の状況はよく分からんが取り乱しすぎだ、少し落ち着けよ。お前らしくもない」

「これが落ち着いてられるの!? ねえ! 動けないのにどうして落ち着いていられるの? あんた達の方がどうかしてるんじゃないの!? ねえ! はやくしてよ! 解放して!! 身動き取れないなんて……、そんなの……やだ……嫌だ……!!」

「弥生お前……」

 そこで、この家屋の戸が突如開かれた。

「長老様! 何事ですかですよ!? 何か変なことしてないですかですよ?」

「すまんのう。予想以上にそこの嬢ちゃんが取り乱しておっての」

 現れたのはサーシャ、セシリア、少し後ろにレスカだ。どうやら、弥生の叫び声を聞いて慌てて駆けつけてきたようだ。
 中の様子を見て、セシリアが一歩前へ出て、長老に向かって指を指した。

「おい、ジジイ! 状況見てある程度察したよ。魔法を習得させるためだけに身動き取れなくさせるなんてどういうつもりなの!? もしもカズヤやアスカ、ヤヨイに何かしたらただじゃ置かないわよ!」

「セシリアさん、長老様に向かってなんて口の利き方をしてるのですかですよ? 失礼なのですよ」

 サーシャが間に割って入るが、セシリアは止まらない。

「あんたもあのジジイに味方するっていうのなら容赦しないよ。なんなら今すぐここで相手になってあげようか!?」

 セシリアは感情が昂ったまま、錬金術を展開しようとした――が、それは叶わなかった。

「セシリア、これ以上の無礼をここで働くというのなら私が相手になってあげますよ」

 レスカの右腕から伸びた氷の刃がセシリアの首筋にぴったりと押し当てられていた。少しでも力を入れたら人間の首など簡単に飛びそうなほど鋭く、そして鮮やかだ。

「レスカさん……! レスカさんまでそんなこと言うの!?」

「お黙りなさい! あなたが今暴れることが旦那様の顔に泥を塗ることになるということがどうして分からないのですか?」

 レスカは声を落ち着かせ、言葉を続ける。

「旦那様はここに彼らを向かわせた。それは旦那様がこの村に信頼を置いているということ。旦那様が信頼を置けるほどの村の長がまかり間違うことなんてあまり考えられません。あなたは旦那様、いえあなたのお父様が信頼を置く人に対してとんでもない無礼を働こうとしているのですよ! いいですか? もう少し考えて行動しなさい」

 レスカがそこまで言い終えるとセシリアは黙り込んでしまった。だが、その顔はまだ納得がいっていないという表情がいくらか残っていた。

「セシリア? 俺達は平気だからさ? 何かしなくても平気だよう?」

 今まで口を閉ざしていた和弥がセシリアを説得するために口を開いた。だが、珍しくセシリアが和弥へ静かに反論した。

「カズヤはなんでそんな平気でいられるの? ヤヨイの反応が当たり前だって。だって、こんな急に説明もなしに魔法で縛られて……」

「セシリア。少しは俺たちのこと、信用してよ。多分、何かされるようなことはないよこの人はねえ」

「くっ、カズヤがそういうならとりあえず引っ込むわ」

 セシリアが一応の納得をし、弥生も少し落ち着いたのか口を閉ざしている。

「若いもんは元気があってよいのう、では、そろそろ始めさせてもらうとするかの」

 長老が場の落ち着きを確認し、飛鳥、弥生、和弥の三人の前に立ち、右手を少し上げ、指をくっつけぴんと伸ばした手を縦にし、弥生の腹に押し当てるようにくっ付けた。何をされるのか、三人が緊張に汗を流していると突如、長老の手が弥生の腹を突き刺した。

「弥生!」
「弥生!」
「ヤヨイ!」

 飛鳥、和弥、セシリアが声を上げる。
 長老は弥生の腹に手を刺し、五秒ほど経ってから手を引き抜いた。引き抜くと同時に弥生が膝から崩れ落ちる。どうやら、動きを封じていた魔法も弥生だけ解かれたようだ。

「な、何を……」

「少しばかり体の中を弄らせてもらったのじゃよ。魔法を扱えるよう、魔力因子を注入しての。見てみぃ? 腹には何も傷がないじゃろう?」

 弥生が慌てて少しだけ服の裾をたくし上げて確認すると、確かに刺されたはずの箇所には一切の外傷は見られず、綺麗なままだった。ただ、少しばかり腹がチクチクと多少の痛みが走っているのと腹に何か遺物でも混入しているかのような気持ち悪さを除いたら何ら変化もない。これで、魔法が使えるようになったのかイマイチ実感が沸かないのだ。あまりにも訳のわからない状態でただその場でじっとしているしかなかった。座り込んだ弥生にセシリアが近寄り、両肩を抱き、そっと体を寄せていた。

「嬢ちゃんは少し休んでおれ。さて、残りの二人も行くぞい」

 そして、間髪入れずに両手で飛鳥と和弥の腹を同時に突き刺す。二人も五秒ほど経って、手を引き抜かれ、同時に腰が砕ける。二人にも痛みと気持ち悪さが襲う。飛鳥や和弥にもセシリアが寄り添い、気を使っている。

「気分が落ち着いて、自分で立てるようになったらゆっくりと立ち上がるとよい、そうしたら魔法の扱い方の説明をするからの」

 それから十分ほど経ってから飛鳥達はゆっくりと立ち上がった。セシリアが心配そうにしていたが「大丈夫」と手で制した。

「想像以上に復帰が早かったの。中々有望で期待が持てそうじゃの」

 長老は一呼吸笑い、それから魔法について説明を始める。

「まずは、魔法の種類からじゃな」

「魔法は全で七種類に大別できる。水、雷、火、土、氷の五属性。さらに絶、煌の二種類じゃな。そして、魔法を扱うものにはそれぞれ適性がある。適性外の属性の魔法を使える場合もあるのじゃがたとえ使えても基本的には使い物にはならん。だから適性属性だけ鍛錬を積めばよい。一部の魔導師は二つ以上の属性の適性を持っている場合もあるのじゃが、さっき魔力因子を流し込んだ時に同時に軽く調べたのじゃが、お主らは全員一つだけじゃな」

 長台詞で少し疲れたのかまた一呼吸挟む。

「キリシマ・アスカは氷。キリサメ・ヤヨイは雷。ニシジマ・アスカは炎じゃな」

「さて、さっそく外に出て実際に魔法を使ってみるとするかの。ほれ、外に出るのじゃ」

 そういって外へ出るように促す。
 ぞろぞろと家屋の外に出る一行、外に出ると飛鳥が口を開く。

「それで、どうすれば魔法は使えるのですか?」

「うむ、それにはイメージじゃ」

「イメージ……?」

 長老は深く頷く。

「使用者がそこに魔法が存在するイメージを作るのじゃ。そして、魔法を出すと念じ、意識を集中させイメージする。例えば、火の使い手なら火が出てるところをイメージしそこに火が出るように念じる。そうすると、火が発生する。簡単じゃろう? どれ、実際にやってみるのじゃ、今回は掌に出してみよ。ただし、ほんのちょっとだけごく僅かに出すイメージじゃ」

「何故ですか?」

「お主達がまだ魔法初挑戦の未熟だからじゃ。最初は慣れてなくて制御が効きづらい、ほんのちょっと出そうとするだけで最初は十分じゃ」

 飛鳥達は頷き、それぞれ右手の掌を上に向け、それぞれの属性魔法を僅かに出そうと念じた。

 一瞬の間の後に飛鳥の掌には掌よりもはるかに大きい巨大な氷の塊が出現し、弥生の掌には掌を大きくぐるぐる回るように雷が走り、和弥の掌にはこれもまた掌よりも大きい巨大の炎が揺らめいていた。

「うおっ!」

 三人同時に手を引っ込めた。そうすると、出現していた魔法もすぐに消失した。イメージよりもとてつもなく大きい魔法が現れた。ほんの僅かなイメージでこれだ。確かに最初のうちは制御するのが難しいようだ。

「ほっほっ、最初にしては上出来じゃのう。それでは、お主達にはレベルアップのために半月、この村で修行してもらうからの。安心せい、ジャックからは手紙で許可が出ておる」

「魔法の修行か……なんか燃えてくるな!」

「まあ、のんびりやればなんとかなるよねえ」

「私、やっぱりあのジジイ嫌い……」

 弥生だけいまだに嫌そうな顔をしていたが、今はそっとしておくことにした。
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